少年係 1 (2.16)

 

 

 

 

大月孝一は少年係に配属されて、まだ半年たらずの新米警官である。捜査畑を希

望したからには、夢は一課か二課、あるいは機動捜査班を希望していた彼である

が、残念ながら世の中は常にまま成らぬもので、ちょうど欠員の生じていた◯◯

警察署の少年係に転属させられている。

殺人や強盗事件の緊張感あふれる捜査に携わり、世の中を騒がせる凶悪犯の検挙

を目標にしていた孝一であったが、現実は街をふらつく不良少年の補導や、親と

喧嘩した挙げ句に家を飛び出した未成年の少女の捜索と保護等が主な仕事に成っ

ていた。

テレビドラマで見て憧れていた刑事の任務とは些か異なる仕事に追われる毎日は

、彼にとってけして本意とは言えない。しかしながら、ようやく交番勤務を経て

背広で捜査を行える身分に成った若者は、これも運命と諦めている。それに実は

、この仕事も、そう捨てたものでは無いのだ。

新米の彼のやる気を大きく掻き立ててくれるのが美しいパートナーなのである。

畠山美沙子は彼の3年先輩に当る28才の美人警官で、少年係で発揮されて来た

彼女の手腕は署内でも一目置かれている。交番勤務よりは多少はマシな任務と考

えていた孝一にとって、新米である自分の指導監督の任に付いてくれた美貌の刑

事との毎日は、とても快適である。

現金な若者は今では少年課の仕事も悪く無いと宗旨を変える始末だ。いささか厳

しいところもありはするが、何しろ美沙子は◯◯署の中でも屈指の美女であり、

彼女とコンビを組む事が決まった時には、孝一は周囲の独身の男性署員から随分

と羨ましがられたものだった。

職務に熱心な美沙子には、まだ特定の彼氏は存在していない。これは◯◯署内で

密かに結成された畠山美沙子ファンクラブの公式な見解であり、孝一は、ファン

クラブの会員達から、くれぐれも悪い虫が彼女に付かない様に見張る事を、慰安

会の酒の席で厳命されてしまう。相手が先輩諸兄であるから、この密命を無視す

るわけにも行かず、孝一は詰め寄ったベテラン署員に面々からの命令を承諾して

いる。

もちろん、孝一自身が彼女に手を出す事など、もっての他と言う雰囲気なので有

るが、何故かその点については余り強くは言われていない。日頃の美沙子の彼に

接する態度から、ファンクラブの連中は、孝一が署内きっての美女から男扱いさ

れていないのを見抜いている。

彼の事を出来の悪いひ弱で気の利かない部下と位置付けた美沙子は、コンビを組

んで半年に成る今でも、孝一を顎でこき使い、不注意による手違いや失敗につい

ては場所が何処であっても、周囲の目を憚る事もなく容赦の無い叱責を浴びせか

けるのが常だった。むしろ、美貌を誇る女刑事から、悪し様に罵られる日々を過

ごす孝一の方に、内勤の若い婦人警官たちからの同情が集まっている程だから、

署内の美沙子のファンクラブの面々は安心して彼にお目付役を押し付けている。

 

 

その日の2人は、家出した未成年の少女が繁華街の外れにあるスナックで働かさ

れているとのタレ込み情報を元に捜査に取り掛かっていた。名指しされたスナッ

クは地下に店を構えていて通じる階段も狭く、なんともいかがわしい雰囲気を漂

わせている。準備中の札が掛かったドアを押すと、意外な事に扉はすんなりと開

く。薄暗い店内には、開店を控えて2人の女の子は席に付いているが、どぎつい

化粧で粧っていても2人がまだ未成年な事は明らかだ。少年係を務めているプロ

の刑事の目は誤魔化せない。

「申し訳ありませんね。まだ準備中なんですよ。表に札があったでしょう? 」

先に店の中に乗り込んだ美沙子を見て、バーテンが不機嫌そうに声を掛ける。も

ちろん彼女等が客では無い事は、この男にも分かっているだろう。しかし、白々

しい態度でバーテンは嘯いている。

「悪いけれども、御推察の通り警察よ」

美沙子は上着のポケットから警察手帳を取り出して、とぼけた態度のバーテンに

突き付けた。身分をはっきりとさせた少年係の女刑事は、ズカズカと薄暗い店内

に乗り込み、何事かと身を寄せ合って座っている若いホステス達の元に歩み寄る。

「えっと、右の方が小池万里子ちゃんね、それに左は槙田恵美ちゃん。それぞれ

 の御家族から、捜索願いが出ているわ」

彼女は二人を見渡してから、ゆっくりとバーテンに顔を向ける。

「まさか、それを知っていて、こんないかがわしい店で雇っていたんじゃ、無い

 でしょうね? 」

美沙子の剣幕に、バーテンは慌てて両手を胸まで上げて首と一緒に横に振る。

「まさか、そんなワケ無いでしょう? 全然知りませんでしたよ。何しろ二人の

 履歴書では20才の女子大生て書いてあったものですから… はい… 」

一連の会話の間に孝一は慌てて捜索依頼の手配写真を取り出すと、2人の少女と

顔を見比べる。厚い化粧で印象は大分違っているが美沙子の言った通り、この少

女達は確かに高校二年生の家出人なのだ。今頃ようやく被捜索者の身元確認に至

った不出来な部下に内心では溜息を吐きながら、彼女はバ−テンを睨み問い質す。

「ハタチですって? この子らの顔を見ていて、よくもそんなデタラメを押し通

 す気に成ったものね? 馬鹿も休み休み言いなさいよ」

啖呵を切った美沙子は、状況に付いてこらずにぼんやりと佇む部下に目配せする。

「ほら、大月くん! そこでボサっとしていないで、店の奥の様子を見て来なさ

い。ひょっとして、ほかにも未成年者を雇用しているかも知れないでしょう? 」

厳しい女刑事の命令を受けて、孝一はあわてて店の奥に足を進めると、迂闊にも

無造作にドアを開いて隣の部屋を覗き込む。真っ暗な部屋だった事から、目が慣

れるのに時間が掛かりそうだったが、この場合の彼には関係が無かった。何か気

配を感じた途端に首筋に強い衝撃があり、そのままその場に崩れ落ちてしまう。

「あっ… 大月……… 」

彼の名前を呼ぶ美沙子の声を、どこか遠くに聞きながら、新米の少年係の刑事は

意識を失ってしまった。

 

 

「やめろ… 馬鹿野郎! 何をするの? やめて! 」

ぼんやりとした意識の中で、彼は上司である美沙子の声を聞き、いったい自分は

何で彼女に叱責されているのだろうか? 疑問を抱く。

「止めなさい! いや、離して! 警察官にこんな事をして、お前等、許さない

 からね! いやぁぁ、手を離せ! 」

意識がしっかりと戻って来たから、彼は自分が不様に床に転がされている事を思

い知る。切羽詰まった美沙子の悲鳴に驚いて、薄目を開けて辺りの様子を見回す

若い刑事は、美貌の女上司が陥った危機に絶句する。尊敬してやまない先輩刑事

は着衣を全部剥ぎ取られてしまい、その上には見た事も無い大男がのしかかって

いるのだ。哀れな女刑事の両手、両足は、それぞれに男達が取り付いてしっかり

と捕まえている。その中には、さっき彼等と応対したバーテンも含まれていた。

 

 

 

 


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