HAPPY BIRTHDAY
5/16


…………ポッ

 春歌は布団の中で突然頬を真っ赤に染めた。

 5月15日、夜。眠りについて朝起きれば、16日。その日は春歌の誕生日だった。

「ああっ。兄君さま、そんなっ」

 頬を染めたまま布団の中で春歌が悶える。しかし、当然のことながら兄の姿は春歌の布団にはない。兄と逢う約束を交わしているのは明日の午後だった。今からそのことが気になって仕方がないのか、部屋の灯りを落としてだいぶ時間が経つというのに、春歌は寝つけないでいた。

「でもワタクシ、兄君さまのためでしたら……」

 再び布団の中から恥ずかしげな春歌の声が上がる。

 楽しい妄想の世界に入ってしまっているのか、さっきから何度か同じようなことが繰り返されていた。

ザ――――

 窓の外では雨が激しい音を立てていたが、春歌の耳にはそんな音も入ってはいなかった。

 しかし、やがて春歌にも眠りは訪れる。そして今度は夢の中で兄との逢瀬を続ける春歌だった。

 

 翌日、昨夜までの雨が嘘のような晴天に、春歌は兄との待ち合わせ場所へと急いでいた。髪には念入りに櫛を入れ、着物も普段と柄は同じだが生地のいいものを出してきて、兄の前に恥ずかしくない格好を心がけた。

 約束した場所が見えてくると、まだ時間があるにも関わらず、すでに待っている兄の姿が見える。まだ昨夜の雨の名残で道のあちこちに水溜りがあるため、それを踏まないように注意しながら春歌は兄の元へと急いだ。

「あ、兄君さま、申し訳ございません。せっかくのお誘いに遅れてしまって……」

 着くなり春歌は深々と頭を下げる。慌てて兄は手を左右に振ってそれを否定した。

「違う違う。まだ約束の時間まで10分くらいはあるよ。僕が早めに来ただけだから。それに、今来たばっかりだし」

 そう聞いて春歌は顔を上げたが、そこにはやはりまだ申し訳ないような気持ちが浮かんでいた。

「今日は春歌の誕生日なんだから、僕に気を遣わなくてもいいんだって。それより、どこか行きたい所を教えてよ」

「そ、それでしたら……」


 甘味処、小物屋といった場所を回っているうちに、春歌は兄と一緒に歩く楽しさにさっきのことなど忘れてしまっていた。

「さてと、それじゃあそろそろ僕の家に行こうか。少し小さいけどケーキも買ってあるし、もちろんプレゼントも用意してあるよ」

「えっ……? はい、兄君さま」

 2時間ほど2人で繁華街を回った後、兄はそう言って家に向かおうとした。もう日も傾いてきている。夜には家族との約束もある春歌は、少し名残惜しい気もあったが同意した。

「あ、そうそう。家の前に大きい水溜りができてたから注意して。せっかくの着物が汚れちゃうからさ」

 今日のために下ろした着物のことを気にしてもらって、春歌は嬉しくなった。

 しかし、家の前まで来たところで、

ブロロロロ…………

ザバ――ッ

 大型車が向こうから走ってきて、水溜りの水を車輪で跳ね飛ばした。近くにいた兄と春歌はそれをまともに被ってしまう。もちろん、春歌の着物もあちこち泥水の斑点に彩られた。

 ……お約束。

「あーもー、まったく。酷いことになった。春歌、大丈夫だった?」

 振り向くと、春歌は着物が汚れたことがそんなにショックだったのか、黙ってうなだれていた。

「っと、とりあえず、家の中に入ろうか。こんな格好で道にいたって仕方ないし。ちょっと大きいかもしれないけど着替えに僕の服を用意するし」

 そう言いながら鍵を開けて、兄は春歌を玄関に招き入れる。

「こんな格好……」

 玄関で立ち止まったまま、春歌はつぶやくように兄の言葉を繰り返した。うつむいたまま、顔を上げてこちらを見ようともしない。

「そ、そうだ……」

 兄は慌てて玄関を上がると、バタバタと廊下の向こうへ走っていった。風呂場のところまで行ってすぐまた玄関に戻ってきたが、春歌はその間まるで動こうとはしなかった。その様子に、どんな声をかければいいやら兄は悩む。

「とりあえず、今お風呂沸かしてきたから。すぐ沸くと思うから、そしたら入ってよ。濡れたままだと良くないからさ」

 そう言っても、春歌は何も答えない。困った兄は何か反応を引き出したくて、思いついたことを口にする。

「僕も汚れちゃったし、良ければ一緒に入って背中の洗いっこでもしようか?」

 もちろん本気の発言ではなかったが、途端に春歌が顔を上げた。

「あ、兄君さま……大胆ですわっ! …………ぽっ」

「えっ?」

 春歌を驚かそうと思ったが、逆に驚かされたのは兄の方だった。

「でも、兄君さまがそう言うのでしたら……ワタクシ、誠心誠意兄君さまのお背中を流させて頂きますわっ」

 うっとりと頬を紅潮させて春歌は兄の目を見上げる。てっきり恥ずかしがってイヤがるだろうと思っていた兄は、予想外の反応に冗談だと言いそびれてしまった。

 

 そして、十数分後。

(ど、どうしよう……)

 2人分の着替えを用意した兄は、一足先に沸いたばかりの風呂に入っていた。妹とはいっても、相手は可愛い女の子だ。冗談とはいえ自分から言い出したことを今さらダメと言えずこんなことになっていたが、理性を保ちきれる自信はあまりない。もうすぐ春歌が入ってくることを考えれば、それだけで股間の物は元気になってしまいそうだった。

ガチャッ

 ドアが開いて、擦りガラス一枚向こうの空間に春歌が入って来た。それがわかると、ぼやけて姿が見えないのがわかっていても、どうしてもそちらに目が向いてしまう。

しゅるっ……

 帯を解くかすかな音が、不思議と兄の耳にまで届く。ぼやけてはいても何をしているかくらいは何となくわかる。前をはだけた春歌は、着物を腕からゆっくり脱ぎ落としていた。

「…………っ」

 兄は意志の力を総動員してガラス扉に背を向ける。腰にタオルを巻いてはいるが、本格的に勃起してしまっては容易にそれは知れてしまう。妹にそんなところを見られることだけは避けたい兄は、後ろを向いて少しでも情報を遮断しようとした。

ガラララ……

 しかし、ガラス扉を開けて春歌が風呂場にまで入って来たのがわかると、その意志の力も緩んでしまう。無意識のうちに首が春歌が近づいてくる方を向いてしまった。

「さ、兄君さま。お背中お流しいたしますわ」

「えっ……あ、うん……」

 目が合った春歌にそう言われ、兄は曖昧な返事をするとすぐまた向こうを向く。

 ほっとしたような、残念なような。

 やっぱり途中で恥ずかしくなったのか、春歌は着物を全て脱いでいたわけではない。白い襦袢を一枚纏ったまま春歌は風呂場に入ってきて、スポンジを手に膝立ちになっていた。

「や、やっぱり兄妹っていってもこの歳になって一緒にお風呂なんか入るなんて抵抗あるよね」

 兄は動転してそんなことを口走ったが、

「そんなことはありませんわ。殿方にご奉仕するのは婦女子の務め。ワタクシが心を込めて兄君さまのお背中を流して差し上げますわ」

 そう言って、春歌はスポンジにボディーソープを付けると泡立て始める。どうやら、“一緒に入って兄の背中を流す”ということだけで頭の中が一杯になって、“洗いっこ”ということまでは耳に入っていなかっただけのようだった。

「では兄君さま、じっとしていて下さい」

 十分泡立ったスポンジを兄の肩口にそっと押し当て、春歌がそう告げる。そして、スポンジが上下に動き始めた。

すっ……すっ……

「やっぱり殿方の背中は広いですわね」

 優しくスポンジで背中を擦りながら春歌は呟く。兄は妹の優しいスポンジの感触を心地よく感じ、黙って背中を預けている。

ふぅっ

 しかし、時折背中を懸命に擦り続ける春歌の吐息が首筋などにかかると、ぞくりとしてしまう。何もいやらしいことはないはずなのに、兄の股間は静まるどころか力を増しつつあった。

「さあ、兄君さま。今度はこっちを向いてくださいませ」

 そうしているうちに背中を洗い終わった春歌が、今度は前の方も洗おうとそう言ってくる。

「い、いいよ。後は自分でするから……」

 まだそうとはっきりわかるほどではなかったが、万一勃起を気づかれてしまうことを恐れた兄は慌てて首を横に振る。しかし、

「遠慮なんてなさることはありませんわっ」

くるっ

 春歌の声とともに兄の身体は椅子の上で反転してしまう。背中を流した泡が椅子の上まで流れ込んで、知らない間に力を入れなくても簡単に身体を回転できるようになっていたのだ。

「えっ……!」

 あっさり春歌の方を向かされた兄はそのことにまず驚いたが、春歌を見て再度驚いてしまった。

 春歌の着ている襦袢が、兄の背中を流している間に湯と蒸気ですっかり濡れて貼りつき、下の素肌が透けて見えていたのだ。春歌自身は気づいてないのか、気にしていないのか、隠そうともしていない。濡れた生地を透かして見る少女の肌は、直接裸を見るよりエッチに感じられた。

むくっ……

 どうしようもなく兄の肉棒は勃起して、腰に巻いたタオルを押し上げる。

「あっ……」

 当然、春歌もすぐそれに気づく。小さく声を上げたまま、その部分を黙って凝視していた。

…………………………

 あまりの恥ずかしさにすぐ声を出すことができず、兄は固まってしまう。勃起を押さえようと考えれば考えるほど、かえってその部分は勢いを増していった。

 一方の春歌も、兄の腰に巻かれたタオルの膨らんだ部分を、じっと凝視したまま絶句したように口を開かなかった。

 そんな沈黙が1分以上続いて、

「あ、あの……その……ご、ごめん……」

 沈黙を破ったのは兄の方だった。とりあえずそれだけをなんとか喉から絞り出して、今さらながら股間の膨らみを手で隠そうとする。

 だが、その手をなぜか春歌の手が遮った。

「兄君さま……今日誘っていただいたお礼に、ご奉仕させていただきますわ」

 そう言って濡れた床にしゃがみこむと、真っ赤な顔で両手を兄の股間に寄せていく。

「えっ!? な、何を……」

 兄が言い終える前に、春歌の手がタオルの下から侵入して、その細い指を兄の肉棒に絡める。

「うっ、うわっ……!」

 その快感に、思わず兄の口から声が溢れる。同時に腰の結び目が解けて、春歌の目に肉棒が露わになった。

「これが……殿方のモノですのね。大きい……それに、堅くて熱いですわっ」

 興味津々といった様子で、春歌が顔を寄せて観察するようにじっと見る。絡めた指も感触を確かめるようにゆっくりやわやわと動いていた。

「うぅ……ちょ、ちょっと……!」

 経験のない兄は、他人の手でそうやって少し触られただけでもう達しそうになってしまい、快感のうめきを漏らした。

ふぅ……ふぅ……

 春歌の顔がさらに近づき、亀頭にその吐息がかかる。その微妙な刺激でもう、兄は限界だった。

「…………っ!」

 声にならない声が兄の唇の間から漏れるのと同時、春歌の握っている肉棒の中を急速に精液が通り抜けていった。

びゅっ! びゅるっ、びゅるっ!

 先端から射出された白濁液は、間近にあった春歌の顔を正面から打った。快感に震えながら肉棒はさらに何度か白濁を吐き出し、春歌の顔をべっとりと汚しただけでなく、襦袢の胸元にも点々と染みを付けていく。

「兄君さま……?」

 あまりに突然のことに、春歌は顔面に精液を受けたまま呆然となっていた。兄はちょうど射精直後の虚脱感に襲われているところだったが、妹の声にはっとなる。

「ご、ごめん! 今洗い落とすから!」

 動転している兄は、そう言って洗面器に湯を掬うと春歌の頭からそれをかぶせた。

ざばぁっ

「うぷっ……」

 いきなり頭からお湯をかけられた春歌は、苦しげな声を出す。身に着けていた襦袢もそれによってさらに濡れてしまい、完全に肌と密着してしまった。

「あっ……ご、ごめ……」

 自分の失敗に気づいて兄はすぐにまた謝ろうとしたが、

「っ……!」

 襦袢越しに透けた春歌の胸の膨らみや股間の翳りなどが目に入ってしまい、一度出して萎えかけていた肉棒が不覚にも再び力を取り戻してしまった。

「兄君さま……またこんなに大きく……」

 感嘆するような春歌の声が上がるが、もう兄は何も言うことができなかった。

 

 結局、兄はその後さらに2回も妹の手によって射精に導かれてしまった。

 3度目の射精が終わった後で2人はもう一度身体を綺麗に洗い直して風呂から上がったのだが、恥ずかしいやら情けないやらで言葉をなくした兄から着替えとプレゼント(ちなみに、髪を結うリボン)を受け取って春歌はすっかり遅くなってしまった道を家に向かっていた。

(ああ……やっぱり昨夜の夢は正夢でしたわ。兄君さまとの会話は夢とまるで同じだったし、その後兄君さまと…………ぽぽっ)

 着替えとして用意された兄の服に身を包み、手に汚れた着物と兄からのプレゼントの入った紙袋を提げて、春歌は道を歩きながらうっとりと悶えていた。


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