バレンタインを妹と:千影編

ピンポーン

 来客を告げる電子音が室内に響く。すでに日は傾き、窓の外では街が赤く染まっている。途中で何人かの妹たちからチョコレートを受け取って自分の家に帰ってきた兄は、私服に着替えてゆっくりしていたが、その音に立ち上がって玄関に向かう。

「……あれ? めずらしいな。千影の方から訪ねて来るなんて」

 玄関のドアを開けると、そこには微妙な笑みを浮かべた千影が小さな包みを手に立っていた。妹の誰かが来たのだろうとは思っていたが、千影が来るとは予想していなかったので、兄は少し驚いたように千影の顔を見た。

「やあ……兄くん…………今日は……特別な日…………だからね…………」

 驚きを顔に出した兄に、千影はそう言って手にしていた包みを差し出した。

「あ、ありがとう……」

 包みを差し出す手と微笑を浮かべる千影の顔とを一瞬見比べるようにしてから、兄は顔に出た驚きを消せないままにその小さな包みを受け取った。

「ふふっ…………私が兄くんに……チョコレートを贈るのは…………おかしいかい……?」

「まさか! そんなことはないよ。千影からもらえるとは思ってなかったから、少し驚いただけだって。嬉しいよ」

 慌てて兄は首を横に振った。それを見て千影はまた笑みをもらす。

「ふふふ……それは……兄くんのための……特別製…………だからね……」

「じゃあ、さっそく食べてもいいかな?」

「あ…………」

 包みを解こうとした兄の手を、千影の小さな声が静止させる。

「まだ……私の準備が……できていないんだ…………だから、それは……夜にでも……食べて欲しい…………」

 少しだけ慌てたようにそう言った千影の頬は、よほど注意しなければわからない程度だったが、微妙に紅潮しているように兄の目には見えた。それが意外で、兄はそんな千影の表情をもっと見てみたい誘惑にかられたが、

「ああ、わかったよ。後でゆっくりいただくことにするよ」

 わざわざチョコレートを持ってきてくれた妹に、あまり意地悪をするわけには行かないと自制して、そう返す。千影はその言葉に安堵したように、

「ありがとう…………ぜひ、そうして……欲しい…………」

 と言うと、そのまま挨拶を交わして帰ってしまった。

 

 そのあと、まだ兄にチョコレートを渡していなかった他の妹たちもやがて訪ねて来て、いつの間にか夜になっていった。

「……ふう。これで今日も終わりか……」

 どかっとベッドに寝転んだ兄は、そう言ってため息にも似た大きな息を吐き出した。甘いものは別に嫌いではないし、妹たちもみんなかわいいいい娘だとは思うのだが、2ケタに達する妹たちにちゃんと応対していると、さすがに夜には少しだけ疲れが出てしまった。

「…………あ」

 しばらくベッドに寝そべってのんびりしようと思い、何か本でもないかとふと横を見ると、まだ開けられていない小さな包みがあった。

「……そう言えば、後にしてくれって言われたから、まだ食べてなかったな」

 千影のくれたチョコレート。

 兄は手を伸ばして机の上に置いていたそれを取ると、包装を解いていった。包みの下から現れた箱を開けると、小さな球状のチョコレートが3つ、その中に入っていた。

「へえ……」

 兄はそのうちの一つを手に取ると、口へと運んだ。

「あむっ、んんっ…………」

 口の中に入れたチョコを歯で噛むと、それはただのチョコではなく中に何か入っているらしく、チョコは割れて中の液体が口中に広がっていった。

(ウイスキーボンボンか……?)

 知らずに食べたせいで少し意表を突かれたが、どうやらそんな感じだった。そうとわかって味わってみると、かなりよくできていて、兄は残りの2つもすぐに食べてしまった。

「ふぅん……千影にこんなものも作れたとはね……」

 3つ全て食べてしまった兄は感心したが、その次の瞬間、目の前の部屋が歪んだ。

「あれ……なんか、眠気が……」

 強烈な眠気に襲われた兄は、それだけつぶやくように口にすると、ベッドに倒れてそのまま深い眠りについてしまった。

 

「……やあ……兄くん……」

 気がつくと、いつの間にか兄は何もない闇の中で立っていた。そして、すぐ目の前には微笑を浮かべた千影の顔があった。さっきの眠気がまだ残って、頭がぼんやりとしていたが、とりあえず目の前の妹に言葉を返そうと口を開く。

「あ、ああ…………ちか、……げぇっ!?」

 妹の名前を呼ぶはずが、後半は絶叫に変化し、眠気は問答無用にどこかへ消し飛んだ。最初に目に入ったのは顔だけだったので気づかなかったが、少し視線を下げると、そこには一糸纏わぬ裸の胸があった。胸だけではない。そのもっと下の淡い翳りがある部分まで、千影は何も身につけていない全裸で立っていた。

「な、なっ……!」

 驚きながらも慌てて目をそらしたが、兄の網膜には一瞬とは言え見てしまった妹の裸が焼きついてしまった。

「げっ!」

 そして、再び叫びが上がる。全裸なのは千影だけではなく、兄自身もまたそうであることに気づいたからだった。今さら遅いとはわかりつつも、慌てて股間のものを両手で覆い隠し、数歩分の距離を取って身体ごと後ろを向く。

「ち、千影! 何だここは、どうなってるんだ!?」

 振り向かないようにしつつ、後ろの千影に絶叫するような声で問いただす。

「……ここは……夢の世界…………かな……?」

 見えないのではっきりとはわからないが、千影は特に動じた様子も無く、兄の問いに答えを返した。

「……あのチョコレートには……薬が入っていて……意識だけがこの世界に来るように……なっているんだ…………裸なのは……そのせいさ……」

 兄の肉体はまだ部屋で眠っている状態で、意識だけがここにある。そして、意識だけだから非生物である服は着ていない、ということを千影は説明していった。

「何で、千影はそんなことを……」

 千影が説明する間、そしてそれが終わっても全く振り向こうとはしなかった兄はそこまで口にしたところで、それ以上言葉が続かなくなった。いつの間にか音も無く近づいて来ていた千影が、兄の背中に身体を寄せてきたのだ。

「ち、千影!? 何を……って、!」

 胸の膨らみが背中に当たるのを感じた兄は慌ててまた千影から離れると、半ば反射的に振り返ってしまい、再びそっぽを向いて千影の身体を見ないようにした。だが、それをまた追うように千影は近づいてくる。

「どうして…………こんなことを……したかだって…………? 決まっているじゃないか…………これは夢の世界……だから、現実では許されないことも……ここではいいんだよ……」

「や、やめろって……我慢できなくなるじゃないか。僕らは兄妹なんだぞ」

「……だからさ…………私と兄くんは……兄妹だから……現実にこんなことできない…………いくら私が兄くんのことを……想っていても…………」

 再び兄の前まで近づいてきた千影は、そこで言葉を切ると、なるべく千影の裸を見ないようにあさっての方を見る兄の唇に、自らの唇を重ねた。

「ん…………!」

 妹の唇の感触に戸惑う兄。しかし、千影はそれだけで終わらず、唇を割って兄の口内に舌を侵入させていった。入り込んだ舌は兄の舌を探り当てると、絡めとって一緒に送り込んだ唾液を塗し、流し込む。その味は不思議と甘かった。

「ち、千影…………」

 初めての感覚に、兄が両手で覆い隠していたものが、むくむくと膨らんできてしまう。それと反比例するように、千影を拒もうという思いが萎えていった。

「本当に、これは夢なのか……?」

 唇が透き通った細い糸を引いて離れると、兄は確認するように言った。問われた千影は小さく、だが確かに首を縦に振った。

 それを合図としたかのように、再び兄妹の唇は重ねられる。同時に、兄の手は白く柔らかな千影の胸の膨らみへと伸びた。透き通るような白さを持つそれは、兄の指が触れるとしっとりと吸いつくような感触で虜にした。

「ああ……好きだよ、千影…………もうこれ以上我慢できない……」

「あっ…………ふぅっ……」

 語りかけながら、兄の手が柔らかな胸を優しく揉み回していくと、千影の口から控えめな声が溢れてくる。その声に刺激されるように、兄の唇は千影の顔から胸へと下がり、膨らみの頂にある薄桃色の突起を口に含んだ。すでに充血を始めていたそれを吸うようにして、完全に勃起される。そして、固くなったそれを舌で転がすように舐め回し、あるいは軽く甘噛みしていく。

「あっ……はぁっ…………!」

 より強い刺激に、千影が漏らす快感の声も次第に大きくなってくる。兄が唇を離したときには乳首の周りは兄の唾液でべっとりと濡れてしまっていた。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 興奮で吐く息が荒くなる。上気した千影の肌は赤みを帯び、軽く汗ばんで吸い付くような感覚を増してさらに兄を魅了する。まだまだ触れ足りない。いつまででも愛撫していたいと思ったが、股間はもう痛いほどに張り詰めて、次の段階に進むことを要求してくる。

「千影、そろそろ……」

 最後まで言わなくても兄の言わんとすることを理解した千影は、こくりとうなずきを返す。千影の了解を得た兄は、身体をずらして挿入のための準備をしようとした。

「えっ……」

 入れやすいようにあそこをほぐしておこうと千影の秘所に顔を近づけたのだが、そこはまだ触れていないにもかかわらず、すでに十分すぎるほどの愛液でぬかるんでいた。キスと胸への愛撫だけで、千影も激しく感じていた証拠だった。

「あ、兄くん……」

 じっとそこを見られるのはやはり恥ずかしいのか、千影が兄を呼んだ。

「あ、ああ……じゃあ、行くよ……」

 千影に呼ばれた兄は慌ててそこから顔を上げる。もう愛撫の必要がないほど準備ができているのなら、それ以上見つめている必要は無い。兄は限界まで膨張した一物の先端を千影の入り口に宛がうと、腰を押し出していった。

「っ…………!」

 一物が入っていくと、そこはなんともいいようがないほどの心地よさに包まれた。温かく、柔らかく包み込むそれは、さらに奥へと誘うように微かに脈動している。挿入の瞬間、予想以上の心地よさにそれだけで達してしまいそうになったが、歯を食いしばるようにしてなんとかその衝動に耐える。

 だが、ふと千影の顔を見ると、微妙に歪んで見える。まさかと思って結合部に目を落とすと、そこからはわずかにだが血が滲んでいた。ここにあるのは意識だけなのだから破瓜の痛みなどないものだと勝手に考えていた兄は、それを見て驚いた。しかし、千影はすぐに表情に浮いた苦痛の色を消して口を開いた。

「……兄くん……どうしたんだい…………? 動いてもいいよ……」

 その言葉を受けて、兄は半ばまで突き入れたそのままで止まっていた一物をさらに千影の膣深くへと突き進めていった。ただし、それは千影にそれ以上の苦痛を与えることのないよう慎重な動きだった。

ずっ……ずっ……

 ゆっくりとした動きだったが、むしろそれは兄にとっても、千影の中の様子がはっきり一物によって知覚することができ、勢いのまま激しく動いてしまうよりもかえって快感を得ることができた。

「はっ……はぁっ……! 千影……!」

「んっ……! あ、兄くん……」

 千影のことを気づかった兄の緩やかな動きは、千影の痛みを薄れさせ、かわりに快感がわずかだが感じられるようになった。千影の口から断続的にこぼれる声の微妙な調子からそれを敏感に感じ取った兄は、嬉しくなった。同時に、射精の衝動が再び身体の奥の方から昇ってくる。

「千影……も、もうイキそうだ……! ゴメン、少しだけ……」

 今度はその衝動を無理に抑えようとはせず、快楽の絶頂へ完全に達するため、ほんのわずかにだが動きのスピードを上げた。

「あ、兄くぅん…………!」

 その微妙な変化は、少しだけ慣れ始めていた千影には苦痛ではなく快感の素となった。

「うぅっ……!」

 小さなうめきとともに、一物が千影の膣内で撥ねた。

びゅくっ、びゅくびゅくっ……

 その瞬間、まるで魂ごと全て吐き出すかのような勢いで、白濁液が千影の中に噴き出した。濁液の噴出は続き、千影の膣内を満たしてもまだ終わらず、結合部のわずかな隙間から溢れ出してようやく終わった。

「はぁっ……はぁっ……」

 全てを出し切ったような感覚が終わると、兄に激しい脱力感と眠気が襲ってきた。その朦朧とする兄の頭を千影は抱き寄せて胸に抱えると、小さく呟いた。

「ゆっくり眠るといいよ……兄くん……そして、永遠にこの夢の世界で……」


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