でりへる 前編 その1

 

 

 

「おい、ハヤト、お前もなかなかヤルじゃないか」

叔父の尚也の言葉に、ベッドに横に成って雑誌を読んでいた隼人は顔を上げた。

(やっ! やばい! )

彼の勉強机の上に放置されていた1枚の写真を手にした叔父は、人の悪そうな笑

みを浮かべていた。

「しかし随分と色気付いたものだぜ。つい最近までは鼻水を啜るべそかき小僧だ

 ったのにな」

父の一番下の弟である尚也叔父さんは36才だが独身で自営業だから、仕事が一

段落して隙に成るとたまに隼人の家に遊びに来る。開けっ広げな性格の叔父は、

隼人が小さい頃から可愛がってくれているし、最近でも両親とは桁違いの小遣い

を振る舞ってくれるので、隼人は叔父の来宅を心から歓迎していた。

 

今日も今日とて、母親が夕食の支度をしている間に、気さくな叔父は少年の部屋

に入り込み甥っ子との雑談を楽しんでいた。そんな叔父に、自分の憧れの人の写

真を見られた事が隼人には無性に恥ずかしい。写真の女性は長坂由紀子、隼人の

通う高校の若い女教師だった。県下有数の進学校の教壇に立つ美人女教師は26

才、自分よりも10才も年上の美女を盗み撮りする為に、隼人はわざわざ一眼レ

フの高性能カメラまで買い込み、本人には悟られぬように遠方から由紀子の日常

の姿を撮影している。

 

考えてみれば叔父にねだって買い与えられたカメラで撮ったのだから、叔父には

御礼を述べるべきだろう。だが、西日に目を細める彼女の表情を、オナニーのフ

ィニッシュの為の材料に使っている事から、オカズ写真を見られたことで隼人は

顔を赤らめていた。

 

「まあ、犯りたい盛りだからな、ハヤトくらいの年頃は。でも、お前、どうやっ

 ているんだ? まさか、ここに呼ぶってワケにはいかないだろうが? 」

頬を赤くした甥っ子の反応を完全に誤解して尚也は不思議そうに問いかける。

「呼ぶって… なんの事だい尚也さん」

オジサンと呼ばれる事を断固として嫌う叔父に向かって、隼人は首を傾げて見せ

た。

「とぼけるなよ、ハヤト。プレイを楽しむからには、場所が必要じゃないか。そ

 うか、お前、ラブホテルを使っているな。まったく、マセた餓鬼だぜ。高校2

 年生のくせしやがって呆れた小僧だ」

 

「ラブホテルって… いったい何の話だよ? 尚也さん」

どうにも会話が噛み合わないから、隼人は首を傾げて問い質す。

「おいおい、しらばっくれる事は無いだろうが。俺は、未成年のくせにけしから

 ん! なんて、つまらん事を言うつもりは毛頭無いからな。それに、もちろん

 兄貴や義姉さんにも、お前がデリヘルにはまっているなんて密告もしないよ。

 咎めるどころか、むしろ高校生のくせに大したモノだと誉めてやりたいくらい

 だ」

手にした美人教師の写真をヒラヒラさせながら尚也は笑っている。

「デリヘルって、なんの事だい? 僕はそんな経験は無いよ」

 

「誤魔化すなよ、別にお前に説教しようとは思わないって言っているだろうが。

 だがな、勉強机の上に、わざわざ証拠の写真を置いておくのは感心しないぜ。

 まあ、お前の親父は堅物だからデリヘル嬢とは縁が無いだろうが、現にこうし

 て俺が見つけてしまっているんだからな。油断するなよハヤト」

写真を甥っ子に突き付けた尚也は自慢げに語った。

「なにを言っているんだよ、尚也さん。その写真の女の人は僕の学校の英語の先

 生だよ」

「か〜〜! つまらない言い訳しやがって。馬鹿を言っているんじゃないよ。こ

 の女はピンクシャトーって名前のクラブのデリヘル嬢だ。俺も何度か呼んだこ

 とがあるから間違いはないぜ。言い訳するならば、もっとましな話を考えろよ

 小僧。この綺麗子ちゃんはピンクシャトーのエリーちゃんだ」

勝ち誇った顔で力説する叔父の姿が可笑しくて、隼人は笑いをこらえ切れない。

 

「あはははは… 叔父さんこそ見間違えだよ。だって、その写真は僕が学校で先

 生に気付かれ無いように盗み撮りしたんだもの。だから、絶対に間違い無く長

 坂先生だよ」

隼人はベッドから立ち上がると、本棚の上に置かれた小箱を手に取った。蓋を開

ければ、そこには彼が学校で苦心して秘密裏に撮影した憧れの美人教師の写真が

何枚も保管されている。

「ほらね、間違いなく先生でしょう? 」

渡り廊下で他の学生らに囲まれている姿や、体育祭にときの野暮ったいジャージ

姿の由紀子の写真を、彼は誤解している叔父に手渡す。

 

「う〜ん、マジかよ? 他人のソラ似ってヤツか? うん、たしかにこの女は先

 生だものな。しかし、本当によく似ているなぁ… ひょっとして、双児の妹か

 姉じゃないのか? なあ、ハヤト、この女先生に姉妹はいるのか? 」

「そこまでは知らないよ。でも、そんなに似ていたの? そのデリバリーヘルス

 の女の人は」

甥っ子の問いかけに、尚也は力強く頷く。

「ああ、そっくりだぜ。まあ、まさか女先生がバイトでデリヘル嬢をやっている

 わけは無いから、俺の見間違えなんだろうけれども、それにしても似ているな」

尚也は合点の行かぬ様子で何度も首を捻って呟いていた。

 

 

「それじゃ、よろしく頼むぜ、ハヤト。メリーアンとマイケルは猫又社の極上カ

 リカリを朝夕カップ一杯づつだぞ。コジローはドライフードじゃ無くて、愛猫

 社のゴールド・ハイパー・ネコ缶だ。それから猫トイレの砂をこまめに変えて

 くれよ。トイレが汚れたままだと特にメリーアンは機嫌が悪く成り、そこら中

 にスプレーしまくるからな。あっ、それから、水もちゃんと… 」

「わかっているよ尚也さん。これが初めての留守番と言うワケじゃ無いんだから

 さ」

 

可愛がっている猫の事になると目の色が変わる猫馬鹿な叔父の繰り言を制して、

隼人は苦笑いを浮かべた。愛猫とのしばしの別離を嘆く叔父の尚也は東南アジア

方面をテリトリーとする貿易関係の自営業者であり、月の半分は日本を離れてい

る。そんな彼の唯一にして最大の悩みは、留守中の愛猫等の扱いだった。

 

これまでにペットホテルを始めとして、有人、知人、親戚を片っ端から頼って来

た尚也だが、猫に異常な程の愛情を傾ける彼の悩みは、ここ数年は甥っ子に留守

宅の番人を任せることで、ようやく解消されていた。なにしろ猫を飼う為にマン

ションを引き払い、豪奢な一戸建てを買い求めるほどの猫馬鹿なので、仕事で自

宅をしばらく離れる時にはいつも出発直前に大騒ぎしていた。

 

もっとも、猫を熱狂的に愛するが余りに過干渉な尚也は愛猫たちから敬遠さされ

ていて、それなりに可愛いとは思うが叔父の猫馬鹿ぶりには付いて行けず、適当

な距離感を持って猫に接する隼人の方を慕う猫の方が多く、飼い主の尚也にとっ

ては安心して甥っ子に面倒を任せられる一方、それはそれで面白くは無いのだ。

 

 

 


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