ロードス島異聞録 7


 

13

 

 10日が過ぎた。

 メイによる嬲りは毎日続いている。いい加減、地下室の中には精液の匂いが充満し、耐えきれぬほどになっていた。

 ニースも身体に精液をかけられたまま横になっているらしく、ベッドのシーツは精液を吸ってひどく臭い。

 バグナードは部屋に入るたび、不快な気分に襲われた。

 精神集中が必要な魔法の儀式をやらなければならないというのに、邪魔をされているようなものだ。

「・・・・だが、ううむ・・・」

 バグナードは、すでに若くない。

 青年の頃師であるラルカスに魔法を封じられ、マーモに渡って20余年。

 白髪が生えるほどではないが、さすがに動きに精彩をかく年齢である。

 だが、その彼も、ここ数日は妙な気分のまま動いていた。

 バグナードは、毎日地下室を訪れ、ニースに魔法の儀式を施していた。

 ニースの身体は、行く度に変化している。

 元々の、完成する直前だったプロポーションが奇妙にゆがみ、見るも哀れな形にゆがんでいく。

 凛として美しかった瞳が、どんよりと曇り、焦点を失っていく。

 その様子を見るのが、たまらなく楽しみだった。

 ニースは、バグナードが部屋に入ると、まるで犬が飼い主の帰りを歓迎するように迎え出る。

 足を広げ、膝を手でかかえ、早くしてほしいとせがむのだ。

「はしたない子ねえ」

「あ・・・・ア・・・」

 そして、メイが股間のベルトを外すと、放尿をはじめる。

 顔を赤くし、恍惚の笑みを浮かべ、快楽に身を震わせる。

 全開に開脚して放尿シーンを人目にさらし、ワレメからぽたぽたと精液と愛液がいりまじったものを垂らす。

 そして、ぶ、ぶっと音をたて、まる一日ためきった糞便を尻から吐き出すのだ。

「ひ・・・・・ううん」

 アナルもヴァギナも、張り型によっていつも拡張された状態にされている。

 ニースの尻からもれる糞便は、垂れ流すようにゆるかった。両脚を広げ、秘部をあらわにしたまま、尻から排泄を続ける。

 バグナードは、ニースの痴態をみながら、股間が熱くなるのを感じていた。

「バグナードさま・・・・」

 メイが声をかけてくる。

「お相手をいたします・・・・・」

 彼女はすでに半裸だった。ダークエルフらしいほっそりとした肢体だが、その服装は扇情的だ。

 秘部と胸の先だけをわずかに隠す革の鎧はむしろ男の目を楽しませるものとして、これまでも幾多の男を落としてきたに違いない。

 だが、バグナードは首を振った。

「儀式が先だ」

 

 バグナードがスペルを一つ唱えるたび、ニースの身体がびくん、びくんと揺れる。

 豊か過ぎるほどまで発達した乳房が震え、かすかに大きさを増す。

 ヴァギナからアヌスに振動が伝わり、ヒップがよりつややかに、肉感的な張りを増す。

 自分の・・・・黒の導師の手で、この少女の肉体が変わっていく。

「あ、う、う・・・・ん!」

 いつからか、ニースは身体が揺れるたびにいやらしい喘ぎ声をもらすようになった。

 それがまた、バグナードの股間を刺激する。

 美しいものを、手折ること。

 それが、こうまで甘美な魅力を持っていることにバグナードはようやく気がついた。

 かつての麗しい肉体を面影もないほどに打ち砕き、気高き心を完膚なきまでに押しつぶす。

 自分が、そうした。

 その事実が、たまらないほどバグナードの嗜虐心をそそらせる。

 トロンとした瞳でバグナードを見上げるニースを、もっと壊してやりたい、もっといたぶりたいと彼の心が叫び出す。

 とうとう、バグナードは口にした。

 儀式が終わったあと、張り型をさしこもうとしたメイを押しとどめたのだ。

「ならぬ」

「え?」

 メイを制し、張り型を取り上げる。

「で、でも・・・・それがないと・・・・」

「今夜より、この娘へのせめを禁止する」

「え・・・・?」

「ニースには、以後一切手をふれるな。その上で・・・・・」

 ことこまかな指示が下された。

 メイの顔が、いったいどうしたのだろうと疑問につつまれた。

 それまで、全てをメイにゆだねてきたバグナードが突然変調したようだった。

 

 あそこが、スースーする。

 ニースは、ものたりなさに身もだえした。

 ・・・・結局、ヴァギナに張り型が突き刺さっていたのはまる三日ほどにすぎない。それなのに、それを抜かれたニースの体は、自分の身体の一部を失ったようにひくひくと蠢いていた。

 いったい、なにがどうなったのかとニースの目は主に問う。

「う・・・・ふ、ふぅん」

 昨日まで、自分をずっとせめなぶっていた女性が、自分の前で男に囲まれていた。

 扇情的な黒い服をずり下ろし、男にまたがって腰を振りたくる。

 ぴたぴたと胸がゆれ、男から精をしぼりとろうとする様がニースの眼前に広がっていた。

「うん、もっと・・・・ほら、しっかり・・・・」

 メイの口からは、激しいあえぎがもれていた。

 もともと、彼女は性に奔放な性格だ。

 だいたい、タブーの存在しないダークエルフだ。快楽を得るのに躊躇することはない。

 ニースをせめ続け、自分の快楽を後回しにする日々が続いていただけに、その性交は激しかった。

 5人の男を用意し、次々と彼らを犯していく。あっという間にメイの身体は精液で汚されていった。

「あ・・・・ううん・・・!」

 メイのあえぎには、押さえたところはない。地下室の壁に反響し、いくえにもニースの耳に届いていた。

 ・・・・いま、ニースの身体にふれているモノはなにもない。

 これまで、連日彼女をせめたてていた男の手は、今は別の女性に向けられているのだ。

 眼前の激しすぎる性交に、ニースは心を奪われた。

 誰にも触れられない、自分の身体が・・・・さびしく感じられる。

(いつもなら・・・・)

 胸を吸ってくれる人がいるのに。

 口の前に、肉棒があるのに。

 そういう、とんでもない意識が、頭の中に広がる。

 メイのあえぎ声が、ニースの耳のなかで反響し、彼女の脳を叩いていた。

(ほ、ほしい・・・・・わたしも・・・・・)

 

『聖女よ、自慰を禁ずる』

 

(・・・・・!!)

 動きかけたニースの腕が止まった。

 黒の導師が、部屋をさるときに残した言葉だ。ニースの身体を縛る『制約』の魔法に、あらたな規則を付け加えたものだ。

 股間に這わせようとした腕に、激痛が走る。

 ニースの顔が青ざめた。

 身体は、性交を見せつけられ、これ以上ないほど高まっている。

 だが、男の手は伸びてこない。自分で慰めることもできない。

(い、いや・・・・・)

 絶望がニースを襲った。

 この、身体のうずきをどうすればいいのか。

 触りたい。胸が熱い。

「ううんっ! イク、イクっ!!」

 メイが絶頂を迎えていた。

 積極的に腰を振り、男のモノを深く奥底までくわえこむ。

 精液を浴び、男を深く抱きとめる彼女を見て、ニースは耐えきれぬほど興奮してしまう。

(ほしい・・・・! ほしい・・・・・!)

 最前まで生命の杖が突き刺さっていた秘部は、触れてもいないのにぐちゃぐちゃだった。

 ニースは足を広げ、スースーする秘部を男の前にしめした。

 ・・・・いつもなら、これで、アソコの張り型を誰かがいじってくれた。

(だめ・・・・? なら・・・・)

 ニースの口がせつなげに開かれた。

「ください・・・・私のあそこに・・・・おチンチンを・・・・」

 メイとのセックスに「あぶれた」男の前に立つ。ひざまずき、両手を組んで「おねだり」する。

 だが、男は反応しない。

 ニースはあせった。

「く、ください・・・・! どうか・・・・!」

 四つんばいになり、脚を広げる。お尻を男の方に突き出し、ふるふると振って見せる。

 我慢できない。

 ニースの身体は、もうこらえようもないほど高まっているのに。

「チンチン・・・・チンチンを・・・・!!」

 ニースは、体当たりをするように男の肉棒に突進した。

(せめて、口だけでも・・・・!)

 だが、男はひらりとニースの身体をかわしてしまう。

 肉棒に必死に手を伸ばし、つかもうとしても・・・・腹ボテのニースの動きは鈍重だった。

 軽々とニースの攻撃をかわす。

「お願い・・・・! チンチン! チンチン!」

 口から、泡が漏れ始めた。

 膝がくだけ、もうたっていられない。四つんばいになって、男の肉棒を追い求めるありさまだった。

「あ、あ、あ・・・・!」

 ニースの身体がびくんびくんと揺れ動く。

(も、もうダメっ・・・・・!)

 ニースの手が、クリトリス目指して動き出す。

 身体中を痺れるような痛みが走った。

「あ、あ、あ、ああああああああああああああ!!!」

 びくっ。びくびくっ。

 ニースの身体が揺れた。電撃に打たれたように、2度、3度と。

 彼女の手が、かすかにクリトリスに触れた瞬間。

 快楽と激痛で、彼女は気を失った。

 

14

 ニースは、ようやくのところで自分が狂いかけていることを察知した。

 あれから。

 自分の身体には指一本さえ触れてこない。

 「儀式」のときでさえ、生命の杖は腹部に当てられるようになった。

 身体が熱い。秘部も、胸も、刺激を待ちわびてぞくぞくする気持ちをたたえている。

 それなのに、一切の刺激が与えられない。

 つらかった。

 ワレメがうずいている。

 しっとりと濡れ、開いたままのスリットを自分で見下ろすたび、さびしい気持ちが心を支配した。

「ああ、うう・・・・!」

 ベッドの手すりにワレメを押し付けたい。指をつっこみ、中をかきまわしたい。

 だが、身体が動き始めるととたんに激痛が襲い来るのだ。

 神経を直接火であぶられるような痛み。到底耐えがたい激痛がニースを襲う。

 ニースの手は、秘部に到達する前にがくりと力を失った。

(く・・・・ひい・・・・)

 膣が精液を欲していた。

 中にそそがれたのは、ギャラックに襲われたあの一度きりだ。そのときの、膣内に精液がぶちまけられる感覚が、リフレインしてニースをつつんでいた。

 あれからずっと嬲られ、何度か絶頂さえ迎えたが、それでも・・・・身体の奥底まで凌辱を受けたのはあの一度きりだ。

 あの、不思議な感覚が・・・・・懐かしい。秘部がうずくほどの魅力を覚えている。

(はあ、はあ・・・・・)

 あそこが熱い。あそこに欲しい。

 狂いそうなほどにニースはベッドの上で身悶えを続けていた。

 

(ごめんね・・・・いやらしいお母さんを許してね・・・・)

 

 赤ん坊のいる、その場所に。

 精液をそそいで欲しい。中で、精液を吐き出して欲しい。

 ニースは、激しい欲望をかかえ、眠れぬ夜を過ごしていた。

 身体はいつも快楽をもとめ、欲望は連夜増幅され・・・・。

 それでも、彼女の身体には一片の満足すら与えられない。

                       

 ・・・・彼女が、発狂せずにすんでいたのは神の声の支援があったからに他ならない。

 ニースの心が崩れそうになるたび、女神はやさしく彼女を支えてくれた。

 淫欲におぼれかける自分を許し、はげまし、道を示してくれる。

 ニースは、神の存在に感謝していた。

 こんな絶望的な状況でも教えをくれる神は、ニースにとって絶対の存在であった・・・・。

 

 15日、半月が経過した。

 臨月の妊婦。

 胸も尻もお腹も、これ以上は望めぬほど膨らんでいた。風船のようにふくらんだそれぞれは、針でつつくと破裂しそうなほどに張りつめていた。

 なめらかな曲線を描く身体の各部はやわらかで、男の手になじむ一級品だ。

 もっとも、そこに触れる男はここ数日一人も現れなかったのだが・・・・。

「あ、あ、あ・・・・」

 口と、胸と、ワレメと。

 ニースの三箇所から液体がだらだらとたれていた。

 よだれがとまらない。あそこの渇きは耐えきれぬほどに高まっている。

 母乳はニースの丸い腹部を汚していた。吸う男がいなくなって以来、ニースの乳は自然と垂れ流されるようになっていた。

 愛液はもうワレメにしっかりと満たされている。ツンと鼻をつく匂いは、愛液の匂いか、それとも、別のものか・・・・。

「もはや、子を世に送り出せる体だな、聖女よ」

 黒の導師が呼びかける。

 ニースは、焦点のあっていない目をもちあげて近寄ってきた人物を見上げた。

 ・・・・やや間をおいて、その人物が「男性」と認識した。

「くだ・・・・さい・・・」

 両膝が、自分の手で持ち上げられた。

「なんでも・・・・します・・・・ぺろぺろ・・・・します・・・・だから・・・・・

 おっぱい、吸ってください・・・・

 おまんこ、いじってください・・・・

 おチンチン、たくさん・・・・ほしいです・・・・・」

『ニース、ニース!』

 昔・・・・ずいぶん、昔に聞いた声が響いていた。

 その声は、黒の導師が持ってきた水晶から響き渡っていた。

 悠然とバグナードが掲げる水晶の中には、人影がひとつ映し出されている。

(だれ・・・・だっけ・・・・?)

 ニースの頭は働かない。

 水晶の中に小さく映し出された、細身の影が誰なのか、記憶を探ることもできない。

 ・・・・いや、ニースには、水晶が遠く離れた地の画像を映し出していることさえ分からなかった。

「そこの・・・・人も・・・・おチンチン・・・・」

 水晶に映る男性を見つめて、おねだりを続ける。

 いやらしく腰を振り、男を誘う。一流の娼婦顔負けのセックスアピールだった。

「どうかね、北の賢者」

『黒の導師・・・・! あなたは、娘になんということを・・・・!』

「ふむ、貴公も怒りに燃えることがあったか」

 黒の導師が、水晶を通じての会話を行っていた。

 その中の単語が、ニースの心を打った。

 

 『娘』

 

 意識が覚醒する。

 うすく濁っていた瞳が急激に輝きを取り戻す。

 目の焦点があい、水晶と、その向こうに映し出された映像を捉えた。

「・・・・・・!」

 顔が青ざめる。

 脚を閉じなければと思いながら、それさえ実行できない。

「お・・・・父・・・・さま・・・・」

『! ・・・・ニース! ニース!』

「ほう、正気に戻ったか」

「い、イヤ・・・・・!」

 自分の、あまりに醜く、あさましい恰好にニースは慌てた。

 だが、体が動かない。身体を隠さなければ、という思いがある。

 それなのに・・・・身体を隠したら、犯してもらえない。そんな考えが頭の中でスパークする。

 そう思ったら、ニースの身体は動かなかった。

『ニース、気をしっかりもつのです・・・・』

「あ、あ・・・・・」

 スレインが、ニースの父親が、水晶の向こうから悲痛な声を届けようとする。

 だが、ニースの瞳はもう水晶球を見てさえいない。

 バグナードが取り出した肉棒を凝視し、そこから目を離すことができないのだ。

「く、ください・・・・」

 父親が見ている。

 ニースは、自分の身体がそのことで興奮を覚えているのに気がついた。

 父の目の前で男と交わる・・・・はしたない、決してやってはいけないことだ。

 でも、やったらどんなにか気持ちがいいだろう・・・・・!

「んん・・・・」

 ニースの口が開かれ、舌が伸びた。

 四つんばいの姿勢のまま、バグナードの足元まで這い進む。

 夢にまで見た肉棒が、目の前にある・・・・。

「・・・・・っ」

 唾液が口の中いっぱいに広がっていた。くわえたい。口の中に、精液でもおしっこでも出して欲しい。

 そう思ったら、もう我慢できなかった。

 口づけする。舌を伸ばす。指を添えてなでさする。

「・・・・・・!!」

 歓喜が爆発した。

 すえたような異臭も、しっとりとした肌の感覚も、口内に広がる甘酸っぱい味わいも・・・・。

 全部が全部、堪えきれないほどの快楽をもたらしてくれた。

 むしゃぶりつくように肉棒を嘗め回す。

『ニース、やめなさい! やめるんです!』

 父親の声が木霊する。ニースは、いい気分で喉に射精を受け止めた。

 久しぶりの感覚。

 自分の喉が、精液の味に渇いていたことを思い知らされる。

「早くぅ・・・・こっちにも・・・・・」

 ニースの「おねだり」はまだ続いていた。

 一度出した直後のバグナードに腕をからめ、腰をなすりつけるようにして性交を求める。

 突き出た腹が邪魔になるほどバグナードに抱きつき、脚を広げつづける・・・・・。

『ニース! ニース!』

 スレインの叫びが悲痛なものに変わった。

 娘は、すでに見るにたえ姿に変えられてしまっている。

 その惨状はあまりに哀れだった。

 黒の導師は、いったいどのような意図があってこんな光景を自分に見せるのか。

 少女は、父の前で肉棒をくわえ込み、男の上で舞った。

 

 15日。

 地下室に閉じ込められていた期間は、ちょうどニースが肉棒に飢えた時間であった。

 出産を直後にひかえ、もう十分過ぎるほど育った子供を腹にかかえ、ようやくニースのワレメは満たされた。

 膣内に、半月ぶりの暖かさが広がる。

「あ、あ、あ・・・・!」

 ニースのあえぎが響いた。

 スレインのなげきが続く。

 そして、黒の導師は・・・・・。

 聖女を、自分の手で徹底的に汚したという事実に、たまらないほどの興奮を覚えていたのである。

 彼にとって、人間として最後に交わる女性がかほどに美しい聖女であったことを、彼は神に感謝していた・・・・・。

 そう、これでニースが子を産み落とし、その子をもって最後の儀式を終えれば、彼は人間を超越する存在になるのだ・・・・。

 バグナードの、ニースを抱く手に自然と力が入った。

(これが、最後だ・・・・。とことんまで楽しませてもらおう・・・・)  


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