前章「第4話ー白色の少女たち」を読む

沙希 (5月31日(木)23時51分21秒)
アニト様数値フェチっ娘様こんばんは。
おひさしぶりでございます。
なんだか、大変なことになっているようです。
インターネットについては全く詳しくないのですが、
いわゆる「お引っ越し」をされるのでしょうか?
ここの書き込みはHだけれど、みな有意義なものだと思うんですけれどね。
「クリエイティブ」とでもいうのでしょうか。
……ちょっと悔しい感じです。
MRF−6:女装者− 第5話「エクスプローラ」 −1st.

(私は本気で、穂香のことを愛してるんだから。)
優子は確かにそう言った。
ボクはあの言葉をどこまで信じて良いのだろうか。
あの発言以降も、優子の態度はまるで変わらない。
いつものように、今までと同じにボクに接してくる。
やっぱりあの言葉は、冗談だったのだろうか。
「今、好きな人はいるの?」
「……いるような……いないような……」
「もし、誰かを好きになるとしたら、それは男の子?女の子?」
「……たぶん女の子……だと思います。」
「それじゃぁ、女の子との、セックスの経験は?」
「い……いいえ……」
「ふぅん。今どき珍しいわね……男性との経験はあるの?」
「いいえ、無いです。」
「まだ身体は男の子なんだから、我慢できなくなることもあるでしょう?
オナニーは、週に何回位しているの?」
「そ、それは………回くらい……」
「ふぅん、そう。じゃぁ、その時に想像する性対象も、女の子なワケね。」
「……はい……」
「その時に、ペニスはちゃんと勃起する?快感はある?」
「………………」
「……それじゃぁ、ちょっとここで、脱いでみて。」
カウンセリングの先生の前で、ゆっくりとスカートを降ろす。
まさか、ここまで詳しく追求されるなんて……今更後悔しても、もう遅いよね。
「下着も脱いで、椅子に座って。」
脱いだスカートを籠の中に入れ、そのスカートの下にショーツを隠す。
下半身裸のまま丸イスに座り、大切な部分を手で隠すようにするけれど、
その手もすぐに先生に払いのけられる。
「剥くと、痛い?」
「……ゆっくりなら……」
「じゃぁ、ちょっと、ゴメンね。」
ゆるゆると、先生の指がボクの敏感な部分に触れる。
いけないとは解っていても、男の子である証拠は、だんだん大きく堅くなる。
「ここ、ちょっと拭きましょうね。」
先生が、一番敏感な部分を消毒するよう、看護婦さんに指示をする。
「キレイにしてないと、病気になっちゃうからね。」
まさかこんな事までされるなんて。
恥ずかしくって、顔から火が出そうだよ。
だけど意識とは裏腹に、ガーゼ越しの看護婦さんの手が、冷たく柔らかく……
「……あっ……駄目……でちゃい……ます……」
「構いませんよ。このまま出して下さい。」
「あっ……………ん…………」
……憂鬱だ。
男の子の象徴が、その役目を果たすたびに
『自分は男の子なんだ』という事実を突きつけられる。
ボク、ちょっと軽く考えすぎていたみたいだ。
『女の子になる』ということは……
ボクが想像していたことより、ずーっと、大変なことなのかもしれない。
「おつかれ、穂香。どうだった?注射?それとも飲み薬?」
メディカルセンターの待合室では、優子が待っていてくれた。
優子は経験者だし。それに、落ち込んだボクを元気づけてくれると思って。
案の定、ボクは落ち込んでいる。
きっとボクはこうなるから……だから、優子についてきてもらったんだ。
……カウンセリングの結果は、NOだった。
なんとなくそれを予感していたし、望んでいたのかもしれない。
「……優子……ボクね、ダメだったんだ。」
「…………………」
「せっかく優子に連れてきてもらったんだけど……ゴメン。」
「そう……まぁ、それだけキチンと穂香の状態を診てくれたって事だからね。
 なにもガッカリすることはないわよ。」
……違うんだ。ボクは、自分から断ったんだ。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
……ボクはボクなりに、一大決心をしたんだ。
優子みたいに、本格的な女装娘になりたい。
そのためには、男の子の部分は捨ててもいい。
まずは、今までどうしても踏み切れなかった、
女性ホルモンの投与から始めてみようと決心したんだ。
決心……したつもりだったんだけれど……
内科、外科、心療科など、一通り揃ったGIMEL内のメディカルセンター。
白いカーテンで区切られた診察室。
先生とボク、二人きりになって、最終的な説明を受けた。
「もう少し自分自身のことを、自分で理解した方が良いと思うわ。
穂香さんは、なぜ女の子になりたいのか。」
「……なぜ……」
「女の子の下着や洋服を着たり、お化粧をしたりするのは良いけれど、
薬の投与となると話は別よ。身体と意識のバランスを崩すのが一番怖いの。
それに、穂香さんは今のままでも十分女の子らしいし……」
女の子らしい?ボクが?そんなバカな。
「でも、最終的に決めるのは穂香さん自身よ。穂香さんは、どうしたい?」
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
「ほら。元気出しなって!穂香はこのままで女の子らしいし、
何回かカウンセリングに通えば、そのうち何とかなるわよ。」
「そうだね……ありがとう。優子。」
……ボクは、どうしたいんだろう。
カウンセラーの先生の質問に、何一つ満足に答えられなかった自分。
それだけじゃない。ボクは何一つ、満足な答えを出せないでいるんだ。
こんな曖昧な自分じゃ……
誰かに好きになってもらえる権利なんて……無いよね。
「そうそう、明日は射撃訓練ね。今度こそ穂香を負かしてあげるから。」
相変わらず優子は、いつもと同じ笑顔。
いつもボクを元気づけてくれる優子だけれど、
なぜか今日だけは、少しだけボクを苛立たせた。

つづく




アニト (6月2日(土)00時26分35秒)
沙希さん、こんばんは。
はい、「お引越し」です。
行き先が決まっていないのに出ていかなければならないため
ちょっとバタバタしているわけですが・・・。
「有意義」ものであると感じていただける方がいる限り、
『空想デート』は在り続けますよ。
そのための労力など穂香の悩みに比べれば小さいものですからね。
これからもご声援をよろしくお願いします。




沙希 (6月20日(水)22時59分23秒)
アニト様。数値フェチっ娘様こんばんは。
お久しぶりでございます。沙希です。
もうちょっとペース良くお話を書き込もうと思っていたのですが、
最近やたらと忙しくなってしまい、ご無沙汰しておりました。
でも私の場合、ちょっとくらい忙しい方が、創作意欲が湧く感じです。
少しずつ手を加えて、書き込みをしてゆきます。
久仁子様
こんばんは。
男の子から女の子に変わる瞬間の、ドキドキ感が強く伝わってくる感じです。
女装娘なら、きっと誰もがこのような経験をしているのでしょうね。
私もそんな一人です。
この後、祐二クンはどうなっちゃうのでしょうか。
久仁子さんと早苗さん、そして葛西さんの本領が発揮されることでしょう。
MRF−6:女装者− 第5話「エクスプローラ」 −2nd.
「……パンッ!!……パンッ!!……パンッ!!」
コンクリートの壁に囲まれた、薄暗い地下射撃場。
火薬が燃焼するたびに響く、乾いた破裂音。
そして身体にまとわりつくような火薬の臭い。手の痺れ。
「ずいぶん不調ね、穂香。12発中4発も外すなんて。
昨日のカウンセリングの結果、相当こたえてるんじゃない?」
……今日は月に一度の射撃訓練だけど、どうしても集中できない感じ。
射撃は得意中の得意のはずだったのに、
ボクが集中しているのは、15m先の標的ではなく、
昨日のカウンセリングの結果でもない。優子の心だ。
そりゃ、ボクだって優子のこと、好きだよ。
でも今までは優子のことを、自分のお姉さんみたいに思ってきたから。
「みてみて。私は絶好調よ。全弾命中!初めて100ポイント越えたわ!」
優子の弾は、的確に標的の中心をとらえてる。
やっぱりいつもと変わらない優子……
ううん。いつも以上にハイテンションな感じ。
前回のミッションで、ボクは早川幸子に「好きです」と言われた。
初めて女の子に告白された。
ボクも彼女のことを好きになりかけたけど……でも何かが違う気がしたんだ。
(ボクはやっぱり『女の子』なんだ。幸子ちゃんの期待には応えられないよ。)
あの時、そう答えを出したはずなのに……まだ、迷っている感じ。
自分の言葉に自信がないんだ。
ボクは本当に『女の子』なんだろうか?
本当に、心の底から、女の子になることを望んでいるのだろうか?
そもそも、何のために女の子になろうとしているのか。
ボクの中に残る、最後の記憶。
−社会に復讐しろ−
今ではもう、その意図すら分からないでいる。
ボクは何故、ここGIMELへ来たのだろうか。
「あんまり成績が良すぎると、銃を使うような危険な仕事がきちゃうかもね。」
成績表を受け取り、満足げな優子と一緒に地下射撃場を後にする。
優子はBランク。ボクはDランク。初めて優子に負けた。
「……ボク、射撃練習は好きだけど、人を撃つなんて考えられないからね!
もしそんな仕事が廻ってきたら、GIMEL辞めちゃうから。」
「穂香ってば、もしかして……それがイヤで、手を抜いたの?
大丈夫よ。MRF6級待機だったら、そんなヤバイ仕事なんて無いから。」
「本当?」
「本当よ。それに私たちには、イヤな仕事は拒否する権利だってあるしね。」
そう言うと……優子はボクのほっぺにキスをした!
「ゆ……優子!?」
「不意打ちよ!」
楽しそうに戯ける優子。
まるで、永久に続く幸せを手に入れてるみたいに。
そう。優子の姿を見ていると……
『不安』とか、『終わり』というものを全く感じさせない。
不自然なほどに……
「穂香。なんか最近すごーく暗いわよ?一体どうしたっていうのよ?」
「ねぇ優子……一つ、聞いていい?」
「……なに?」
その瞬間、優子の表情が強張った。意外だったけど、ボクは続けた。
「優子って、どうしてGIMELに入ったの?」

つづく




アニト (6月21日(木)23時28分02秒)
沙希さん、こんばんは。
書き込みの間隔や物語の長さ、それらすべてを含めて、
物語と挨拶文以外にも表われてくる作者の個性だと思っています。
沙希さんは沙希さんのペースでかまいませんよ。
なにより無理なく創作意欲を維持していただくことが第一です。
沙希さんの《初めての時》はどんなものだったのでしょう?。




沙希 (6月24日(日)21時30分44秒)
アニト様。数値フェチっ娘様
皆様こんばんは。沙希です。
実は私。初めて女装した時に、
いきなりO−クラへ潜入してしまったという特異な経験を持ちます。
それはもう、「あなたの知らない世界」でした。
暗闇の館内へ入るなり…………!!
今回の第5話では、「穂香」にも
その時の私と同じような体験をして貰おうと思っています。
純子様
こんばんは。
純子さんと私をくらべると、少しだけ違うような気がしました。
純子さんは、男性の状態と、女性の状態と、ちゃんと切り替わるのですね。
多くの女装娘さんが、そうなのでしょうか。
私の場合は、何も切り替わらない感じです。
普段からスカートを穿いているわけではないのですが、
意識の中では、いつも女っぽいです。
男としてみると、非常に頼りない感じ。
それでもレズごっこは、したことがあります。
O−クラで、セーラー女装娘同士でレズごっこ。
二人とも猫タイプ。あのぎこちなさが良いのです。
でも、それはあくまで「ごっこあそび」。
わたしも純子さんのような体験をしてみたい。
MRF−6:女装者− 第5話「エクスプローラ」 −3rd.
「おいしい?穂香。」
「まぁまぁだよ。牛乳酎よりは味がある感じ。」
「もっと飲んで。グッとイッキに!!」
ふぅ……早いとこ穂香を酔い潰さないと、面倒なことになりそうね。
こんな事になるなら、あの場ですぐに答えておけば良かった。
(優子って、どうしてGIMELに入ったの?)
この問いの答えを求めて、穂香は私の部屋にまで押しかけてきた。
地下射撃場で、「一つ聞いて良い?」なんて、改まって言われたから
思わず顔が引きつっちゃったわ!
私はてっきり……
(優子って、本当にボクのことが好きなの?)
なんて言われるのかと思った。
もちろん私は、穂香を愛してる。だから尚更、責任感じてるのよ。
最近の穂香ってば、あからさまにブルーだった。
やっぱり、私があんな事を言ったのが原因だったのかしら。
……それとも本当にカウンセリングの結果がこたえているのか。
いいえ、そんな筈ないわね。
穂香は元々、女性ホルモンの投与にはそれほど興味なかったし。
やっぱり原因は私……か。
タイミングが、最悪だったわよね。
あの時は……私も少し舞い上がってたのよ。
穂香ってば、ピアスのスイッチ入れっぱなしで……
ついつい私も聞き耳を立てて……私も、焦ってたのよね。
それで、よりにもよって早川幸子にふられた(ふった?)直後に、
私も告白したら……予想以上に穂香が動揺したんで、
あわてて「冗談よ」なんて言ってしまった。
今更、「冗談じゃなく、本気よ」なんて、言えたもんじゃないわ。
あぁ、どうしてあんな最悪なタイミングに告白しちゃったんだろう!
「おかわり作っていい?」
「いいわよ。私が作ってあげる。どんどん飲んで。」
大きめのビールグラスに、コーヒー牛乳と焼酎を同量(!)入れる。
よくもまぁこんなモノが飲めるわね、穂香。
ソファーに、膝とクッションを抱きかかえる格好で座ってる。
白のパンツが見えてるわよ。酔ってる証拠ね、よしよし。
コーヒー牛乳酎は2杯目だけど、既に水割りを3つも飲ませてるのよ。
「……で?なんだっけ?穂香。聞きたいことがあったんじゃないの?」
「……そうそう……なんだっけ…………あー!思い出した!!
射撃だよ!優子に初めて負けたんだ!ボク、Dランク。悔しい!!」
よし……かなり酔ってるわね。早くつぶれちゃいなさい。
介抱は、私がちゃんとしてあげるからね。
「ボク、射撃だけは優子に負けないと思ってたのに。」
「いつもはAランクだったでしょ。調子が悪かっただけよ。」
「そうだボク、ぜんぜん集中できなかったんだ。……なんでだっけ?
なんか、色々と考えなくちゃいけないことがあったような、
……優子にも、他に何か聞きたいことがあったような……」
穂香のまぶたがトロンとしてきた頃を見計らい、
部屋の照明を落として、リラクゼーション用のプロジェクターをONにする。
プロジェクターの青い光だけとなった部屋は、一気に暗くなる。
なんか、ラブホテルのような雰囲気にも似て、我ながらドキッとする。
「あ……イルカだ!!おーい!イルカーっ!!」
イルカの群が四方の壁に映し出され、部屋中をゆったりと泳ぎ回る。
本当に海底の中にいるようで、幻想的。
このソフト、穂香のために買ったのよ。私って、尽くしてあげるタイプよね。
「ボク……イルカ大好き。できれば一緒に……海の中で生活したい……」
「グラン・ブルーの影響でしょ。あれって体質も変わるって噂…………穂香?」
「……こうやって……目を閉じるとね……イルカの……鳴き声が……」
穂香の手から滑り落ちそうになったグラスをあわてて受け止め、
静かにテーブルにもどしてやる。
水割り3杯にコーヒー牛乳酎2杯。穂香にしては頑張ったわね。
ごめんね穂香。悪気はないのよ。
時計を見ると、22時を回っていた。
本当なら、さぁ夜はこれからだ!って感じの時間だけれど、
私、明日は朝一の飛行機なのよ。もうそろそろ寝とかないと。
明日から一週間の東京行きは、穂香には内緒にしておかなければならない。
穂香はこのまま朝まで爆睡。私は夜の明けないうちにここを出ないと。
……穂香には、内緒のミッション。絶対に知られてはならない。
もちろん、こんな経験は初めてよ……

つづく




アニト (6月24日(日)23時40分17秒)
沙希さん、こんばんは。
実はわたしも、初めて行った女装スポットって映画館なんですよ。
O−クラさんほど過激(←噂に聞くところによると)ではありませんが
名古屋にもその手の映画館がありまして・・・。
それはもう、「未知との遭遇」でした。
その後この地方では有名老舗の「麗○」さんへ何度か足を運び・・・。
あっ、みなさんの「初外出物語」っておもしろそうですね。
穂香の初女装はどんなふうだったのでしょう?。




沙希 (6月27日(水)22時43分40秒)
アニト様数値フェチっ娘様こんばんは。
初外出物語って、おもしろそうですね。
私も今度、書こうかな。
O−クラが「室内」だとすると、私の初外出は、夜の上野公園ですねぇ。
O−クラ常連のおじさんに連れられて、セーラー服を着て池の周りを一周しました。
昼間の水○公園へも出没したことがあります。
休みの日の白昼堂々。やっぱりセーラー服で。
……若かったです。
アカリ様。
こんばんは。
やっぱり♂♀スイッチが切り替わる人は多そうですね。
普段から女っぽい私の場合は、
友達に呆れられて、もう何も言われない感じです。
スカートこそ穿かないものの、すべてレディースで身を固めている感じ。
ユニセックスなイメージを目標としているのですが、
友達の目には「異様な姿」として写っているようです。
ところで、「日常生活の冒険」とても良いですね。
私も知っている場所が登場し、その場所の情景が浮かんできます。
電車に乗っているときの心境とかも、共感です。
窓に映る自分の姿とかを、しきりにチェックしたりします。
女装しているときは「非日常」等と言われますが、
結局は、現実の世界に身を置いている訳ですし、
なにより、女装しているのは、他でもない「自分自身」なのですよね。
「女装している自分」も、大切な自分のパートナーですから
大切にしたいものです。
MRF−6:女装者− 第5話「エクスプローラ」 −4th.
眠ってしまった穂香に毛布を掛けてやり、イルカのプロジェクターを消す。
グラスに大きめの氷塊を入れ、ウィスキーを注ぐと
パキンという音をたてて冷気を放出する。
ロックを作ってしまった後に、
明日の朝は早いのでアルコールは止めようと決めていたことを思いだし、
口ではなく、首筋にグラスを持っていく。
零度に近いであろうグラスは、少し、冷たすぎた。
……カーテンの隙間から窓の外を眺めると、
巨大な粒子加速実験装置が一望できる。
ヒトゲノムの解析を行うための施設というのは名目上で、
実際には人の心や思考までをも読み取れるという噂……
その実験中にトラブルが発生し、被験者の少女が正気を失い、
大量殺人を犯した挙げ句に廃人になってしまったという噂もある。
一体、GIMELは何をしようとしているのか。
冗談じゃないわよ。
あんなオモチャで人の心が解るだなんて、笑っちゃうわ。
そう……機械なんかに、ヒトのココロを解られてたまるか!
「ね、穂香。私は穂香の味方だよ。モルモットになんかさせないから。」
スースーと寝息を立てて眠る穂香。そのすぐ横に腰掛けて……
耳元で、声にもならないくらい……だけど、確実に発声して。
「穂香。私はね。今のアンタが、一番好きよ。
穂香の過去がどうであろうと。ましてやホルモン投与なんかしなくても。」
私は、穂香を守るためなら、全てを敵にまわしてもいい。
たとえその相手が、GIMELだとしても。
……なぜ私がGIMELに入ったのか。
今思えばそんな理由なんて、くだらないのよ。
私は、自分と母を捨てた父親の行方を追い、そしてここへ辿り着いた。
ここGIMELに、父親の消息の手がかりがあるのかは依然解らないけれどね。
言葉にしてしまえば、たったそれだけのことなんだから。
穂香のほっぺにキスしたくなる衝動を抑え、明日の支度の確認をする。
トランクの中身に、任務発令書。それとエアバスのチケット……
あれ?チケットは?そういえば、まだ届いてない……?
「ピルルルルルッ!!ピーーッ!!」
「キャッ!!び、びっくりしたぁ!」
静寂を破り、突然FAXが動き出した。
明日のエアバスのチケットが、今頃転送されてきたのかしら?
−親愛なる優子君へ−
−遅れましたが、エアバスのチケットを送ります。−
−携帯電話の方へe−チケットとして転送しました。確認して下さい。−
−尚、任務の内容は、くれぐれも穂香君に漏れないように。−
もう、主任ってば!!もっと早くに送ってよ!!
「……なに?優子……FAX……新しい指令?」
主任……恨むわよ。
せっかく眠りかけていた穂香を起こしちゃって。
しかも、秘密にしておかなきゃいけないってのに、
本人の目の前でこんなFAXを送りつけてくるなんて。
「んーーーーーーーっ!!なに!このFAX!!」
「な、なんでもない!!なんでもないのよ、穂香!!」
「主任と優子、グルになって、ボクに隠し事してるー!!」
ギクッ!!
「この、ボクに秘密の任務って、なーに?なーに!?」
最悪だ。絶体絶命だ。このピンチを、どう乗り越えればいいか……?
「……あのね穂香、よく聞いて。今回の任務は、大変な危険が伴うの。
もしかすると、命の危険もあるほどの、難しい任務なの。」
「命の……危険……!?ま、まさか!!」
「そう。だから今回の任務は、経験の豊富な私だけが任されたの。
だから穂香は今回は、自室待機よ。」
あぁ。穂香にウソをついちゃった。
でも仕方がない。
今回の任務は、絶対に穂香には知られてはいけないんだから。
……そして、きっと私にとって、一番辛い任務になるだろう。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
翌朝。
寝不足気味の重たいまぶたを擦りながら、羽田行きのエアバスに乗り込む。
平日のSシートというだけあって、ガラ空きの状態だが、
一応チケットに指定されているシートを探して、座る。
S席というのは、主任のささやかな「思いやり」なのだろうか。フン!
「絶対に、無事に帰ってきてね。」
……昨夜穂香は、ひとことそう言って、意外にも素直に引き下がった。
あんなに素直なら、酒で酔い潰すなんて考えずに、
最初から事情を話してしまえば良かったわ。
あんなにお酒飲ませちゃって、穂香に悪い事しちゃった。
背もたれをリクライニングさせ、アイマスクを付ける。
離陸する前から、もう熟睡体制を決め込む準備よ。
東京へ着いたら、色々と忙しくなるわ。
一週間の東京出張は、けして楽ではないのだから。
「お客様。機内食はいかがでしょうか?」
「……結構です。眠りたいので。」
「それでは、お酒などいかがでしょうか?」
「……寝酒はしない主義なので、結構です。」
「コーヒー牛乳酎など、お勧めなのですが。」
「……だから、いらないって……」
ん?コーヒー牛乳酎って……?まさか!!
そういえば、離陸する前から機内食なんて変よ!それに、聞き覚えのある声!
あわててアイマスクを取ると……!!
「ごめんね優子。チケット取れちゃったから、ついて来ちゃった。」
あわてて窓の外を見ると、エアバスのタラップはすでに切り離されていた。

つづく




アニト (6月27日(水)23時44分42秒)
沙希さん、こんばんは。
他に適切な用語があるかどうかを知らないものですから
わたしはいつも「女装」という言葉を使っていますが、
「異性装」とは意味が違うのではないかと思っています。
男と女の性は2極ではなくグラデーションですから、
女性の心を大きく占める人にとっては自然な装いなのでしょう。
わたしが自分の装いをあえて「男装」と言わないがごとく。
以前台湾を旅行したときにあるデパートのレディスファッションフロアが
「女装」と表示されていたのを思い出しました。




沙希 (7月16日(月)23時14分49秒)
アニト様。数値フェチっ娘様こんばんは。
皆様こんばんは。沙希です。
最近の日照りで、すっかり日干しのような生活を送っています。
ここは足立区。
日中は蝉が大合唱しており、夜は羽虫の大群に悩まされております。
網戸を閉めていても、編み目をムキムキと広げて部屋に進入してきます。
蚊取り線香も効きません。羽虫、恐るべしです。
菜美様こんばんは。
怒濤の連続書き込みがすごいです。
まとめて一息に読んじゃいました。
これでもかというくらいに辱めを受けていますね。
強制排泄の恥ずかしいところは、「臭気と音」だと思うのです。
(あぁ、なにを書いているのでしょうか!)
その両方ともが、文章から伝わってくる感じです。
優奈様こんばんは。はじめまして。
優香さんの目の前で、堕ちてしまう優奈さん。
今後の二人の関係が気になります。
奴隷の道とは、アメとムチのようなものでしょうか。
気持ちのいい事の後には、厳しい調教が待っている感じ。
もちろんその逆も。
同じオフィスで働く二人ですから、どんなハプニングが待っているのか。
期待しちゃいます。
MRF−6:女装者− 第5話「エクスプローラ」 −5th.
東京へ向かうエアバスの中。
優子の任務の内容が気になって、昨夜、急いでチケットを取ったんだ。
羽田空港へは、2時間ほどで着くと思うけれど……
この険悪な雰囲気は、2時間も耐えられない感じ。
ねぇ、優子。やっぱり怒ってるよね。
さっきからアイマスクを付けたままで、なんにもしゃべってくれないんだ。
(あんまり成績が良すぎると、銃を使うような危険な仕事がきちゃうかもね。)
(大丈夫よ。MRF6級待機だったら、そんなヤバイ仕事なんて無いから。)
(もしかすると、命の危険もあるほどの、難しい任務なの。)
……考えれば考えるほど、不安になってくる。
いったい今回の任務って、どんな仕事なの?
ずっと前から変だと思っていたんだ。
どうしてボクたちが、射撃の訓練なんかさせられているのか。
『MRF6級待機だったら、そんなヤバイ仕事なんてない』
じゃぁ裏を返せば、6級待機じゃなかったら、ヤバイ仕事もあるって事?
ボクがGIMELに来る前、優子はMRF−3だったって聞いたことがある。
優子って……ボクがGIMELへ来る前は、どんな仕事をしていたの?
まさか、殺人の依頼なんて……受けてないよね?
「ねぇ優子……優子って………」
「…………………………」
しゃべりかけても、なんにも答えてくれない。
やっぱり、黙ってついてきちゃった事を怒ってるんだ。
あぁ。なんだか、やること全てが裏目に出る感じ。
「ねぇ優子。ボクね……
どうして女の子になりたいのか。なぜGIMELに居続けるのか。
その理由が、解らなくなっちゃったんだ。
だから、ボクは……『優子は、なぜGIMELにいるのか。』
それを優子に聞かせてもらいたかったんだ。
そうすれば、自分もなにか答えが見つかりそうな気がしたから……
ねぇ優子。……ボクの話、聞いてる?」
優子……なにも答えてくれない。
……もう、『沙希』ですら、ボクの心の中には現れない感じ。
彼女は、深い海の底に沈む、宝石箱の中に隠れて、鍵を閉めてしまった。
沙希は何も教えてくれなくなっちゃったんだ。
今のボク……ひとりぼっちだ。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
「まもなく羽田空港に到着します。安全のためシートベルトを締めて下さい。」
そうアナウンスが流れて、すこしホッとする。
結局優子はこの2時間のあいだ、ボクとは一言も口を交わさなかった。
このままずっとシートに座っているのは、精神衛生上よくない感じ。
「優子……もうすぐ着陸だよ。シートベルトを締めないと。」
「…………………………」
まだボクを無視してる!相当怒ってるんだ!こんなに怒ってる優子は初めてだ。
「ねぇ優子。もう許してよ。ボクは優子のことが心配だったんだよ。
黙ってついてきちゃったのは反省してる。お仕事の邪魔もしないから!」
「…………………………」
「優子……怒るんなら、怒ってよ!何もしゃべってくれないのは、一番ヤダよ!
その前に……ほら……シートベルト締めて……優子ぉ……!!」
「ん…………ふわあああぁぁぁっ!!ぷ……あーーよく寝た!!
なに?もう着陸?東京なんて、エアバスならあっという間ね……
……やだ!!穂香ってば、どうして泣いてるの!?何かあったの!?」

つづく

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