3月5日、夜。
兄はいつものようにメールチェックをしようとパソコンの前に座りながら翌日のことを考えていた。
(明日は千影の誕生日なんだよなぁ……どんなものをプレゼントしたらいいんだろ? やっぱりオカルト系のアイテムとかかなぁ……でも、僕はそんな店よく知らないし……)
あれこれと考えながらメーラーを起動すると、今日も何人かの妹たちからメールが届いている。
……もちろん、千影からもだ。
兄は真っ先にそのメールを開いた。
やあ……兄くん…………久しぶりだね。
実は…………兄くんに頼みがあるんだ…………
私の家に……来て欲しいんだ…………明日……すぐにね。
…………どうしても……兄くんがいないと…………困ってしまう……
来て……くれるかな…………?
千影
千影からの短いメールを読み終えると、兄はすぐに『もちろん、行くよ』と返信した。
(さて、次は、と…………あれ?)
今度は別のメールをチェックしようとしたが、兄は不意に強烈な眠気に襲われた。
「……ま、いいか。残りはまた明日にでも見るとしよう……」
睡魔に抗しきれそうになかった兄は、そう呟くと早々にパソコンを終了させた。
ベッドに潜り込み、部屋の灯りを落とす。
(おやすみ……)
そうして、すぐに深い眠りへと落ちていった。
(う、う〜ん……)
顔の前に眩しい光を感じて、兄は目を醒ました。
少し重い瞼を押し上げて目を開くと、光の正体は燭台のローソクだと知れた。
(え? ローソク?)
ああ、と納得しかけて、兄はすぐに異状に気づいた。
間違いなく、目の前で揺れているのは真っ白いテーブルクロスの上に置かれた燭台の炎だった。
自分はそのテーブルの椅子に座っていて、いつの間にか服も普段出かけるときに着る服を着ていた。
慌てて周囲を見ると、灯りがこのテーブルの燭台だけのために暗くて見えづらかったが、兄の見知った場所だった。
灯りが不足して奥の方は薄ぼんやりとしてよく見えなかったが、この独特の雰囲気といい、間違いない。千影の家だった。
(僕は夢遊病の気はなかったはずだけど……)
どのみち説明にならないようなことを考えかけたが、不意にかけられた声がそれを中断させる。
「やあ……兄くん…………来てくれたんだね…………」
ローソクの灯りが届かぬ闇の向こうから、千影が姿を見せた。
「ふふっ……嬉しいよ…………」
微笑を浮かべてそう言うと、千影は燭台を挟んでテーブルの反対側に座った。
その顔を見ていると、なぜ自分がここにいるのかということなど、気にならなくなってしまった。
しかし、代わりに別の重大なことに気づく。
「ああ。誕生日、おめでとう。千影」
とにかく、千影の家に来たということは、少なくとも今日がもう6日であることはおそらく間違いがなかったので、まずはお祝いの言葉を述べる。
しかし、困ったことに兄はプレゼントするものを何も持ってはいなかった。
昨夜、どんなものをあげればいいか考えて、そのまま答えが出ないまま眠り、気がついたらここにいたのだから無理はなかったが。
仕方なく、この場を誤魔化すように兄は提案した。
「それで、その……プレゼントのことなんだけど…………何がいいか、わからなくてさ。千影が欲しいものを言ってよ。何でもいいから」
「……本当かい? 兄くん…………」
千影の瞳が期待に輝いた気がした。
それを見た兄は、この妹の趣味、というか性格を思い出し、慌てて付け加える。
「うん。……でも、あまり高価な物や、ヤバイ物は無理だけど。僕に用意できるものなら何でもいいよ」
付け加えられた条件に、千影は苦笑する。
「ふふっ……わかっているよ…………そう無理なことは……頼まない…………」
そして、笑みを消すと、真剣な表情で兄を見つめ返した。
「じゃあ…………兄くん……」
「ん? 何がいい?」
「…………兄くん…………」
「遠慮しないで、言ってよ」
「……だから……兄くんが…………」
「いや、繰り返し呼ばれても、何が欲しいか言ってくれないと……」
話が進まず、困ったように兄がそう言うと、千影もテーブルの向こうで嘆息した。
「……それは……私を…………からかっているのかい? それとも…………」
ガタッ
音を立てて椅子から立ち上がると、千影はテーブルを回って兄のすぐ側まで歩いてきた。
「…………やはり……ニブイと…………いうことなのかな…………?」
千影の動きについて横を向いた兄の顔に手を伸ばし、その細く白い指で両頬を捉えると、
「んっ……」
千影の身体が小さく傾き、唇と唇が重ねられた。
「…………っ!」
唇に柔らかいものが押し当てられた瞬間、兄は何が起こったのか理解できなかったが、焦点が合わないほどの至近距離にある千影の顔に驚き、慌てて離れた。
ガタッ、ガタッ、
その勢いで危うく椅子ごと後ろにひっくり返りそうになったが、なんとかこらえる。
「ち、千影……何を……!」
驚きと羞恥で赤く染まった顔のまま、兄が搾り出すような声を出すと、千影は微笑を返した。
「……言ったはずだよ…………欲しいのは……“兄くん”だ、とね…………」
「え……」
「ふふ……嬉しいよ…………兄くん……」
小さな声でそう言うと、千影はどこからかワインの瓶とグラスを取り出し、グラスをテーブルに置いて赤い液体を注いだ。
「……さあ……兄くん…………これを……」
赤い雫に満たされたグラスを持ち上げ、千影は自らの唇に傾ける。
そして再び兄の身体を捕らえて唇を重ねてきた。
兄は逃れようと考えたが、千影の瞳に見つめられると魅入られてしまったのか身体が思うように動かなかった。
「んんっ……」
2度目の接吻。
今度は唇が割り開かれ、口内に貯えられたワインが千影の舌と一緒に流し込まれた。
流し込まれるまま、兄は千影の唾液が混じった赤い液体を嚥下する。
甘い。
ワインはこんなに甘いものだったか……
(千影……)
ワインのせいか、キスに酔っているのか、兄はすぐ近くにある千影の頬がうっすら紅く染まっていることに気づいた。
兄自身も、アルコールのためか、頭がぼんやりと靄がかかったようになり、自然に千影の舌に自分の舌を絡め返していた。
くちゅっ……くちゃっ……
多量の唾液と共に、互いの口内を絡み合った舌が往復する。
長い長いキスの交歓は兄の感覚にして10分は続けられた。
「……ふう」
ようやく唇が離れ、身体に絡められた千影の手も解ける。
はぁはぁと息は乱れ、興奮で顔はすっかり紅潮していた。
兄はまだ椅子に座ったままだったが、テーブルの下では一物が痛いほどにズボンを押し上げている。
「……いいよ…………兄くん……」
一旦離れた千影の眼にも股間の膨らみが映ったのか、そう呟くと艶然と微笑した。
「そろそろ…………始めようか……」
“何を?”と問い返す前に、千影の指が胸の上の辺りで動き、パサリと布が床に落ちる音がした。
下着も何も身に着けていない、一糸纏わぬ裸身が燭台の灯りに浮かぶ。
染み1つない、透き通るような白い肌。
細くしなやかな四肢。
滑らかな曲線を描く膨らみと、その頂点の薄桃色の突起。
そして、薄い茂みが翳りとなった下腹部。
ごくっ……
暗がりの中、炎の揺らめきに浮かんだ裸身の美しさに、思わず兄は唾を呑み込んでしまった。
千影は、その姿を隠そうともせず、誘うように兄に右手を差し伸べていく。
ふっ
千影の手が千影と兄のちょうど中間の辺りまで伸びたところで、不意に何の前触れもなく燭台の火が消えた。
一瞬で周囲は何も見えない完全な闇の空間と化す。
千影の白い裸身も闇に呑まれて消えてしまった。
兄は驚いて椅子から腰を浮かしかけたが、その途端すくんだように動きが止まる。
周りどころか自分自身の姿すら見ることが叶わぬ真の闇に、本能的な恐怖を受けたのだ。
これは、尋常な闇ではない。
人間に残る動物の部分が、理屈でなくそう訴えていた。
この突然の恐怖にそのまま捕らわれてしまいそうになったが、あることに気づき兄はなんとか免れることができた。
何故かは知らないが、千影が変わらず自分に手を差し伸べていることだけはなんとなく感じることができたのだ。
「兄くん……怖がることはないよ…………私を……信じて……」
目の前にいたはずの千影の姿はやはり見えなかったが、声だけは聞こえる。
近いのか、遠いのかはわからなかったが、千影の声に間違いはない。
その声を聞くと、不思議とこの突然の闇も、千影の姿が見えないことも不安ではなくなった。
「……さあ…………来て……」
闇の中から聞こえてくる千影の声に誘われるまま、兄は椅子から立ち上がる。
何も見えない闇の世界で、何のためらいもなく一歩足を前に踏み出した。
ボッ!
燭台が消えたときと同様、突然周囲に炎が灯る。
その灯りで再び千影の肢体も浮かび上がった。
闇に一度その姿を消す前と変わらず、兄に向かって手を差し伸べていた。
しかし、不思議なことに声のする方へ一歩踏み出したはずが、千影の肢体は兄から2,3歩離れた位置にあった。
その足元には一辺3メートルほどの柔らかな純白の布が敷かれ、そこを中心として2人の周りには12本の火のついた大きなローソクが等間隔で直径約10メートルの円状に立っている。その円の内側では、兄にはよくわからない文字で描かれた魔法陣らしきものが千影の待つ白い布を囲むように、不思議な淡い光を出して浮かび上がっていた。
さらに、それだけの光量があるにもかかわらず、それ以外のものは変わらず闇の中にあった。自分の身体は見えるようになっていたが、その足元の床は闇のままで、振り返ってみると千影と向かい合っていたテーブルはおろか、つい今まで座っていたはずの椅子ですらその姿を消している。
「兄くん……」
その不思議を考えそうになる兄を制するように、千影の唇から言葉が紡ぎ出される。
「気にすることは……ないよ。 …………兄くんは……ただ……私を見ていれば…………」
千影の言葉には魔力が宿っているかのようだった。
聞いていると、本当にそう思えてしまう。
「さあ……来て……」
誘われるまま、少し手を動かせば触れてしまうほどにまで兄は歩み寄った。
「……そして…………私を抱いて……」
千影の言葉に導かれたのか、自分の意志だったのか。その瞬間、兄は千影の裸身を抱きしめ、布の上に押し倒していた。
「千影……」
その名を囁いて、三度目の唇を重ね合わせた。千影はうっとりと眼を閉ざす。
「ん……」
すぐに唇が割られ、互いの唾液が舌によって交換される。
同時に、兄の右手がそっと千影の膨らみに触れていった。
乱暴に扱い、壊れてしまうことを恐れるように、優しく撫でるようなタッチで胸を愛撫していく。
指先が頂点の突起に偶然触れると、そこはすでに充血を始めていた。
再度指の腹を使ってそれを確かめると、千影の身体が快感に震える。
兄は千影の口内の舌を引き出し、唇を離した。
「あっ……」
離れていく兄の顔を潤んだ瞳で千影は名残惜しそうに見つめ返す。
しかし、すぐに新しい快感で再び千影の眼は閉ざされた。
「ぅうんっ……!」
一旦離れた兄の唇が首筋に押し当てられ、そのままつぅと滑り下りて膨らみかけの乳首を含んだのだ。
吸われていない方の乳房は、さっきまでと同様、掌全体を使って優しく愛撫が続けられる。
「……あっ……ぁん…………」
しかし、それも千影の口からこぼれる可愛い声にたまらなくなってしまった。
声だけでなく、普段あまり大きく変わるところを見せない千影の表情が快感に染まっていくのも一因だった。
愛撫を中断して千影の身体から離れた兄は、ボタンを外すのももどかしく半ば引きちぎるように服を脱ぎ去り自らも全裸となると、ももの辺りを両手で掴んで押し開くように千影の股間に顔を埋めた。
「……そこは……少し恥ずかしい…………」
さすがにそこを注視されることには抵抗があるのか、羞恥の声が上がるが、兄の耳には届かなかった。
目の前にある千影の秘密の部分をじっと凝視する。
そこへはまだ一指も触れていないはずだったが、さっきまでの上半身への愛撫ですでに愛液は湧き始め、薄い茂みにも湿り気を与えていた。
「綺麗だ……」
感嘆の言葉が自然と口を突いて出た。
まだ使われていない美しい色の粘膜が湧き出した愛液によってきらきらと濡れ光っている。まるで宝石か何かのようだった。
「はああっ…………!」
しかし、そんな感慨も束の間のことで、すぐに兄は千影のそこにむしゃぶりついていった。
情欲に突き動かされるまま舌を激しく使うが、もはやそこに技巧などはほとんど残っていない。
それでも、愛する兄からの愛撫は、千影の身体に小さくない快感を与えていた。
その証拠に、千影の奥からは後から後から愛液が湧き続け、その量を増していった。
「千影……いいかい?」
もう本当に我慢できなくなった兄は、口の周りの愛液を拭うことも忘れて一物を千影の入り口にあてがいながら尋ねる。
千影はこくりと大きくうなずきを返した。
それを見て、兄は腰を大きく押し出した。
ミリッ
「ああああぁっ……!」
破瓜の痛みに千影の口から声が漏れる。
兄はそのまま腰を進め、根元まで一物を突き入れると動きを止めた。
痛みに苦しむ千影の顔を案じるように見る。
結合部からも処女膜が破れたことで溢れ出した血がももを伝って純白の布を赤い染みを作っている。
「……兄くん……動いて…………」
自分を気遣って動こうとしない兄に気づいた千影は、痛みをこらえてそう囁いた。
その思いは嬉しかったが、ここで止められてしまっては、儀式が意味を為さなくなってしまう。
「本当に、大丈夫か……?」
それでもまだ躊躇いを見せる兄に、千影は再度うなずいて見せた。
それでようやく兄の身体が動き出す。
ゆっくりと一物が引き出され、そしてまたゆっくりと千影の膣内に入れられる。
明らかにそれは千影を気遣った動きだったが、兄は十分な快感をそれで得ることができていた。
千影の膣内は締め付けがきつく、呼吸のたびに粘膜がひとりでに動いて、兄の一物に快感を与えていた。
何より、妹の膣内に自分の一物を入れていることへの感動が、快感を倍加させていた。
そのため、数分とたたず兄の一物はいつでも精液を発射できる体勢に入った。
早すぎるのは情けないとも思ったが、千影にこれ以上痛みを与え続けることはできず、そのまま射精することを決断する。
とはいえ、妹の膣内で射精することはできない。
ひくひく膣内で震え、今にも暴発しそうな一物を引き抜こうとした。
その気配を察したのか、千影がすがるように兄の顔を見上げる。
「……だめ……このまま膣内に…………」
今まで見たことのなかった、そのどきりとする表情に、兄は戸惑った。
そして、そのまま限界を迎えてしまう。
びゅっ、びゅるっ、びゅるっ……
大量の白濁液が千影の膣奥深くで放出された。
そのまま最後の一滴まで千影の膣内で出してしまった。
「あ、ああ……」
萎え始めた一物を引き抜き、愕然とした声を上げたのは兄の方だった。
破瓜の血と混じり合い、ピンク色となって膣内から溢れ出した精液が、純白だった布の上に新たな染みを作り、それが段々と広がっていく。
千影は半身を起こすと、その広がっていく染みを満足げに見下ろしていた。
「ふふ……これで…………兄くんは…………」
何か呟いていたが、その声がだんだんと小さくなっていく。
まぶたが異様に重く感じられ、次第に視界が暗くなっていった。
「ああ……兄くん……疲れたんだね…………」
その様子に気づいて、千影は顔を上げてこちらを見たようだったが、兄の視界はもう霞んでいた。
「おやすみ……兄くん……」
そんな千影の声が聞こえた気がして、兄の意識は沈んでいった。
チュン、チュチュン……
遠くで、鳥の鳴き声が聞こえる。
と、
ジリリリリリリリリ……
目覚ましの音がけたたましく鳴り響き、兄は目を覚ました。
起き上がって周りを見ると、間違いなくここは自分の部屋だった。
「夢……だったのか?」
しかし、とてもそうとは思えないようなリアルな感覚があったのもまた事実だった。
「……あっ!」
あることに気づいて、ふと布団の中の股間を覗き込む。
雄雄しく勃起した一物は大きなテントを張っており、その頂点のトランクスの布地にぬるぬるとした感触があった。
(しかし、夢とはいえ、妹相手になんてことを……)
夢精で汚れた下着を洗いながら、兄は夢のことを思い出さずにはいられなかった。
そんなことを考えていると、一度は萎えかけた一物が再び力を取り戻そうとしていく。
(だめだ、だめだってば!)
頭を左右に振って振り払おうとしたが、なかなか思うように別のことが考えられない。
気分転換に、珍しくテレビをつけてみる。
ちょうど、朝のニュースをやっていた。
『…………今日、3月7日は……』
最近の情勢を聞いていたが、一部分聞き捨てならない言葉が聞こえた。
慌てて階下に行って、新聞を取ってくる。
一番上の日付欄を見る。
“3月7日 木曜日”
「え……な、なんで…………」
兄は新聞を手にしたまま絶句した。