私は21歳以上です。



      A ・ K 

                        作:テンちゃん  
第4部  『テツの涙』
     

 「、、、さぁ、、、時間もないことですしサッサとしま
しょう、、、、、、、」

 「、、、、わ、わわ、、わかったカネはやる!、、、、
、、い、いくらだ、、、いくら欲しいんだ!、、カネなら
いくらでも、、、、、」

 「、、、、フフッ、、、、欲しいのはアナタの命よ、、
議員さん、、、、、でも久しぶりの仕事だからチャンスを
あげるわ、、、わたしが先にイッたら助けてあげますわ、
、、、でもわたしより先にイッたらおしまい、、よくて?
、、、さ、おしゃべりはこのぐらいにして、、、、、、」

 ヌプププゥゥ。この瞬間、イワブチはあきらめた。いや
、あきらめざるおえなかったと言うべきか。
 ザラザラ感、ヌメリ感、フィット感。どれを取っても極
上のこの<器官>にかなうはずがない。

 彼女が4〜5回腰をグラインドしただけで早くも放出し
そうになる彼。

 「、、、あらら、、、なに?、、、まだ入れただけです
わよ、、、、、もうギブアップ?、、、、」

 その美しいナースはしかし、さきほどとは違う責めるよ
うな冷淡な目つきでイワブチを見据える。

 「、、、、、コラッ!、、ここを開けろ!、、、、、、
オマエラ、ただで済むとおもうなよ!、、、先生!、大丈
夫ですか!?、、先生っ!!、」

 ドアは今にも壊れんばかりに叩かれ、スリガラス越しに
テツのガッシリとした影が揺れている。

 「、、、そろそろ終しまいにして差しあげるわ、、フフ
ッ、、特別に<このワザ>を使ってあげます、、、」

 と、イワブチは自分のナニ全体が肉部屋のなか、『カズ
ノコ』のようなものでしごかれ、いや、もっとこまかい。
 上質のシルクがウネウネと収縮し、奥のおくから掃除機
のようなすさまじい吸引でナニを引っ張りあげられるのを
感じ、、、、直後、ツマ先から磁石にあつまる砂鉄のよう
に、ゆっくり、確実に微細な<何か>が集積された。
 
 やがてソレは、小さな落雷のように下半身から脳天をつ
らぬいたと思うと、射精の快感が津波のごとく押し寄せた

 ハッキリと『棒』のなかを液体が射出されるのを感じと
れるこの至福。
 いや、『精子』という自分の分身が世の光をあおぐ初の
トキメキ。
 耳をすませばこの細いクダを通る音をテツも確認できた
だろう。

 「、、、ドクスルルビョュンン!、、ドスルルルビュン
!。。、ドヒュンッ!、、ドピュンン!、、ドッピュピュ
ンン!!、、、ドピュュン!!」

 <精>のハーモニーが作り出す妖しい美曲。

 が、ソノ行為はなおも継続しているのか、腹の内臓すべ
てを吸い取られるような、例えて言うなら『魂』を抜き取
られるような感覚だった。
 
 「、、ガッア、、お、オゥ〜ゥゥゥゥゥ!!、、、、、
、、かはっ!、、、ゥアァァァァァァァ!!!」

 カッッと目を見開き、断末魔の叫びをのどから鳴らすイ
ワブチ。
  コウガンで生産された限りある精液は、またたく間に彼
女に取り込まれる。
 しかし、、、しかしだ!、、彼の体は奇怪なことに、、
、、縮んでいるではないか!

 上に乗った女性はソレを受け止めるように天井に小クビ
を曲げ、天をあおいでいる。
 <セイレーン>、、、、そんなものではモノ足りない。
 『白衣の女神』をほうふつさせ、そして美しい。実際、
弱くはあるが光っているのだ!
 肉体が(光りを放つ)など通常考えられない。
 
 ホタルのような淡い蛍光色が彼女の肉体でゆっくり明滅
し、一種のオーラか。
 カゲロウのごとくモヤモヤとした『空気の揺らぎ』が上
にまたがっている娘を優しく包みこみ、上へ上へと浄化さ
せていく。
 彼のエネルギーを受け入れたソノ時からセミロングの髪
はフワァァ、フワァと宙に向かい浮き上がる。
 瞳はゆるく閉じ、薄く塗ったアイシャドーが蛍光灯にキ
ラキラと反射していた。

 「、、、ンンッ、、ン、、、、ン、、、、ン、、、、、
、、まだまだ出ますわね、、、、アナタのいのち、、、、
、、ン、、、、ン、、、ンン、、どうです?、、最高でし
ょう、、、」

 イワブチの巨体は空気の抜けた風船のようにシワシワに
なりつつある。
 肉に食い込んでいた手首の包帯もユルユルになる。

 「、、カハッァァァ、、、、ァ、、、、ァァ、、、、」

 夢だ、、、夢のようだ、、、
 
  心停止前の<心室細動>がさらに彼に喜びを与える。
 ベーターエンドルフィンは絶え間なく彼の脳内ペプチド
と結合しつづけ、電気信号の<命令>を聞き、活性化した血
液中の『プリン体』は増殖を余儀なくされる。
  普段、リンパ節をウロウロしている『T細胞』も、な
にごとか?と、<母船>のゆく末を案じる。

 当然苦しさはないだろう。彼は<脳内麻薬>により、むし
ろ、めくりゆく雲海に身をゆだねるような、幼いころ絶対
安全である母親の胎内で、羊水にプカプカと浮いてるよう
な恍惚感と虚脱感を同時に感じているはずだ。  

 吸い込まれる、、、、、すいこまれるるるぅぅ、、、
イワブチの考え、思考はそこまでだった。
 そして彼は考えるのをやめた。なにもかもやめた、、、
、無駄だ、、、、なにより、、、キモチがいい、、、
 今はただ、こうしていたかった、、、、、

 『アダムズ・ストークス症候群』別名、終末呼吸。

 心室細動により無酸素状態に陥った脳で、ふだんとは別
の呼吸中枢スイッチが入り、懸命に体内に酸素を取り入れ
ようと、イワブチの口とアゴが無意識のうちに反応してい
る。
 イビキにも似たホラ貝のような呼吸音。
 溺死する間際に多い症例だが、この時、彼の脳細胞はな
かば死滅し、第二連合野からは『快感の象徴』ともいえる
ノルアドレナリンが大量に分泌しているはずだ。
 いくら肺に酸素を取り入れても、心臓が機能していない
以上、それを脳に行き渡らせることはできない。
 
 太古の昔から人間という生命が獲得した生命維持装置。
だが、その防衛本能は時として<無駄なアガキ>という文字
にすげ替わる。
 
 手元に『チトキン酸グリセリン』でもあれば直接、心の
蔵に注射、バイタルを確認後『フェノミナールボスミンB
』を小量投与えることにより、、、
 いや、、、すでに手遅れか、、、、 

 ガククッと泡をふいた彼は、ミイラのようにしぼんだ頭
を横に垂れた。
 よほどの快楽だったのか。痩せ細った老人の口もとや目
尻にはうっすら笑みさえうかがえた。

 「、、、ゥ、、、、ン、、アナタの『気』、なかなかオ
イシかったですわよ、、、、すこし黒く焦げたところもあ
って、、、、あまりイイ生き方してこなかったようですわ
ね、、、、せいぜい成仏なさい、、、、、」

 赤くエロティックな舌をチロッと彼のシワシワの唇に這
わせると『妖女』は結合した部分を惜しむように抜き取り
、包帯などの備品を撤収する。

 「、、、いいかげんにしろっ!!、、、オマエラ、そち
らの方を誰だと思ってるんだぁ!、、先生!、、、返事を
してくださいっ!、、、、は、はやくここを開けろぉ!」
 
 テツは数歩うしろに下がり、アメフト仕込みのタックル
をドアにくらわした。
 取っ手の部分、鉄でできた細かな部品が音をたて辺りに
散らばる。

 バタァァン!!、、、、、、ヒュ〜〜〜〜〜〜、、
 
 テツのほほにひとすじの風があたる。
 病室には誰もいない。いや、変わり果てたイワブチの亡
きガラがベッドに見える。
 正面の窓が開けられソコから吹く風がバタバタとカーテ
ンを揺らしている。

 そ、そんな、、、、、ここは8階だぞ、、、、、

 もはや口に出して言える状態ではない彼の足もとに、外
から吹く風に乗り、一枚の紙きれが舞った。

 そしてソレを読んだテツの目からは、知らず知らず熱い
ものが流れで、その場に座りこんだ、、、、
 

 <先生の命もらいうけます、、、、それからテツさん、
、アナタのお母様の医療費、今後、国家が責任をもって負
担していきます、、、今までのアナタの行い、思想、素晴
らしいものをお持ちです、、これから、、、、、そう、こ
れから誇れる仕事を持つことがアナタの為であり、お母様
の為でもあると思います、、、遅くはありません、、これ
からです、、、、、A・K>

 テツは泣いた、、、、子供のように泣いた、、、、

 チクショウ、、、バカだった、、、、、、クッ、、、、
チクショウ、、、、

 今までの自分に対する自責の念、深く悲しい声は開け放
たれた窓の向こう、漆黒の闇にゆるやかに溶けていった、
、、、、、、、、、、、

                    つづく


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