「う〜ん、どうしようかな〜」
7月8日。鈴凛の誕生日を明日に控え、兄は悩んでいた。
(何をプレゼントしてあげれば鈴凛が喜ぶかなぁ)
鈴凛の欲しいもの。
まず頭に浮かんだのは、援助(現金)。しかし、いくら何でも妹への誕生日プレゼントにそれは味気なさ過ぎる。
次に浮かんだのは工具セットや機械部品といった類だが、鈴凛が今どんなのを使っているか、どんなのがいいのかということがよくわからない。
結局決まらず、今日の放課後に色々と店を覗いて回ったのだが、これと決めてしまえるようなものは見つけられなかった。
(こんなことなら、初めからどんなプレゼントが欲しいか聞いておけばよかった)
妹を喜ばせることのできるものを自分で探そうと思っていたのだが、失敗した。かといって、誕生日前夜のこんな時間に、今さら何が欲しいか慌てて聞くというのは与える印象が悪すぎる。
「……仕方ない。これでいこう」
しばらく机の前で考え込んでいた兄は、財布の中身を確認しながらさらに考えた後、意を決して小さく呟いた。
(かなりの出費になるけど……かわいい妹のためだ)
カタカタ……
覚悟を決めた兄は、早速キーボードを叩いて明日誕生日を迎える妹へ向けてのメールを作り始めた。
明けて7月9日。
「あっ。アニキ〜〜」
授業を終えて、校門に出てきた兄を、満面の笑みを浮かべた鈴凛が大きく手を振って出迎えた。
「り、鈴凛!?」
まさかそこにもう妹の姿があるとは予想していなかった兄は、思わず驚きの声を発してしまっていた。
「ねえ、アニキ。本当に今日はアタシの言うこと何でも聞いてくれるの? 昨日メールもらってから楽しみで楽しみで、急いで来ちゃった」
兄のすぐ前まで駆け寄ってくると、にこにこしながらそう言って兄の顔を見上げる鈴凛。非常に喜んでくれているようなので、それはそれでいいのだが、兄は1つだけ釘を指しておく。
「ああ。今日は鈴凛の誕生日だからね。でも、金銭的なことだけは限度があるから。これもメールに書いていただろ?」
「大丈夫だよ、アニキ。いくらアタシだって、アニキを破産させるようなことまでしないから」
ぎゅっ
そう答えると、兄の右手を取る。それを軸に身体を反転させて兄の横に並ぶと、そのまましっかりと腕を組んだ。
「お、おいおい……」
肘の部分が妹の柔らかい身体に微妙に当たって、兄は焦るが、
「さっ。行こ行こ、アニキ!」
鈴凛はそのことに気づいてないのか、まるで気にする様子もなく、その腕をぐいぐい引いて兄を促す。
「う、うん」
自分1人が変に意識するというのも妙なので、なるべく平静を装いながら兄はうなずくと、鈴凛に引かれるまま繁華街の方へと向かって行った。
それから後の行動は、だいたい兄の予想した通りだった。
腕を組んで引っ張られるまま繁華街を歩き回り、兄には何に使うものかあまりよくわからない機械部品や道具なんかを買わされる。途中で休憩して喫茶店にも寄り、そこでレモンティーをおごったりもした。おかげで、2時間ほどの間に兄の財布はかなり軽くなってしまった。
「……そろそろ、買い物は終わり?」
財布は軽くなったが、代わりに腕にはずっしりと部品の詰まった袋の重みがかかる。財布の中ではまだ2人の福沢諭吉が最後の砦を築いているが、次の収入があるまでの時間を考えると、そろそろ余裕がない。この2人の福沢諭吉も、実は今日のためにわざわざ出してきたとっておきだった。
「うん。もう最後。最後にケーキ買って、アタシのラボに帰ろ」
鈴凛は兄の問いにそう答えて、ケーキ屋の前に行く。
「え――と。アタシとアニキの2人で食べるんだから、小さいのでいいよね」
ガラスケースの中に並べられたケーキをあれこれと見て、ちょうどいい大きさのケーキが見つかる。
「すいませーん。これくださーい」
値段は1000円強。その程度ならまだ兄も問題なく出せた。だが、鈴凛は自分の財布を出してそのケーキを買ってしまう。
「え?」
当然、ここでも自分が払うと思っていた兄は財布を出しかけたまま鈴凛を意外そうに見た。
「さすがにこれ以上アニキに払わせるわけにいかないでしょ?」
視線を受けた鈴凛はそう答える。
「アニキが破産しちゃったら、これから援助してもらえなくなっちゃうし。ね? アニキ」
ケーキを受け取ったのと反対になる手の指を口元に持って行くと、そうささやいて首を小さく傾げる。
(……なるほど)
妹のそんな様子に、兄は苦笑するしかなかった。
「じゃ、家に帰って鈴凛に買ってもらったケーキを一緒に食べようか。今日1日鈴凛に付き合う約束だからね。これ以上お金の心配しなくていいんだったら、安心して付き合えるし」
軽口を交えて言うと、兄は鈴凛の家のある方に向かった。一応、自分の家に来てもいいように昨夜部屋の掃除もしておいたのだが、鈴凛がラボの方がいいと言うなら異論はない。
荷物があるのでもう腕は組んでいないが、横に並んで歩く鈴凛と、
「ところで、これはいったい何に使うために買ったの?」
「え? それは……」
などと途中で話をしながら歩くと、じきに鈴凛のラボに辿り着いた。
「さ。アニキ、入って」
ラボの入り口の鍵を開けると、鈴凛はそう言って兄を自分の城に招き入れた。
「あれ? もうお茶の準備してあるの?」
中に入って兄は目を丸くした。テーブルの上には2人分のティーカップやフォーク、お湯の入ったポットなどがすでに置かれていた。
「うん、そう。昨日メールもらったときから、今日はアニキとここでお茶するつもりだったから」
そう言って、手際よく箱からケーキを取り出して並べると、鈴凛はポットの紅茶をティーカップに注いでいく。すぐに準備は終わり、鈴凛と兄はケーキと紅茶が並んだテーブルを挟んで向かい合った。
ず……
紅茶を一口すすってから、兄は妙なことに気づいた。
「あれ? ところで、メカ鈴凛は?」
当然ここにいるはずのメカ鈴凛の姿が見えない。その疑問を口にすると、
「えっ? あ、あのコ!? あのコは、その、今はちょっと……」
なぜか鈴凛は焦るように言い、語尾を濁す。
「そ、それに、メカ鈴凛もさすがに食べることはできないから、ここにいても、しょうがないし……」
鈴凛の慌てように、兄はこの話題を終わらせることにした。
「ごめんごめん。いつもここにいると思ってたから、いないのがちょっと不思議だっただけで。別にいいよ」
(たぶん、どこかの調子が悪くて、それを僕に知られたくないのかなぁ……?)
などと頭の中では想像しながら、兄は適当に別の話題を出しながらお茶を再開した。
「……ところで、アニキ。今日はアタシの言うこと何でもきいてくれるんでしょ?」
ケーキも食べ終わった頃、鈴凛はカップの紅茶を飲み干すと、不意にそう訊いてきた。
「何をいまさら……」
今頃になって改めてそう尋ねる鈴凛の意図を理解できず、兄は訝った。
「じゃ、じゃあ、その……」
確認した上で何かを言おうとして、鈴凛は口ごもる。なぜかその顔は真っ赤になっていた。
「……その、じゃあ、……脱いで……」
「は?」
ささやくような小さな声で紡がれた言葉に、思わず兄は聞き返した。
「ぬ、脱ぐって……?」
「……その、ズボンと、その下に穿いてるのも脱いで、アタシに見せて欲しいんだけど」
「じょ、冗談じゃ……!」
いくら“何でも”といっても常識の限度を外れた要求に、思わず声を上げて立ち上がろうとしたのだが、
グラ……
「えっ……?」
立ちくらみのように、一瞬視界がぶれる。バランスを崩して頭から倒れそうになってしまった。
「メカ鈴凛!」
鈴凛の鋭い声が飛ぶ。
ガシッ
どこに隠れていたのか、その声の直後、兄の上半身はメカ鈴凛の腕に支えられていた。
「な、何が……?」
頭がぐらぐらして、全身に力が入らない。後ろを振り向いてメカ鈴凛がどこから出てきたのかを確かめることもできなかった。
「す、スゴイ効き目……アニキ、大丈夫?」
そばに寄って来た鈴凛が心配げに尋ねる。だが、ぐらぐらする頭でも兄はその前半の言葉を聞き逃しはしなかった。
「すごい効き目って、どういう……」
メカ鈴凛に抱えられたまま、声だけは保とうとしつつ問うと、鈴凛はあっさりと白状した。
「実は、千影ちゃんからプレゼントに媚薬もらったの」
鈴凛の言葉に驚いて顔を少しだけ下に向けると、男の象徴がズボンを突き破らんばかりの勢いで自己主張していた。
「千影ちゃんの話だと、クスリが効いてる間は身体の自由がほとんどきかなくなるんだって。じゃあ、覚悟してよ、アニキ」
さらに説明を続けながら、鈴凛は兄のズボンに手をかけた。
「ちょ、ちょっ……」
ずるっ
慌てて兄が抗議する間もなく、下のトランクスごとズボンは引き下ろされてしまった。
「……へえ、こんな風になってるんだ」
ズボンを下ろすときに引っかかった反動でぴこぴこと揺れている肉棒を見ながら、鈴凛は顔を赤くしつつ感心するようにつぶやいた。
「じょ、冗談もいい加減にしないと……」
剥き出しになった肉棒を見られる羞恥と憤りに顔を赤くしながら言おうとするが、
びくっ
言葉の途中で鈴凛の指が肉棒に触れたために、言葉が途切れてしまう。妹とはいえ、初めて触れられた少女の指の感触に、肉棒が震えるような快感を感じてしまっていた。
「……冗談なんかじゃないってば」
そう言葉を返しながら鈴凛は兄の肉棒を弄り回す。しかし、その動きは性的な好奇心と言うよりもどこか観察めいたものだった。
「う〜ん。よし、あとは……」
ぶつぶつとつぶやきながらようやく鈴凛の手が肉棒から離れる。兄はほっとした。鈴凛の意図がどうであれ、触られる兄の方としては他人に触られる新鮮な感触は強い快感を与えられていた。いくらなんでも妹の手の中で暴発というのは恥だ。
カシャッ
しかし、その安堵も束の間、聞き覚えのある音が聞こえて兄は慌てて鈴凛の方を見た。そこには、デジタルカメラを使って兄の股間を撮影する鈴凛の姿があった。
「な、何撮ってるんだ!?」
嫌な想像通りのことに、兄は叫ぶが、身体の自由がきかないため、どうすることもできなかった。
「これくらいでいいかな?」
さらに何枚か兄の股間の写真を撮って鈴凛はそうつぶやく。
「り、鈴凛……その写真、いったいどうするつもりなんだ……」
身体の自由を奪われ、勃起した肉棒を弄られたばかりか、写真にまで撮られてしまい、兄はもう観念したのか、沈んだ声で尋ねる。
(まさか、僕から援助を搾り取るための材料にするとは思わないけど……)
自分の恥ずかしい部分を撮られた写真が何に使われるのかということは聞いておかなければならなかった。
そして、鈴凛から返って来た答えは、
「メカアニキ開発のための資料にするの」
というものだった。
「アニキは1人だけ。アタシたちは全部で12人。だから、せめてメカアニキでも作ろうってことになってたんだけど、四葉ちゃんの調査報告にもここの資料だけはさすがになかったから……」
頭が痛くなりそうな答えだった。
「ゴメンね、アニキ」
そう謝りながら、鈴凛は再び兄の肉棒に手を伸ばした。
「と、とりあえず、これは責任もって処理するから……」
勃起状態の肉棒に、そっと指を絡める。
「そ、そんなこと…………っ」
びくっ
“そんなことする必要ない”と言おうとしたが、肉棒は正直に鈴凛の指から与えられる快感を受け入れ、兄も快感に思わず息が詰まり、言葉を続けられなかった。
すっ……すっ……
「こ、こんな感じ?」
さっきその形状を確かめるために大胆に弄っていたのと同じ手とは思えないほどのおどおどした動きで兄の肉棒が擦られる。兄は何か言葉を返そうとしたが、その前にあっさりと限界が来てしまった。
「…………っ!」
びゅっ、びゅるっ……
「きゃっ!」
絶頂に、声にならないうめきを上げる兄の肉棒の先端から、まるで噴水のように白濁液が噴き上げた。噴き上がった白濁液は鈴凛の手と自分の股間に降り注いでべとべとにする。
「す、すご……これが射精……?」
肉棒が白濁液を噴き上げるさまを見たり、手にこびりついたその雫の感触を確認したり、鈴凛は突然のことに驚きつつも兄の射精をしっかり頭に焼き付けていた。
「ご、ごめん……鈴凛……」
媚薬の影響か、妹にされるという背徳の快楽ゆえか、すぐに射精してしまった兄は、情けない気持ちで一杯になりながら、とりあえず鈴凛に謝った。しかし、
「……あれ?」
射精直後にもかかわらず、兄の肉棒は変わらず勃起を保っていた。これもまた、千影の媚薬の効果なのだろうか。
「まだみたい。メカ鈴凛も手伝って」
鈴凛の言葉に、兄の上半身を抱えていたメカ鈴凛は兄への拘束を解いて鈴凛の横に並んだ。
しゅっ……しゅっ……
そして、今度は2人がかりで兄の肉棒を再び絶頂に導いていく。
ぺろっ
「うっ……!」
鈴凛の指示でメカ鈴凛が肉棒の先端に一瞬舌を這わせる。その快感に兄は震えた。
ぺろっ
そして、2度目のその攻撃で再び兄は限界を迎える。
「で、出る……っ!」
びゅっ、びゅびゅっ……
1度目と変わらない勢いで発射された白濁液は、すぐ前にあったメカ鈴凛の顔を白く汚した。
「うぅ……も、もう充分だよ……」
2回も絶頂に導かれた兄は、心地よい疲れをおぼえてそう言った。
だが、兄の肉棒は本人の意思とは関係なく、その衰えを未だ見せない。
「でもアニキ、まだみたいだよ」
鈴凛はそれを指摘すると、みたび兄の肉棒に手を伸ばす。メカ鈴凛もそれに倣った。
「えっ……?」
しゅっ、しゅっ……
驚く兄をよそに、2度の射精で精液塗れになった肉棒が再び擦られていく。鈴凛はまるで何かに酔ったように恍惚とそれを続けた。
結局、2時間ほどは千影の媚薬の効果で兄の肉棒は萎えることはなく、その間に兄は2桁近い射精を繰り返すこととなってしまった……