私は21歳以上です。


エスニック
 魔法陣

                                               その3


  そして目が覚めたときには、ごらんの有様になっていたというわけだ。

 どうやって運ばれたのか、俺はいつのまにか講堂から、旧校舎にある古ぼけた教室に移されていた。あれからどれくらいの時間がたったのだろう。教室の窓の外は真っ暗になっていて、まるで真夜中という感じだ。教室の周囲の壁には、何十本ものろうそくが灯され、風もないのにゆらゆらと揺らめいている。

 机やいすはキレイにかたづけられていて、床の上には大きな魔法陣が描かれていた。よく黒魔術の本などに載っている、記号がいっぱい書かれていて魔法の力を引き出す力があるとかいうあれだ。なんと俺はその魔法陣の上に大の字状態で寝かされていたのだ。

 これでは、まるで俺は何かのイケニエじゃないか。俺はあわてて起きあがろうとして、自分の身体がまったく動かないことに気がついた。別にロープなどで縛られているわけでもないのに、手も足もびくりとも動かない。しかもいつのまにか衣類は全て脱がされて、素裸のままにされている。

 何かどうなっているのかわからない。混乱する頭にさらに新たな混乱が追い打ちをかけた。ロウソクとロウソクの間の暗闇の中から、不意に何人もの人の姿が現れた。それは頭からすっぽりとフードをかぶり、色とりどりの薄衣だけをまとった、何人もの半裸の女達の姿だった。

 彼女たちは深くフードをかぶっているため、暗いろうそくの明かりだけでは、その表情は全くうかがい知れない。しかも一言も言葉を発することなく、無言で取り囲まれたことが、恐怖心を異様に高めていく。

 その緊張に耐えられず、俺は腹の底から振り絞るようにして叫んだ。 
 「なっなんだっ」。
 動転して俺の声はうわずった情けない声にしかならなかった。

「お目ざめ? 先生」。
 忘れようとして忘れられない、聞き覚えのある声がした。マヤだ。
 マヤは女達の中から一歩づつ俺に近づきながら、彼女達を代表して言った。
 「どう?いい眺めでしょう。男だったらヨダレが止まらないはずよね。本当なら生きている限り、ここにいる娘たちと毎晩でも快楽を楽しむことのできる権利を、手にすることだって出来たでしょうにね。ホントに残念だわ、ふふふっ」。

 完敗だ。自分の軽率さを後悔したが、今となっては後の祭りだ。

「私があれほど忠告したでしょ。誰にも言っちゃダメだって・・・・。この学園のことで私が知らないことなんてないのよ。でも、よりによって、あのフヌケの教頭なんかに、相談するとはね・・・・。バカなことをしたもんだわ」。

「・・・・・・」。
 俺は何も言葉を発することが出来なかった。マヤは妖しい微笑を絶やさないまま、話を続けた。
「この学園の中で、わたしに逆らう者は許さない。私はこの学園の真の支配者であり、偉大なる魔の力によって愚かなる者共を裁く権限を与えられし者。私に刃向かう者には、容赦はしない。みせしめの血の制裁があるのみ」。

 マヤの目の光が異様な輝きを帯びていく。それは威厳と自信に満ち満ちたものであり、しかもそれはあまりに魅惑的なもの。男の官能をとろかしてしまうような、あまりにも魔的な美しさだった。

 「今宵は、年に一度のサバトの夜。心ゆくまで快楽をむさぼることの許された夜。魔の快楽に身も心もゆだねて、淫らに狂う夜なのだ。この偽善にまみれた男を、今宵の餌とし魔王への生け贄としよう・・・・・。我らで分かち合い、我ら魔に身を捧げし者共の血の誓いを新たなものとするのだ」。

 周りを取り囲んだ女達から、一斉にため息とも、歓声ともとれる声が漏れた。まるで獲物を前にした猛獣が、舌なめずりをするかのように。

 しだいに言いしれぬ恐怖感が俺の心を押しつぶす。その重圧に耐えられずに、俺はみっともない言い訳を始めだした。
 「マ、マヤ・・・、これはどういうことなんだ。たのむ。乱暴は止めてくれ・・・・。俺はおまえ達を教育する立場として、やむを得ずだな・・・・。うっ、どうしてこんな・・・たのむ、か、身体が動かないんだ・・・・」。

 マヤは、謎めいた微笑をたたえたまま、ゆっくりと俺に向かって告げた。

 「愚かな男ね。身体が動かない理由すらわからないようね。私たちがお遊びで魔術遊びをしてるとでも思っていたのかしら・・・・?。ふふふっ、教えてあげるわ。おまえの身体の力は、すでに私の精神魔術によって完全に封じられているのよ」。

 魔術?。そんな子供だましに・・・、と俺は思ったが、マヤの言うとおりだ。手も足もまるで見えないロープで縛り付けられているかのように、ピンとつっぱったままの状態で、自分の意志の力だけではどうにも動かすことが出来なかった。

 「ねっ、いくら頑張ってもビクとも動かないでしょ。私がこの魔術を解かない限り、おまえはただの人形と同じ、ただのデクのボウにすぎないのよ。くふふっ・・・・、ねっ。悔しいでしょ」。
 「・・・・・・・」。

 「ふふふっ、でもね悔しいついでに、もう一つだけ教えてあげるわ。魔法の力によって筋肉を麻痺さているのは、手足と胴体の主要部だけなの。つまり例外としてある2ヶ所だけは動かせる状態にして、残しておいてあげてるのよ。
 「さあて・・・、その2ヶ所ってどことどこだと思う?・・・」。

 俺の反応をゆっくりと楽しみながら、マヤの口調はしだいに、猫がネズミをいたぶるかのような残酷なトーンを帯びていく。

 「ふふふっ、知りたいでしょ。知りたいわよねぇ・・・・。じゃ教えてあげるわ。それはね・・・・、首から上にあるアタマと、おまえの大切なア・ソ・コ・・・。そこだけは、残しておいてあげたわ。なぜかって? わかってるじゃない。おまえの苦しむ表情と、快楽に悶える姿を、たっぶりと見せてもらうためよ」。

 「おれをどうするって・・・・」。

 マヤは俺の質問に答えず、あいかわらず謎のほほえみを浮かべたまま、俺の下半身のほうに移動すると、そこで腰をかがめた。そして、いきなり俺のペニスを掴んだのだ。

 「なっ、なにをする・・・」。
 「さあて、そろそろお目ざめの時間よ、ふふふっ・・・。全身は硬直して動かなくっても、身体に加えられる感触は、全て敏感に感じられるでしょ。ほら、ここをこうされるとたまらなくって? ほら、気持ちいいでしょ・・・?」。

 魔性の女マヤは目の前の獲物に対して、まず指先による攻撃を開始した。彼女の指先がペニスを包み、ヤワヤワともみしだくたびに、耐えられないほどの快感が、俺の脳天に向けて走り抜ける。
 
「ふふふっ、私を拒むことなんてできないわよ。おまえの身体は、すでに私達の支配下にあるのだからね」。

「うっ・・・・」。
 自分の意志ではどうすることも出来ず、俺のものは彼女の指先によって、あっというまに勃起していた。自分でも驚くほどの強度に達している。どくんっどくんっと、ペニスの先端に血液が逆流し、耐えられないほどの快感に全身が支配された。

 一方的に弄ばれている屈辱感と、教師としてのプライドをズタズタにされたことからくる敗北感に、俺は身もだえていた。

 「でも考えたら、ちょっと可哀想ね。こんなにいいモノを持っていながら、今晩中にその全ての精を、吸い尽くさなくちゃならないなんて」。

 マヤは後ろを振り返って、周りの女達を振り返った。女達からは忍び笑いのような、クスクスいう笑い声が起こった。

 「エロイム、ヒロイム・・・・マキアペリゥム・・・・・」。
 マヤは俺のペニスをも弄びながら、何か呪文のようなものを唱えだした。そのとたんに、俺の全身が急に熱くなり、そしてペニスにはズキンッという衝撃が走った。今まで感じたことのない不思議な感覚だった。全身の力が全てペニスの一点に集中したかのような・・・・。

 「どうかしら? ほらアソコが最高に膨張を始めたでしょ。もうこれで、おまえのアソコは、死ぬまでボッキしたまま。ふふふっ、今夜の宴にふさわしい身体にしてあげたわ。いくら射精したくってもそれは許されないし、射精をしたところで、決して小さくなることも出来ないの。おまえの全ての精を出しきるまで頑張りなさい・・・」。

 マヤはそう言うと、ペニスから手を離して、身にまとった魔女風の衣装を脱ぎ始めた。ローブの下からは、若々しい女子高生らしい裸身が現れた。マヤははずかしげもなく、下着だけになり、さらにブラジャーとショーツも脱いでいく。

 俺はマヤの浮かべる残酷な表情に、これからこのマヤ達、魔女の群れが、繰り広げようとしている、淫らな儀式への恐怖に思わず声を上げた。手足は動かなくっても、なんとか首だけは動く。俺は必死で首を左右に振りながら情けない悲鳴を上げた。

 「うっあっ、やめろーっ」。


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