はじめから読む

沙希(8月15日(火)22時27分59秒)
こんばんは。沙希です。
>アニト様へ。
行頭の空白削除の件、了解いたしました。
そういえば、他の方々の文章を見ますとそうなっていますね、
気づきませんでした。
お手数をおかけします。
ところで、アニト様の、綾乃さんへのレスの中で、
>(主に自分が主人公である)空想で、悲しい結末は思い描かないだろ?。
とありましたが、
私のお話には、自分が出演していないことに、今更気づきました。
このお話は、「空想」であることには間違いないのですが、
自分が出演しない空想って、珍しいかもしれませんね。
自分と同じ名前は、チラチラと出しているんですけどね。
今度は、自分が主人公のお話も書いてみたいです。
MRF−6:女装者
− 第2話「記憶の二重鎖」 − 4th.
「私はね・・・本当は・・・看護婦なんかじゃないの・・・」
窓の外では、梅雨の終わりを告げる雷が鳴り響いている。
雷は、昔から苦手だった。
今回の任務では、自分の正体を明かすことを禁じられている。
もちろん「男」だということも・・・
手首に白い包帯が巻かれた手を、汗をかいた手で握り返す。
「・・・知ってるよ。」
「え?」
「そんなこと、分かってるさ。穂香さんはまだ、見習いなんでしょ?」
「・・・見習い・・・」
「今はまだ研修期間で、見習いの看護婦だって。自分で言ってたじゃない。」
「・・・・・・・・・・」
「でも穂香さんて、とっても素敵な看護婦さんになるよね。
優しいし綺麗だし・・・
僕も将来、穂香さんみたいな看護婦さんになりたいな・・・」
「・・・泉水くんが、看護婦?」
「ま、間違えた!看護婦じゃなくて、看護士だよね、・・・僕の場合。」
「うふふふ。そうね・・・でも、良いじゃない。看護婦でも、看護士でも!」
馬鹿だね、ボク。「自分と泉水くんは同じ」だなんて・・・
まるで正反対だよね。
ボクは、こんなにも素直になれない。こんなにも前向きになれない。
・・・今は、「見習いの看護婦」、それで良いじゃないか。
何を解ったつもりでいたんだろう?
今、この少年は、虐めから立ち直ろうとしているのだから、
今の自分にこれ以上の何が出来る?
・・・大きく深呼吸をして、平静を取り戻す。
「本当はね、僕・・・女の人に憧れているんだ。何て言うか・・・その・・・」
「・・・女の子に、なりたいの?・・・泉水くん。」
「え・・えっと・・・変かな・・・変だよね、僕。」
「・・・ううん。変じゃないよ。素敵だよ。」
「・・・自分が虐められた分、人には優しくしたいって思うんだ。
だから・・・穂香さんみたいな看護婦さんになれたら良いな・・・」
復讐を誓った私。
でも泉水くんは復讐どころか、人に優しくしたいと望んでいる。
どうしてこんなにも、前向きになれるのだろう。
泉水くんが羨ましい・・・
「・・・ねえ泉水くん・・・学校に、好きな女の子はいたの?」
「好きな・・・女の子・・・いたよ・・・ふられちゃったけどね。
・・・でも、もう良いんだ。もっと好きな人ができたから!」
「あら、ずいぶん元気ね。もう心配いらないかな。」
「もっと・・・心配してほしいな・・・」
握りしめた手を引き寄せられ、ベッドの上にもたれかかる。
・・・なんだか変。変な雰囲気だよ。
「穂香さん・・・僕、穂香さんのことが・・・」
「え?・・・え?」
身体ごと引き寄せられ、顔と顔が接近する。
それ以上の勇気がないのか、
泉水くんはそのまま目を閉じ、硬直している。
・・・これはひょっとして、キスするべきシーンなの?
誰がどう見ても、そうだよね。
どうしよう・・・泉水くんは、ボクが女の子だって、信じてるんだ。
男の子のボクが、キスしちゃ駄目だよね・・・!?
(ピーーーッ!!ピーーーッ!!ピーーーッ!!ピーーーッ!!)
「うわっ!!ビックリしたっ!!」
ボクも泉水くんも、二人でビックリした。
呼び出しのベルが部屋中に鳴り響く。
看護婦はピアス禁止だから、部屋に備え付けのベルが連絡手段だった。
これは優子からの呼び出しだ。
「穂香さん、行っちゃうの?」
「ごめんね、お仕事みたい。また、来るから。」
そう言って、泉水くんのほっぺに軽くキスをした。
これくらいはいいよね。
・・・優子からの呼び出しだ。
もしかすると、指令が来たのかもしれない。
あともう少しで、怪しげな雰囲気になるところだった。
助かったよ優子。
それに、もう泉水くんは大丈夫だよね。
・・・そう思いながら急いで部屋を飛び出し、
優子が待機しているナースステーションへ向かうと、
突然、特大のカミナリが病院を襲った!
(ドドーーーン!!バリバリッッ!!)
「イヤーーーーーン!!落ちたぁっ!!」
あまりの音の衝撃にコシが抜けてしまい、ヘナヘナと倒れ込む。
病院を直撃したのか、停電で真っ暗だ。
非常灯のぼんやりした明かりは灯っているが、
明るかった病院が一転してお化け屋敷のようになった・・・
「・・・なに?この感覚・・・!」
薄暗くなった廊下の奥・・・
突き当たりだろうか?イヤな空気が立ちこめている。
別にボクは、霊感が強い訳じゃない。
自慢じゃないけれど、幽霊なんて一度も見たことがないんだから。
この廊下の奥は、どういう訳か、分厚いガラスのドアによって塞がれていて、
厳重そうな電子ロックまで備え付けてある。
ガラス表面に印刷された「KEEP OUT」という黄色い文字が、
威圧感を増している。
でも、この奥の部屋、何かがある・・・
何か、得体の知れない・・・
その瞬間!背後から肩を叩かれるっっ!!
「キャアアァァァッッ!!」
「うわぁぁ!ビックリした!どうしたのよ、穂香!!」
「アアァァァ・・・ァれ?優子?」
なんだ、優子か。
ホッとした瞬間、病院内の全ての電気が回復した。
非常用発電器に切り替わったのだろう。
その間、わずか10秒程だっただろうか。
「いやぁ、今のカミナリ、おっきかったねぇ!穂香、ビックリしてコケたの?」
「うん・・・でも、今ね、何か変な感じが・・・」
「それより早く!主任から指令が届くのよ!今回はメールで届くみたい。」
「メールで?」
廊下の真ん中で、優子持参のハンディパソコンを広げはじめる。
モジュラーを壁の出力端子に接続し、通信の用意をする。
メールで指令の内容が届くなんて、異例のことだ。
「病院内は無線通信が出来ないから、不便なのよねぇ。
いっそのこと電話で連絡しあった方が、楽だったりして。
・・・ほら、来た来た!!」
[受信メール:1件 ダウンロード中]
泉水くんも立ち直った。
さぁ、いよいよこれからが本番だ。
ボクも元気を取り戻さないと。
指令の内容は?まさか「毒を盛れ」なんて言わないでしょうねぇ。
[件名:MRF−6への指令  送信者:主任@C1NEL.COM  ]
[内容:206号のクランケ「泉水雅和」のタンパク質を採取すること。]
[   皮膚の一部、頭髪、体液、精液etc.どれでも構わない。  ]
これだけ?ずいぶん淡白なメールね。
なんて洒落を行っている場合じゃないけど。
・・・あれ?ちょっとまって。タンパク質って・・・
「ねぇ優子。タンパク質の採取って・・・精液でも良いんだよね?」
「うん。そう書いてあるじゃない・・・って・・・あーーーーーっっ!!」
そうよ。先日、不可抗力で採取してしまったんだ。彼の精液を!!
「実は、あれね、冷凍保存してあるの!
せっかく採取したから、何かの検査に使うからって!」
「なんだ!それじゃぁ、もう任務終了じゃない!穂香エライッ!!」
「すごいよね!指令が来る前に任務を達成してたなんて、
MRF始まって以来の快挙じゃない?バンザーイ!」
今回の任務もラクラククリア!
もう、私ってば、優秀なMRFなんだから!
泉水くんのこれからは、ちょっと気になるけれど、心配ないよね。
もうこの病院ともお別れだ。
短い間だったけど、このナース服とも、これで最後かな。
「穂香、ちょっとまって。このメール、続きがあるわ・・・」
[なお、このメールは自動的に消滅する。カウントダウン9.8.7...]
「穂香・・・これって、もしかして・・・」
「・・・うん。ボクも、そんな気がする・・・」
「もしかして、爆発!?ヤバイわっ!逃げるよっ!穂香!!」
「ま、待って!!実はボク・・・腰が抜けてるの!落雷の時から!」
「マジィ!?死ぬわよ!早く逃げてっっ!!穂香ぁっ!!」
[カウントダウン 3.2.1...!]
「もうだめっ!!イヤーーーーーーン!!」
[ 消去完了: <確認> ]
「こらぁっ!!そんなところで油売ってないで、仕事しなさーいっ!!」

                             つづく




沙希(8月16日(水)21時15分56秒)
みなさんこんばんは。沙希です。
>綾乃様
こんばんは。
マルチエンディングですね。
私はDが一番お気に入りでした。
一度落として、持ち上げるのが好きです。
こんどは、マルチシナリオなんてどうでしょう?
>梓様
こんばんは。
旅行うらやましいです。
私は一日中家の中です。
365日、ほとんどずっと家の中。
あぁ誰かに飼育されたい。
誰か私にエサを与えてくれる奇特な方はいないでしょうか?
MRF−6:女装者
− 第2話「記憶の二重鎖」 − 5th.
(司令。MRF−6から、任務終了の報告です。
明日には本部へ戻るようです。)
「そうか。ターゲットのサンプルが届き次第、検査に移りたまえ。」
(はい。既に、準備は整っております。)
「それともう一つ・・・
サンプルを入手するためだけに、なぜMRFを動員した?
病院に常駐の医師に依頼すれば、難なく手に入る物だ。」
(MRFの訓練を兼ねて・・・それだけでは、納得いただけませんか。)
「SAKIとの接触を試みた・・・あの病院に隔離されているのだろう?」
(・・・彼女を目覚めさせる可能性があるのは、河合穂香、一人です。)
「彼女のことは、もういい。
もし今回のターゲットが10人目ならば、彼女は必要なくなる。
それに、仮に彼女が目を覚ましたとしても、
心は閉ざしたままだろうからな。」
(・・・申し訳ありません。では。)
ピクチャフォンの回線を切り、机上のフィルムスクリーンを閉じる。
広い部屋に再び一人きりになると、
壁に掛けられた大型フィルムスクリーンに写し出される、海の映像を眺める。
そうすると、C1NEL実験施設内で起きた、
3年前の事故の記憶が蘇るのだ。
・・・いつからか、それは私の習慣になっていた。
*  *  *  *  *  *
「事故?C1NELで?3年前に?」
昨日の停電の瞬間、僕が感じた異様な・・・「悪寒」とでも言うのだろうか。
そのことを優子に話すと、僕がまだC1NELに入る以前、
3年前に起きた事件について教えてくれた。
「3年前にね、C1NELの実験施設で、人体実験が行われたのよ。
どんな実験が 行われたか知らないけれど、
そこで事故が発生して、被験者の女の子が植物人間になったとか・・・」
「植物人間・・・まさか、その女の子が、今でもこの病院に?」
「そうらしいわ。じつはここ、C1NEL直属管理のメディカルセンターなのよ。
C1NEL側は高度な医療機器を提供し、
その代わりに病院は実験用のクランケを仲介する・・・」
「なにそれ!違法じゃない?人身売買にならないの?」
「あくまでウワサよ。でも、事故があったのは確からしいわ。
もちろん公表はしていないけれど。」
「その女の子、かわいそうだね。
実験台にされたあげくに植物人間だなんて・・・
C1NELを恨んでるよ、きっと。」
「その通りよ。その女の子の生き霊が、怨念をはらしに穂香のところへ・・・!!」
「イヤーーーン!!そんなの、嘘だよ。優子の意地悪!!」
病院での怪談話はシャレにならないよ。
でも良かった。今日でこの病院ともお別れなんだ。
あんな怖い思いを一初日に体験していたら、夜も寝られないよ。
「さぁ、こんな話は終わりにして、最後に・・・あれ?・・・穂香・・・」
「なに?優子。」
「・・・ちょっと・・・バカ穂香・・・あ・・あんたって娘はぁっ!!」
「な、なに?なに怒ってるの?優子。」
「あんた、なにが楽しくて溲瓶ごと冷凍保存するのよっ!
こんなバカ見たこと無い!
こんなの、どーやって本部に提出するのよっ!バカッ!!」
あーん。叱られたぁ・・・
*  *  *  *  *  *
・・・腕に繋げられた点滴が、一滴ずつ落ちるのを見つめていると・・・
昔、どこかで読んだ外国の小説を思い出す。
風に吹かれて、樹から木の葉が一枚ずつ落ちてゆく。
最後の一枚が落ちてしまうと、主人公の少女の命も絶たれるんだ。
もちろん僕の場合は点滴だから、死ぬ訳はない。
逆に元気になるんだ。あぁ、はかないなぁ。
今日で穂香さんは、研修を終了するらしい。
あまりにも短すぎるよ。本当にもう、お別れなの?
「コンコン。こんにちは。具合はどうですか?」
「あ・・・穂香さん!!」
「元気そうね。良かった。泉水くんも、もうすぐ退院ね。」
「・・・うん・・・穂香さんのおかげで、こんなに早く元気になれたんだよ。」
「うふ。ありがとう。私も泉水くんのおかげで、良い研修になったわ。」
あぁ、やっぱりそうだ。今日、穂香さんはこの病院を去ってしまう。
本物の看護婦さんになった後にも、
この病院へ配属されるなんて、そんな保証はない。
すると、もう穂香さんと逢う事なんて不可能じゃないか。
もしこの腕から点滴のチューブを取り外せるのなら、
穂香さんの後を追いかけていきたいくらいだ。
「・・・どうしたの?浮かない顔して・・・気分でも悪いの?」
「・・・うん。気分が悪い・・・熱があるみたいだ。」
「えっ!本当?どれ?」
「・・・っっ!!」
びっくりしたっ!!僕の予想を超えた事が起きた。
なんの躊躇もなく、穂香さんがおでこをくっつけてきたのだ!
健診の時間外だから、体温計を持っていなかったのかな!?
そ、それにしても、この突然の大接近は緊張するよっ!
「もう、熱なんて無いじゃない。嘘はダメよ。」
そう言って笑う穂香さんを見て・・・
やっぱり僕は、穂香さんの事が好きなんだと再認識した。
そしてそれ以上に、穂香さんに対する、憧れの感情も生まれていた。
そう・・・僕は、穂香さんが好きだ。大好きだ。
穂香さんのようになりたい。
穂香さんのように、素敵な女性に・・・!!
「実はね、泉水くんにお別れを言いに来たの。
はい、これ。逆せんべつというか、 お見舞いというか、
もうすぐ退院祝い、というか・・・とにかくプレゼント!」
それは、綺麗なラッピングをされた小箱だった。
穂香さんからのプレゼントなんて、思っても見なかった!
感激のあまり、言葉も出ないくらいだ。
「あとで一人の時に開けてみてね。
ちょっと刺激のあるプレゼントだから、誰にも内緒だよ。」
「し・・刺激の・・ある・・・?」
「そうね・・・退院後「泉水くんの新しい一歩」になるかな。
・・・それじゃぁ私、そろそろ行かないと。」
そう言って、穂香さんは病室を去っていった・・・
なんだか、夢を見ていたようだ。
穂香さんがいた数日間、まさに夢のようだった。
でも、もちろん夢なんかじゃない。
クラスメイトに虐められたことも、自分の手首に傷を付けたことも・・・
穂香さんからのこのプレゼントが、
全ての事を現実として、自分と結びつけるんだ。
決して忘れないよ。
そして、自分を変えていくんだ!
*  *  *  *  *  *
「・・・穂香。彼に何をプレゼントしたの?」
「あ、見てた?・・・あれ、実はね・・・
ボクが初めてC1NELへ来たときに、
優子がボクにプレゼントしてくれたのと、同じモノだよ。」

                       おわり




アニト(8月16日(水)23時25分30秒)
沙希さん、こんばんは。
第2話「記憶の二重鎖」完結おめでとうございます。
あくまでも(主に)ですから、誰が主人公でもかまいませんよ。
某文豪のように猫の視点から書いてもおもしろいと思います。
どのような形式であれ、そこには作者の思考が含まれますからね。
とはいえ、作者名=主人公であった方が、
読む側としては感情移入がしやすくなります。
沙希さんが主人公の物語もぜひ読んでみたいものです。
『別棟』への転記は「わたしの読むリズム」で行いますからご了承ください。


MRF−6:女装者− 第3話「エール」へ

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