第2章を読む

山崎アカリ(12月10日(日)02時08分01秒)
アニト様、先輩奴隷の皆様、
このページを御覧になっている多くの皆様方、
アカリでございます。m(_ _)m
☆アニト様
>わっはっはっはっは、冒頭3行で大笑いしてしまいました。
(^。^;)ホッ!ああ、良かった・・
叱れるんじゃないかとドキドキものの書き込みでした。
だってあまりといえばあんまりなネタですもの。
>こうした短編もときどき書いてみてください。
そうですね、お褒めいただいて少し、自信が沸いてきました。
わたしも「時の彼方へ」だけでは疲れてしまいます。
時には目先を変えるのも良いですね。
>「風呂にする。アカリ、背中流してくれ。」
「ハイ!」
誉めてもらって有頂天のアカリは、
パタパタとお風呂場へ向かうのです、青い水着を身につけて。
☆理恵様
なんと!理恵さんに誉めていただけました\(^o^)/。
わたしは理恵さんの密度の高い文体にいつも感心しています。
わたし自身は書けませんが、
そういう文章を読むのは好きなのです。
200頁を一週間ぐらいかけて。
いつも2〜3時間で終わってしまっては物足りないではありませんか。
わたしには文体を意識して書くほどの技量はありませんが、
物語自体は自分自身のために“書かなければならない”ので、
やめるわけには行きません。
これからもよろしくお付き合いくださいねm(__)m。
☆みずき様
あの能天気でハッピーな夫婦の事も
そのうちまた、語ってあげたいと思います。
実は次のネタも考え中(^_^)。
でもこれ、暖かくなってからでないとちょっと・・。
いよいよお話も佳境に入ってきたのでしょうか。
その道の達人風の塩沢さんは、
どんな手管で瑞希ちゃんを哭かせてくれるのでしょう?
期待が膨らみます。
☆唯奈様
>今度の「奥様はマゾ」を参考に
>つくらさせていただこうかなって思っています。
え・え・え・・持つのかしら、わたしの体・・
でも、唯奈さんにしていただけるなら、
頑張らなくっちゃいけませんね。
久仁子さんと一緒にメチャクチャにされてしまう唯奈さん。
でも久仁子さんといっしょなら
どんな厳しい責めも幸せに変っちゃいますね。
・・わたしには早苗先輩が憧れの人なんですよ。
どうしてもσ(^^)は「先輩」好き。
☆柴原絵梨花様
はじめまして、絵梨花さん。アカリです。
お声を掛けていただきありがとうございますm(__)m。
物語の続きを読むことが出来て、とても嬉しいです。
作中のアダルトな雰囲気の漂う旦那様や奥様も、
実は深い愛情に結ばれているのでしょう?
ただ表現が洗練されているだけで、
だからこそより美しく映えると。
作中の絵梨花さんはあんな素敵な旦那様や奥様に
メイドにしていただけて幸せです。
けれども、まだまだ奥深いものを秘めていそうなお二人ですから、
油断は出来ません。そして楽しみです。
☆権太様
「亜里砂の大冒険」素晴らしい出だしではないですか。
亜里沙ちゃんの寂しさが切々と伝わってきます。
ぜひぜひ続きを読ませてください。
期待していますよ(^o^)。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
さて、幕間狂言も無事終り、控えには役者たちが、
己が出番を今か今かと待ちわびております。それでは・・。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「失われた時の彼方へ」
●第3章-(直樹) 第1話

高橋直樹の名を知らないものは扶桑学園に居ない。
良く、野球名門校、とかサッカー名門校、なんて言うのがあるが、
そういう意味では、うちは音楽名門校だ。
OBには有名な演奏家や作曲家が居るし、
芸大や桐朋その他の音楽大、
果てはジュリアードやコンセルバトワールに行くものまで居る。
その学校のオーケストラ部、といえばどう言うものか、
大体分かってもらえると思う。
その顧問が社会科教師、と言うのも不思議な話だが、
要するに文学部哲学科、美学専攻、と言う人物は
音楽教師にはなれない、という事らしい。
授業で音楽を教えている人−オケラ部員はこう呼ぶ。は
合唱部の顧問で、こちらも全国合唱コンクールの常連だ。
僕が入学してきた頃、合唱部に強く誘われた。
どうやら将来の伴奏者に、ともくろんだようだ。
それなのにオケラ部に入っちゃった。
授業で音楽を教えている人は、ずいぶんと気を悪くしたようで、
それ以来なんだか受けが悪い。別にどうでもいいけど。
今日は総練だから全員がステージに上がってスタンバって居る。
中坊の僕は打楽器群の端っこで小さくなっていた。
ピアノ弾きがオケラ部に入ったってやる事は無い。
せいぜいが通奏低音だが、そんな曲をいつもやるわけじゃあない。
現にこれから合わせるのだって、
バルトークの「オケ・コン」−「管弦楽のための協奏曲」だ。
これが同じバルトークでも
「弦チェレ」−「弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽」だったら
まだ出る幕もあるけど、「オケ・コン」ではしょうがない。
ステージに上げてもらえるだけでもめっけものだ。
それは一応、みんな僕のピアノの腕を認めてくれているからで、
その点は感謝している。
うちの一軍入りはなかなか大変なんだ。
その一軍のコンサートマスター、というのがどういう存在か、
ここまで言えば分かると思うけど、
まあ、雲の上の人、と言ったらいいだろうか。
学園中の羨望と注目を一身に集める人物、と言って良い。
スポーツ名門校のエースやストライカーみたいなものかな。
それが直樹・・高橋直樹さんだ。
まだ2年・・2年生エース、てとこだけど、
それだけ実力がすごい、ということで、
実際、どっかのコンクールに出れば即、優勝するんじゃないか?
確かにうまいやつの中にはクラブに入らずシコシコやってるのも多いが、
そういうやつでも直樹さんだけは認めている。
「ありゃぁサラブレッドだからなあ・・。」
と連中は言う。
直樹さんの父親といえば・・
高橋征二、ピアニスト、兼作曲家で、
若い頃から世界的に活躍してきた人だ。
日本におけるミニマム・ミュージックの草分けと言っても良い人で、
その関係でスティーブ・ライヒなんかとも親しいらしい。
それでほとんど活動の舞台はニューヨーク、
ということになってしまう。
それでその息子なんだけど、
どういうわけかピアノじゃなく、ヴァイオリン弾きになった。
とにかくド迫力の演奏をする。
パッションがあるって言うか、デモーニッシュって言うのか、
楽器が壊れるんじゃないか・・と心配になるほどだ。
普段は物静かな人だけど、
楽器を持つと、まるで何かに取り付かれたようになる。
去年、3年が引退して
1年だった直樹さんがコン・マスになってから、
確かにうちの楽団は何か、少しずつ変ってきた。
コン・マスに引っ張られてみんなバリバリ、
思い切って弾くようになってきたように思う。
時には指揮者も置いてきぼりにして・・。
その指揮者は3年の小田川さんだ。
頭が良くって優しくて、真面目で、
そして、この人もピアノがうまい。
少なくとも現時点では僕よりも。
まず、第一に体が大きい。
手がでかいから10度ぐらい簡単に抑えるし、パワーもある。
その気になれば弦ぐらい平気で切っちゃうだろう。
その上、頭が良いから解釈が深い。
僕は小田川さんの演奏を聞いて
何度もう〜ん、とうならされた事がある。
常に全体のバランス、てことが頭にあって、
演奏を組み立てているから、
聞き終わるとガッチリした印象が残って、
まるで本人の風貌そのものだ。
本人は芸大か、東大か、進路に迷っているらしい。
もちろん当人は音楽をやりたいにきまってるが、
親の方はつい東大って思ってしまうもんらしい。
でもいつもニコニコしてて、
そういう悩みをひとに見せないんだよね。
小田川さんと直樹さんは良いコンビだ。
暴走気味の直樹さんを小田川さんがうまくフォローする。
コンチェルトみたいだけど、
直樹さんは本当に楽団を引きずっていってしまうし、
小田川さんはそれを無理に抑えるなんて事はしない。
むしろうまく生かしていこうとする。
そうすると、いつもの小田川さんの
う〜ん納得、と言う音楽以上のものに、演奏が化けるんだ。
木管の主席、オーボエの桐生さんがA音を出す。
チューニングが始まった。
直樹さんが立ち上がり、あわせる。
第一、第二ヴァイオリンが続く。
ヴァイオリンの連中は総じて若い。
ほとんどが入学時から経験者だからだ。
それに引き換え、チェロやバスはほぼ全員が高3。
オケラに入ってから転向するためだ。
この低音部が小田川さんの武器だ。
3年同士でツーカーだから、
走り出すヴァイオリンパートを中低音でドライブする。
結果、ド迫力の音になる。
金管の主席はホルンの川島さん。
三代続かないとまともなホルン吹きにはならない、と言うけれど
この人は例外かも。
ゴムホースで一曲吹いてのけたのを見たことがある。
愉快なキャラの人で、とんでもないバカを率先してやる。
オケラの主だったメンバーで一度や二度、
この人のいたずらの犠牲になったことの無い人は居ないじゃないか?
打楽器主席の斎藤さんはマジ、気合の入った人で、
この人のマリンバなんて下手なピアノなど足元にも寄れない。
これが女ってのにも参るよな。
今日は総連だから音楽堂を使ってる。
その観客席の中ほどに、先生はかったるそうな顔で座ってた。
まあ、聴いといてやる、と言う態度だ。
「アキラ、シャキ!としな。」
斎藤さんの声が飛んでくる。
この人はいつもこういう口の利き方だ。
また結構それが似合う。
「ヘイ、姐御。」
大太鼓の前で、少しは真面目そうなポーズを取る。
モノがバルトークだから、確かに打楽器は重要だ。
リズム命ともいえる。
大体チューニングが終わったところで、小田川さんが
「じゃ、Bの3から・・。」
言って指揮棒を振り下ろした。
いきなり太鼓がドン!
弦がものすごいグリッサンドで駆け上がっていく。
金管群が咆哮する、
そしてすぐにトゥッティ−全奏へ突入!
ウワァ・・めちゃめちゃカッコいい・・
としびれているひまは無い。
結構、太鼓は忙しいんだ・・。
・・ものすごくハードな練習だった。
小田川さんは今回燃えている。
それはそうだ、このネタで夏季コンサートに臨まなきゃいけないし、
来年、あの超難関、指揮作曲科を受けるつもりなんだから。
夏季コンサートって言うのは別名“巡業”って僕らは言ってる。
我が扶桑学園オーケストラの全国ツアーの事だ。
何しろ夏は大抵の音楽家が休暇に入ってしまう。
ところが青少年コンサートなるものは、
夏休み期間中にしか企画できない、
学期中にやれば父兄から文句が出るからだ。
それに全国にはバブル期にできたホールがむやみやたらとある。
せめて年に一度や二度、クラシックを響かせてみたい、というわけだ。
でも、「バルトークって誰?」とか言われかねないと思うぞ、僕は。
練習後、幹部(首席奏者たち)が集まって何か相談している。
僕が心地よい汗をシャワーで流そう、てな気分で
帰り支度をはじめていたら、
「おい、山崎、ちょっと来い。」
「ヘイ。」
とか言ってお歴々の前へしゃしゃり出る。
「今度の夏の前座なんだけどな・・。」
と小田川さんは話を切り出した。
夏巡業では室内楽も色々やる。
時間分のオーケストラ曲を仕込むのは無理だからだが、
そこはトップ奏者の面々の腕の見せ所でもある。
「お前、直樹と組まないか?」
「え・・え・え・え・ええ〜〜!」
直樹さんはてっきり小田川さんと組むとばかり思ってた。
これまでもずっとそうだったし・・。
「オレは今年、伴奏までは無理だ・・受験準備もあるしな。
それで直樹に話してみたら・・。」
と直樹さんのほうをチラ、と見る。
「お前でいいって・・
まあ、オレもお前の腕は認めるけど、直樹と組むのは大変だぞ・・。」
小田川さんの声がすう・・と遠のいていった。
頭の中でアカリがVサインを出して、タップダンスを踊ってる。
「お〜い、アキラァ、何、彼女見るような目つきしてんだ?」
川島さんが突っ込むと、みんなは笑った。
僕はもう、顔を真っ赤にして、
「は、はい!よろしくお願いします!」
やっとそれだけを口にしていた。
音楽堂を出ると、もうすっかり日もくれていて、
遅くまで部活をしていた生徒達は三々五々、家路につく。
直樹さんと僕は連れ立って駅へと向かった。
何しろ雲の上の人だから、
こうやって一緒に歩いた事なんて今まで無い・・この姿では。
「ちょっと、寄ってかないか・・家に。」
「出来て来たよ・・あの服。」
僕の頭はもう、それだけでカアッとなり、
あの日の出来事が走馬灯のように駆け巡った・・
あの、青いドレス。
コクリ・・頷いていた。

続く




アニト(12月10日(日)11時51分17秒)
山崎アカリさん、こん○○は。
「書くこと」に自信がみなぎってきた力作ですねー。
かなり専門的な分野ですが、けっして厭味にならず、
知らない世界を関心を伴って覗かせてくれ、とても興味がわきます。
人物描写がとてもいいっ!!!のは、
アカリさんがそれぞれの人を尊敬し、愛しているからでしよう。
タップダンスを踊りながら独自の世界を突っ走ってください。
「青色」が好きなんですか?、わたしもですよ。




山崎アカリ(12月12日(火)10時14分22秒)
アニト様、先輩奴隷の皆様、
このページを御覧になっている多くの皆様方、
アカリでございます。m(_ _)m
☆アニト様
ヒョエェエ〜〜!自信など、全然みなぎっておりません。
お許しください、一生懸命書いてるだけなのです。
>「青色」が好きなんですか?
「青」は清純とか純潔の色、乙女の色なのです。
それでアカリに着せてあげたかった・・
もちろんアニト様がお好きということも考慮しました。
以前どなたかへのレスで書いていらっしゃいました、
青がお好きだと。
☆久仁子様
とうとう悟君も久仁子さんの毒牙?にかかって
おしゃぶりを始めてしまいました。
久仁子さんのようになっちゃうのか知ら?・・(^。^)ワクワクドキドキ。
☆純子様
>本当に力作ですね。
ええ、力作、と申しますか、
思いっきり力が入ってる事は認めます、肩に。
力み過ぎないようにしなくては。でも、止められないのです。
だってこんな事の書ける場所が他にあるでしょうか?
お話はフィクションでもわたしの想いは真実です。
少なくともそのつもり、なのです。
☆綾乃様
>「奥様はマゾ」・・あ、やられちゃった・・
エヘヘ・・やっちゃいましたf^_^;)。
でも綾乃さんが書くと「奥様はマゾ」どんな風になるのでしょう?
読んでみたい気がします。よろしかったら・・いかがでしょう?
☆みずき様
>どうなるかなって思ってたら続くだって・・・
そうなんです・・なかなかエッチに行きつかなくって・・。
そうでなくても助走が長いって言うのに。
で、今回も・・m(_ _)m モウシワケゴザイマセン。
☆数値フェチっ娘様
えぇ・・困ります・・そんなに誉められてしまうと・・
みずきさんや綾乃さん、久仁子さんは
いずれも「空想デート」を代表する書き手の方々ではないですか。
それをこんな駆け出しと比べては・・失礼というものです。
けれど誉めてくださったお気持ちはありがたく頂戴して、
今後の励みにいたします。
ええ、頑張りますとも!ぁ、また肩に力が・・(^_^;)。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
と、言うわけで・・
長〜い助走にお付き合いくださっている皆様、ごめんなさい。
今回も・・ わたしはどうも段どらないと盛り上がらないもので・・・
それでは。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
「失われた時の彼方へ」
●第3章-(直樹)・承前 第2話
今日は玄関から堂々と入った。
誰もいない家はしんと静まり返って、
ダイニングには家政婦さんの用意した一人分の食事。
確かにこんな暮らしが毎日だったら、ちょっとさびしすぎる。
「腹へったろ、なんか食べる?」
直樹さんが聞いた。
「いえ、お構いなく。」
とか答えたいところだったけど、
思春期の胃袋ってのはそういう風に出来てない。
「あ、・・ちょっと。何か・・食うものを・・。」
『な・情けない・・。』
直樹さんはニコ、と笑った。
「うん、じゃ、なんか作っとくよ。
炒め物くらいしか出来ないけどご飯は炊けてるから・・
その間にシャワーでも浴びてきたら。」
確かに一日の汗と埃まみれの体では、あの服に申し訳ない。
「はい、そうします。」
バスルームはトイレのとなり、
落ち着いたタイル張りの広い風呂場。
とにかく汗を流そう。
熱いシャワーを浴びながら、
期待感がぐんぐん膨らんでくるのをどうしようもなかった。
あの、青いドレスと、直樹さんのヴァイオリン、
そしてスタインウェイ・・
まるで夢のようだ。
バスルームを出ると下着と、あの黄色いワンピがそろえてある。
『こういうとこは先生といっしょだな・・。』
ちょっと笑いがこみ上げてきた。
レースの上等な下着、ちょっと大人っぽいブラ。
シュミーズがふんわりと軽く、足にまとわりつく。
さすがに脱衣所に化粧品は置いてないから、
スッピンのままウィッグを被る。
ちょっと中途半端な気がするけど・・
あ、リップがあった。せめてこれだけでも・・。
ワンピを着て、ソックスを穿くと・・。
あの、言いようの無い感じが体を包んでいって・・。
「おはよ、アカリ・・。」
そっとつぶやいて、軽く鏡に手を振った。
直樹さんの料理は上手だった。
一人暮らしみたいなものだから、
朝食や夜食なんかは自分で作るんだそうだ。
炒め物もただ焼いただけじゃなくって、
なんか中華風のあんかけみたいなアレンジがしてある。
「残り物だよ。」
直樹さんは言うけど、それでこれだけのものができれば・・
アカリにはとても出来ない芸当だ。
「これも食べなよ。」
自分のおかずも分けてくれる。
肉じゃがとかおひたしとか、焼き魚・・
ごくごく普通の家庭料理。
「父が、こういうのじゃないといやだって・・。」
へえ、国際派の高橋征二の意外な一面。
でも、そういうものかもしれない。
「わがままな人だからね・・だから・・母は苦労したと思う。」
ポツリ、と言った。
え、お母さん・・
そういえば直樹さんのお母さんって・・。
「僕が七つの時死んだんだ・・
アメリカで父と知り合って結婚した。
まだ、学生だったらしいけど、ガラミアン先生の門下で・・。」
げ!あの、ジュリアードの・・
いくらピアノ弾きでもガラミアン教授の名前ぐらいは知ってる。
世界的に有名なヴァイオリニストを何人も育てた・・。
「ユダヤ人だったんだ。
家族に反対されて、そりゃもう、大変だったらしい。
何しろ“異教徒”が相手なんだから・・。」
異教徒・・そんな事が結婚に反対する理由になるなんて・・
わたしには想像もつかない。
「でも教授が後押ししてくれた。
母は可愛がられてたんだ、ヌブーの再来って。
『My little Neveu』って教授から呼ばれてた・・。」
ジネット・ヌブー・・
一度、先生のところで聞かせてもらったことがある。
ほとばしるような情熱と、清冽な叙情・・
そんな月並みなアオリ文句がバカみたいに聞こえる、
痛々しいほどに真摯でこまやかで、情熱的な音。
コンセルバトワールをわずか11歳で卒業し、
15歳のとき、コンクールで後の巨匠、
D・オイストラフに大差をつけ優勝。
そしてわずか29歳で逝った、ヴァイオリンの「聖なる女司祭」。
「ちょっと来て。」
直樹さんはわたしを連れて二階へ上がる。
一番奥の部屋は・・多分、征二先生の部屋だろう。
立派な木の扉が渋い光を反射してる。
その手前が直樹さんの部屋。
NAOと書かれたネームプレートが貼ってある。
あれ、あれあれ・・。
直樹さんは自分の部屋の前を通り過ぎてしまった。
お部屋に連れてってくれるんじゃなかったの?
奥の突き当たりの部屋のとなりにもうひとつの扉があった。
ちょっとしゃれたヌーボー調のノブが金色の光を反射している。
カチャリ。
開いた中は、真っ暗だ。
窓はすべて締め切られ、何年も使われた形跡が無い。
直樹さんがスイッチを入れると、
暖かい電灯の光がその空間を照らし出した。
右手は壁一面のクローゼット。
左手にはさっきのノブと同じようなデザインの優雅なドレッサー。
そのとなりに蔓草の彫刻が施された書棚。
その奥は隣の部屋に通じているだろう、ドア。
そして正面の窓際にはこじんまりとした文机。
その上にはちょっとこの部屋には不似合いな
古い、システムコンポが置かれている。
そしてその脇に立てかけられてある写真・・
わたしの目は、それに吸い寄せられた。
二人の若い恋人たち・・
男性は良く知っている顔だ。
とても若くて、今よりずいぶんやせている。
ジージャンに洗いざらしのパンツ、
長い髪はぼさぼさだけど、確かに高橋征二、その人だ。
そしてその人に寄り添って立つ女性、
それは・・黒い、長い髪。
カメラをまっすぐに見つめる深い神秘的な光を湛えた瞳。
キリ、と結ばれた口元には強い意思力が感じられる。
左手にヴァイオリンと弓を持ち、
当時でもやや時代遅れだったんじゃないか、と思えるような
質素なワンピースに身を包んで・・
二人の名前が書かれてあった。
「SEIZI」そして・・「NAOMI」
思わず振り向いて、直樹さんを見た。
「母の・・部屋だよ。亡くなったときそのままに・・してある。」
直樹さんは机に歩み寄り、引出しからカセットを取り出した。
「ちょっと聞いてみて、欲しい。」
バッハの曲が流れだした。
無伴奏ヴァイオリンパルティータの「シャコンヌ」。
古いシスコンの音だけど・・これは・・
おこがましいようだけれど、
ガラミアン先生の言ってることがわかる。
こんなの聞いたことが無い。
澄み切った音色が深い悲しみを湛えて、
叫ぶように、すすり泣くように鳴る。
本物の女性演奏家だけが持っているあの、熱い熱い魂の声。
けれど・・この音は・・。
ブルブルと細かい震えが体を駆け巡る。
「わかった・・かい?」
直樹さんはじっと写真を見つめながら言った。
こんな・こんなことって・・
この演奏はたしかにナオミ・・
直樹さんのお母さんさんのものだけど・・
でも・・わたしはこの音を出す人を他に知ってる・・。
「直樹さん!」
わたしは叫んだ。
「僕は、母のように、いや、母になりたかった・・。
アカリは男の人が、泣き叫ぶのを見たことがあるかい?
母が死んだとき、それは僕も悲しかった。
けれど、父は・・
本当にもう、このまま死んでしまうんじゃないか、というほどだった・・
僕は・・恐ろしかった・・怖くて、怖くて・・
独りぼっちになりたくなかった・・。」
「やめて!」
「父の居ないとき、・・この部屋に来るようになった・・
そして母のものをとりだしては・・身につけるように・・
ヴァイオリンもはじめた・・
たちまち夢中になった・・
本当に母と一体になれるような・・そんな感じがした・・
僕は・・そう、なりたかった・・
そして、父さんに愛されたいと・・。」
『いや!いや!やめて!そんなの悲しすぎる。』
「アカリ・・。」
直樹さんはわたしの肩に手をかけて、そっと自分の方に向けた。
「泣かないで。あなたには本当の僕を、
そして直美を知っておいてもらいたいたんだ・・。」
直樹さんはシャツを脱ぎ始める、そしてズボンも・・。
その下から現れる・・
白いレースの縁飾りついたの薄いピンク色のスリップ。
「・・いつもこうして・・母と一体になって・・
私はヴァイオリンを弾くの。」
「あ、あ・・お姉さま・・。」
「それを見抜いたのは高見沢先生・・あの人だけ。
あの人は私を、初めて女として愛して下すった。
私の願いをかなえて下さった・・。
初めて貫かれた時、痛くて、苦しくて、泣いた・・
でもとても幸せだった・・
幸せのあまり泣いたのかもしれない。」
わたしにも覚えがある。
初めてペニスを迎え入れた時の震えるような、感動。
「そうなってはじめてわかったような気がした・・
母の語っている事が・・
このとき、この曲を弾いて、母は・・お母さんは
この世に、愛するものすべてに別れを告げていたのよ・・。」
わたしは、涙が止まらない。
「一人の時、たまらなくなると直美になる。
そうすればお母さんと一緒。さみしさにも耐えられる。」
「アカリがいます。」
ようやくそれだけを口にした。
「これからは、アカリが・・お姉さまはもう一人じゃない。
さみしかったらそれを分けてください、
苦しかったらそれも・・
これからアカリはお姉さまと一緒に泣き、笑います。」
「アカリ・・私の、可愛い、妹・・。」
「直美・・お姉さま・・。」
二人はその場で口付けを交わした。
バッハの音楽が、世界の調和について語っている。
「抱いてください。」
わたしは口にしていた。
「わたしを・・アカリをお姉さまのものにして!
わたしを貫いて、お姉さまのものを下さい。」と。

続く




アニト(12月12日(火)23時26分23秒)
山崎アカリさん、こんばんは。
一生懸命イチモツの奉仕をしてくれる、
いや、モノガタリの書きこみをしてくれるアカリさん、
とても美しくみえますよ。
他の人にむけて書いたわたしのレスもよく読んでくれているようで
ぎゅっと抱きしめ、頬擦りしたい気持ちです。
>だってこんな事の書ける場所が他にあるでしょうか?
ううっ、こんな掲示板を作ったわたしは天才、それとも変わり者?。
これからもアカリさんをはじめみなさんのために
わたしも思いっきり力を入れることにしましょう、アソコに。


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