その43

 

 

 

 

「よし、それじゃ、ひとあし早く神社に行って、隠れて様子を見ることにしよ

 うぜ」

一度潰えた戦いへの欲望に再び火が付いたから、隆俊は嬉しく成って生来の陽

気さを取り戻す。俄同盟を結んだ一行は指定された神社へと急いだ。

 

 

「ほら、見ろよ、あの生意気そうな奴が熊倉だろう? 連れはどうやら左右の

 2人だけじゃないか」

祠の裏に陣取った隆俊が、嬉しそうに留璃子に話し掛ける。

「でも、3人だよ、ヤバイよ。アタシと清美も加勢するさ」

「馬鹿! 邪魔なだけだよ、大人しく後ろで見ていな」

いよいよ正念場を迎えた二人の美少女の興奮が可笑しくて、つい隆俊は笑って

しまう。

「それじゃ行ってくるぜ、お姉さん方。大人しく待っていろよ」

そう言われて、改めて留璃子や清美は、この大柄な少年が自分よりも年下だっ

た事に気付く。これまでの不遜で傲慢な態度から、彼女等はすっかりと隆俊が

中学生である事を失念していた。当然、留璃子はひとりで現れると思い込んで

いた熊倉等だから、先に姿を見せた大柄な少年を見てひどく驚いたような顔を

する。

「なっ… なんだ? おい、留璃子、ひとりで来いって言ったハズだ」

待っていろと言ったのに、隆俊の後ろに続き、もしもの時は加勢に及ぶつもり

の留璃子や清美を、男子高校生の不良が睨み付けた。背の丈は、大柄な隆俊に

引けは取らない不良の呼び掛けに、少年は不敵な笑みを見せる。

「おいおい、女ひとりを呼び出して、お前等は3人掛かりなのか? みっとも

 ねえな」

まだ幼顔の残る隆俊に嘲笑われて、熊倉も、その両脇に控えていた手下も、一

斉に険しい表情に成る。

「なんだお前は? 俺がK工の熊倉だって知っているんだろうな? 生意気な

 事をほざきやがって、ブッ殺されてえのか? 」

「クマクラだかナマクラだか知らねえが、餓鬼のくせして、女を食い物にしよ

 うとする腐れ外道が、偉そうな事をほざくな、このボケ」

久しぶりの喧嘩だから、隆俊は嬉しくてしょうがない。しかも、御褒美のエサ

に釣られたと言っても、勝手な理屈だが一応はこちらに正義らしきモノもある

ので、少年は握った拳がウズウズしている。

「お前、だれだ? 見なれない面だな。どういうつもりなんだ? 」

余りにも不遜な隆俊の態度を訝り、熊倉が問い質す。少なくとも、この界隈の

高校生であれば、乱暴者揃いのK工のボスである彼に、こんな口のききかたを

する者はいない。

「たちの悪いヒモの真似をする馬鹿野郎に名乗る気には成れんな。見ての通り

 、彼女等の助っ人だよ、もともと、俺が藤本って野郎を病院に送り込んだ事

 が、この下らねえ企みの発端だそうだからな」

ここまで喋れば、もう隆俊が名乗る必要も無い。熊倉は合点の行った様子で頷

いた。

「そうかい、お前が笹川か? 中坊にしてはデカいな」

不良高校生はわざと少年を無視して、彼の後ろに控える二人の少女に顔を向け

る。

「お前等、やるに事欠いて、中坊に助っ人頼んだのか? 馬鹿な奴等だぜ、こ

 んな餓鬼は… 」

いきなり言葉を切った熊倉が思わぬダッシュを見せたから、虚を突かれた清美

や留璃子は棒立ちだ。相手を油断させて、不意打ちで戦いを優位に進めるのが

熊倉の常套手段なのである。

しかし、事、喧嘩にかけては百戦錬磨のつわものである隆俊には奇襲攻撃は通

用しない。不良少年のボスの意外に鋭い右のストレートを際どく躱した隆俊の

右の拳が、カウンターで熊倉の頬にめり込んで、勝負は一瞬で終わってしまう

自分の勢いまで利用された威力満点のカウンターの右を喰らって、熊倉は逆に

数メートル程も吹き飛び、土煙を舞い上げて地面に叩き付けられた。ほとんど

一瞬の出来事だったから、清美や留璃子、それに熊倉の子分の二人も何も手出

しが出来ずに、その場に固まったままだ。

特に熊倉の子分連中は動揺が激しい。喧嘩ならば負け知らずだった熊倉が、得

意の奇襲をいなされたばかりか、したたかに反撃を喰らって地べたに這う様は

、まだ信じられないものがある。

 

「さてと、そっちの二人はどうするんだ? 」

問いかけられても手下の二人は当惑するばかりだ。本当は回れ右して一目散に

この場を逃げ去りたいが、そんな事をすれば、あとで見捨てた熊倉にどんな報

復をされるかわからない。

だが、彼等が心底恐れる不良生徒を、あっさりと右の拳一発でブチのめした怪

物を相手に、ボスの敵討ちを行う気概などは、瞬時に砕けて塵も残ってはいな

い。逆らう様子の見えない子分を無視して、隆俊はぶっ倒れたままでピクリと

も動かぬ不良のボスに歩み寄る。

「よし、こいつも、顎の骨が砕けて、しばらくは入院だな。これならば藤本と

 一緒だ」

彼の言葉に間違いは無い。気絶した熊倉の顎は歪にゆがみ、少年の拳の威力を

如実に物語っている。

「おい、そこの2人」

改めて隆俊から呼び掛けられて、手下の二人はビクっと躯を震わせる。

「このナマクラ野郎を、さっさと医者に付けて行ってやれよ。それから、俺は

 この事を誰にも言うつもりは無いから、仲間連中には、この阿呆は転んで顎

 の骨を砕いたとでも言っておけ。天下のK工のボスが中坊にぶっ倒されたん

 じゃ、格好悪いだろうからな」

すっかりと戦意を喪失した二人は俯いたまま熊倉に歩み寄り、大柄なボスを苦

労して担ぎ上げる。

「それから、もう下らない事は考えるなと、その阿呆に言っておけよ。もしも

 、R女学院に、またぞろつまらんちょっかいを掛けたら、今度は顎じゃ済ま

 ないからな」

何とも生意気な台詞だが、ボスを一発でぶちのめされた手下連中はすっかり意

気消沈していて、怯えた様子で無言のまま頷くと、意識のない熊倉を担いで、

シオシオと神社の境内から姿を消した。

 

 

 

つまらぬ諍いでかいた汗をすっかりと洗い流した隆俊が、バスタオルで頭を擦

りながら出てくると、既にシャワーを済ませた二人の少女がバスローブ姿で並

んで長椅子に座って待っていた。先に帰れと言われたのに、強引にラブホテル

まで一緒に付いて来た清美は表情も固く、顔色も青いのに比べて、経験のある

留璃子の方は、友人の緊張が可笑しいのか? 妙にハイテンションだ。

「まあ、そんなにビビらないで、今日は私と隆俊さんのセックスを見学して勉

 強しなさい」

「べっ… べつに、ビビってなんか、無いわよ… 私だって… 」

口では強がっているものの、膝の上でしっかりと握られた小さな拳は、少女の

不安を物語る様に小さく震えている。

 

 

 

 


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