外道お兄ちゃん

「……行ってきます」

 家人に告げて可憐は重い足取りで家を出た。

 今日は「お兄ちゃんの日」。少し前までは心待ちにしていたこの日が、可憐の心を憂鬱にしていた。

 なんでこんなことになってしまったのか。どれだけ考えても可憐にはわからない。可憐はいつもお兄ちゃんに喜んでもらおうと思いこそすれ、怒らせるようなことをした覚えはない。可憐の身に突然訪れたのは理不尽な悲劇としか言いようがない。

 それでも、可憐は兄との待ち合わせの場所に向かう。約束を破ったりすれば、それこそ兄にどんな酷いことをわからない。兄が可憐に悲劇をもたらしたその日に、とても人には見せられないような破廉恥な写真やビデオを記念と称して撮られているのだ。それに、どれだけ酷い目にあわされても可憐は長年抱き続けてきた兄への思いをどうしても断ち切ってしまうことはできなかった。

「……お兄ちゃん」

 これからさせられることを考えると自然重くなる足で待ち合わせの場所まで来た可憐は、そこに兄の姿を認めて小さく呼ぶ。兄はしばらく前からそこに来ていたのか、壁に背をもたれさせた格好で可憐の来た方を見ていた。その顔には薄い笑みが浮いていた。

カッ

 顔は可憐に向けたまま、手首に巻いた腕時計の文字盤を反対の指で軽く弾く。

「可憐…………5分の遅刻だよ」

 つぶやくような兄の言葉に可憐はビクリと身体を震わせて、

「ご、ごめんなさい……お兄ちゃん……!」

 慌てて頭を下げて謝るのだが、兄は深々と下げられた妹の頭に向かって冷たく告げる。

「ダメだよ。罰として今日は1時間のアンコールタイム追加だ」

「そ、そんなの…………」

 可憐は顔を蒼白に変えて絶句したが、兄は抗弁を許さなかった。もうその顔を見ようともせずに、青ざめた可憐の手を強引に引いて連れて行った。


 可憐が連れて行かれた先は、ピアノ教室を開いている大きな家だった。だが、ピアノ教室といっても可憐が普段習っているピアノの先生とは何の関係もない、全く別のピアノ教室だ。

ピンポーン

 兄がドアホンを鳴らすと、すぐに30前の男が玄関を開けて顔を覗かせる。それがこの家の主でもありピアノ教室の先生をしている男だった。

「すみません、先生。妹が少し遅れてしまいまして」

 会釈しつつ兄がそう言って妹の頭を手で押さえて下げさせると、

「やあ、可憐ちゃんにお兄さん。ご心配なく。客もちょうどさっき揃ったところですよ」

 と、ピアノ教室の先生は微笑を返して玄関のドアを大きく開いて兄妹を招き入れる。そのまま廊下を先導して、突き当たりのドアの手前で足を止めた。そのドアの向こうは普段ピアノ教室に使っている広い部屋になっている。先生の話ではもう客が集まっているはずだがそんな気配がほとんど感じられないのは、防音設備が整っているためか。

ガチャッ

 しかし、先生が開けたのは広間へ繋がるドアではなく、身体を右に90度回転したところにある別の部屋へのドアだった。ほとんど物が置かれていない小さな部屋。可憐専用の“控え室”のようなものだというのは前回までに可憐にもわかっていた。今入ってきたドアとは別に、奥の左手にももう1つドアがある。ここで準備をすませたあと、そちらのドアから直接広間のステージに上がるのだ。

「そこに置いてあるのが今日の可憐の衣装だよ」

 物がほとんどない部屋の中で壁にもたれさせるように置かれた真新しい紙袋を兄は示し、着替え終わったらすぐ広間に来るよう言うと、先生と一緒にドアを閉めて出て行ってしまった。

「…………………………」

 ひとり狭い部屋に取り残された可憐は、その場で無言のまま迷うように立っていたが、やがて意を決して壁際の紙袋を手に取った。がさりと袋の中から今日の衣装だという服を取り出して、しかし可憐はそこで顔色を変えた。服を掴んでいる指先が小刻みに震え始める。

「こ……これを、着るの…………?」

 絶望の呟きを紡いだ唇もまた血の気が引いて震えていた。

 

「……いつも会場を提供していただいて、ありがとうございます」

 妹を控え室に置いて廊下に出た兄は、横にいるこの家の主に感謝の言葉をかけた。

「いやいや。私の方こそ、素晴らしいコンサートを開いてもらって、お兄さんには感謝しているよ。なにしろ私は会場を貸すだけでその素晴らしいコンサートにただで参加できるんだから」

 先生は可憐が出て来れないように今通ったドアに施錠しながら答える。それが終わると兄の方を振り返って、ふところから厚みのある封筒を取り出し手渡した。

「これが今日の入場料だ。私たちを除いて12人来ているから、確認してくれ」

 だが、受け取った兄は相手を信用しているのか、封筒を開けて中身を確かめようともせず、そのまま自分のふところにしまう。

「では、私たちも会場で可憐ちゃんを待ちましょうか」

 それを見た先生は、兄の信用を示す態度か、もうすぐ始まるコンサートへの期待か、嬉しそうな笑顔を見せて兄を誘う。兄が無言のうなずきを返すと、先生は広間へ通じるドアを開けて、コンサート会場に入っていった。

ガチャリ

 会場にはすでに他の客は全て集まっている。先生に続いて兄も会場に入ると、先生は今通ったばかりのドアにも鍵を掛けた。もちろん、これも可憐や関係ない他の人間が勝手に出入りするのを防ぐため。そんな心配はほとんどないのだが、念のためだ。

 部屋の中では、一段高いステージになったところに置かれたグランドピアノの周りで思い思いに椅子を設置して座った客が可憐の登場を待っていた。また、それとは別にちょうどピアノの真横の辺りに2つの椅子が主無く置かれてあり、そこが兄と先生の席だった。

「さあ、私たちも座って可憐ちゃんを待ちましょうか」

 他の客の横を通り過ぎる際に軽く挨拶を交わしながら、2人はそれぞれの席に向かうと、そこに腰を下ろした。その席からはちょうどピアノを挟んでその向こう側に控え室に繋がるドアが見える。可憐がそのドアを開けて入って来ようとすればすぐにわかる位置だ。


……ガチャッ

 2人が席に着いてから数分、そろそろじっと待ってはいられなくなった頃、ようやくそのドアがゆっくりと開き始めた。だが、扉の向こうに見える白い人影は躊躇ってなかなかそこから出てこようとはしない。

「……可憐」

 それに業を煮やしたか、兄が対面の椅子に座ったまま低いが重圧感のある声で呼びかけた。その途端、可憐はびくっと身体を震わせた後、おずおずと兄と客たちの待つ会場に足を踏み出した。

「ひっ……」

 しかし、いよいよ“コンサート”が開始されることを察した客たちの視線が自分の方に集中しているのを感じると、やはり足を止めてしまいたくなる。それでも、足を止めてしまったときに予想される兄の仕打ちを考えると、可憐は兄の指定した衣装に身を包んだ姿を客の前に晒さざるをえなかった。

「オオ―――ッ!!」

 可憐が姿を見せた瞬間、客たちから大きな歓声が上がる。ただし、客たちの視線は芸術を鑑賞しようとかそういう目ではなく、もっと卑しい男の淫らな欲望に塗れた視線だった。

 それも無理はない。“コンサート”などと言っているが実際は淫らなショーも同然だ。しかも、今日の衣装を見れば尚更だ。

「ううっ……」

 自分の恥ずかしい姿に男たちの淫らで無遠慮な視線が突き刺さるのを感じて、可憐は小さく嗚咽を洩らす。今日の衣装として可憐に用意されていたのは、なんとシースルーのドレス。しかも袋の中に兄の字でメモも入れられていた。

『これだけをつけてステージに行くように』

 兄の指示に逆らえばもっと酷い仕打ちを受けることはすでに可憐は知っている。兄の指示通りにステージに出てきた可憐は、全裸とさほど変わらない格好だった。半透明のドレスは恥ずかしい部分を隠す役は全く果たすことはなく、青い果実を思わせるまだ発育しきらない小さな胸の膨らみとその頂点のピンクの乳頭も、まだまだ薄い股間の淡い茂みも、シースルーの生地を通して客の男たちの目に晒されていた。

「そっ、それでは……これから可憐のピアノコンサートを始めさせていただきます……お、お客様の皆様にはじっくりとご鑑賞くださいませ……」

 ピアノの前まで歩いてきた自ら恥辱の台詞を吐く。もちろん、これも兄の指示によるものだ。透けて見える自分の恥ずかしい場所を隠すことも許されず、可憐は両手を身体の横に揃えたまま、好色な目で自分の方を見る客たちに深々と頭を下げた。

 客たちへの挨拶を終えると、可憐は客の注目の中ピアノの椅子に腰を下ろす。コンサートというのも全くのウソではない。毎回可憐は何曲かはこのコンサートで弾いている。ただ、曲目については何の要望も無い。男たちの目的はピアノの音色ではなく、かわいい少女が恥ずかしい格好でピアノを演奏する姿にすぎないのだ。

 遠慮のない視線が胸や股間に集中するのを感じて赤くなりながら、可憐は最近習い覚えた練習曲を羞恥をこらえて必死に弾く。恥ずかしがって弾き間違えたらそれを理由に弾き直しを要求され、この地獄のような時間が長引くことになる。だから、どれだけ恥ずかしくてもそれをこらえて演奏に集中しなければならなかった。

〜〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜

 なんとか1曲目は無事に弾くことに成功する。しかし、2曲目を弾き始めると、それまで舐め回すように可憐の身体を見ているだけだった客の男たちが動き出した。

♪♪〜♪〜〜

 何人かの客が椅子から立ち上がり、2曲目を弾き始めたゆっくりと近づいて来る。

「…………っ!」

 それに気づいた可憐は、鍵盤の上で動かす指は止めないまま息を呑んだ。いよいよこの地獄のコンサートが本格的に開始される。

 しかし、可憐はそうとわかっていてもそのままピアノを弾き続けるしかなかった。演奏を中断して男たちから身をかばおうとすれば、それを口実として淫らな仕置きがされるのは確実だった。

「あっ!」

ビ――ン!

 不意に胸が男の手で握られ、可憐は思わず声を上げて指を滑らし、出鱈目な音が部屋に響いた。後ろから忍び寄ってきた男が抱きつくようにして可憐の両胸を揉み続ける。演奏の中断が引き金になったように、可憐に近づいて来ていた他の男たちも一斉に可憐の身体に手を伸ばした。

「あっ! い、いやあぁぁっ!」

 可憐が哀しい叫びを上げるが、男たちは無論そんな声に耳を貸さなかった。

「いやっ! いやあぁっ!」

 こうなることはわかっていたが、それと耐えられるかは別である。視線だけならまだ我慢することもできなくはないが、見知らぬ男たちの手で身体を嬲られることには絶対に慣れることも耐えることもできなかった。それに、一斉に襲われるこの瞬間は、可憐の人生が狂ってしまった最初のコンサートの時のことを思い出させてしまう。忘れたくても忘れられないつらい記憶だ。

 

 その日、可憐は兄に知り合いのピアノの先生のところで可憐のピアノが聴きたいと言われて、この部屋に連れて来られた。先生の他にも数人の男たちが待っていたことに可憐は驚いたが、兄にお客さんがいた方が本当のコンサートみたいでいいと押し切られ、兄と先生、それと数人の男たちの前でピアノの演奏を始めた。実を言うとそのときから男たちの目がなんだかいやらしい目つきのような気がして少し嫌な気持ちはあった。

 たしかにどこかいやらしい視線を向けられていたが、だからといって何かされるでもなく最近習った3曲の曲を弾き終え、4曲目を弾き始めたそのとき、状況は一変した。男たちがいきなり演奏中の可憐に襲いかかってきたのだ。まさか突然そんなことになるとは可憐は想像もしていなかったし、相手はジ分よりも力が強く、人数もあったために、可憐はすぐにピアノの鍵盤に上体を抑えつけられるような格好で動きを封じられ、男たちの指で胸やあそこを弄られた。

「ダメだよ、可憐。ちゃんとピアノ弾かないと。これは可憐のコンサートなんだから」

 可憐は必死に兄に助けを求め、返ってきた答えがそれだった。今にも男たちに陵辱されようかという状況がまるで見えていないかのような言葉。声にも全く動揺はなかった。なぜならこの陵辱劇こそが兄が企画した真の“コンサート”だったのだから。

 ある理由で金が必要だった兄は、万単位の入場料に奉仕等のオプション料金を付けて可憐を男たちの欲望の自由にさせたのだ。着ていた服を剥がれ、身体中を男たちの手で弄り回されて、手や口で男たちのモノに奉仕することさえ強いられた。泣き叫んで必死に許しと助けを請うたが、可憐の身体に群がる男たちはもちろん、兄さえも可憐の哀願を無視し続けた。

 そして、男たちの行為は必然のようにその先に進もうとした。手や口の奉仕だけでは完全には満足できなかった男たちが兄に可憐の“下の口”の使用許可を求めたのだ。

「お、お兄ちゃん! お願いだからそれだけは許して! あたしまだ初めてなの!!」

 なんとか最悪の事態だけは避けたいという思いから出た必死の言葉だったが、可憐がまだ処女だと聞いた男たちはの欲望に逆に火を点けてしまった。口々に高額の追加料金を提示する男たちに、兄も嬉々として応じた。その場で可憐の処女膜はオークションにかけられ、8万円という金額で可憐の処女はその日まで会ったこともなかった男に奪われてしまった。

 

「ほら、ちゃんとご奉仕しろよ!」

 無惨な処女喪失の記憶を思い出していた可憐は、ついさっきまで鍵盤を叩いていた指を自分の一物に絡めさせた男の叱咤で現実に引き戻される。

「は、はい……」

 可憐は言われるまま筒状にした手を上下させて男のモノを扱く。現実といっても、あの日始まった悪夢が覚めないままに現実になってしまったにすぎない。回想の悪夢も、今の悲惨な現実も同じだ。処女を奪われた最初のコンサートの一部始終は兄よってビデオに録画され、可憐がコンサートの出演を拒めばそれに代わる収入源として可憐の周囲の人間を含めた多くの人に販売すると言われているのだ。もう可憐は兄が金を得るための道具にすぎなかった。

「じゃあ、俺はそのかわいいお口で気持ちよくしてもらおうか」

 手に握らせているのとは別の男が、そう言うと可憐の返事も聞かずに臭いを放つ一物を口の中に押し込んでくる。

じゅぷっ、じゅぷっ……

「昨日風呂入ってないんだ。少し臭いかもしれないが、ついでに綺麗にしてくれよ」

 可憐の頭を掴んで無理矢理に前後させる。その苦しさに可憐は噎せそうになるが、その前に着ている意味がほとんどなかったドレスが剥がされ、下腹部の方にもいきり立ったモノが押し当てられる。

ずぶぶぶぶ……

「んっ……んぐっ……! うう〜〜〜!」

 ろくな前戯もなく突き入れられた一物に、可憐は悲鳴を上げようとするが、口に咥えさせられた別の一物のせいでそれも叶わない。さらにもう1本の一物を反対の手にも握らされ、両の乳首にも行き場を無くした一物が擦りつけられた。

 客の男たちは信用できる友人を一緒に連れて来たりするために、回を重ねるごとにコンサートの客は増えていく。当然、可憐の負担が大きくなっていくのだが、一人一人が求めるサービスも、どんどん過激になっていく。可憐がいつまでこの陵辱の連鎖に耐えられるかは誰にもわからなかった。

「よ、ようし、出すぞぉ!」

 可憐の口に咥えさせていた男が、そう言って腰を震わせる。それに呼応するように可憐を取り囲んでいた他の男たちも次々に絶頂の吠え声を上げる。

「イ、イクッ!」

「中に、中に出してやる!」

びゅっ、びゅびゅっ、どびゅっ、どぷっ、びゅるびゅるっ……

 前から後ろから、中から外からと大量の精液が可憐に浴びせられ、全身は白濁に染まった。可憐の周りの空間がその瞬間から精液の臭いで充満する。

 だが、狂宴はこれでは終わらない。男たちはまだ1回ずつ射精しただけだ。人数的に加わっていない男もまだいる。彼ら全員が支払った料金分のサービスに満足するまで、陵辱の宴は終わりのときを迎えない。精液塗れでべとべとになった可憐の身体を特に気にすることもなく、すぐに第2ラウンドが開始された。今度は会場を提供している先生も陵辱の輪に加わって、可憐の口に自分の一物を捻じ込んでいた。

 

「今回から定額にしたのは正解かな? さすがにこうなるといちいちチェックするのは難しいからな」

 ただ一人、兄だけは陵辱の輪に決して加わろうとせず、欲望を剥き出しにして妹に群がる男たちを見ながら小さく呟く。そして、さっき先生から受け取った封筒を取り出して、横目に可憐が陵辱される様子を見ながら、中の万札の枚数を確認した。

「……確かに。これだけあれば今月は十分かな」

 間違いなく人数分の料金が入っているのを確認した兄は、それを懐に戻しながら満足の笑みを浮かべた。


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