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エスニック

 くの一の忍法修行 番外編
                            
 まだ残暑の残る季節とはいえ、早朝の滝の水は肌を刺すほどに冷たい。
 みづき、ゆりね、あかね、こつぼ、ひらめ。五人のくの一達は、無言のままで、その冷たい滝に打たれている。自ら進んで水垢離(みずごり)の行を行っているのだ。一心不乱に精神統一をして、心の中にある不安や雑念を払う。その表情はまさに真剣そのものだった。

 冷たい滝の水が、髪を濡らし、頬をぬらし、そして首筋から胸元へと忍び込み、そして全身をしっぽりとをぬらしていた。彼女たちがまとった白い襦袢は、肌にぴったりと張り付き、その美しい素肌の輪郭を浮き立たせていた。その姿はまさに天女か妖精のような神秘的な美しさを形作っていた。

 しかしながら、その可憐な姿とは裏腹に、彼女たちこそは、想像をはるかに越える苦行に耐え続けてきた、優秀なくの一の卵達だった。

 並の男ですら音を上げるといわれる武芸一般、剣術や棒術、弓道、手裏剣などの厳しい鍛錬はもちろんのこと、火薬の扱いや薬の知識、さらには足腰を鍛える山野の跋渉、長時間にわたる水中潜伏、一週間にわたる断食、おびただしい毒虫の棲む横穴での一昼夜苦行など、およそ忍者として必須である数々の精神修行にも耐え、頑張ってきた者達だった。

 そして、今宵予定されているのは、「みのむし」とよばれている一種の儀式であり、かつ他流試合なのである。この試合に勝つこと、これこそが彼女たちが一人前の伊賀くの一として、認められるかどうかの大きな試金石となるのだ。当然みんな真剣にならざるを得ないわけだ。

 精神を統一した五人のくの一達による、その気迫に満ちた水垢離の行は、その後太陽が昼天高くに昇っても終わることなく、依然として滝壺には、岩を打つ水音だけが響いていた。


 伊賀くの一の里。男子禁制の女忍者達の村。伊賀五系統のうちの百地党に属する、くの一を養成するために作られた隠れ里である。お婆(ばば)さまとよばれる女頭領に率いられ、身よりのない少女達を引きとっては、一人前のくの一に仕立て上げるのが目的である。

 日が暮れ、あたりが闇に包まれた頃、その闇に隠れるようにして、5人の忍びがこの里をの入り口に姿を現した。いずれもまだ若く精気に満ちた若い忍者達だった。そしてそれを待ち受ける、年齢の全く見えない一人の老婆。ここの里を束ねる頭領、お婆さまである。 
 「十郎太からきいたのはおまえたちかな」。
 五人を代表して、長身の男が答える。
「いかにも。本日はお手柔らかにお願い申す」。
 「ふん・・・。殊勝な言葉なれど、うぬら我が娘どもを女と思ってなめてかかると、大やけどをすることになるぞ。覚悟はできておろうの?」。
 「むろん、決してなめてなど・・・」。
 「ふっふっふっ・・・、ならよいがの。しかしの・・この婆には全てお見通しじゃて。うぬらの心の内、手に取るように見えておるわ」。

 彼ら五人こそ、今宵の「みのむし」試合の一方の相手である、百地三太夫配下の忍びの者の卵達であった。彼ら自身もこの試合の概要は聞いてはいたが、一晩中にわたって女を抱くことができると聞いて、その高揚した気分は隠しきれるものではない。心のどこかに浮ついた部分があり、それがお婆にはお見通しなのだろう。

「よいな今宵の勝負は、真剣勝負じゃ。くの一共にとっても、そしておまえたちにとってもな。無様なまねをしでかしたものには、容赦なく今後の見せしめとして過酷な運命を申し伝えるのが掟。正々堂々と戦い、そして力の全てを出しきるのじゃ」。

 「もとより我ら、覚悟の上でござる。十郎太様より、以後はお婆さまの下致に従う旨、申し遣ってございます。どうぞいかようにも」。

 「あいわかった。そこな小屋にて待つがよい。刻限となれば、始める故、うぬらも印を結んで控えておれ・・・」。
 「承知!!」。五人が一斉に答えた。


 深夜、子の刻(ねのこく・午前1時)。林の中に異様なものが出現していた。樹齢300年はあろうかという、杉の大木から5本の太縄が下ろされ、その先にはもぞもぞとうごめいている生き物のようなものがぶら下がっていた。 

 その様は、まさにものむしと呼ぶにふさわしい、なんとも異様な光景だった。そのぶら下がっているものこそ、水垢離の行をしていた5人のくの一達と、お婆様の前に現れたあの5人の忍び達だった。

 彼らは一人づつくじで対戦相手を決められた上で、その相手と二人づつの組み合わせで宙づりにされていた。もちろんその対戦に当たっては、着衣は許されていない。着ているものの全て、ふんどしや腰布に至るまでも全て脱ぎ捨て、生まれたままの姿で、その相手と正対することになる。

 しかも両手首と両足首だけでなく、首、胸部、腰、太股についても、その相手と固く縛り付けられている。手足に比べると、腰や胸部については少しだけ緩目に縛られているが、それとて対戦における最低限の隙間であって、実際はほとんど隙間もなく、ぴったりと肌と肌を合わせた状態で、みのむしのように縛り付けられた状態といってよい。

 つまり今宵行われる「みのむし」とは、対戦する男女双方の忍者が、素っ裸のまま正面から密着された状態で宙づりにされ、一晩中にわたりお互いの性技を競うという、くの一の修行ならではの通過儀式なのだ。当然のことながら宙ずりにされる前に、男達の男根はくの一達の女陰の奥深くに挿入され、その対戦が終わるまで決して抜くことは許されていない。男にとっても女にとっても、まことにつらい過酷な戦いなのだ。

 ボォーッ。
 お婆様の合図と共に、「みのむし」の開始を告げるホラ貝の音が響く。いよいよこれから明朝の夜明けにかけて、一昼夜にわたる男と女の壮絶な、そして過酷な戦いが開始されたのだ。

 みずきの対戦相手は、太刀丸というまだあどけなさを残した少年だった。みずきはひとめ彼を見た瞬間に、思わず心臓がどきどきとしてしまった。幼い頃よりくの一の里で修行を積んできたみずきにとって、若い男性を間近に見る機会などはほとんどなかった。まずいことに、太刀丸はみずきが夢の中で描き続けてきた、理想の男性像に近かったのだ。 

 この勝負、あくまで自分の感情を殺し、相手を鍛えに鍛えた女陰の力で、翻弄しつくさなけけば勝つことはできない。男のペースに巻き込まれてしまっては、自らが感じてしまうことになり、その先には敗北しかない。そうと分かっていながら、みずきは太刀丸の男根が自分の女陰に挿入されたとたんに、思わずえもいわれぬ満足感に支配され、「あふっんっ」と甘い吐息を漏らしてしまったのだ。

 ほら貝の合図と共に、いちはやく太刀丸の行動が開始された。ゆらゆらと揺れる不安定な状態の中で、太刀丸の男根がもぞもぞと動き出した。あきらかにみずきの膣内の要所を探りあて、攻撃の糸口をつかもうとする動きだった。男根の容積が見る見るうちに大きく膨らみ、みずきの女陰いっぱいに膨らんでいく。

 さらに太刀丸の唇が、みずきの唇に重ねられ、あっというまにみずきの口の中に舌が乱入した。「あっ!」。みずきが声を上げるまもなく、太刀丸の舌が強引にみずきの舌をとらえ絡まった。あどけない外観とは裏腹の、太刀丸の女を知り尽くしたような攻撃に、みずきは抵抗すらできず一方的に性感を高めていった。

 「くふぅんっ」。
 唇をふさがれ声を上げることのできないみずきの唇から、快感を感じた吐息が漏れる。ずでに乳首は固くとんがり、密着した太刀丸にも十分に気づかれてしまっているはずた。そして下半身からはズキーン、ズキーンと、なんとも形容のしようのない、今まで味わったことがないほどの快感がおそってきていた。

 (ああんっだめ・・・・、こんなことで負けるなんて・・・ううっ・・いいっ・・・なっ、なんてすごい・・・ああっだめっ・・・くっ・・き、気持ちいいっ・・・・)

 みずきは、自分の技すら出せないままに、男にいいように攻め続けられていることに、いいしれぬ悔しさを感じながらも、その男から送り込まれてくる恐ろしいまでの快感に、抵抗のすべを失い、我を忘れて女の喜びに浸っていた。

 一方その横では、みずき達とは対照的に、こつぼが一方的に男を攻めていた。こつぼの相手は一兵衛といった。みるからに自信たっぷりの男で、こつぼが自分の相手だと分かると、にやりと好色な笑みを浮かべていた。この、たかがくの一の卵となめたことが、彼の敗因だったのかもしれない。

 一兵衛は、今まで何人もの女をひいひいと言わせ、自分の男根にもたっぷりの自信をもっていた。大樹につり下げられる前、女陰に男根を挿入した瞬間に、こつぼがみせた恥じらいの表情を、彼は自分の都合のいいように解釈した。

 (こやつ、俺のモノで感じておるぞ・・・。ふふん、所詮はくの一と言っても、女には違いはあるまい、ここはたっぷりと楽しませてもらおうかの・・・ふっふっ・・・)

 一兵衛が自慢のイチモツでこつぼの膣内をかきまわそうと、力を入れたとたん・・・・(んんっ?!!)
一兵衛の顔の表面にいぶかしい表情が浮かんだ。
(うっ、なっなんだこれは・・・!)。
  
 それはなんとも不可思議な感覚だった。確かにさっきまでは彼の自慢の巨根によって、こつぼの膣壁をこじ開けるようにして、狭い女陰いっぱいに挿入していた。その感覚が、突然にふっと何の感覚もなくなってしまったかと思うと、今度は真綿で締め付けるように、じわじわと締め付け始めた。

 そしてさらに女陰の奥からは、その自慢の男根を飲み尽くすかのように、強烈な力が吸い込みを始めたのだった。彼の男根がこつぼの女陰の奥へ奥へとぐいぐいい吸い込まれていく。そしてその男根を完全に包み込んだ膣壁は、その襞のひとつひとつがそれぞれに生き物であるかのように蠢動を始めた。

 (うっ、こ、これはいかん!うっ、なっ何なんだこれは・・・)
ふふっ、こつぼの口元に笑みが浮かび、そしてその目がきらっと光った。この勝負もらったぞ。こつぼはそう言ったのかもしれない。

 とりたてて美人でもなく、目立つ特徴ととてないこつぼだったが、彼女はこの5人のくの一の中でも、こと性技にかけては一番の使い手だった。くねくねとよくしなる腰、吸い付くようなきめの細かい肌、そして彼女の口から発する男の官能を揺さぶるような声、これらが一体となって、波状攻撃を開始したのだ。

 むずむず、ぐねぐね。こそこそ・・・・・
こつぼの女陰が一兵衛の男根を締め付け蠢くたびに、一兵衛の全身に麻薬にも似た、不思議な快感が送り込まれていく。

 本能的に腰を後ろに引き、男根を抜き取ろうと試みた一兵衛だったが、それは不可能な相談だった。一兵衛の腰とこつぼの腰は、何本もの縄によって、ほとんど隙間のない状態に縛りつけられており、この「みのむし」が終わるまで、男根をこつぼの膣から抜き取ることなどできるはずはなかった。

 「ううっ・・・・ぐぐっ・・・・」。
 一兵衛の額を脂汗が流れた。いまや完全に調子を狂わされて、さっきまでの自信はどこへやら。下半身から送り込まれてくる猛烈な快感の津波に、一兵衛の神経は発狂寸前までに追いつめられていた。

 「ふふっ、どう?。私を甘く見すぎたようね」。
一兵衛の表情を間近にみながら、こつぼの表情には、余裕すら浮かんでいた。

 「うっ・・・ち、ちょっとまってくれ・・・、ち、ちょっとたけ・・・・・」。
一兵衛は今や恥も外見もなくうろたえ、そして恐怖の表情さえも浮かべてていた。
 「ふふっ、どうしたっていうんだい?。今までに何人もの女を泣かせてきたんだろ?。大した自信だって言うじゃないか。えっ?女泣かせの一兵衛ともあろう男が情けない声を出すんじゃないよ!」。
 「いや・・・それは・・ぐうっっ・・・」。
 一兵衛がしゃべろうとするたびに、膣の柔肉がぎゅうっと締め付け、頭の中がどんどんと桃色に染まっていく。思考がまとまらず、言葉にもならない。

 「さて、小手調べはこれぐらいで、そろそろ本気でいくわよ」。こつぼはそう宣言すると、縄で縛られた不自由な体を奇妙にぐねぐねと動かし始めた。体を密着した状態で正面から正対しているわけだから、こつぼのその動きは敏感に男にも伝わる。

 乳房が揺れ乳首のぷくりとふくれた先端が、まるで生き物のように男の厚い胸板を愛撫する。縛り付けられた手の指先、足の指先が、相手の指の谷間をはい回る。頬を密着したままの首がまるで蛇のように男の首に巻き付いていく。

 いくら性豪といわれ、何人もの女達を泣かしてきたとはいえ、もっぱら攻めることにのみ技を磨いてきた男にとっては、女の側から積極的に責められることにはあまり慣れていない。むしろそうだからこそよけいに弱みをさらけ出してしまうことになる。

 「うふぁっ・・・くくくくっおぉぉぉぉぉっ・・・おおああっっっっ・・・・」。
一兵衛は目を見開き、大声で悲鳴を上げ始めた。熱く灼熱したこつぼの女陰に拉致されたままの男根からは、彼の生涯で未だかつて味わったことがないような猛烈な快感が襲ってきた。頭の中はとろけそうで、もうまともな思考すら出来なくなっているのだろう。男の口元からは涎があふれ、目もうつろとなっている。

 「うおおおおおおおっ・・・・いくっ・・・・・・」。
一兵衛は絶叫を上げて、男の精を吹き上げようとした。しかし・・・・、こつぼはさらに役者が一枚上手だった。

 「ふふっ、一兵衛・・・、そう簡単に楽にはさせるわけにはいかないわ・・・」。
 いまやこの勝負の主導権を完全に握ったこつぼが勝ち誇ったように告げる。
 「むくくう・・・・・」。
 余裕たっぷりのこつぼに引きかえ、一兵衛はというと、いかにも悔しそうな表情をして、苦悶の声を上げつづれている。

 こつぼの技は、相手に強烈な快感を送りつけながらも、男根の根本をしっかりと膣内の筋肉で縛り付けているため、相手に決して射精することを許さないのだ。蛇の生殺しのように、寸止めの状態で何時間でも責め続けるという、男にとっては地獄の責め苦のような技を拾得していたのだった。

 「ふふっ・・いきたい?。・・・・いきたいでしょうね?」。
 「うう・・・、このアマ・・・」。あくまで強気な一兵衛。
 「朝までまだたっぷりとあるわ・・・。おまえに私の技に耐えるだけの力があるかしらね?。今までにさんざん女をおもちゃにしてきた報いを受けたらいいわ。今宵は女というものの恐ろしさを十分に味あわせてやるわ・・・」。

 こつぼは再び下半身の動きを再開した。こつぼが膣を蠢かす。そのとたんに男の口からはさっきの暴言が嘘のような悲鳴が上がりはじめた

 「うっ、くそっ・・・うおおおおっ・・・つっ!」。
くいっくいっ、こつぼの腰が回転するたびに男の悲鳴が響く。射精することができず怒張はぱんぱんに張りつめたままだ。行き場所のない精液が男の体の中を駆けめぐる。

 「ぐあああっ・・・た、たのむ・・・・」。
いきたい。射精したい。男は哀願にも似た気持ちで女に頼もうとした。気が狂いそうだ。
こつぼから送り込まれてくるすさまじい快感に、もうこれ以上耐えることは出来ない。

 しかしこつぼはさらに激しく腰を蠢かせ、男を責め続ける。このまま朝までこんな状態が続いたら、とても精神は持ちそうにない。こ・・・殺される・・・。

 「た・・・たすけて・・・」。
 歯を食いしばり少しでも感じまいと、抗らいながらも、男は必死で女の攻撃の手をゆるめてもらおうと頼み込んだ。しかし女は今更、男のそんな勝手な頼み事を聞く気はこれっぽっちもない。あくまでこれは「みのむし」の勝負なのだ。相手に弱みを見せた者が負け、決して好きを作らない者のみが勝利を手にすることが出来るのだ。


 夜も更け、満天の星空が消え去り、東の空が白み始める頃、ようやく一晩中続けられた男と女の真剣勝負みのむしが、ドラの音と共に終了した。五組の組み合わせ中、男の忍者が勝利を収めたのはたった一組のみ。あとはことごとくくの一達の勝利に終わった。

 お婆様は喜びの表情すら見せず、静かにその場を去った。4人の忍び達と、5人のくの一達も、いましめを解かれ、疲れた表情でそれぞれの住居へと引き上げた。そして、たったひとり、縄で縛られたままでその場に放置された者がいる。

 今回の勝負で無様な負け方をしたひとり、一兵衛である。掟に従えば彼にはもう忍びとしての将来はない。ただ「過酷な運命」だけが彼を待ち受けているというのだ。しかし何が過酷なのか、実はその中身については誰も知らない。このくの一の里の秘密として、誰も触れようとしない恥部と言われているだけなのだ。

 彼ひとりだけを残して、里を去っていく忍び達を目で追いながら、一兵衛はかすかにのこった意識を振り絞って声を上げた。
「たすけてくれぇ・・・お、俺をここに残していかないでくれぇっ・・・、頼む、つ、連れてかえってくれぇ・・・・」。
 その声を耳にした者は誰もいない。

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