HAPPY BIRTHDAY
12/20


 12月19日、夜。

「デート、か………」

 今日も妹たちからのメールをチェックして、何人かの妹に返信した後パソコンの電源を落とした兄は、ベッドに寝転んで昨日のやり取りを思い出していた。


「そう言えば、今年もクリスマスはみんなでパーティでもするのかい?」

 その日、たまたま学校の帰りが一緒になって、兄は道の途中で咲耶にそう訊いた。プレゼントのこともあるし、準備の手伝いもしたい。こういうイベントのときにたいがい企画を仕切っているのは咲耶だから、できれば今のうちから聞いておきたかった。

「ええ。多分、今年も去年と一緒。亞里亞ちゃんのお家でみんな一緒にホームパーティしましょうって、みんな言ってるわ。じいやさんに話してみて、ちゃんと時間とかも決まったら、みんなメールで案内を送るはずよ。…………本当言うと、私はお兄様と二人きりのイヴが一番なんだけれど」

 隣を歩いていた咲耶は、そう言いながら身を寄せてくると、そっと兄の右腕に自らの腕を絡めた。

「ちょっ、咲耶……!」

 いきなりのことに、兄は驚いた。絡め取られた腕には咲耶を身体が押し当てられ、二の腕の辺りに胸の膨らみが当たっているのが感じられる。妹に“女”を感じそうになった兄は、慌てて腕を引き離した。

「あん! もう……」

 腕を振り解かれた咲耶は、残念そうに兄を見上げてくる。その妹を、兄はまっすぐ見つめ返して諭すように言った。

「僕たちは兄妹で、恋人とかじゃないんだから、あんまりそういうこと言ったりしたりするんじゃないよ。それでなくても、妹たちばかりと仲がいいって、変に勘繰られることがあるんだから」

 極力平静を装って言ったつもりだったが、腕にさっきの胸の感触の名残が残っていて、顔が少し熱くなっているのがわかってしまったかもしれない。

「お兄様ったら……そんなに照れなくってもいいのに。私はお兄様が好きなんだから。お兄様さえよければ、私はいつだって……」

「だから、そういうことを……」

 わかってくれない咲耶に、もう一度同じことを言おうとしたが、それを遮るように、

「でも、お兄様、前はそんなことほとんど言わなかったのに。どうしていまさらそんなこと言うの?」

 と、質問を返されてしまった。

 そう。咲耶がまるで恋人のような言動をしてくるのは昔からだったが、以前はこんなふうに言うことなどあまりなかった。それは自分でもわかっている。なぜそうなったのかも。だがそれを咲耶に言うことはできない。

「じゃあ、こうしない? お兄様」

「え?」

 兄が答えに窮していると、咲耶が急に提案をしてきた。

「恋人じゃないからダメだって言うのだったら、私とお兄様が恋人になればいいのよ」

「なっ……!」

 驚きのあまり、兄は絶句してしまう。だが、咲耶は平然と言葉を続ける。

「と言っても、本当の恋人じゃないわ。そうねえ……明後日が私の誕生日だから、その日は一日だけの恋人ってことで、デートしましょう

「一日だけ。恋人ごっこってことか……」

「ええ。それくらいだったらいいでしょ? バースディプレゼントだとでも思って……」

「あ、ああ……それくらいなら、まあ……」

 結局、そのまま妹に押し切られる形で、兄は1日限りの恋人デートを承諾してしまったのだった。


 本当によかったのだろうか。兄は、明日のことを考えると、ついそう考えてしまう。自分はとんでもない過ちを犯しつつあるあるのではないだろうか。

 咲耶の言動が最近になって気になりだした理由は、はっきりしていた。兄妹ということを忘れたような好意を向けてくる咲耶と接しているうち、兄の方もいつの間にか、咲耶が妹ではなく、一人の女の子として映るようになってきたのだ。だが、咲耶は実の妹だ。兄妹でそんな関係になることなど社会に認められていない。だから、兄はことさら咲耶は妹だということを意識するようにしているのだった。

 それが、一日だけのごっこ遊びのようなものだとしても、一度咲耶に恋人のように接してしまえば、心のどこかが越えてはいけない壁を越えてしまうのではないかと恐れているのだった。だが、その一方で咲耶とのデートを楽しみにしている自分も、たしかに存在していた。

 

 翌12月20日、放課後。期末試験もとっくに終わっていたが、最後の授業が行われたこの日、兄は一度家に帰ると私服に着替えて咲耶との待ち合わせ場所に向かった。私服に着替えてきたのは、咲耶がそう言ったからだった。待ち合わせ場所は繁華街の入り口にある喫茶店。

カラン……

 ドアに付いたベルを揺らして店に入った兄は、咲耶の姿を探した。約束の時間のまだ5分前だったが、兄は今日ちょうど掃除当番だったために帰りが遅くなっていたため、咲耶はもう来ていてもおかしくはなかった。

「あっ……」

 奥の方のテーブルに座る咲耶の姿を兄が見つけたのと、兄が来たことに咲耶が気づいたのはほとんど同時だった。

「ここよ、――――」

 だが、咲耶の口から出た予想外の言葉に、兄の頭は一瞬停止した。いつものようにお兄様、とは言わずに、咲耶は今兄のことを名前で呼んだのだった。妹の口から兄ではなく一人の男の名前で呼ばれたことに、ドキリとしてしまう。

「……さ、咲耶。たしかに今日は恋人って設定だけど、せめてその呼び方は……」

 赤い顔でそう言うと、意外にあっさりと咲耶はうなずいた。

「わかったわ。じゃあ、呼び方はいつもどおりお兄様ってことにしましょ」

 そう言って立ち上がると、咲耶は一昨日のように腕を絡めてきた。

「さ、それじゃ行きましょ。お兄様

 嬉しそうに身体をより押し付けてくる。そのため胸の感触も前よりもはっきりと感じられた。

「お、おい、咲耶……」

 兄はさらに照れたが、咲耶はお構いなしだった。

「今日は恋人なんだから。これくらいは当然よ、お兄様」

 そう言われてしまうと、さっき呼び方のことで譲歩してもらったためにそれ以上は言えずに、腕を絡めたまま兄妹は喫茶店を出てデートに繰り出した。

 

…………………………………………

 喫茶店を出た後、二人はウインドショッピング、レストランでの食事、映画と一通りのコースを回った。最初はどうしても兄妹という意識もあり、どこか照れ続けていた兄だったが、しばらくするとそんなことも気にならなくなり、いつしか咲耶とのデートを楽しんでいた。純粋に楽しかった。だが、時間はもう十時を過ぎたところだった。

「じゃあ、デートはそろそろ終わりにしようか。送って行くよ」

 繁華街の入り口で、兄はそう告げた。だが、咲耶は軽く首を横に振った。

「ううん。送ってくれなくていいわ。その代わり……」

 咲耶は兄の顔を見上げると、少しあごの方を突き出すようにしてそっと目を閉じた。それが何を求めているかは兄にもわかった。デートをしているうちに、本当に兄は咲耶が妹であるということを忘れてしまっていたのかもしれない。兄は無意識のうちに吸い込まれるように咲耶の唇に引き寄せられていた。

ヒュ――

 あと少しで唇と唇が重なる。その瞬間、不意に風が吹いた。

「っ……!」

 小さな埃がその風に舞って、兄の目に入った。その痛みで、兄はふと我に返る。目の前にあるのは、目を閉じた妹の唇。だが、兄は近づけていた自分の顔をそこから離した。デートの空気に我を失っていたときならともかく、咲耶が妹だということを思い出してしまうと、やはり口づけはできなかった。

「……お兄様……?」

 今にも触れるというところまで近づいていた気配が遠ざかったことに気づいた咲耶が目を開ける。だが、兄は恥ずかしさや申し訳なさや、自分でもよくわからない感情で、その目を受け止めることができなかった。

「……じ、じゃあ、そういうことで…………」

 ちゃんとした別れの言葉もうまく口から出せないまま、兄は逃げるように咲耶の前から走り去った。


 家に帰った兄は、そのまま部屋の電気も点けないままベッドに潜り込んでいた。さっきはぎりぎりで我に返ることができたが、これ以上咲耶のことを意識していれば、本当に兄妹であることを忘れてしまいそうだった。

「もう、寝よう……」

 一晩眠ってしまえば、少しはマシになって咲耶を冷静な目で見ることができるかもしれない。そう思ったのだが、まだ十一時にもならない時間だ。なかなか思うように眠気は訪れなかった。

ギッ……

 ベッドの上で眠りの訪れを待つ兄の耳に、小さな音が入ってきたのはそんなときだった。

「んんっ……!?」

 何だ、と思う間もなく、兄の上に何かが覆い被さってきた。何か柔らかいものが唇を塞いでいた。

 三十秒ほどその状態が続いただろうか。やがて唇を塞いでいたものはゆっくりと離れていった。最初の動転から少し落ち着いた兄が、暗闇の中で目を凝らすと、そこにはさっき別れたはずの咲耶が泣きそうな表情でそこにいた。

「えっ……?」

「ずるいわよ、お兄様……今日一日は恋人の約束だったじゃない。まだ今日は残ってるわ……」

 そう言うと、咲耶は再び唇を重ねてきた。兄の唇は再び妹によって塞がれる。今度はそれだけにとどまらず、唇を割って舌までが口内に侵入してくる。

「んっ……んむっ……!」

 妹の情熱的な口づけが、兄の理性を溶かしていく。なぜ咲耶がここにいるのかとか、そんなこともどうでもよくなった。そして、そっと咲耶の右手が腰の下に伸びていった先では、すでに充血を始めてズボンの上からでもわかるようになっていた。

きゅっ

 妹の指先がズボンにテントを張ったそれを掴んだ。

「お兄様……こんなになってる……」

 兄の口から舌を引き上げた咲耶は、唾液に光る唇でそうつぶやくと自分の身体を下にずらしていき、ちょうどその膨らみが顔のところに来るようにした。

「今日は恋人なんだから、私はこんなこともできるのよ。お兄様」

 テントを張ったズボンをトランクスと一緒に下ろして一物を剥き出しにすると、咲耶はそう言って咲耶は幹に指を絡め、亀の頭のような先端にそっと口付けた。

「んっ……!」

「うわっ、さ、咲耶……!?」

 他人の手で一物に触れられるだけでも初めてなのに、先端がなにか温かく柔らかいものに包まれるのを感じて、兄は快感のうめきをあげた。

チュッ、クチュッ……

 どこで覚えたのか、咲耶は亀頭を咥えて口の中でそれに舌を這わせる。

しゅっ、しゅっ……

 同時に手は絶妙の強さと速さで幹を擦り上げ、兄の快感をせり上げていく。

「だ、だめだって……くっ……それ以上は…………っ!」

 兄は制止しようとするが、咲耶は耳を貸さず、初めての快感に耐えられなくなった兄は、

びゅっ、どくっどくっ……

「んんっ!?」

 咲耶の口の中に欲情の濁液を噴き上げてしまった。喉の方まで飛んでしまったのか、さすがに苦しそうに咲耶は顔を歪めたが、それでも口は一物から離さない。

「んっ……」

ごくっ……

 咲耶の喉が小さく動き、口の中に吐き出された兄のものを嚥下していた。

「お兄様……動かないでね……」

 これで終わり。兄は射精直後の気怠さを感じながらそう思ったのだが、咲耶の行動はまだ終わらなかった。一度出した直後にも関わらずまだ硬度を保っている一物を手で掴むと、上体を起こして自分の腰をそこへ近づけていった。

「今日が終わるまでは恋人……その約束なんだから、恋人として私のバージン受け取って……!」

 真剣な表情で咲耶はそう告げる。スカートの下の下着を横にずらし、まだ誰も受け入れたことのない秘裂へ、兄の一物を導いていく。

「うぐっ……!」

 照準を合わせた咲耶が腰を落としていくと、自分の体重で兄の一物が突き刺さってくる。めりめりと狭い通路をこじ開けるように進んでいき、

ぷつっ

 途中にあった膜もあっさりと破れ、結合部から血が流れ出した。

「あぐっ……!」

 だが、破瓜の激痛に苦しみながらも、咲耶は決して中断しようとはしなかった。身体の一番奥まで兄の一物を迎え入れると、身体を慣れさせるために休む間もなく、自らの腰を上下させて兄を快感に導こうとする。

「咲耶……!」

 兄はうめくようにその名を呼んだ。初体験による肉体的な快感はたしかに感じていたが、それ以上に咲耶の必死なまでの行動が兄の心にこたえていた。兄妹ということにこだわって避けてしまった自分をそこまで思ってくれるのかと、たまらない愛しさがこみ上げてくる。咲耶の向こうに見える時計の針は、十二時を少し過ぎたところを示していたが、もう1日限りの約束など関係はなかった。

「ううっ……!」

びゅっ、びゅくびゅくっ……!

 二度目の精液が咲耶の身体の奥深くで吐き出されると、とうとう力尽きたように咲耶の身体が倒れこんで来る。兄はそれをしっかりと抱きとめると、疲れ果ててぐったりとした咲耶にそっと口づけた。

「ごめんよ、咲耶…………愛してる」


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