(3)マ●チの必殺でんきあんま!
「ところでさ〜、コイツのお仕置きどうする?」
私は、唯ちゃんの水遊びが一段落付いたところで、男の始末について確認する。
(ど〜せ金玉潰しに決まってるけど・・・一応ね。)
「そりゃ〜、やっぱり潰すでしょっ!」 (やっぱりね・・・)
「えっ?潰すって?」
私たちの会話に聞き耳を立てていた桃子さんが、少し理解できない様子で口を挟んできた。
「金玉だよ。」
・・・と、桃子さんの質問に対して、あまりにもストレートに応える唯ちゃん。
「き・ん・た・ま?」
あまりにストレートな唯ちゃんの返事に、思わず聞き返してしまった桃子さん。(まあ、驚くのも無理ないけどね)
だから私がフォローとして説明する。
「そうだよ。だって、金玉が無くなっちゃえば、Hなことも出来なくなるでしょぉ!だ・か・らぁ〜、コイツみたいな”女の子の敵”は去勢するのが一番っ!」
それでも少し不安な桃子さんに、唯ちゃんも私に続けて説明する。
「大丈夫!桃子さんの手は汚させませんから。金玉潰しは私たちの専門分野なんで! まあ、そこらへんで見てて下さいよぉ!ねっ!」
「ん、うん。 そうだよね。だってこの男は悪い奴なんだもんね。」
・・・まあ、これもよくある事なんだよ。
依頼者の居る前で変態男の去勢をする場合、その直前になって依頼者の方が”引いちゃう”こともあるの。
いくら”許せない変態男”で、私たちに”懲らしめ依頼メール”を出したって言っても、去勢はやりすぎ・・・とか、金玉潰れたらショックで死んじゃうんじゃないの?・・・・とか、やっぱり不安みたいね。
でもね、大抵の場合は潰れる瞬間に気絶しちゃうから、麻酔状態でしょ?
私たちだって、鬼じゃないから、人目に付き易い所に寝かしといたり、そうでもなきゃ、救急車くらいは呼んであげるわよ。
それはそれとして、私は男に去勢を宣告する。
「良かったね。憧れの桃子さんが、お前の金玉が潰れる瞬間を見届けてくれるって★」
目を真っ直ぐ見て、微笑みながら宣告してあげたよ。
そしたら・・・
「去勢なんて冗談じゃないっ!放せっ!このぉ!」
男が汚い言葉で私たちに歯向かって来た。(身動きも取れない分際で。おろかな奴。)
そんな男に私はキレそうになったけど、”誰でも去勢なんて言われたら嫌がるよね”と、ここは同情の気持ちを込めて、今回は放っといた。(私としては珍しいことだけど・・・)
でもね、唯ちゃんは許さなかったよぉ!
「煩いわねっ!口の利き方に気をつけなさい!」って、凄い剣幕で怒鳴り付けたかと思ったら・・・・
ゴリュ!ゴリュ!
あ〜あ、剥き出しの玉袋を靴を履いたままの足で踏み躙っちゃったよ。痛そ〜。
「あっ、あっ、あ、あ、あ・・・」
快感とは程遠い、下腹の奥から染み出してくる激痛に、モジモジと身を捩る男。凄〜く痛がってる。
当たり前よねぇ、だってぇ、”ゴリュ!”って摩り潰す音が聞こえたもん。
「これで分かったでしょ? お前は私たちに歯向かえないのぉ! 立場を弁えなさい!もうっ!」
唯ちゃんが、蹲る男の前に仁王立ちになり、弱者を言い聞かせるような強い口調で、男に吐き捨てた。
こんな強いメイドさん初めて見たよ・・・。
・・・と、その時。
「あっ!ねぇえ、唯ちゃん。凄〜くカッコよく決まったところで悪いんだけど・・・靴、男の我慢汁で汚れてるよ。」
「えっ?靴?・・・げぇ!ヤバ〜イ!これお姉ちゃんからの借り物なのに〜!・・・って生地がスエードだから、落ちなそう・・・・。どうしよう。」
思わぬハプニングだね・・・。こりゃ、トドメは私一人かな?
・・・って、本当に”私一人でトドメ”になっちゃったよ・・・。
えっ? 唯ちゃん?
唯ちゃんは、向うの水道がある所で、汚れた靴を洗ってるよ。
なんか、あれ、お姉ちゃんの大切な靴なんだって。だったら、こんなトコに履いて来なきゃいいのにね・・・。
おかげで私だけになっちゃったよ。
ちなみに桃子さんは席を外してる。
ほらっ、一応、ダンスパーティーの主催者だから、そっちの仕事もあるし。
じゃ〜、私もさっさと潰しちゃおっかな〜。私も早く、向うのホールで踊りたいよ。
せっかく、ダンパに来てるのにぃ!
よしっ! 速いとこ金玉潰しちゃお!
・・・と言っても、姉貴と同じで”電気按摩”しか知らない娘だから、踏み潰すしか能がないのよねぇ・・・。
まっ、いいか!
私は白いニーソックスを腿まであげて、トントンっと靴の爪先で床を踏み鳴らす。
そして、ゆっくりと男のもとへ歩いて行く。
今の私には男の命乞いさえ、行進曲に聞こえるよ。
「くっ、くっ、来るなぁ!マルチ来るなぁ!お、お願いだから金玉だけは潰さないでくれ〜! マルチ〜!お願いだから!だから、来るなってぇ!」
ほらっ、見てみな! 命乞いしてる男、身体全身で怯えて震えてるでしょ。
私に金玉を潰されんのが怖いのね。
でもさ〜、コイツ、散々悪いことしてきたんだから、今更、手加減なんてしないけどぉ!
ところで、”マルチ”って言うのは、このキャラクターの名前かな?
”マルちゃん”じゃなかったんだ・・・。(勉強不足・・・)
だから、キャラに成りきって去勢宣告してやったよっ!
「ほらっ!覚悟しなさい!これから、”マルチ”が得意の電気按摩でグチャグチャに潰してあげる★」・・・ってね!
どう? ゲームオタクのマゾなら一度は言われてみたいでしょ?
まあ、本物のマルチは電気按摩なんて得意じゃないと思うけど・・・。
精神的に責めるのも私のやり方だからね。
(次のページへ続く)