十二妹絶望物語

第12話

 鞠絵、四葉とたて続けに犯した翌日の午後、勝沼は久々に亡霊の姿で街の中をさまよっていた。

 さすがに兄の身体の方が疲れてきていたのでそちらは部屋のベッドの上で休ませてあるが、じっとしていても時間がもったいないので、勝沼は新しい獲物を捕らえるためのネタでもないかと朝からずっと探していた。

「おお、いたいた」

 繁華街をさまよい続けていると、ケーキ屋のガラスケースに貼り付くように立っている幼い少女の姿を捉えることができた。雛子だ。

「おいしそう……おにいたま、ヒナにどれか買ってくれないかなあ……」

 ケースの中のいろいろなケーキを食い入るように見つめている雛子の背後に近づくと、勝沼はすぅっと地面すれすれにまで降下した。

 下半身が地面に潜るような格好のまま、スカートの中を覗き込む。

「……ほう」

 やはりというか何というか、スカートの下に潜り込んで上を見上げる勝沼の視界に広がったのは、クマさんのバックプリントの付いた白い子供用パンツだった。

(しかし、見ているだけというのはつまらないな)

 得難い眺めではあったが、勝沼はすぐに飽きてそこを離れた。

「さて、次はどこに行くか……」

 繁華街を離れたものの、特にこれといった場所もなく適当にさまよっていると、兄を始め何人かの妹たちも通っている学校の上空に来ていた。

(学校か……とはいえ、休みだからな。部活か何かでもない限り、わざわざ来る奴もいないか……)

「……お?」

 しかし、そう考えていたところに1人の少女がやって来て校門をくぐった。それも、妹たちの1人、花穂だった。

(こんなところに何の用だ? チアリーディング部の練習はなかったはずだが……)

 不審に思った勝沼は花穂の後をつけていった。何か花穂の弱みなり秘密なりを握ることができれば、後でうまく連れ出すことができるかもしれない。

「……よいしょ、よいしょ」

 期待しつつ花穂が消えた先に向かった勝沼が見たものは、大きなじょうろを両手で運ぶ花穂の姿だった。

 水が一杯に入った重いじょうろを抱えながらゆっくりと向かう先にあるのは、色々な花が咲き誇る花壇。

 どうやら花穂はこの花壇に水をやりに来ただけらしい。

「……つまらん」

 憮然としてそう言うと、勝沼はようやく花壇の前に着いて水をやり始めた花穂を置いて学校を出た。


 勝沼が次に来たのは住宅街。ここには妹たちの家がいくつかある。

 もちろん、勝沼の狙いもそこだった。

 可憐の家――ちょうどピアノのレッスンに行っていて、不在。

 衛の家―――友達と外に遊びに行っているらしく、やはり不在。

 雛子の家――先ほど繁華街で見ているため、当然ながら不在。

 鈴凛の家――せめて彼女くらいはいるかと思ったのだが、ラボを見ても誰もいない。どこかへ出かけているようだ。

 今日はどうも巡り合わせが悪いのか、ことごとく空振りだった。

 しかし、勝沼は懲りることなく、次は咲耶の家へと向かって行った。

 咲耶は前に処女を奪いはしたが、監禁するまでにはいたらず、逃げられてしまっている。

 おまけに咲耶の方では愛しさ余ってそんな行為に及んでしまったとでも勘違いされているようだった。その反応はこれまでにないもので、予想ができないためにそれ以後接触はできるだけさけるようにしていたが、四葉をうまく拉致監禁して自信を少し取り戻していた勝沼は、あえて咲耶の部屋へ向かった。

「……んっ……お兄様ぁ……」

 今度こそちゃんと部屋にいた。

 しかも、まだ日が出ているというのに、ベッドの上でひとり遊びの真っ最中。

 左手はブラウスのボタンを外して露わになった白いレースのブラジャーの上から胸を触り、右手は捲くれ上がったスカートの中にあった。

 顔の横には写真立てに入った“お兄様”の写真が置かれ、咲耶はそれを見ながら妄想に耽っているようだった。

 勝沼が部屋に侵入する少し前から始めていたらしく、すでに頬は薄く染まり、身体も上気し始めている。

 すぐにブラの上からでは満足できなくなったのか、ブラジャーをずらすと、すでに先が尖り始めていた乳房を直にまさぐり始めた。

「お兄様……」

 兄を呼びながら右の乳首を人差し指と薬指との間に挟み、中指の腹で突き出したそれを軽く転がす。

「はぁっ……」

 吐息を漏らしながら同時にスカートの中の右手も動かす。

 初めは下着の上から割れ目全体をなぞるようにしていた指が、やがて下着の中へと潜り込んで直接刺激をし始める。

「んんっ……!」

 目をぎゅっと閉じて快感にうめく咲耶。

 下着の中に差し入れた指先が敏感な突起を捉えたようだった。

 下着の中心にぽっと浮かんでいた小さな愛液の染みが、またたく間に大きく広がっていく。

「はぁっ……はぁっ……お兄様……っ」

 指を動かす手は止めないまま、足をもぞもぞと動かして咲耶は下着を膝の辺りまでずり下ろす。

 邪魔になると感じたからなのか、これ以上下着を汚すことを嫌がったのかは覗いている勝沼にはわからなかった。

 ただ、下着を下ろしてしまってから指の動きがますます激しいものとなったのは間違いなかった。

 指の一本が淫核を離れ、ぴんと伸ばしたそれが愛液で潤みきった膣口へと埋まっていく。

「んんっ……!」

 思わず大きな声が出そうになって、慌てて咲耶はシーツを咥えて喘ぎ声を殺した。

 そろそろ絶頂が近いのか、全身が上気してうっすらと汗が浮かんでいる。

 シーツで声を殺しながら咲耶は指の動きをさらに速めた。

ぬぷっ、じゅぷっ……

 膣口に差し入れた指も激しく出し入れされ、濡れた音を響かせる。

 乳首と淫核をまさぐっていた指が、その腹でそれぞれの敏感な器官をぎゅっと押し潰すようにする。

「んんっ……ぁぁああああっ! お兄様ぁっ!!」

 シーツを咥えていた口ももう堪えきれなくなって、大きな喘ぎ声と共に兄を呼びながら咲耶は絶頂に達した。

 身体が反り返るようにしなり、足の指先がぴんと張る。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 一瞬の緊張の後、大きな吐息と一緒に咲耶の全身は弛緩した。

 胸と秘裂をいじっていた手も離れ、だらりとベッドの上に乗っている。

 荒い息をつきながら咲耶は焦点が定まりきらない潤んだ瞳ですぐ横にある兄を写した写真立てを見つめる。

チュッ

 軽い音がして咲耶の唇が兄の写真に一瞬触れてすぐに離れた。

「お兄様ったら……つれないんだから。せっかく身も心も一つに繋がったのに、あれからちっとも呼んでくれないんですもの。照れてるのかしら?」

 咲耶はそう呟くと、もっとよく見ようと写真立てを右手で取って位置を直した。

ぬるっ……

「あっ、いっけないっ……!」

 ついうっかりオナニーしたままの手で写真立てを持ってしまったために、絶頂時に溢れ出して手にべっとりと付いた愛液がそのまま写真立てにもべっとり付着してしまっていた。

「ティッシュ、ティッシュ……」

 慌てて咲耶はティッシュの箱に手を伸ばして数枚を抜き出すと、写真立てを拭こうとしてふと動きを止めた。

 ちょっと考える素振りをした後、手にしたティッシュはそのままで咲耶は再び写真立てに顔を近づけていった。

「……馬鹿馬鹿しい」

 それ以上は見ようともせず、勝沼は咲耶の部屋を離れた。

(放っておいてもそのうちまた向こうからやって来るだろう)


 咲耶の部屋を出た後も勝沼はいろいろな場所を回ったのだが、思うように妹たちの姿を見つけることはできなかった。すでに日も没する寸前で、世界は赤く染まっている。

 もう兄の身体も充分休めることができただろう。そろそろ戻ろうと勝沼は兄の家へ向かっていた。

「……ん?」

 その途上、河原の上を飛んでいるとき、ふと勝沼は気づいて下を向いた。

「よしよし、だいぶいい感じ。これならもうすぐアニキをびっくりさせられるはず」

 河原の近くでなにやら人形のような物をごそごそやっているのは、鈴凛だった。

「……こんなところにいたのか」

 思わぬところでさっきは見つけられなかった妹を見つけた勝沼は、鈴凛が何をしているのかよく見ようと、河原に下りていった。

「あともうちょっとで完成ね。高速移動、アニキ探索機能+この街のマップデータ搭載の『メッセンジャーくんスーパー』!」

 近づいてよく見てみると、鈴凛が持っているのは茶運び人形に外見が酷似した機械だった。

 どうやら、これがその『メッセンジャーくんスーパー』らしい。

ニヤッ

 勝沼は邪悪な笑みを浮かべた。鈴凛を捕まえる方法を思いついたのだ。確実に成功するかはまだわからないが、最初さえうまくいけば、おそらく大丈夫だろう。

 勝沼はすぐさま計画を実行に移した。

すぅっ

 勝沼は、何と鈴凛の持つ『メッセンジャーくんスーパー』にとり憑いていった。

ウィ――ン

 モーター音を鳴らし、勝沼は鈴凛の手を離れて動き出した。

「えっ!? 何? うそっ!?」

 突然勝手に動き始めた機械に、鈴凛は驚きのあまり反応が遅れた。

 鈴凛が我に返ったときには、すでに勝沼はだいぶ鈴凛から離れていた。

「ちょ、ちょっと、待ってよー!」

 慌てて鈴凛は勝沼の後を追うが、当然勝沼も逃げる。ここで捕まっても何の意味もない。

 驚いたことに、『メッセンジャーくんスーパー』にとり憑いた勝沼は、人が走るのとそう変わらないスピードで走ることができた。鈴凛の技術力のおかげか、勝沼がとり憑いているせいか、おそらくはその両方だろう。

 そのスピードのおかげで、勝沼はうまく鈴凛の前10メートルほどでうまく誘導することができた。

 ここまでは、勝沼の予想以上にうまくことが運んでいる。

「あれ? ここって……」

 勝沼の憑いた『メッセンジャーくんスーパー』に10分ほど振り回された鈴凛は、あることに気づいた。

 勝沼が向かっているのがどうやら兄の家の方だということに。

「まだ調整済んでなかったのに……アニキの方に向かってるんだ?」

 しかし、もう少しで兄の家、というところで、勝沼は不意に道を逸れた。

 狭い裏路地に入っていくと、鈴凛も遅れてその後を追った。

 そういくらも進まないところでその裏路地は行き止まりになっていて、『メッセンジャーくんスーパー』はその行き止まりで止まっていた。

「ふぅ。……ようやく追い着いた。もう〜、何でこんなことになったんだろ?」

 走り続けて荒くなった息を整えながら、鈴凛はゆっくりと『メッセンジャーくんスーパー』に近づいていった。

チリーン

 あと少し、というところで鈴の音が鳴る。

 とっくに『メッセンジャーくんスーパー』から離れていた勝沼が鳴らしたものだ。

GUOOOOOOOOOO……

『メッセンジャーくんスーパー』のすぐ前の壁を抜けて、古手川が姿を見せる。

「キャアアアアアアア!」

 突然眼前に現れたおぞましい姿に、鈴凛は悲鳴を上げて意識を失ってしまった。

「古手川、ご苦労。こいつを部屋に運んでおいてくれ」

「はい、かしこまりました」

 そう言うとすぐに古手川は意識を失った鈴凛にとり憑いた。

「……では、お先に失礼します」

 鈴凛の声でそう言うと、古手川はすぐ近くの兄の家まで戻って行った。




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