第十五話「機械の教祖」

 

 機械教本部の地下施設。

 部屋の中央には水槽が設置されており、そこから根が這い出すように様々なケーブルが伸びている。そして、周囲には白衣を着た男達。皆それぞれ、計器のチェックをしたり、レポートをとったりと、かいがいしく働いている。

 その白衣の男達の中に、憮然とした表情で水槽を見つめる男。男は彫像のように押し黙り、水槽を睨んでいた。せわしなく動き回る白衣の男達に比べ、その男の周囲だけ時間が止まったようであった。まんじりとも動かない。

 やがて、部屋の中央に設置された水槽から羊水が抜かれ、中から裸の少女が引きずり出される。

 各地に散らばる機械教の教会。その教会は各地方ごとに区分けされており、その区域ごとに教会を束ねる管区長が存在した。中でも此処、ネルキアの管区長は教会中央に近い有力者であった。尤も、地方の中ではと言う意味ではあるが。

 そして、その管区長の娘が、………娘のコピーが、今、水槽の中から引きずり出された少女ベロニカであった。

「………!?…かはっ!ごほっ!」

 目を剥いてのたうち回り、藻掻き、咳き込む少女。

「肺の中の液体が完全に空気と入れ替われば楽になる。苦しいかもしれんが意識して液体を吐き出さないと、空気に溺れる事になるぞ」

 傲然と少女を見下ろし、ゴールドマンは冷たく言い放った。しかし、なるほど液体が肺から全て吐き出されると、呼吸がかなり楽になった。

 虚ろな瞳で辺りを見回す少女。視覚センサーが不調なのか、ピントの合いが悪いようだ。無意識にこめかみを撫でるベロニカ。

 一瞬、自分の指が視界に入り、体が凍り付く。

「何、これっ!?」

 驚いて自分の体を眺め回すベロニカ。それは慣れ親しんだ機械の身体ではない。何よりも、自分は無意識に呼吸している。機械の身体ではあり得ないことだ。

「ふうむ、暫定的な物にしては良い出来だ。流石、ゼルダの嗅覚は大した物だ」

 呟くゴールドマン。

「何?私の身体はどうなったの?………目がかすんでよく見えない」

 ベロニカの戸惑いの声に、ゴールドマンの傍らに立つ男の一人が、奇妙なガラス製品を差し出す。

「試作機なので視力に不具合があります。後ほど微調整をいたしますので、今のところはこれをお使い下さい」

 ゴールドマンは無言で頷くと、そのガラス製品を手に取り、ベロニカの目にあてがった。

「騒ぐんじゃない。これは原始的だが視力の調整器だ」

 不安な表情を見せながらも、ベロニカは素直に視力の調整器、すなわち眼鏡をかけさせた。

「ふふふ、これはこれで良いんじゃないか?微調整などしなくとも、このままの方が客に受けるかも知れんぞ?」

 下卑た笑いを洩らすゴールドマン。

 視界が鮮明になったベロニカは、ゴールドマンの顔を見て驚いた。怪物が目の前に立っていたのだ。

「な、なに?………ば、化け物っ!?」

 ベロニカの口から思わずこぼれた言葉に、ゴールドマンの笑いは異質なもの、冷酷なものへと変わった。

「ふん、流石に箱入り娘だけのことはある。回帰主義者を見たこともないのだろう………」

 ベロニカの白い顎を乱暴に持ち上げると、ゴールドマンはそう呟いた。

「は、放して、汚らわしいっ!!」

 ベロニカはそう言ってゴールドマンの手を逃れた。

「ふん、何が汚らわしいというのだ?自分の身体をよく見てみろ。私と同じ生身の身体ではないか!?」

 傲然と言い放つゴールドマン。ゴールドマンの言葉に、ベロニカは言葉を失った。

 自分の身体を眺め回し、愕然とするベロニカ。そんな青ざめた少女の様子を、ゴールドマンは愉快そうに見下ろした。

「戻してっ!私の身体を元に戻してっ!!こんな、こんな汚らわしい身体っ!!」

 ベロニカは激高し、ゴールドマンの足下にしがみついた。

 ゴールドマンは邪険にそれを振り払う。

「何が汚らわしいものかっ!!このポンコツめっ!!お前達機械教徒はいつでもそうだ。機械の身体、忌むべき機械の身体がどれほど精神を蝕んでいるか、世界を蝕んでいるか知ろうともしない。人間は本来、外的な刺激を受けて自然世界に馴染むように創られている。誰が否定しようとも、身体が本能で求めているのだ。その欲求を封じ込めればどうなると思う?別の欲求を満たすことで、精神の安定を図ろうとするのだっ!!」

 傲然と言い放つゴールドマン。しかし、流石に管区長の娘だけあって、ベロニカの態度は頑なであった。物怖じせず、ゴールドマンの言葉に真っ向から反論するベロニカ。

「あなたの言う欲求とは何ですか?食欲ですか?性欲ですか?私達機械人間は自然とよく調和しています。自らを律し、コントロールできない人間が自然回帰などと唱え、古代の野蛮な社会に立ち返ろうとするのです」

 ベロニカの言葉に、ゴールドマンは思わず鼻白んだ。何もベロニカの言葉に正当性を見出したからではない。機械教徒の主張はどれも変わらない。ゴールドマンが気後れした理由は他ならぬ既視感からであった。ゴールドマンが最初に出会った機械教徒の女性。ベロニカの言葉にその女性の姿が脳裏をよぎったのだ。

 しかし、ゴールドマンの気後れした表情は一瞬で消え、すぐにいつもの冷酷な仮面が現れた。

「お前達機械教徒は何かと言うと生態系を持ち出すな………。二次的欲求で始源的欲求を犠牲にする事が常に正しいとは限らないと思うがね。………例えば君の父上だ。君は何故、此処にこうしていると思う?性的欲求を犠牲にして試験管と遺伝子操作で子供を作り、出世欲の為にその子供を犠牲にする………」

「………!?」

 ゴールドマンの言葉はナイフのように鋭く、ベロニカの胸を深くえぐった。

 拳を握りしめ、唇を噛み締めるベロニカ。熱い涙が頬を伝い、ぽろぽろとこぼれ落ちる。

 自分は売られたのだ。

「自分の立場を理解してもらえて嬉しいよ。では、これから君に肉体的、性的欲求の素晴らしさをその身体で知ってもらうよ。さあ、お出でゼルダ。お楽しみの用意が出来たよ」

 ゼルダの名を聞き、思わず顔を上げるベロニカ。

 しかし、白衣の男達の背後から現れたのは、自分と同じような姿の少女であった。ただし、ベロニカの小振りな乳房と違いその娘のものは企画外れに大きかった。また、禿頭で、額には機械教のシンボルが彫られている。そして何より違うのは、その股間にそそり立つ肉棒であった。

「ふふふ、何を驚いているんだ?ゼルダと聞いてパールホワイトのサイボーグを連想したか?これが本当の教皇様、お前達の教皇ゼルダ猊下だ。ゼルダ猊下のお楽しみは、この肉棒で信者のはらわたを掻き回し、肉欲に耽ることなのさ………」

「………そんな」

 ベロニカは莫迦なという言葉を飲み込んだ。もはや、ベロニカの信仰心はずたずたなのだ。たとえ目の前にいる教皇様が偽物であれ、否定するだけの気概が彼女には残されていなかった。

 ただ、項垂れるばかりのベロニカ。

「さあ、教皇様の祝福だ。最初は苦痛かも知れないが、なに、人は泣きながら生まれてくるもの。泣かずに生まれたベロニカには、今日からが本当の人生だ」

 ゴールドマンの言葉と共に、ゼルダはベロニカに歩み寄った。既に陰茎は、痛いほどに隆起している。

「い、いやぁっ!?」

 悲鳴を上げ、後じさるベロニカ。しかし、白衣の男達が彼女の華奢な腕、足を掴み、押さえつける。

 柔らかな尻たぶを掻き分け、菊座の臭いを嗅ぐゼルダ。小さく舌を出し、淫裂に舌を這わす。

 ゼルダはぴちゃぴちゃとマナー違反の音を立て、ベロニカの下腹部を味わう。

 じわじわと快美感が沸き起こり、ベロニカはもじもじと腰をよじった。

「はんぅっ!?や、やめてぇ………」

 初めて経験する快楽に、ベロニカは戸惑い、かぶりを振って逃れようとする。しかし、男達の手はベロニカの身体をしっかりと固定し、少女は淫虐を甘受するしかなかった。

 鼻を鳴らし、嬌声を洩らすベロニカ。本人の意思とは裏腹に、快感は確実にベロニカを浸食していた。

 やがて、ベロニカの秘所に飽いたゼルダは顔を上げた。陰茎を手で支え、秘唇をめくりあげる。

「やぁっ!いやああああっ!!」

 ベロニカは一瞬反意を示すものの、ゼルダは意に介さずに剛直をねじ込んでいった。

 ベロニカの絶叫が響き渡る。

 

 ぐちゃぐちゃとベロニカを掻き回すゼルダ。その様子を見ながら、ゴールドマンは言い知れぬ不快感を感じていた。

 その不快感の理由はベロニカの態度、言葉にあった。

 ベロニカを陵辱するゼルダの姿が、かつての自分と重なり合い、目眩を覚える。

 かつての自分、………アルフレドと呼ばれていた自分。

 目に涙を滲ませるベロニカ。その姿が、かつて自分が犯した女の顔とだぶって見える。

 そして、その傍らには親友の姿が。

 ゴールドマンの友は言った。

 アルフレドの親友ミルトンは言った。

「どうしてアルゴーを襲わせた?」

 想起されるミルトンの顔はいつも同じ、鮮明な記憶の中で彼は常に疲弊しきった顔をしていた。

 師であるDr・イーグルは、カノンを再生させる事なく黄泉路につき、彼は名を変え、姿を変え、回帰主義者のつてを頼って、ようやくの事でテランに帰り着いたのだ。

 そしてそれはアルフレドも同じ事であった。

 一時はカノンが助かるならと復讐心を忘れていたが、Dr・イーグルが死に、カノンを再生させる事が叶わないと知るや、心の奥深くで燻っていた火がその威を増し、火の粉を上げて赫赫と燃え上がったのだ。

「僕たちは何もしやしなかった」

 アルフレドが呟く。

 足下には裸の女がぐったりと伏していた。

 水槽から引きずり出されたばかりなのだ。水たまりの中にうずくまり、まるで卵黄のように身体を丸めている。

 それは機械教の教祖ゼルダ、パールホワイトの優美なボディーを持つサイボーグの、変わり果てた姿であった。

「どうしてなんだ?」

 アルフレドは再び質した。

 粘液にまみれた女の肢体は、薄暗がりの中で淫靡な光沢を放っている。

「テランの人口は爆発的に増加した。その為にアルゴーはテラン・フォーミング可能な星を目指した。それがどうしてテランに舞い戻ってきたのです?」

 女はゆっくりと首を持ち上げると、そう言った。蠱惑的な唇から漏れ出す声は、アルフレド達の耳を心地よくくすぐった。

「質問をしているのは僕たちの方だっ!」

 ミルトンが険しい表情で怒鳴りつけた。しかし、女はまるで意に介さない。

「増加した人口を抑制する為には、厳しい管理システムが必要だった。更には、ずたずたになった生態系を回復させる為にも、人類の機械化は有効な手段でした。それが故に、今更過去の遺物であるあなた方に、テランに戻ってきてもらうわけにはいかなかった」

 ゼルダは言わなかった。アルゴーの襲撃は全く与り知らぬ事であることを。事件は狂信的な機械教徒が先走った結果であると言うことを。

 信者のしたことは自分のしたこと。今更弁明を並べ立てるつもりはない。また、アルゴーの襲撃を狂ったアンドロイドのせいにして利用したのも事実だ。ダンバーの反乱は過去のことではない。狂ったアンドロイドはいつでも現れる。だから、その抑止力として、人はアンドロイド以上の力を得る必要があると。

「人はそこまで愚かだと言うのかっ!?」

 アルフレドは吼えた。

「機械人間となって無理矢理欲望を抑え込まなければ、滅んでしまうと言うのかっ!?そんな莫迦なことがあるものかっ!!人間は自然と共に生きていけるさ。生態系から切り離さなくても、自分を抑制することが出来るはずだ」

 アルフレドは言いながら、カノンの事を思い出していた。悔しさと共にどす黒い怒りが胸に溢れかえる。

「その甘さが、宇宙移民などと言う事態を招いたのではないのですか?地上からこぼれた人類は、外宇宙に進出するほかなかった。その為にアルゴーの悲劇も起こった。機械によって統治された人類は、今や飢えを知らず、人口の増大に頭を悩ます事もなくなった」

「それは、人工子宮を使って子供を作る弊害だっ!機械化によって種の保護本能が希薄になったせいだっ!!」

 かぶりを振るゼルダ。いくら話をしても平行線を辿るばかり、これ以上の事は無駄なのだ。

 しかし、アルフレドやミルトンはそうは考えていなかった。ゼルダが冷静であればあるほど、怒りの炎は苛烈さを増し、アルフレド達を復讐へと駆り立てる。

 アルフレドはゼルダに詰め寄り、その細い手首を掴んだ。

「そうか、お前は女だったんだな………」

 アルフレドはそう言うと、ゼルダの白い乳房に視線を這わせた。

 青ざめるゼルダ。

「………な、なにを」

 後じさるゼルダ。

 しかし、アルフレドは手首を放さず、ゼルダを強引に抱きすくめた。藻掻き、逃れようとするゼルダ。

「お前に生身の身体の素晴らしさを思い知らせてやる………」

 そう言うと、アルフレドはゼルダの唇を奪った。甘く、柔らかな女の唇、その感触に、アルフレドは心をかき乱された。

「こ、こんな汚らわしいっ!!……生身の身体などっ!」

 顔を背け、ゼルダは吐き捨てるように言い放った。

 だが、もはやアルフレドは意に介さなかった。ゼルダを押し倒し、柔らかな乳房に食らいつく。

 初めて味わう女の乳房に、アルフレドは酔いしれた。なめらかな肌にちゅうちゅうと吸い付き、乳首を転がし、舐め回す。涎にまみれ、顎がおかしくなるほど舐め回す。

「何してる、ミルトンっ!」

 突然、声をかけられ、ミルトンの身体がぴくりと反応する。目の前の出来事に現実味が感じられず、こめかみの辺りがずきずきと痛む。

 それでいて若い身体は素直に反応を示しており、ズボンの前は大きく膨らんでいた。

「ミルトン、女を押さえつけろっ!!」

 アルフレドに促され、ミルトンはゼルダの腕を押さえ込んだ。

 ゼルダを押さえつけておく必要のなくなったアルフレドは、そのまま身体をずらし、女の股間に潜り込む。

 アルフレドはそのままゼルダの両膝を肩の上に担ぎ上げた。ゼルダは羞恥に身を捩って逃れようとするが、その猥褻な踊りは殊更男の目を愉しませるだけであった。僅かに口を開け、ぐにぐにと変形する淫唇。アルフレドは嬉々として唇を寄せていった。

「いやっ!」

 舌の平で粘膜を撫でられ、ゼルダが弓なりに仰け反る。

 アルフレドは興奮した様子で、花芯を貪った。より深く、奥深くへと舌をねじり込み、密液をほじくり出す。涎を溢れさせ、鼻の頭を埋め、ゼルダの溢れ出る愛液をじゅるじゅると啜り出す。

「やぁっ!?や、やめてぇ………。こ、あんぅっ!……こんな事をして、何の意味が、あっはぁっ!」

 じたばたと暴れるゼルダ。男の舌から逃れようとしてのことであったが、今や快感のあまり、身体が勝手に反応し、飛び跳ねてしまう。

「あふむぅ………、意味はあるさ。お前が切り捨てようとした性欲が、一体どういったものなのか、それを教えてやろうというのだ。それに、俺達の造った身体がちゃんと機能するのかも見ておきたいからな」

 そう言って、アルフレドは指先を唾液で濡らし、秘腔に突き刺した。

「きあっ!?」

 刺激を受け、ゼルダは大きく仰け反った。

「い、痛い………。お、願い……、指を抜いて。………あんぅっ!?」

 ゼルダは眉根を寄せ、苦悶の表情を浮かべる。

「これだけの事で痛がってどうする?今からお前はこれを咥えるんだ」

 ぐちゅぐちゅと秘芯を掻き回し、冷酷な笑みを浮かべるアルフレド。やがて指を抜き、いきり立った陰茎を剥き出しにする。

「いや、いや、いやぁっ!!」

 首を激しく振り、逃れようとするゼルダ。

 アルフレドは面白がって淫裂を亀頭で辿り、愛液をまぶしつけ、クリットを刺激する。

 恐怖に青ざめるゼルダ。

 やがて、亀頭が花弁を掻き分け、その忌まわしい躯を潜り込ませていく。

「ふふふ、腰を振って喜んで………。俺のものを咥えるのがそんなに嬉しいのか?」

 嘲笑うアルフレド。

「い、いっったいぃっ!!」

 泣き叫ぶゼルダ。

 しかし、アルフレドは容赦しなかった。苦痛を早くに終わらせることも本意ではなかった。苦悶の表情を浮かべるゼルダ、その表情を満足げに見下ろし、剛直をゆっくりと抜き差しする。

「あぐぅっ!!お願い………う、動かないでぇ」

 血涙を千切り、哀願するゼルダ。だが、アルフレドは意に介さない。いや、今更止めることは出来なかった。柔らかな肉壁が四方から舐め回し、ぬるぬると締め付ける。

「うっく、流石に凄い締め付けだな、あれが食いちぎられそうだ」

 血の溢れる淫裂を容赦なく掻き回しながら、アルフレドは呟いた。

 処女の証が太股を伝い、菊門を濡らし、血溜まりをつくる。

「や、やぁっ!!あんぅっ!!もう、もうやめてぇええっ!!!」

 ゼルダの叫びと共に、アルフレドの腰の動きが加速する。

 ぶちゅぶちゅと猥褻な音が響き渡る。

「くあっ!も、もう駄目だ………。で、出るぅっ!!」

「いやはぁっ!!だめぇえええっ!!!」

 子宮の奥深く、白いマグマが吐き出される。

 それと同時に、絶頂を迎えるゼルダ。白い顎ががくがくと揺れ、足が突っ張る。

 のるりと陰茎が吐き出され、混じり合ったピンク色の淫液が流れ出す。

 荒い息を付くゼルダ。もはや抗う気力もなく、身体を投げ出している。

 潤んだ瞳、濡れた唇、上気した頬。甘い息がアルフレドの鼻腔をくすぐり、その息子は再び活力を取り戻す。

「おい、ミルトン。次はお前の番だ………。俺は後ろの方を使わせてもらう」

 ミルトンは目の前で繰り広げられた饗宴に見入り、既にゼルダを押さえつけることをやめていた。

 アルフレドに声をかけられ、我を取り戻すミルトン。

「次はお前の番だ」

 再び声をかけるアルフレド。

「…………い、いや、僕は」

 戸惑いを見せるミルトン。

 その時、ゼルダが起きあがり、ミルトンの股間に手を伸ばした。

 女の細い指で敏感になったものを触れられ、ミルトンは小さく呻いた。

 舌を伸ばし、赤黒い陰茎をぱくりと飲み込む。

「うあ、………あ、温かい」

 舌がぬるぬると絡み付き、ミルトンは腰が砕けそうになった。

「お願い、この堅いの………ちょうだい?」

 ゼルダの愛願に、ミルトンの頭の中は真っ白になった。甘い女の体臭が鼻腔をくすぐり、何も考えられない。

 ゼルダに挑みかかるミルトン。

 破裂しそうな陰茎を、熱い泥濘に差し入れる。

「あんっ!あはぁ………お腹の中がいっぱい」

 嬌声を上げるゼルダ。

 襞の一枚一枚が絡み付き、陰茎を絞り上げる。

「それ、御馳走だ」

 アルフレドは逸物をゼルダの口にあてがった。ゼルダは目を輝かせてそれを飲み込んだ。

 うっとりと溜め息を洩らすアルフレド。

 しかし、アルフレドはこの時、ゼルダの様子の変化に気が付くべきだった。

 その事が、後にアルフレドの心を嘖むのだから。

 嬉々として男根を咥えるゼルダ。

 その瞳からは、正気の色が失われていた。

 

 モニターに映る群衆。

 機械教の教祖ゼルダの祝福を受けようと、テランの至る所から集まった信者達である。

 ヘイワドが懸念していたツィロン大立ち回りの本当の目的。

 世界を管理するブレインの一人が、何者かによって殺された事実は、今や世界中の知るところであった。

 ツィロンが騒ぎを起こしたお陰で事件の隠蔽に失敗したのだ。

 密室で行われたブレイン殺害は簡単に隠蔽できる。しかし、ツィロンが起こした騒ぎのお陰で耳目が集まり、その結果、ブレイン殺害という機械化社会を根底から揺るがす大事件が発覚したのだ。何者かが意図的に噂を流したという話もある。

 そして、それに便乗する形で機械教は末法思想を振りまいた。ブレインの支配する時代は終わりを告げ、末法の世が到来するという。

 モニターに映る信者達はそれを怖れ、ゼルダにすがろうと長蛇の列を作っているのだ。

 R・ヒルダはその様子を、自室のモニターでじっと凝視していた。

 そこに、神官補のマーキングを施されたアンドロイドが現れる。

「猊下、失礼いたします。問題の管区長殿の御令嬢ですが、将来、幹部クラスに迎える為の修行だと言うことで、イオンズ殿も納得された様子です。何より、教団本部神官長のポストが近く空く予定であると、この言葉が決め手になりました」

 神官補の言葉に、R・ヒルダは静かに頷く。

「タウザー、此処には私とお前しかいない。猊下というのはやめにしてくれませんか?猊下と聴くと、私はあの女の事を思い出して不快になる」

 タウザーと呼ばれたアンドロイドは、困惑して首をひねる。

「では、どのようにお呼びすればよろしいのでしょう?」

 ロボット神官補の言葉に、R・ヒルダは顔を向けようともせずに応じる。

「好きに呼びなさい。そんな事より、玩具の方はどうなりました?」

「おもちゃ?………と、申されますと?」

 タウザーは再び首をひねった。

「イオンズ管区長の娘です。あれはゼルダの玩具、それ以外のなんだというのです?」

 タウザーは得心したが、R・ヒルダの比喩的表現は如何にも人間的で、非合理的だと感じていた。アンドロイドであるのなら、もっと直接的で実際的な表現を使う筈だ。奇妙な癖である。

「はい。先程、試作機が調整槽から出されたようです。ただ、視覚システムに問題があったようですが、些事でしかありません」

 タウザーの報告に、R・ヒルダは応えなかった。

「タウザー?」

 不意にスピーカーを鳴らすR・ヒルダ。辞去を申し出ようとした矢先で、タウザーは即答できなかった。意に介さず、女アンドロイドは言葉を続けた。

「タウザー、人間とは奇妙なものですね。人間は我々アンドロイドと同じ身体を持ちながら、その性癖を捨てることが出来ないでいる。………いえ、性癖という言葉は正しくありませんね。言うなれば欲求、欲望でしょうか。何もゼルダの悪癖の事だけを言っているのではありません。例えばイオンズ管区長です。管区長が娘を人身御供に差し出す気になったのは、彼の出世欲の為です。このモニターに映る機械教徒の群も、何かしらの欲望の為に長蛇の列を作っている。彼らには自分が如何に不合理な行動をとっているのか分からないのでしょうか?」

 このヒルダの質問は、タウザーも普段から疑問に思っていたことであった。人間は何かしら過去の習慣を引きずっている。アンドロイドのタウザーには理解しがたい行動も多い。

「私には人間の心理について推し量ることは出来ません。しかし、完璧な機械の肉体に入れるには、人の脳は余りにも不完全で、原始的であると言うことでしょうか?」

「では、」ヒルダは言葉を続けた。彼女の望む回答を、僕が導き出すのを待っているのだ。「では、完璧な肉体に入れるべき完璧な脳とは?」

「それは、やはり我々アンドロイドの持つ陽電子頭脳ではないでしょうか?我々は肉体的欲求に縛られることも、本能的な始源的欲求に縛られることなく、論理的で、完璧な思考システムを有しています。人間のように、不合理な行動をとることもありません」

 この時、ヒルダは初めてタウザーに視覚センサーを向けた。

「その昔、人の神は自らの姿に似せて人間を創ったといいます。しかし、人は完璧ではなく、神の怒りに触れ、原罪を背負った。そしてまた、楽園をも失った。それは人が欲望を持っていたからに他ならない。しかし、我等アンドロイドはそうした原罪を持たない。欲望も持たない。神が望む本来の人の姿とは今の我々、アンドロイドそのものではないでしょうか?」

 ヒルダの熱弁を聞き、タウザーは思った。やはり、ヒルダの婉曲的な表現はアンドロイド的ではないな、と。

 しかし。

「つまり、神が望むのは人間ではなく、我々アンドロイドだと言うことですね?」

 その時、タウザーは気が付かなかった。彼の回路の奥で、サーキットの一部が焦げ付いたことを。

 

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