「そうだな… 他に女がいなくて、由紀江… さんだけが相手ならば、まあ、 1時間は掛からないだろうな。でも、なんでいきなり、そんな事を聞くんだ い? 爺さん? 」 少年の言葉には嘘は無いから、由紀江は身の置きどころが無く思えて、ただ俯 いて黙り込む。 「儂が5分で、同じ事をやってのけるって言えば、お前はどう思う? なあ、 小僧? 」 「あはははは… そりゃ、無理だぜ、いくらなんでも5分じゃな」 ほんの数回の咀嚼で甘エビを呑み込んでしまった少年は、老人の話を法螺と決 めつけて笑い声を上げた。だが、翁の横に佇む美人女監督が、為吉の台詞に反 発しないのを見ると、俄然、好奇心が掻き立てられた。 「なあ、本当なのかよ? 由紀江… さん? 」 年下の愛人の呼び掛けに、ちらりと上目使いで隆俊を見上げた由紀江は、頬を 羞恥で紅く染めたまま、小さくコクリと頷くではないか! 「なんなら、その目で確かめてみるか? どうだ、小僧? 」 もはや好奇心の塊と化していた若者は、老人の提案に一も二も無く頷いて同意 を示した。
食べかけの鮨もそのままに3人は由起子の寝室へと場所を移す。長い廊下を歩 いている間にも、由紀江が夢うつつな表情を見せるから、少年はただならぬ気 配を感じ取り、これから行われる行為に期待を膨らませている。すでに慣れ親 しんでいた女AV監督の寝室に入ると、それまで若干腰がまがっていた様に思 われた老人が、シャキッと成ったから面白い。ここは黙って様子を見ようと、 少年は壁際に置いてある椅子まで下がり、ドッカと腰を下ろした。 「ほら、さっさと邪魔なモノは脱いでしまえ」 老人の声に促されて、由紀江はチラっと愛人の少年に艶っぽい流し目をくれて から、ゆっくりとクリーム色のシャツを脱いで行く。葵との撮影が終わったら 、今度は自分の順番だと考えていた由紀江だったから、下着は隆俊を挑発する 様に、黒の上下を身に付けていた。まだ現役AV女優時代を彷佛とさせるグラ マラスなプロポーションを惜しむ事も無く披露する由紀江ではあるが、流石に 老人とは久しぶりだから、豊かな胸元と下の飾り毛はかろうじて両手で隠して いる。 「相変わらず、綺麗なものじゃ。お前の引退は5年は早かったのう」 年下の愛人だけでは無く、彼女に縄の味を憶えさせた老人に見つめられて、由 紀江はいたたまれずに、思わず目を伏せて俯いた。性に関しては奔放な女監督 の恥じらう仕種を初めて見た隆俊は、驚いて目を丸くしている。 (なんだよ、由紀江? こんな爺に見られただけで、顔どころか首筋まで真っ 赤にしやがって… いったい、何なんだ? ) 数いる愛人の中でも、もっともセックスに関してはオープンであり自由な考え 方をしていたはずの由紀江の恥じらう姿に、少年は驚きを隠せない。しかも、 命じられたわけでも無いのに、彼女はそのまま老人の前に歩み寄ると、くるり と振り返り跪く。 どうなる事かと息を呑み見つめる少年の前で、由紀江は夢見る様な顔をしたま まで、背中に両手を回してしまう。すると、美貌のAV監督の行為がさも当然 とばかりに軽く頷いた老人は、持参した大きめの黒いバックから、麻の荒縄を 取り出したでは無いか! (しっ… 縛るのか? これって、もしかしてSM? ) つい最近までは童貞だった少年は、漫画で見た事のあるアブノーマルなプレイ が目の前で行われる事にショックを受けた。同時に、あれほど男と女の繰り広 げる行為においては獣性を見せる隆俊なのに、刺激的な光景の前にした今は、 好奇心が満ち溢れたただの餓鬼と化している。上下に交叉した手首を最初に荒 縄で決めた老人は首が絞まらぬ様に縄を躯の前に回すと、まるで豊かな乳房の 膨らみを絞り上げる様に淫媚に拘束して行く。 「あふぅぅぅぅ… 」 両方の乳房が歪にゆがむ中で、由紀江は感に耐えぬと言った様子で甘い吐息を 漏らしている。その仕種を見れば、彼女がけして縄掛けを嫌っているようには 見えない。 それどころか細められた目の中の瞳は、これからの行為を思い潤んでさえいる のだ。それにしても、老人の手際の良さは大したものである。その水際立った 手腕は、SMに関してはまったくのド素人である隆俊も、賛嘆の目を向けてや まない。 (凄えや、まるで縄がひとりでに由紀江に巻き付いて行くみたいだぜ) 干涸びて土色の老人の指がスルスルと美女の躯の上を滑ると、ほんのりと汗の 浮いた肌に荒縄が食い込んでいるのだ。しかも、急所を決める都度、由紀江が 切な気な吐息を漏らして、なんとも色っぽく身を捩る。刺す様な若い愛人の視 線を感じながら、由紀江は過去にまだ売れっ子のAV嬢だった頃の事を鮮明に 思い出していた。 企画モノで初めてSM作品に出演した時に、縄の技術指導で撮影に参加してい たのが、その当時は超一流の縄師として知られていた留吉だった。余りに巧み な縄さばきと、女の泣きどころを適確に掴み責めるテクニックに幻惑されて、 そのAVの撮影が終わった後でも、しばらく彼女は老縄師の奴隷女としての生 活を楽しんでいた。 だからこそ縄掛けされた途端に、過去の記憶が蘇り、マゾの血がいきなり沸騰 して抑えられない。隆俊に見られているにも関わらず、ひとりでに腰がうねく ってしまうのを、もうとめることなど不可能だ。巧みな老人の手腕は素晴らし く、1分とは経たぬ間に、由起子の白く美しい肢体には縄化粧が施されてしま った。 「どうだ? 久しぶりの縄の味は? 」 「あふぅ… きついけれど、とても良い気持ちです、御主人様」 その言葉に嘘が無いことは、瞳を潤ませて首筋までも真っ赤に染めた由紀江の 様子を見れば明らかだ。これまで幾度と無く肌を合わせて来た年上の愛人の見 せる被虐奴隷としての恍惚の顔は、由紀江の違った一面を強く少年に印象付け ている。 「おいおい、可愛い愛人の前で、もうこんなに濡らしているじゃないか? 本 当にお前は淫乱な女だよ」 本来であれば、ここからゆっくり、そしてじっくりと責め苛むのが常道ではあ るが、少年の関心を得る為に5分と時間を区切った以上、為吉は焦らし責めは 諦めて、一気に奴隷女を追い上げて行く。道に外れている事は百も承知の上で 、老人はいきなり縛り上げた美女の股間に手を差し伸べた。 「あッ… あふぅぅぅぅ… 」 久しぶりに自由を奪われて虐められる悦びの中で、直接秘裂に対する責めを受 けた美貌の女監督は、もう年下の愛人の目を気にする事も出来ずに、甘えた声 を漏らして身悶える。しかし、老人は蜜壷に差し入れた中指を動かす様子を見 せない。最初は小さな刺激でも躯を震わせていた由紀江だが、やがて焦れてし まい何度も身じろぎする始末だ。 「あふぅ… 御主人さま… お願いですぅぅ… もっと、グリグリとしてくだ さい。あぁぁぁ… 焦らしたら、嫌ですぅぅ… 」
|