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沙希(9月5日(火)22時48分03秒)
みなさんこんばんは。沙希です。
ご無沙汰しておりました。
急激な温度低下(東京地方)で、
体調を崩さないようみなさん気をつけましょう。
さて、やっと第4話です。
このお話は、本当は最終話のために用意したエピソードなのですが、
急きょ4話目に持ってきました。
おかげであちこち手直しをし、時間がかかりました。
苦労した分、「女装者」全8話(予定)の中では
最も読みごたえのある話になっていると思います。
穂香や優子の心の動きを、
今までにないゆっくりとしたペースで表現してみました。
その分お話も長く、全14回連載です。
舞台、時系列などが複雑に変化する部分もありますので
じっくり読んでいただければ幸いです。
そして、最後の「14th.」を読み終えたときに、
再びこの「1st.」を読み返していただければ、
書き手として至福に思います。
MRF−6:女装者− 第4話「白色の少女たち」 −
1st.

「ヒグラシが鳴いてる……もうすぐ、夏も終わりね。」
今日も生徒会での仕事が長引いた。
誰もいなくなったグラウンドを一人で横切り、家路につく。
(……もう一度、彼と逢える機会があるわ。)
「優子さん」って言ったっけ?
彼女もたぶん、広海さんの仲間なのだろう。
退学になった広海さんの代わりに、昨日、私の前へ現れて、そう告げた。
私には分かる。優子さんも、広海さん……
いいえ、「穂香ちゃん」の事が好きなんだわ。
毎日彼女のお弁当を作っていたのは、優子さんね。
そして広海さんも、きっと彼女の事を……
……校門の手前まで来た時、彼は姿を現した。
「……広海さん……」
「こんにちは。早川さん。」
「よかった……また……逢えた。」
学校でのセーラー服姿とはだいぶ違う、大きめのTシャツに短パン。
少しラフで、少し大人っぽく見える。
やっぱり私よりも年上だってすぐに分かる。
でもやっぱり、男の子の服を着ていても、女の子っぽさは消せていない。
「早川さん、俺……」
「待って。言った筈よ、「幸子」で良いって。」
「さ、幸子ちゃん……もう一度幸子ちゃんに、確かめたいことがあったんだ。」
少し照れくさそうに私を見る。
広海さんて、照れるとピアスをいじる癖があるのね。
「俺」なんて言葉、広海さんには似合わないわ。
無理せずに「ボク」で良いのに。
でも私だって照れくさい。
胸のタトゥーを見せたのは、広海さんが初めてなんだから。
「……男の子の姿でも、そのピアスは外さないんですね。」
「うん、これはね……任務の時は、必ず付けないと。」
「任務……」
「幸子ちゃん……きみの胸には、確かにイルカのタトゥーがあった。
キミには、別の未来への選択の権利がある。
新しい道へ進むか、それとも、今のままの道を歩むのか……
決めるのは、幸子ちゃんだ。」
「今、私は……とっても幸せです。今のままで良いんです。」
「……そう。よかった。」
そう言って広海さんは、何かをポケットの中にしまい込んだ。
「私も広海さんに話したいことがあります。
私、広海さんのことが……好きです。」
今度は広海さんが答える番。
でも、もう答えは分かっている。
あなたは私に逢いに来たのではない。
任務を終了させるためにここへ来たんですね。
永遠とも思える長い沈黙の後、彼は口を開いた
*  *  *  *  *  *
「ハイスクールへの潜入ですか?」
「そうだ。そこで、ある人物について調べてほしいことがある。」
……C1NEL作戦司令室。
ここへ来るのは、あまり好きじゃないんだ。
ここで何度主任に叱られたことか。
この部屋に入ってまず目に付くモノが、
部屋の中央に設置された立体ホログラムフィールド。
建物や機械の構造など、立体で把握したいものを、
3次元画像で投影することができるスグレモノ。
壁には巨大なフィルムスクリーンが掛けられ、
様々な情報が随時めまぐるしく映し出される。
部屋の奥には、ガラス張りのパーティションで区切られた
コンピュータールームがあり、難しい顔をした技術士達が
スクリーンとにらめっこしている。
そう、簡単に言えば、
ここは「超ハイテクが凝縮された科学者どもの部屋」なんだ。
そんな部屋にだよ、ボクが報告書代わりに持ち込むモノと言えば、
冷凍庫でカチンカチンになった溲瓶とか、
お爺さんに描いてもらった、自分の裸の絵のコピーだとか、
もうイヤになるよね。
なんでこんな任務ばっかりなんだろう……
「この少女だ。」
メインスクリーンに、一人の女の子の写真が写し出された。
セーラー服を着た下校途中の女子高生、といった写真だったが、
顔の部分が拡大投影されたときに……
ボクは言葉を失った!!
「早川幸子、15歳。C1NEL管轄内のミッションスクールの1年生だ。」
……早川……早川幸子、この写真の少女…まさか!こんな偶然が!?
「彼女は早川財閥の一人娘だが、実は養子なんだ。
そして今回の依頼主は、彼女の 本当の父親。
養子縁組を破棄し、娘を取り戻したいという事で依頼をしてきた。」
「そんな!一度は養子に出しておいて、
今更取り戻したいなんて、勝手すぎます!!
そんなの、親のエゴです!!」
間髪入れずに、優子が主任に噛み付いた。
気が動転していなければ、ボクだって同じ事を言っていただろう。
「……養子先での生活が、幸せならば、な。」
「幸せじゃないんですか?お金持ちの家へ引き取られて……」
「良くある事だろう。幸せの価値は、本人にしか計れない。嫌なこともある。」
「主任、それなら……
彼女と本当の父親を引き合わせればいいじゃないですか。」
「養子先の義父母から反発を受けているんだ。
『早川幸子は実の娘である』と……
つまり証拠をつかまなければならないんだ。
彼女本人であるという証拠を。」
「なるほど。親も親なら、金持ちも金持ちね。イヤになるわ。」
「もし、彼女が本物ならば、胸にイルカのタトゥーが施してある。」
「……そのタトゥーを確認するのが、任務の目的ですか。了解しました。」
「女子校に潜入するのは河合穂香に命ずる。
詳しくは資料を読むように。以上。」
「……どうしたの穂香。
久しぶりにセーラー服が着られるのよ?嬉しくないの?
なによ、さっきから黙ったままで!」
年齢からすると、確かにボクは17歳。
潜入するにはボクが適役なんだろうけど……
自信がないよ。だってボク……
「ボクね、さっきの早川って娘……知ってるんだ。」

                        つづく




アニト(9月5日(火)23時33分25秒)
沙希さん、こんばんは。
ほほう、全8話の構成になっているのですか。
『空想デート』用にいろいろ手直しをされているようで
本当にうれしく思っています。
4話目に入ったばかりですから
まだまだ長いおつきあいができそうですね。
じっくりと読ませていただきますので、
沙希さんもじっくりと書き込んでみてください。




沙希(9月6日(水)22時41分54秒)
アニト様こんばんは。
みなさんこんばんは。沙希です。
理恵さん初めまして。こんばんは。
理恵さんは、書き込まれるのは初めてなのですか。
それとも、以前にも書き込まれていた方でしょうか。
いろんなひとの書き込みが読みたいです。
私も最初は読むだけだったのですが
書き込んでみると、もっと楽しくなりました。
お話無しでも、ご意見ご感想などもお待ちしております。
きっと、ここに書き込んでいる他のみなさんも、
感想を頂けると、大変な励みになると思います。
(そういう私自身は、なかなか感想書けないのですが)
MRF−6:女装者− 第4話「白色の少女たち」 −
2nd.
「まずは担任の私から、みんなへ紹介します。
河合さんも簡単な自己紹介をお願いしますね。」
1年A組の担任に連れられて廊下を歩き、教室へと向かう。
築5年の綺麗な校舎だ。
風紀の行き届いたミッション系のお嬢様学校とはいえ、
教室の中からは話し声や笑い声が聞こえてくる。
二学期が始まって最初のHRの時間だから、仕方がないよね。
「1学年はA組からF組まであって、そのうちA組とB組が特進クラスなの。
編入試験を満点で合格した穂香さんでも、気は抜けないわよ。」
そう。この私が満点なんだ。
もちろん事前に試験問題の流出があったのだけれど……
そうでもしなければ、早川幸子と同じA組になんて入れないよね。
………早川幸子。彼女とは、すでに出逢っていた。
ただし「男の子」の状態で。
*  *  *  *  *  *
8月の暑い日だった。
ボクは久しぶりに男の子の格好で街を出歩いた。
久しぶりの休日だったんだ。
ボクが女装をするのは、もちろん自発的なんだけれど……
毎日毎日女の子をしてると、ふと懐かしくなるんだよね、男の子の自分が。
洗いざらしのTシャツに、ウェストのゆるいラフな短パン、そしてサングラス。
そんな久しぶりの男の子ルックで、ショッピングモールを歩いていたんだ。
(うん、懐かしい自分だ。こんな姿、優子に見られたら……殴られそうだね。)
ウィンドーに姿を映し「自分」であることを確認する。
すっかり男の子の出で立ちだが、
耳に付けた通信機ピアスだけは、そのままにしてある。
この小さなピアスが「男」へのささやかな反抗なのだろう。
そうそう、もちろん短パンの下は女の子用のショーツだ。
(こうして見ると、結構目立つんだね、このピアス。)
太陽光線の反射でキラキラさせながら、人混みの中に流れていった…
早川幸子と初めて出逢ったのは、
歩き疲れて、日陰を求めて公園へ向かおうとした歩道橋の上だった。
信号待ちがじれったく、
珍しく歩道橋なんて渡ろうとしたのが運命のイタズラだったのか。
彼女は歩道橋の真ん中あたりで、じっと車の流れを見つめていた。
ボクがちょうど彼女の背後を通り過ぎる瞬間に、
彼女は手すりから身を乗り出したんだ。
「あ……危ないっ!!」
「キャアァッ!!な、何するの!?」
ボクは反射的に、彼女のウェストあたりを抱きしめて引き戻そうとした。
上半身は完全に手すりから乗り出していただろうか!?
そんな危険な状態で暴れる彼女の肘撃ちをまともに受け、
買ったばかりのサングラスがすっ飛んだ。
「いてててっ!!危ない!暴れると落ちるっ!!」
「イヤッ!!放してっ!!痴漢っ!!」
やっとの思いで彼女の身体を引き戻し、
二人とも歩道橋の上で尻もちをついた。
危ないところだった。歩道橋の高さは7〜8メートルで、
さらに交通量の多い道路は車の切れ目なんて無い。
落下したら命はなかった。
「……大丈夫?怪我は……」
「痴漢!!変態!!触らないでっ!!」
助け起こそうと手を差しのべたら、平手で返された。なんて女だ!
「あ、あのねぇ!ボク……俺は……キミを助けようとしたんだよ!?」
「ほっといてよ。あなたのせいで、尻もちついちゃったじゃない。」
彼女が起きあがろうとした時、スカートの中から白い下着が覗けた。
あ、まずい!と思いつつも、条件反射のように視線を取られた。
「……今、見たでしょ?」
「見てない、見てないよ。」
「嘘。見たわ。視線を感じたもの。エッチ!」
彼女に飛ばされたサングラスを拾い上げたが、フレームに傷が入っている。
あぁ、なんて事だ!!
買ったばかりのサングラスだったのに、ついてない……
汚れを払い落としてからかけ直すが、
レンズにも傷が付いたようだ。最悪だよ。
「……俺はねぇ……女の下着なんか見たって、興奮しないの。じゃぁね!」
大騒ぎをしたせいか、周囲に人が集まりだした。
目立つのは嫌だし、痴漢呼ばわりされて妙な事に巻き込まれたくもないので、
早々とその場を立ち去ろうとした。
「……ちょと、待ってよ……」
「なに?……言っておくけれど、俺は痴漢じゃないよ。」
「それは解ったわ。でもあなた……ゲイでしょ?」
「はぁ?」
「女物のピアスなんか付けちゃって……嫌らしい。」
「あ……あのねぇ……今どきピアスくらいでゲイだなんて……」
「そのサングラスも女物じゃない?ゲイじゃなかったら、ニューハーフ?」
(ドキッ!!……この娘、鋭い……)
「わかった!だから私の下着を見ても、興奮しないんでしょ?」
「……俺はノーマルだよ。
悪いけど、俺は目立つの嫌いなんだ。もう行くよ。」
「待ってよ……」
「なに?……まだ何か用?」
「あなた……怪我してるわ。」
「怪我の治療」という理由を付け、彼女はボクの後へついて来た。
いや、ボクが連れて行かれたと言った方が的確だ。
ちょうどボクも公園で一休みしたかった事もあるので、
素直に彼女の好意を受けることにした。
……なぜ彼女が、あんな危険な行動をとったのか。
あれは誰が見ても「飛び降り自殺未遂」だった…
その事も気になっていた。

            つづく




アニト(9月6日(水)23時15分05秒)
沙希さん、こんばんは。
感想は簡単でかまいませんから、
少しずつ書くようにしていただくとみんなも喜びますよ。
人にしてもらいたいことは、まず自分がやってみなければ、ねっ。
理恵さんはとってもすてきな物語を書いています。
『別棟』をごらんください。




沙希(9月7日(木)23時56分04秒)
アニト様こんばんは。
みなさんこんばんは。沙希です。
最近綾乃様のお姿が見えず寂しい思いをしています。
消えたわたしさんはじめまして。
このお話は空想ではなくて実体験なのでしょうか、
それとも願望なのでしょうか。
電車内放置プレイにはまってしまいました。
まさに拘束地獄です。私もされてみたいです。
MRF−6:女装者− 第4話「白色の少女たち」 −
3rd.
「大丈夫だよ。擦り剥いただけだから。」
「でも、ちゃんと洗わないとバイ菌が入るわ。」
噴水の側にあるベンチに座らせられ、傷口を湿らせたハンカチで拭かれる。
ヒンヤリして痛いような気持ち良いような…
もともと公園のベンチで休むことが目的だったのだが、
こんなのはちょっと予定外だよ。
ボクはあまり人と関わり合いたくないんだ。
女の子の格好だとナンパされるのがイヤで、
わざわざ男の子の格好で来たのに……
彼女の白いハンカチが、ボクの血で赤く染まる。
洗濯しても落ちないな、あれは。
「あなたの足……ずいぶん綺麗ね。すね毛も無くて、ツルツル……」
「あ……あぁ……もともと、体毛は薄い方だから。」
「なんか女の子の足みたい。
こんな綺麗な足に傷つけちゃって……悪かったわ。」
「い、いいよ別に……男なんだから、傷なんて残ったって気にしないよ。」
「でも、こんなに綺麗な足なのに、もったいない。私より綺麗だわ。」
……GIMELには整形外科もあるから平気なんだけどね。
もちろん体毛だって、C1NELに来てから全てレーザー処理したんだ。
その気になれば、傷どころかタトゥーだって綺麗さっぱり消せるんだ。
「はい、もう良いわ。あとは血が止まるように、乾燥させた方がいいわね。」
「あぁ……どうも……」
「なによ。お礼くらい、ちゃんと言ってくれても良いでしょ、
精魂込めて処置したんだから。」
「わ、わかってるよ……ありがとう……」
「……私もね。……助けてくれて、ありがとう。ちょっと待ってて!」
そういうと突然、出店のアイスクリーム屋に向かって走り出した。
……そういえば
「助けてくれてありがとう」というセリフで思い出した。
ボクは彼女を助けたんだ。
「はいこれ、お礼。暑いからね。」
ご丁寧にも、アイスをおごってくれるらしい。
アイスを手渡す彼女の顔は、全く無防備な笑顔だった。
この娘……笑うと、こんなに可愛いんだ。
笑ったの、今が初めてだよ……
眩しく見えるのは逆光のせいだけじゃないよね。
こんな良い笑顔を持っているのに、こんなに明るい娘なのに……
なぜ、あんな危険なマネを?
あれはどう見ても、飛び降り自殺未遂だよ。
「ねぇ……キミ……」
「早川よ。早川幸子。」
「さ、幸子ちゃん……さっきは……」
「ちょっと!いきなり名前で呼ばないでよ。名字で呼んで。」
「わ、わかったよ……早川さん、さぁ……」
「ちょっと!私一人に名乗らせるつもり?」
「あぁ、もう……河合広海だよ……そんなことより……」
「ふ〜ん。ひろみっていうんだ。やっぱり女の子みたいな名前ね。」
「そうかな?広い海って書いて広海だから、男の子っぽいと思うけど。」
「へぇ〜!広い海で広海かぁ……なんか、いい名前ね」
「どうでも良いけどさ、
俺の方が年上だと思うから、ちゃんと敬称をつけようよ。」
「はいはい。じゃぁ、広海さんね。」
(はぁ……なんでボクだけ、名前で呼ばれるんだろう……)
「……広海さん……私、別に何でもなかったのよ……」
「……え?」
「ちょっと息抜きにね、空を見ていたの。
あんまりにも気持ちが良くて、目眩がしただけなの。」
「あ、あぁ……あの時のこと……」
切り出したのは彼女の方からだった。
彼女もきっと気にしていたのだろう。
ボクの怪我は、彼女を助ける時に負ったものだし……
しかし、空を眺めていただけで、目眩を起こすだろうか?
空を眺めていたというのも、嘘ではないか。
ボクが見た感じでは、真下を向いて車の流れを見つめていたように思えた。
とても疲れたような表情で……
「ねぇ。息抜きって、受験勉強……とか?」
「受験勉強って、私はまだ高校1年よ!
それともまさか、中学3年に見えたって事?」
「いや、そうは言わないけれど……」
「私の父がね、とても厳しいのよ。
学校の成績は常に1番じゃないと、叱られるの。」
「常に1番?それは大変だ。」
「勉強だけじゃないわ。ピアノやテニスや……
花嫁修業みたいな事もさせられるの。華道や茶道とか…」
「早川さんて、もしかしてお嬢様?」
「そうかもね。私は全然、自覚がないけれど。
とにかく勉強や習い事が大変すぎて、気晴らしに抜け出してきたのよ。」
疲れていたのは、そういう事か。
疲れが溜まって目眩を起こしたのか、それとも……
「ねぇ、あなたは何をしてたの?やっぱり、ナンパ?」
「ち……違うよ!ボクはナンパなんてしないよ!冗談じゃない。」
「あはははは!「ボク」だって!カワイー!!」
「う、ウルサイなっ!俺は17だぞ!年上だぞっ!」
「無理して「俺」って言うことないのに!あはははは!」
もうっ!不愉快だっ!どうしてこんな娘を助けちゃったんだろう?
ちょっとでも「興味」を持った自分が情けない。
「ねぇ、どうしたの?むくれちゃって。怒ったの?」
「……べつに。怪我の手当も終わったし、もう帰るよ。アイス御馳走様。」
「ちょっと待ってよ。今、暇なんでしょ?」
「だったら、なに?」
「……私を……ナンパしてよ……」
……なんだ?この雰囲気は……この娘、本当に高校一年生か?
はしゃいでいた時には、まるで子供だったのに、表情が豹変した。
まるで自分より年上の女性に、誘惑されたような……
「広海さん……私を何処かへ、連れ出してよ……」
「……悪いけど、お嬢様の隠密なお遊びに、つき合っている暇はないんだ。」
*  *  *  *  *  *
……そうして、傷の付いたサングラスを掛け、その場を立ち去ったんだ
……まるで心の動揺を見透かされないうちに、逃げるようにして
……まさかその時の少女がターゲットになるなんて、思っても見なかった。
……やはり彼女は、「幸せ」ではないのだろうか。
養子として迎えられた先で、どんな生活を送っているのだろうか。
歩道橋の上で見た、あの寂しげな表情が彼女の真の顔なのだろうか……
「1−A」とプレートが出された教室。
中から話し声が聞こえてくるが、
担任が扉を開けて教室へ入ると、急に静かになる。
「はい、皆さん静かに。転入生を紹介します。
我が校の編入試験を、全教科満点を取った強者です。
皆さんにとって良いライバル、良いお友達になることでしょう。
……それでは河合さん、中へ入って。」
「初めまして、河合穂香と申します。
父の仕事の都合で、この学校に転入することになりました。
どうぞよろしくお願いします。」
素っ気ない自己紹介を終えた後、担任に指示された席へ向かう。
「女の園」へ潜入する事には、もう慣れたつもりだったけれど……
ターゲットの「早川幸子」と目があった
瞬間は、さすがに緊張を隠しきれなかった。

                    つづく




沙希(9月8日(金)21時47分08秒)
アニト様こんばんは
みなさんこんばんは。
綾乃さんが帰ってきたと思ったら
今度は旅へ出られるのですか。
お気をつけて行ってらっしゃいませ。
大きくなって帰ってきてください。
梓様へ>
露出大好きな私としては、1か5を期待してました。
バイブの音って、結構周囲に聞こえてしまうんですよね。
きっとレジに列んでいたお客さんに
聞こえていたかもしれません。
…1も期待してしまうのは贅沢でしょうか。はい、贅沢です。
MRF−6:女装者− 第4話「白色の少女たち」 −
4th.
(沙希、聞こえる?また逢いに行くよ。)
穏やかな波が打ち寄せる岩場の上。
青い波が岩に打ち付けると、白い気泡と変わる。
暑い夏の日差しにじりじりと焼かれながら水底を見つめると、
なにかキラキラとしたものが見える。
(あれを、拾わなくちゃ。)
岩場を両足で蹴り、頭から海へ飛び込む。
激しい水しぶきで、キラキラと輝くものを見失う。
(あれはきっと宝石箱だ……探さないと!)
あの宝石箱の中には、きっと大切なものが隠されている。
どこだ、どこへ行った?
早くあの箱を開けなくては!あの箱には、何かが隠されている。
もしかすると、沙希もあの箱の中に?
でもダメだ、このままだと見失ってしまう……
「……穂香……穂香……」
ボクを呼ぶ声がする。水中を必死に泳ぐボクの周りに、
何頭ものイルカが集まり出し、僕の名前を呼んでいる……
「穂香……穂香……!!」

「河合穂香さんっ!!バシーーン!!」
「あいたたっ!!あ、あれ?」
「クスクス……やだ、転入早々居眠りなんかして。」
「清美、あんた、隣の席なんだから。起こしてあげなきゃ可哀想じゃない。」
「何度も起こしたのよ、でも穂香ってば、熟睡してて……」
気が付くとそこは……
「あれれ?学校の教室?」
「バシーーン!!」
「いたたたっ!!痛いよぅ!」
「目は覚めたかしら。河合さん!」
しまった……ボク、授業中に居眠りをしていたようだ。
ボクの名前を呼ぶ声は、英語の先生と、隣の席の女の子だったんだ。
「転入早々私の授業で居眠りなんて、ずいぶんと度胸があるじゃない?
いくら転入 試験をオール満点で通過したとはいえ
、特進クラスを甘く見ない方が身の為よ。」
あぁ叱られた。このところ連夜の勉強で疲れていたんだ。
編入試験はクリアしても、日常の勉強についていけるようにって
優子から特訓を受けたんだ。でも無理なんだよ、
もともと理工系男子校だったボクに、文系お嬢様学校への潜入なんて……
「早く、前へ出て黒板の問題をやりなさい。」
「あ……えーっと……ダメ、全然分かりません。」
「もう……河合さん、そのまま立ってなさい。
代わりに……早川さん、やって。」
「はい。」
ターゲットの早川幸子だ。
報告によると学年でトップの成績らしい。
初めて会ったときに、彼女本人が言っていたとおりだ。
常にトップの成績を維持し続けなければならないプレッシャーは、
どれだけのものだろう?
黒板に書かれたグラマーの問題を、スラスラとこなしている。
「はい結構よ、全問正解だわ。さすが早川さんね。席に戻って。」
彼女が席に戻るとき、一瞬、ボクと目があった。
そして心なしか……頬笑んだような気もする。
気のせいか?……
ボクは一度、男の子の姿を彼女に見られているんだ。
バレないだろうか?いや、気付いていないようだ……
*  *  *  *  *  *
「ついていなかったわね。
居眠りをしていたときに、丁度当てられるなんて。」
「でも、穂香ちゃんは編入試験満点だったんでしょ?
あれくらいの問題、解けると思ったんだけど。」
「寝ぼけていたんじゃない?なんだか寝言もいってたみたいだし。」
「そうそう、サキって、女の子の名前呼んでいたわよ。誰かしら。」
「本当?寝言で女の子の名前だなんて!
穂香ちゃんは、女の子が好みなの?」
「嫌だわ、穂香ちゃんたら!
ここへ来る前も、やっぱり女子校だったんじゃない?」
……机を4つ「田の字」に並べてのお昼休みだ。
こうして和気あいあいとお弁当を食べる構図なんて、
想像はしていたけれど、小学生以来だよ。
それに、クラスメイトとしてすぐにうち解けられたのは良かったよ。
「編入試験の時は、運が良かっただけだよ。
本当はそんなに勉強得意じゃないの。」
優子の手作り弁当を食べながら、女の子達との会話を楽しむ。
あぁ、幸せだ。ボクが通っていた男子校はガサツで嫌いだったけど、
女子校って、なんだかフワフワして、いい感じ。
大好きなセーラー服を着て、
本物のお嬢様高校生達とお昼ご飯を楽しむなんて、
なんだか任務を忘れてしまいそうだよ。
「ところで……さっき、私の代わりに問題を解いた人って……」
「早川さんのこと?彼女がどうしたの?」
そう、任務を忘れてはいけない。
早川幸子の事を、少しでも聞き出さなくては。
彼女は、僕たちとは隣の「島」で、
同じように机を寄せ集めてお弁当を食べている。
彼女のお弁当は、3段重ねの重箱入りで、まるでおせち料理のようだ。
その重箱を机の上に広げ、
友達同士で分け合ったり、ずいぶん楽しそうだな。
「なんだか、早川さんのお弁当、すごいよね。」
「彼女はいつもそうよ。この学校には家がお金持ちの娘が多いけれど、
早川さんは格別ね。財閥の一人娘だもん。」
「ふぅん。家がお金持ちで、
そのうえ成績がトップだなんて、嫉妬しちゃわない?」
「あら、嫉妬なんてしないわよ。彼女、性格もいいしね。
成績優秀スポーツ万能、容姿端麗で
欠点が見つからない、クラスのまとめ役よ。みんなから慕われてるわ。」
「そう……彼女、人気者なんだ……」
「なに?穂香ちゃん、もしかして早川さんに対抗意識燃やしているの?」
「ううん、違う違う……そうじゃなくて……」
「わかった!!穂香ちゃんでば、早川さんに興味があるんでしょう!?」
「うそ!ダメよ、穂香ちゃん!ライバルが多すぎるわ。
彼女を思っている人は沢山いるんだから。」
「そうそう、上級生にだって彼女に目を付けている人がいて、
私たち下級生に睨みをきかせているのよ。」
「彼女にラブレターを渡した娘が先輩に見つかって、
茶巾寿司にされたって……」
「実は私も、憧れてるんだ。でも、上級生の目が怖くて……」
「早川さん、素敵よねぇ……」
「私も、あんな家に生まれたかった……」
「………………」
……意外にも、彼女はクラスの人気者だった。
彼女を妬み、陰口を叩くような娘は一人もいない。
それだけ早川幸子は「人格者」でもあるのだろう。
彼女本人も、学校での生活はいたって明るく、
少なくとも暗い影を背負ったような雰囲気は少しも感じなかった。

                              つづく




アニト(9月8日(金)23時27分32秒)
沙希さん、こんばんは。
「消えたわたし」さんの3つの設定の中で
沙希さんは「電車内放置プレイ」がいいと書かれました。
他の人の物語を読んだとき、自分は何に惹かれ、どう思うか、
これがわたしの求める自己紹介(=作者自身の物語)なのです。
物語は自己紹介であり、自己紹介は物語である、とわたしは思います。
沙希さんのことをもっと教えてくださいませんか。

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