週間更新お休み企画 陵虐の捜査官
その1 (3.6アップ)
のちに武蔵野大震災と呼ばれた悲劇の後に、まだ、そこかしこに震災の爪痕はのこ
るものの、ようやく再建を果たしつつある東京市の湾岸地域に新設された工場地帯
の一角に、24時間明かりが絶える事の無い食肉加工の工場が存在した。
一見すれば、どこにでもある近代的な工場なのだが、妙に高い塀と敷地への出入り
口の警備が厳重すぎる事が、どこか変の雰囲気とは言える。この日も昼夜を問わぬ
操業が行われているのであろうか? 広い敷地に建てられた加工場の窓からは、明
かりが零れていた。
「おい、クラックはあるか? 」
沢口は、いきなり話し掛けられて少し驚いた。振り返れば、いかにもチンピラの様
な風体の男が彼に向って手を突き出している。
「なんだ、李か? 脅かすなよ。クラックだって? 仕事中のヤクは御法度だろう
? 」
「なに言ってやがる。お前だって1発キメているんだろう? ボサっと椅子に腰掛
けていたじゃないか? 」
李に言われた通りに、沢口は経口覚醒剤を使用して気を紛らわせながら、この馬鹿
馬鹿しい仕事に耐えていた。
「なあ、沢口よぉ、ここのボスのジョンだって、今頃は獲物を1匹連れ込んで、お
楽しみの最中なんだぜ。それなのに、俺達だけが馬鹿を見る事は無いだろう?
警護なんて、こんな場所にいるかよ。市警察の阿呆どもは、ここに屠殺場がある
なんて思ってもいないさ」
たしかに、こんな場所に組織のアジトがあるとは、警察は考えてもいないだろう。
この工場の護衛が無駄な事は沢口もよく承知している。しかし、組織の命令には逆
らうわけには行かない。
「だから、頼むよ沢口、1つ回してくれよ。じゃないと、一晩中退屈でたまらない
ぜ」
「まったく、しょうがねえ奴だな… 1万だぜ! 」
沢口は顔を顰めて内ポケットをまさぐる。ショルダー・ホルスターに納まる拳銃が
邪魔に成ったが、それでも彼はしぶしぶと小袋を取り出した。
「おいおい、身内には五分だろうよ、ほれ、5000」
金と引き換えに小袋を受け取った李は、その場で中から茶色のカプセルを取り出す
。
「ここでヤル気なのかよ、李? 持ち場に帰ってからにしろよ、奴に知れたらマズ
イじゃないか」
「心配するなって、寝床に女を引き込んだジョンの糞ったれが、途中で出てくるも
のか。今頃は存分にいたぶっているだろうぜ。あのサディストめ」
李の言う事はもっともだから、沢口は目の前でカプセルを口に放り込み噛み砕く仲
間の事を見守った。すると、すぐに瓜実顔の優男の表情がだらしなく緩む。
「くぅぅ… 相変わらず、お前のヤクはキクぜ、沢口」
「当たり前だ、自分でやる分には混ぜ物ナシだからな」
真夜中過ぎの工場の廊下で2人は合成麻薬の効果に酔い痴れた。
ジョンはガウンを羽織りカウンターへ向い、水代わりに冷えたビールで咽を潤す。
ふりむけば、たった今まで貪り喰らっていた美女が、口の端から泡を噴いて悶絶し
ていた。
彼は満足げに笑みを浮かべると、干したグラスをカウンターに置き、再びベッドに
歩み寄る。腕を伸ばして節榑立った指を彼女の乱れた黒髪の中に突っ込んだ男は、
強引に美女の顔を持ち上げると、頬に容赦のない平手打ちをみまう。
「うっ… う〜ん」
小さなうなり声を上げた女の瞳が虚ろに開かれた。
「どうした、麻由美? ずいぶんとイキまくったじゃないか? クラブでお高くと
まって下手なジャズを歌っていた頃とは大違いの淫売ぶりだぜ」
眉間に刃物傷の後が醜く残る大男は、容赦の無い口調で女を蔑む。
「だって、それは、あんたが、ヤクを使うから… あんなのやられたら、もう… 」
少し眉を顰めて、麻由美は自分を乱暴に扱う男を睨むが、その瞳には力は無い。彼
女はクラブで歌手として勤めていた時にジョンに目を付けられてしまい、さらうよ
うに此処に連れ込まれていた。
無論、麻由美の勤めるクラブにも用心棒は居たが、そのヤクザ者は、この大男に黙
礼しただけで、彼女を勾引す事を見逃したのだ。それから、哀れなクラブ歌手の地
獄の日々が始まった。
今では、ここに連れ込まれて何日経ったかも分からない、それどころか、ここが何
処かでさえ分からない程に記憶が混濁している。純度の高い合成麻薬の集中的な投
与のせいで、彼女の精神は肉体と同様に蝕まれていた。
「ほう? そうかい? ヤクを射たれるのは、もう嫌なのか? 」
ジョンは隠し持っていた浸透式の注入器を、これみよがしに麻由美の目の前で振っ
てみせた。
「… 」
彼女は、これ以上の麻薬の使用が身を滅ぼす事を思い、黙って目を伏せる。
「こんなに純度の高いヤクは、外じゃ、絶対に手には入らないんだぜ。それこそ、
ブッ飛ぶ様に天国へ行けるだろう? そうかい、いらないのか? 勿体無い話だ
ぜ。この半分の混ぜ物入りのヤク欲しさに、人殺しも平気でやる連中が、街には
うようよしているのにな」
麻由美の反応を読み切っている大男は、冷徹な笑みを浮かべている。
「ちょうだい… おねがい… 腕に、お願いよ、普通にちょうだい… 」
ここに連れ込まれて以来、慣れ親しんでしまった麻薬の注入器を目の前にして、麻
由美は哀願を瞳に込めてねだる。
「馬鹿を言え! お前みたいな売女に、普通に射って、何処が面白いんだ? さあ
、股を開けよ、さっさとしろ、このスベタ! 」
ジョンは掴んでいた髪の毛を離すと、容赦なく彼女の頬に1発、平手打ちをみまう
。
「きゃぁ! 乱暴はよして、言う通りにするから、もう叩かないで… 」
相手が情け心など持たない野獣である事を思い知らされていた美しいクラブ歌手は
、全裸のままで、スラリと伸びた脚をゆっくりと開いて行く。
「ほら、さっさとマメをむき出しにしやがれ。ぐずぐずしていると、邪魔な毛を、
きれいさっぱり剃っちまうぞ! 」
粗暴な男に怯えながら、麻由美は股間に手を差し伸べて恥毛をかき分けると、これ
までの惨淫の為に変色したクリトリスを剥き出しにした。
「最初から、素直にそうすれば良かったんだぜ、この売女! 手間を掛けさせるな」
凶暴な顔を欲情で歪めながら、ジョンは哀れな獲物の股間に、注入器を差し伸べる
。クリトリスにわざと乱暴に先端を押し当てた大男は、下卑た笑い声を上げて、ス
イッチを押した。