「では、任せた。俺はしばらくこの身体で街を廻ってくる」
「はい、おぼっちゃま。夕方までには準備を終えておきますので」
“千影”の姿の勝沼に、“兄”の古手川がそう返事をする。
一夜が明け、休日の朝の玄関でのやり取り。昨夜のうちに古手川が手配をしておいた業者が間もなくやって来ることになっていた。
意識を失ったままの千影を家に置いておくわけにもいかないので、勝沼がその身体を借りて街に出ようというのだ。
深々と頭を下げる古手川に背を向けると、勝沼はまず千影の記憶にある彼女の家に向かった。
「あら、千影ちゃんじゃない?」
しかし、その途上でさっそく呼び止められてしまった。
声をかけたのも千影と同じ12人の妹の一人、咲耶だった。
「……ああ……奇遇だね…………咲耶くん」
勝沼は千影の口調を真似て、平然と咲耶に言葉を返した。
思わぬところで2人目の獲物も向こうから姿を見せたことに、胸の内では笑いを堪えていたのだが。
しばらく適当に話の相槌を打っておいて、ふと思い出したように罠へと誘う込む言葉を発する。
「……そうそう……忘れていたよ…………実はさっき兄くんにも遭ってね…………なんでも……咲耶くんに何かの趣向を考えて……準備しているらしい。夕方にでも……行ってあげるといい…………」
「それ、本当なの?」
目を輝かせて咲耶は聞き返してくる。
「……ああ…………嘘など言っても…………仕方ないだろう……?」
そう言ってやると、しばらくの間うっとりと虚空を見上げて、
「ありがと、千影ちゃん。恩に着るわね。それじゃっ!」
軽く手を振ると元来た道を足早に戻って行った。
どうせ今から“お兄様”の家を訪ねる準備をするのだろう。
何が待っているのかも知らずに。
(……しかし、)
「思ったより話しづらいな。この口調は」
誰にも聞こえないような小さな声でそう呟くと、勝沼は千影の家へ向かって行った。
千影の家に一度戻って顔を見せた後、街の中を改めて身体を持った状態で見て回る。
ふと気がつくと、時間は午後3時をまわっていた。
確実に咲耶より30分は早く家に着いておきたい。
間違っても咲耶より遅れて、古手川が入った“お兄様”が咲耶と鉢合わせるわけにいかなかった。
「ああ、おぼっちゃま。お帰りなさいませ」
急いで家に戻ると、咲耶の姿はまだそこになく、古手川が勝沼を出迎えた。
「ちょうどたった今、作業が終わったところでございます」
「そうか。だが時間がない。早くその身体を俺に返せ」
家に入ると早速そう命令する。
「は、はあ……時間がないとは、いったい何の話でございますか?」
わからぬまま兄の身体を抜け、亡霊の姿に戻って古手川が問うと、
「いや待て。先にこの千影の身体を繋いでおかんとな。……ちょうどいい。直人と木戸を連れて監禁部屋に移るぞ。ついて来い」
ろくに質問にも答えぬまま勝沼は監禁部屋に移る。古手川は一旦兄の身体に再び入ってその後を追った。
足元の畳が元和室だったことを思わせるその部屋は、壁と天井が防音壁で囲まれ、窓も塞がれていた。
加えて床や壁には10余りの首輪のついた鎖の先が埋まっている。
普通の家のため多少狭いのは仕方がなかったが、それなりの出来栄えと言ってよい。
押し入れのあった場所も当然防音壁で塞がれていたが、そこになぜかそれとは一見わからないような小さな扉が作られていた。
勝沼と古手川はその狭い入り口をくぐってその中に入った。
直人と木戸はまだ回復していないが、普段よりずっと薄い姿で壁を抜けてそれに続いた。
中は、監禁部屋と同じように防音処理を施して押し入れの上下の仕切りを取り外した、一種の小さな隠し部屋のようになっていた。
そこで改めて古手川は兄の身体を抜け、入れ替わりに勝沼が千影の身体を抜けてそっちに移った。
「さて、と……」
勝沼は板張りの床に直接、円と紋様を描いて再び昨日のスライムを呼び出した。
昨夜同様スライムは意識のない千影の四肢をすぐに絡め取る。
「おぼっちゃま……それは?」
「これはちょっとした生体拘束具だ。精気を吸い取るからいくら千影でもそう暴れることはできんだろう。ついでに、こいつはほとんど自我が無い。こいつにとり憑いておけば、直人たちも回復が早まるだろう。その間、千影を嬲ってうさを晴らすもいい」
「ありがとうございます……では、早速」
直人と木戸はそう言ってすぅっとスライムの中に入っていった。
「どうだ? 具合は?」
勝沼が尋ねると、スライムの粘液状の身体が歪んで直人の顔を浮き上がらせた。
「はい……なんというか、身体に力がみなぎってくる感じです。これなら近いうちに回復して再びおぼっちゃまのお手伝いができるようになるでしょう」
口の部分が動いて、不明瞭ながらそう言葉を発した。
次いで、直人の顔の横に木戸の顔も浮かび上がると、
「へっへっへ……おぼっちゃんの許可が出てるんだ。俺は早速楽しむとするぜ」
声と共に千影の四肢に巻きついているのとは別の触手が伸び、千影の上着を破り去った。
細い触手が2本伸びると、器用にブラジャーをずらしてそれぞれ右と左の乳房に巻きついた。
触手の先はまだ陥没気味の乳首を転がすように弄ぶ。
「……ん…………は……」
まだ完全に意識は覚醒していなかったが、千影の頬はうっすら紅潮し、身悶えするように小さく身体を揺らした。
その反応に気を良くした木戸は、また別の触手を伸ばすと、今度は下半身に狙いを定める。
服の残骸を掻き分け、下着の上から触手の先であそこを探ると、そこはわずがだがすでに内側から湿っていた。
そこに触手から分泌させる体液をなすりつけて混ぜるようにしてやると、ほどなくぐちゃぐちゃと淫猥な音をたて始めた。
「そうそう、言い忘れていたが、そいつの体液には媚薬成分が含まれているらしい」
思い出したように勝沼が言った。
「木戸。自分ばかりで楽しむな」
ここで直人も参加してスライムから千影に伸びる触手は倍増した。
木戸が操っていた触手を股間から押しのけ、直人が操る触手が代わってまさぐり始める。
別の触手は脇腹や太ももを性感帯を探るように撫でていった。
股間から追い払われた木戸の触手は、上半身を中心に、首筋を撫でるものや、乳房を嬲る触手がさらに増えたりもする。
1つの身体に2つの意識が同時にあるというのは奇妙な状態だった。
同じ身体から生えた触手同士が争って千影の身体をまさぐっている。
いつしか直人が操る触手も、木戸が操る触手も同様に姿を少し変えていた。
先端が亀頭に酷似した形状になり、筒先からぬらついた体液をいっそう滲み出させていた。
「…………んあっ……な……何が…………」
ようやく千影の意識も本格的に戻ってきたようだが、まだ状況を把握しきってはいなかった。
だが、意識が戻ったとわかると、木戸の触手の1本がすかさず捻じ込まれてその口内を塞いだ。
そのままじゅぼじゅぼと出し入れして口内を蹂躙し続けていく。
乳房に巻きついていた触手も、その動きの激しさを増した。
それに呼応するように、直人側も触手の動きを激しくしていく。
何本もの触手が脇腹や股の内側を撫で擦る。
股間に押し当てられた触手は、そのまま下着を突き破らんばかりの勢いでぐいぐいとその先端を押し付けていく。
「ん……んぐっ…………」
身を捩り、顔をそむけて触手から逃れようとするが、がっちり四肢を押さえ込む触手がそれを無駄なあがきにさせていた。
逆に、新たに千影の身体を嬲ろうとする触手が増えるばかりだった。
ビリッ
とうとう千影の大事な部分を護っていた布が、触手の圧力に負けて破れた。
それを成し遂げた触手が千影の体内に侵入していく。
そのおぞましさに千影は身を震わせたが、予想していたような鋭い痛みはほとんどなかった。
昨日勝沼によって一度貫通されたとはいえ、まだまだ固さを残していたはずだったが、触手自体が粘液でぬらついていたことと、意識がはっきりしない間に千影自身も愛液を分泌し始めていたことで、幸か不幸か激しい痛みもなく触手を膣内に受け入れることができたのだった。
こつん、とそう音がしたわけではないが、千影の中に刺さった触手が一番奥に達した。
それで千影の膣の深さを了解したのか、ずるずると一旦触手が引き出されていく。
亀頭の部分が見えるか見えないかというところまで引き出されると、
じゅぽっ
今度は一気に最奥まで突かれて、千影の身体が一瞬こころもち持ち上がる。
ずっ……
また引き抜かれたかと思うと、
じゅぽっ
再び奥深くまで突き刺される。
ずっ、じゅぽっ、ずっ、じゅぽっ……
その繰り返しで、どんどんペースアップしていく。
口の中でも触手は激しく動き、何度か喉奥まで突かれ噎せそうになったが、口内に入り込んだままの触手がそれを許さなかった。
「ようし、出すっ! 出すぞぉっ!」
「う、うあああぁぁ……!」
スライムの身体に浮かんだ木戸と直人の顔が、それぞれ叫び、うめきを上げる。
千影はそれの意味するところを悟り、慌てて逃れようとしたが遅かった。
びゅっ、びゅっ、びゅびゅっ
どくっ……どくっ……
膣内と口内で。そして全身に絡みついた10本を越える触手それぞれの先からも一斉に体液を吹き出し、千影の身体の内と外から汚していった。
粘液でぬらついた触手がようやく口から引き出されたが、千影は何の言葉も発さなかった。
そればかりか、あまりのショックに目が虚ろになっていた。
しかし、直人たちはまだ満足していないのか、そんなことにはお構いなしで再び千影を嬲り始めた。
突き刺さったままだった膣内の物は動きを再開し、木戸はといえば、今度は一回り細い触手で、後ろの蕾を狙おうとしていた。
「……せいぜい、壊さないようにな」
2人が千影を嬲る様子を見ていた勝沼は、そう言い残すと、さっさと監禁部屋に戻った。
防音処理がちゃんとしているのだろう。監禁部屋に移ってしまうと、もう向こう側から気配も感じられなかった。
「……おぼっちゃま。もう少し見ていかないのですか? あのような異形のモノに嬲られる少女の姿などそうそう見られるものではございませんのに」
後を追って壁を抜けた古手川は、少し残念そうに言った。
「いや、そうもいかん。もうすぐ2人目も向こうからやって来ることになっているんでな」
「フォッフォッフォッ……さようでございましたか。いや、さすがはおぼっちゃま。この爺、おぼっちゃまの手際の良さには感服いたします」
ピンポーン
噂をすれば何とやら。ちょうどそのとき、玄関の呼び鈴が鳴らされた。
あまりのタイミングの良さに、自然と唇を邪悪に歪めながら勝沼は小さく呟く。
「いいな、爺。合図をすれば例のように」
「フォッフォッ……おまかせください、おぼっちゃま」
監禁部屋から出て、まっすぐ玄関へと向かう。
「はーい。……誰だい?」
「私よ、お兄様」
扉越しに尋ねると、期待通りの答えが返ってきた。
「咲耶? どうしたんだい、突然?」
とりあえずは驚いた様子を装う。
「千影ちゃんに聞いたのよ。お兄様が私のために何か準備してるって」
「ええっ? そうなのかい? もう少し黙っておいて咲耶を驚かしてやろうと思ってたんだけどなぁ……」
困ったような、照れたような笑みを作りつつ、後ろ手でこっそりと鈴を鳴らした。
「まあ、仕方がないや。とにかく上がっておいで。玄関で立ち話しててもしょうがないし」
そう言って咲耶を誘い上げる。
咲耶が廊下の中ほどに来たところで、
GUOOOOOOOOOO……
壁をすり抜けて古手川が姿を見せる。
「キャアアアアアァァ!」
咲耶は盛大な悲鳴を上げて意識を失ってしまった。
「久しぶりにやったが、やはり爺の顔はインパクトが強いな」
勝沼は古手川と廊下に倒れた咲耶とを交互に見ると、感心したように呟いた。
「フォッフォッフォッ……それは手厳しいですな。おぼっちゃま」
「では、部屋に運ぶとするか」
そう言って勝沼は一旦玄関に戻ると再び扉にしっかりと鍵を掛けた。