「にいさまー」
2月8日、金曜日。今日の昼食も白雪が持ってきたお弁当だった。
「ありがとう。今日もおいしかったよ、白雪」
大きな弁当箱を空にして返しながら兄は言った。
しかし、なぜか白雪の表情にはどこか翳りがあった。
「うん、どうした? 何か気に障ることでもあった?」
その異常に気づいた兄は白雪に尋ねてみた。
「な、何でもありませんの。にいさま、姫のこと心配してくれて嬉しいですの。でも、ホントに何でもないから……」
「何でもないってことはないだろう。それなら、せっかく明日から3連休なのに、そんな暗い顔する必要ないと思うけど」
「……その3連休のせいですの」
兄が食い下がると、白雪は囁くような声でぽつりと言った。
「……姫はにいさまに食べて欲しい料理がまだまだたくさんあるのに、連休のおかげで3日もにいさまに姫の料理を食べてもらえませんの」
白雪の言葉に兄は少々拍子抜けした。
「……何だ、そんなことだったのか。それならそうと言えばよかったのに。じゃあ、3連休の3日目にでも僕の家に遊びにおいで。
僕の家で思う存分腕を振るってよ。やっぱりお弁当って枠の中だと作れない料理だってあるだろ?」
「いいんですの?」
兄の家に遊びに行けると聞いて、白雪は目を輝かせた。
兄はすぐに大きなうなずきを返そうとして、そこでふと思い出した。
「あ、でも……11日っていうと白雪の誕生日か。それじゃあ、やっぱりまずいかな……」
「そんなことありませんの!」
白雪は大きく叫んでぶんぶんと首を横に振った。
白雪が弁当を持ってくることには慣れていた周りの連中も、その大声に驚いて、何事かと視線が集中する。
少し恥ずかしい。
慌てて周囲に“何でもない”とジェスチャーを送って視線を追い払うが、白雪はそれにも気づかない様子だった。
「にいさまのお家で1日すごしてお料理を食べてもらえるなんて、姫にとっては最高のプレゼントですの!」
「そ、そう……それはよかった……」
その勢いに兄は気圧されてしまうほどだった。
「姫、とびっきりのメニューでにいさまをびっくりさせてあげますの。にいさま、楽しみにしててください」
「うん、わかったよ。それじゃ、詳しいことはまた今夜にでもメールで……」
そして、11日。白雪の誕生日がやってきた。
朝、兄は繁華街の入り口で白雪が来るのを待っていた。
もちろん、兄の家に行く前に、今日白雪が作る料理の材料を一緒に買うためだ。
「にいさまーっ!」
誕生日の妹を待たせるわけにはいかないので、今日は約束の10分以上前に着いていたのだが、白雪がやって来たのは兄が着いて間もなくだった。
「にいさま、早いですの。約束より前に来て、にいさまを驚かせようと思ってましたのに……」
急いでやって来たのか、少し息を弾ませながら白雪は言う。
「ははは、ごめんごめん。白雪を待たせたら悪いと思ってね。それに、今日のことを考えたら、家であんまりじっとしてもいられなかったんだ」
「にいさまもですの? 姫もホント言うと時間まで待ちきれなくて、来てしまったんですの。この休みの間ずっとにいさまに今日作ってあげるメニューのことを考えていたんですのよ。あんまりおいしすぎて、ほっぺた落っことしちゃわないように気をつけてくださいですの」
「うん、ちゃんと気をつけるよ」
そんな会話を交わしていると白雪の息も整ったので、兄は出発を提案した。
「よし、それじゃ行こうか」
「はいですの」
まず向かったのは普通のスーパー。ここはわりと食料品が充実しているらしい。いろいろ買うからと、兄と白雪で1つずつ買い物カゴを手に取って店の中に入っていった。
「えーっと、にいさま。次はアレです」
「はいはい、了解っと」
そう言って兄は白雪が指示したものを取って買い物カゴに放り込む。すぐにカゴの中には色々な食材が詰め込まれた。
「随分たくさん買うんだね。そろそろ終わり?」
2人のカゴが一杯になって、兄は白雪にそう尋ねた。
「……う〜ん、あとそこのパイナップルですの!」
色々メニューを考えてきたらしい白雪の手には必要な食材がびっしり書き込まれたメモが握られていた。それもメモ用紙1枚に収まりきらず、何枚も綴られている。
「こんなにたくさん買って大丈夫?」
思わず兄はそう訊いてしまう。この量を食べることができるかということももちろん、これだけの量になると、その値段もかなりのものになるだろう。
そう兄が考えたとおり、レジに持っていって精算すると、兄の感覚からすれば到底1日の食費とは考えられないような額になった。結局、
「僕が払うよ。僕のために作ってもらうんだし、何より今日は白雪の誕生日だからね」
と言って、白雪を制して兄が払った。
(ああ、今月のこづかいかなり減っちゃったなぁ……いやいや、可愛い妹のためだ。我慢、我慢)
両手に大きなスーパーの袋を抱えながら兄は淋しくなった懐への未練を振り払うようにそう考えていた。
「じゃあ、次はあっちの輸入食料品店ですの!」
しかし、白雪は兄との買い物がそんなに楽しいのか、弾んだ声で向こうの方を指差した。
「え? まだ何か買うの?」
驚く兄に、
「当然ですの! 今日はにいさまにたっぷり姫の料理を食べてもらうんだから。まだまだ買いますの!」
そうありがたい言葉が返ってきた。
結局、兄の家に戻ったときには、財布の中身と反比例して食材が増えて、抱えきれないほどの食材を買い込んでいた。
「にいさま、姫がすぐにスペシャルメニューを用意するから、ちょっと待ってて欲しいですの」
家の中に入ると、白雪はそう言って山のような食材を抱えて台所に消えた。
「あ、ああ……楽しみにしてるよ……」
答える兄の声に力が無い。
白雪のために食材の費用を全部兄が払った結果、財布はほとんど空っぽの状態だった。
半ば呆然としてリビングに座っていると、ガチャガチャと食堂で白雪が作業する音が聞こえ、言われたとおりすぐにおいしそうないい匂いが漂ってきた。
「さあ、にいさま。今日は姫のスペシャルフルコースですの! まずは前菜からどうぞ」
そう言って料理が載った皿を持って白雪が戻ってくる。
兄が全財産使うことになってしまった楽しい食事の始まりだった。
「……うっぷ……ちょ、ちょっとこれは……さすがに量がありすぎたんじゃないか……?」
はちきれそうな腹を抱えながら兄が呟く。
昼過ぎに食べ始めたはずが、もう日が傾いて夕方になりつつある。
白雪のスペシャルフルコースは、1皿2皿奇抜な料理があったものの、全体としては非常に美味なものだった。ただし、テーブルの上にはさっきまで家中の食器を使ったのかと思うほどの大量の食器が並んでいた。夕食どころか、明日一日何も食べなくてもいいんじゃないかと思うほどの量だった。
今、白雪は一旦食器を片付け、デザートの特製ケーキとやらを用意しに台所に戻っている。
一通り料理を並べて白雪も一緒に食べてはいたが、シェフも務めていたために、料理のほとんどは兄の胃袋に収まっている。でなければ、白雪もさすがにこの上さらにケーキなどとは言わないだろう。
白雪に悪いとは思うのだが、さすがに今はこれ以上何かを口にできそうにはない。
それでも少しはましにしようと、兄は胃の内容物を深いところに流し込むためにコップに入ったオレンジジュースに手を伸ばそうとした。
「あっ」
手が滑ってコップを掴み損ねてしまった。
ガチャッ
コップが横倒しになって中に入っていたジュースが派手にこぼれる。テーブルの上は勿論、フローリングの床にまでその染みは広がってしまった。
「さあ、にいさま。これがデザートの姫特製ケーキですの!」
そこへ、ウエディングケーキか何かかと見間違えるような巨大なケーキを持って白雪が戻ってくる。そのケーキのあまりの巨大さに、白雪は前が良く見えていなかった。
つるっ
白雪が履いていたスリッパが、ジュースがこぼれた床の上を踏んで滑った。
「きゃっ!」
バランスを崩した白雪の手からケーキが離れ、前に投げ出される。
ベシャッ
テーブルのすぐ手前でケーキが床に落下し、無惨に潰れてしまった。
それを嘆く暇もなく、今度は白雪自身が前にこけて倒れていった。
「あぶないっ!」
テーブルの角に頭を打ってしまうのではと、兄は慌てて手を差し伸べようとしたが、間に合わない。
グシャッ
しかし、不幸中の幸いか、髪の先がテーブルをかすめただけで、白雪は頭から今落としたばかりのケーキの上へ倒れ込んでいった。ケーキがクッションとなったが、ケーキそのものは2度の衝撃でもう無茶苦茶で、かなり離れた場所にまでクリームが飛散していた。
「し、白雪! 大丈夫?」
兄が白雪を抱き起こすと、顔といわず服といわず、全身がケーキの残骸のクリームとスポンジ塗れになってしまっていた。
そのケーキ塗れの顔に、みるみる涙の珠が浮いてくる。
「にいさまぁ……ケーキが……ケーキが……」
自分がケーキ塗れになってしまっても、そのケーキがダメになってしまったことの方を嘆く白雪に、兄は申し訳ない気持ちで一杯になった。
その気持ちにつき動かされるようにして、兄は衝動的な行動に移っていた。
「んっ……」
白雪のケーキ塗れの顔に、そのクリームを舐め取るかのように口づける。
さっきまでもう何も食べられないくらいに思っていたが、今は白雪の顔に付いたクリームを舐め取るのに、何のためらいもなかった。白雪の顔を綺麗に舐めとっていくと、口の中に甘い味が広がっていく。
それが今の兄には自分に対する愛情が詰まった白雪の味のように感じられていた。
「に、にいさま……? んんっ……」
兄の突然の行動に、白雪は驚くやら恥ずかしいやらで困惑していたが、額や頬のクリームを舐め取った唇が、今度は白雪の唇に重ねられ、その困惑は頂点に達した。
重ねられた唇を割って兄の舌が侵入し、白雪の口の中にも甘い味が広がっていく。
困惑したままの白雪の口内を5分近くも思うまま蹂躙したあと、兄の舌は撤退して、唇も離れた。
唇と唇の間に透明な細い糸がかかり、すぐに床のクリームの上に落ちた。
「はぁっ……はぁっ……白雪……」
湧き上がった愛しさとキスの興奮で、兄は止められなくなっていた。
顔のクリームと全て舐め取ってしまうと、兄の舌はそのままあごを伝って下に下りた。
白雪の白い首筋を、くすぐるように兄の舌が舐め下りていくと、白雪の身体は小刻みに震えた。
同時に、2本の手も白雪の身体に伸びていった。興奮で震え、思うように動かない手をもどかしく感じながら、兄は一つ一つ白雪の服のボタンを外していった。
「にいさま、そんなぁ……」
前をはだけられ、白いブラジャーが露わになってしまうと、白雪は恥ずかしさで顔を真っ赤にして小さく言ったが、ほとんど抵抗は見せなかった。
倒れたときに首やボタンの隙間から入り込んだのか、胸や腹の辺りにもところどころクリームが付着している。
兄は一度顔を上げてそれを見ると、再びその白い肌に舌を這わせていく。
この頃には、兄の服やズボンにもクリームがべっとり付いてしまっていたが、そんなことは全く気にもならなかった。
「うーん……」
滑らかなお腹や臍の周りに付いていたクリームはすぐに舐め取ってしまうことができたが、その上、胸の辺りに付いているクリームを舐めるには、やはりブラジャーが邪魔だった。
とは言え、兄はブラジャーの外し方などやったこともないし、よくわからなかった。
少し困ったような顔で動きを止めて見ていると、
「……にいさま、わかりましたの」
兄の考えていることを察した白雪が、囁くような声で恥ずかしそうにそう言うと、手を動かして2つのカップの中心にあるホックを外した。
プチッ
ホックが外れると、白雪のかわいらしい胸と、その先っぽでピンク色をした突起が兄の目に晒された。
「そ、それじゃあ……」
興奮で少し声を上擦らせながら言うと、兄はその胸にゆっくり唇を寄せていった。
「ぅんっ……」
胸の膨らみを舌が這う感触に、白雪は官能の混じった息を吐いた。
ピチャッ、ペチャッ……
胸の辺りに付いていたクリームはすぐに舐め取られてしまったが、それでも構わず兄は妹の胸に舌を這わせ続けた。白雪もそのことに何の異も唱えなかった。
ぴくっ
先端の敏感な突起に舌が触れるたびに、白雪の身体が反応した。
それに気づいた兄は、自分から見て左の乳房を根元の方から螺旋を描くように舐め上げ、徐々にその中心に近づけていった。
そして、反対側の胸にはそうっと右手で優しく触れていく。
そう大きくない胸をほとんど撫でるのと変わらないような強さで揉みながら、唇はいよいよ充血した膨らみの頂点を捉えた。
「はぅっ……!」
唇が乳首を含んだ瞬間、白雪は声を上げた。
明らかに快感が含まれた響きに、兄はもっと感じさせたくなって、唇の中で舌を使って乳首を転がした。
右手も指の間に乳首を挟み込んで膨らみ全体を揉むのと一緒に刺激する。
「に、にいさまああぁぁぁ……!」
愛しい兄に愛撫されているという認識が快感を倍加させていたのか、白雪は呆気なくその上半身への愛撫だけで達してしまった。
びくっ、びくっと白雪の身体が快感で震える。それに驚いて、兄は白雪から唇と手を離してしまった。
「し、白雪……?」
改めて白雪を見ると、全身を上気させてはぁはぁと熱っぽい息を吐いていた。
「にいさま……」
答えてこちらを見る目も、どこか潤んでいるように見えた。
「……すっごく、その……いい気持ち……でしたの」
赤い顔で恥ずかしそうにそう言われると、兄の方も今さらながら恥ずかしくなってきて、顔を赤く染めた。
「……と、とにかく、風呂にでも入ってきたら……? かなりベトベトになっちゃってるだろうから。脱いだ服を洗濯機に入れてくれれば、すぐに洗うからさ」
一度恥ずかしさを自覚してしまうと、半裸になっている白雪を直視できなくって、顔を別の方向に向けるようにしながら言った。
ただし、下半身の一部だけはまだまだ痛いほどに自己主張を続けていたが。
「……でも、それならにいさまも服を脱がないといけませんの」
言われて自らの身体を見ると、ケーキ塗れの白雪の身体に抱きついたりしたせいで、兄の服にもかなりのクリームが付着していた。
「一緒に洗濯するから、にいさまも脱いで、脱いで」
「……あ、ああ……じゃあ、ちょっとあっち向いてて」
促された兄は、そう指示しておいてシャツを脱いで、ズボンを下ろした。
「にいさま……大きくなってるですの」
その言葉に慌てて顔を上げる。
なるべく白雪を見ないようにしていたので気づかなかったが、白雪はずっとこっちを向いたままだった。しかも、その視線は一点に集中している。
ズボンを脱いだことではっきりわかるようになった、トランクスに張ったテントに。
「し、白雪っ! こ、これは……」
焦ってごまかそうとしたが、もう遅かった。びんびんに臨戦体勢にあった兄の一物はしっかりと白雪の眼に捉えられている。
兄がなんとか言い訳をしようとしたが、白雪はさっと背を向けると、台所の方へパタパタと小走りに行ってしまった。
(ああ〜〜どうしよう……)
とんでもないことになってしまったと兄は頭を抱えた。もしこんなことを誰かに言われたら、もう日の下を堂々と歩けなくなってしまう。
妹に欲情した人でなしの烙印を押されて、他の妹たちからも敬遠されるどころか、親に断交を言い渡されるかもしれない。
そんな風に悩んでいたが、白雪はすぐに兄のところへ戻ってきた。手に何かチューブのようなものを持って。
「に、にいさま……お返しをするですの……」
真っ赤な顔で少し震える声で白雪は言った。
消えたかと思ったら戻ってきたきた白雪に戸惑う兄の前で膝立ちになると、テントの頂点で先走りの汁がすでに染み出したトランクスを引き下ろした。
びん、と跳ねて屹立した兄の一物が白雪の眼前で露わになる。
「でも、やっぱりちょっと怖いから……」
初めて見る男の一物にますます顔を赤くしながら、白雪は持ってきたチューブを一物の上で搾り出す。
にゅるっ……
その先からはクリームが押し出され、兄の一物を白く彩った。
ケーキに使った残りらしいそれを、白雪はさらに搾り出し、一物をクリームでデコレーションしていく。
「これで準備完了、ですの……」
「し、白雪……?」
妹の意図するところがまるでわからず、兄は困惑の声を上げた。
「んっ……」
しかし、その謎もすぐに氷解した。
白雪がクリームで飾られた一物に唇を寄せていったからだ。
ぺろっ
クリームを舐め取ると同時に、白雪の舌がその下にある一物を刺激する。
「うぅっ……!」
白雪への愛撫で初めからかなり高まっていた兄は、それだけで快感のうめきを漏らした。
その声に白雪は嬉しそうにすると、さらに舌を一物に這わせていった。
ちろっ、ぺろっ……
クリームを舐め取りながら、白雪の舌は確実に兄の一物に快感を与えていった。
すぐにも兄はイキそうになったが、あまりすぐにイッてはみっともないというのと、少しでも白雪の舌の感触を楽しみたいというので、必死に堪えた。
しかし、全部舐め終わるのを待たず、まだクリームが3分の1ほど残っている段階で、
「も、もう出るッ……!」
限界を越え、兄の一物は射精を開始した。
ビュッ、ビュッ、ビュルッ……
先ほど兄の舌でクリームを舐め取られたばかりの白雪の顔に、大量の精液が叩きつけるかの勢いで放出され、再び白雪の顔は白く汚されてしまった。
顔といわず髪といわず飛び散った白濁液はねっとりとはりつき、まぶたの上に飛んだ塊は垂れてきて片目を塞いだ。
「ご、ごめん、白雪……」
射精の快感から落ち着いて、兄がそう言って謝ると、
「謝らなくてもいいんですのよ。にいさまが悦んでくれたら、姫も嬉しいんだから……」
そう答えて、白雪は精液塗れの顔で微笑んだ。
結局、その後白雪は風呂に入って身体を洗い流し、クリームで汚れた服を洗濯機に掛けた。
風呂から上がると、着替えがないためサイズは大きかったが兄が自分の服を用意してあげた。
それから仲良くリビングの掃除や台所の後片付けなんかをしたのだが、帰らないといけない時間になっても服が乾かないため、白雪はそのまま帰ることになった。
「にいさま、明日も愛情たっぷりのお弁当を持って行きますの。楽しみにしててね!」
玄関まで見送りに来た兄にそう告げて、白雪は靴を履いて帰っていった。