美希子 (11月19日(水)17時06分07秒)
■アニトさま■
「マトリックス・レボリューションズ」を見てきましたぁー。
なにがなんだかわかりませんでしたぁー。
それはそれとして。
だんだん寒くなってきてコートが必要な季節になりました。
女装外出がしやすい季節でもあります。
先日の夜、オレンジ色のブラウスの下にブラとヌードブラをつけ、
パンティとフェイクレザーのパンツで、
その上にコートを羽織ってドライブしちゃいました。
首から上は素のままで、靴はスニーカーでしたけど。
すっごく女の子気分になって人のいるところに行きたくなって
そのままの格好でマックへ入ってしばらくいたんです。
そこにいた人たちはワタシを男として見たんでしょうけど、
コートの下には女の子の洋服を着ているんだよって心の中で思いながら
テーブルの隅で少しだけコートのファスナーを下げて
胸のふくらみを確認して楽しんだりしちゃいました。
今思い返すと大胆なことをしちゃったなという気がしますけど
すっごく幸せなときでした。
今度はその格好で映画を見に行っちゃおうかなって考えてます。
あっ普通の映画館ですよ。
■ブラ男さま■
わーい、第二弾は前作とは打って変わってとってもエッチですぅ。
ワタシもはじめての女装は好奇心からだったんです。
しかも女の子になりたいという気持ちからではなく
1人エッチをするために。えへへっ
女装してみてワタシはこれは楽しいって思いました。
ご家族がいらっしゃる方は隠し場所とかたいへんでしょうけど
これからも気分転換にされてみてはいかがでしょう。
−−−彼氏が彼女に着替えたわ 第1話−−−

「紀道(ノリミチ)くん、ちょっと来てくれる〜?」
女性の甘え声は有無を言わせぬ場合が多い。
疑問文であるにもかかわらず多くの場合命令形だ。
「来なさい」ではすでに怒っている。
そうならないためにもぼくは大急ぎで水道を止め、
洗いかけのお皿をあと一枚残してリビングへ向かった。
といっても2DKの部屋である。
ガラッと格子ガラスの嵌まった扉を引くと
美登里さんがテレビ画面に向かって身を乗り出していた。
どうしてぼくが美登里さんの部屋にいて食事を作り皿洗いをしているのかを話せば
それはそれは長い物語になる・・・なんてことはないけど
今はそれを説明しているときではないようだ。
「ほらほら見て見て」
毎日お昼にやっている軽薄な番組が映し出されていた。
昼食時の忙しい時間帯にどこから見始めてもどこでスイッチを切ってもよく、
後に残るものがなんにもないバラエティショーだ。
「この子、男の子なんだよ」
うーむ、強すぎるライトで陰影をとばした顔の持ち主は
一見どう見ても女の子だけどれ、そう言われてよくよく見れば
輪郭が角ばっているし、髪の毛が不自然のようにも思える。
「彼氏を女装させてるんだって」
どこの世界に真昼間から男を女装させて面白がるテレビ番組があろうか!
飢餓に沈黙し、戦争に泣く国々もあろうというのに。
司会者が女装の男の脚を触ろうとすると、彼、いや今は彼女は
いや〜んとでもいう顔をして恥ずかしげに苦笑する。
その姿を見て出演者たちが笑い、美登里さんもキャハハとのけぞった。
こういうときの美登里さんはあどけない。
ぼくよりひとつ年上の、
その番組の会場にいたっておかしくはない20歳女子大生である。
3人の素人女装男が出揃ったところで出演者たちが手に持った数字札を上げ、
その合計が賞金としてプレゼントされるようだ。
こちとら万年金欠病でピーピーしているのに
そんな安易な方法でお金のやりとりがあっていいものだろうか。
コマーシャルになったところでぼくは再び皿洗いに向かおうとした。
そのとき。
「そうだ!」
美登里さんが大きな声で言った。
振り返ると美登里さんの首がゆっくり回ってぼくの目を射すくめる。
この人の「そうだ」は他人にとって「そうではない」。
よからぬ予感に足元からぞぞぞと
1000匹の毛虫が這い上がってくるような感触に襲われた。
そもそもぼくが今ここにいるのも美登里さんの「そうだ」のせいなのだ。
「ノリミチくん、女装しなさい」
これはもう明らかに命令以外のなにものでもない。
「かんべんしてくださいよ〜」
ぼくの言葉をぜんぜん聞かずに美登里さんは続けた。
「うまくいけば25000円くらいになるわよ。
スキー旅行代、足らないって言ってたじゃない。
ノリミチくんってけっこう整った顔しているし体形もまあまあ・・・、
それにウチには洋服もウイッグもあるし、」」
意味わかんない。いやわかんないふりをしよう。
美登里さんは平日の夜ブティックでバイトしているくらいだから
洋服はたくさん持っているしファッションセンスがいいのもぼくは認める。
けど、その大胆さにはときどきついていけないことがある。
「いやですよ〜、女装なんて。しかもテレビに出るなんて」
「大丈夫よ、可愛くしてあげるから」
「そういう問題じゃなくて。・・知り合いが見てるかもしれないんですよぉ」
「お化粧したら誰も気づかないって」
「だって美登里さんが紹介者として出るんだったらわかっちゃうじゃない」
「そのときはそのときでシャレでしたって言っとけば」
スキー旅行費の足しにするという大義名分ではなく、
なんだか美登里さんの好奇心を満たすための命令であるような気がしてくる。
「第一ぼく、美登里さんの彼氏じゃないじゃないですかぁ」
「そんなの嘘でも大丈夫よ、テレビなんだから。
画写りが良ければそれでよくって正直さなんて求めてないわ」
美登里さんはきっとまだ夕べの酒が抜けていないに違いない。
そしてぼくも夢うつつの中で悪夢を見ているのだ。
そうだそうだと思いながらもさっき一緒に食べたレタスチャーハンの
レタスの繊維が奥歯の間に現実としてしっかりしがみついている。
「さあ、つべこべ言わないでここへ来て座る。
ノリミチくんは今日一日わたしの何だったかな?」
うううっ、現実は屈辱的だぁ〜。
そうなのだ、昨日のコンパでアキラが「王様ゲーム」をやろうと言い出さなければ。
美登里さんが「一日奴隷になる」なんて書かなければ。
もっとさかのぼれば半年前カズヨシが美登里さんと知り合わなければ。
今朝、「お昼ご飯を作りにいらっしゃい」なんていう命令を無視すれば。
そしてぼくはまず洗顔を命じられた。

▽ ▽ つづく ▽ ▽




アニト (11月19日(水)23時46分19秒)
美希子さん、こん○○は。
むははは、コートの下にそのような秘密を忍ばせて大胆なことをしましたね。
その場に居合わせたかったものです。
いつぞやのように一緒にコーヒーでも。
それはそれとして。
つい最近女装娘さんと公園でデートをしていたとき、
あきらかにその場にいるのが不自然と思えるスカート姿の人がいました。
もしかしたら女装娘さんではなかったか今思うのですよ。
声をかけなかったことが良かったのか悪かったのか?。
>「ノリミチくん、女装しなさい」
ほほう、女装の理由がここにもひとつ。




美希子 (11月27日(木)18時54分31秒)
■アニトさま■
実は夜だけでなく昼間にも同じ格好でお出かけしちゃったんです。
こっそり写真を撮りましたのでまた送ります。
>もしかしたら女装娘さんではなかったか今思うのですよ。
その人は女装娘さんだったと思います。うん、ぜったい。
うーん、でもなにをしていらしたんでしょう?
アニトさまのお近くに住んでいる人がうらやましいです。
だってその気になればいつでもお会いできるんですもの。
優しいアニトさまのことですからおモテになっているんでしょうね。
着替えがアニトさまのためにできるのならいいなー。
■男!権太さま■
あっ先を越されちゃったぁー。
でもいいんですか「空想デート」でこんなこと書いて。
>罰として、以後、権太のことは犬とお呼び下さい。
さぁゴンタちゃん、こっちへおいで首輪つけてあげるから。
一緒にテレビを見ましょうね。
いや〜ん、くすぐったい、足の裏なんか舐めないの。
ほらほら見なさい、この女の子はホントは男の子なんだって。
ゴンタちゃんにも素敵なお洋服着せてあげよっか?
なんてふうに犬を飼って可愛がってあげたいなって思うんですけれど
アパート住まいなので叶わないんです。

−−−彼氏が彼女に着替えたわ 第2話−−−
洗面台の上には外国の映画に出てくるような
扉に鏡がついた棚があって、
中に入りきらない化粧品のボトルや小瓶が
いたるところにたくさん溢れていた。
これらが全部必要なモノばかりだとしたら
女の人ってたいへんなんだなと妙なところで感心してしまう。
いややややや人事としてとらえている場合ではない、
もしかしたらそのすべてを
ぼくの顔や全身に塗りつけられるかもしれないのだ。
「ノリミチくんは足の毛、濃いー?」
うわーっ、さっそくきたぁー。
「もらい物の脱毛クリームがたくさんあるんだけど使ってみるぅー?」
「そんなに濃くないからいいですー」
体毛の薄いぼくはひげもまばらにしか生えてこないから
何日かおきに暇に任せて毛抜きで抜くだけで髭剃りというものを経験したことがない。
「美登里さんそんなに濃いんですかぁー?」
「まさか。使わないから余っているんじゃないのー」
なるほど。
そもそもぼくは化粧品の類をいっさいもっておらず、
朝は歯を磨いて顔を洗って終わり、
お風呂だって全身を泡だらけにして流して浸かって拭いたら終了。
それにひきかえ女性たちは朝起きて、出かける前に、家に戻って、
お風呂に入りながら、お風呂から出て、寝る前に、他にもぼくの知らないところで、
塗ったり拭いたり貼ったり剥がしたり足したり引いたり飲んだり出したり、
自分の体を実験台にでもするようにしながら美を追求しているんだろう。
男に生まれてよかったと思う。
「いちおうリクエストを聞いてあげるけど、どんな服が着たいー?」
うううっ、やっぱり本気みたいだ。
でもまさかバニーガールとかランドセルを背負った小学生にされることはあるまい。
冗談のつもりでこう言った。
「女王様にお任せしますー」
「いい心がけね。じゃ準備ができたらいらっしゃい」
ぼくの方に準備も何もない、着せ替え人形になるだけだ。
リビングに戻ると部屋の壁いっぱいに洋服が掛け並べられていた。
さすがブティックでアルバイトをしているだけあって
どれもあらかじめ上下をコーディネイトされていて、
白を基調にしたお嬢様仕様やミニスカートのギャル風、
アイドルが着るようなフリフリ服もあればシックなスーツやボディコンワンピース、
チャイナ服にウェディングドレス、なんとバニーガールの衣装までホントにある。
「インパクトを狙ってみるからまずはこれ一式に着替えてきて」
渡されたのは紺色の布の塊だった。
そうして背中を押されダイニングキッチンへ押し込まれ、
ドアが閉められ独り取り残された。
「着替えが終わったら呼んでね」
地味な紺色の塊をテーブルの上に広げると。
「ななななんですか、これ?」
ガラスの格子ドア越しに美登里さんが平然と応える。
「あら、見てわからない?。セーラー服よ」
全身の力が一気に抜けたように思え、バサとセーラー服を床に落としてしまった。
拾おうとして手を伸ばしてその白いモノに気がついた。
「ししし下着まであるじゃないですかぁー」
「パンストは穿いても穿かなくてもいいからね」
「穿けませんよぉ」
「生脚が好きなの?」
「そそそういう意味じゃなくって」
「ノリミチくんは何のためにわたしの家に来たんだっけ?」
少なくとも女装をするためではないけど
拒否すればスキーにつれてってもらえない。
ええいこうなったらもうなんでもしてやるーぅ。
そう決心してセーラー服と下着をまとめ持ち、
今出たばかりのバスルームのドアを開け
その陰に隠れながらパンティを広げかけたとき。
「下着は全部新品だからへんなこと想像しちゃダメよ」
美登里さんの半分笑いを含んだダメ出しがあった。
「しししませんよぉ」
と言いながら初めてまじまじと見る下着類にドキドキしていた。
触れれば柔らかな手触りがぼくの身体中を駆け巡る。
これ以上妖しげな気持ちが頭を持ち上げないうちにと
ぼくは大急ぎで着ていた服を脱ぎ捨て、
見るも可愛く頼りなげなパンティーに脚を通して引き上げた。
うううっ、今は何も考えてはいけない。
頭の中を無にして衣装チェンジに心がけるのだ。
そうこれはぼくに付属するものを取り替えるだけであって
遊園地でのバイトでパンダのぬいぐるみを着たではないか。
アキラの家でスパイダーマンタイツに身を包んではしゃいだではないか。
スキーへ行けばスキージャケットの着用が当たり前で、
だからといってぼくの中身は今までどおりなんら変わることはない。
そういうことだそうだそうだそれにしてもこのブラジャーってやつは・・
ここに腕を通せばいいのだなそしてこのちっぽけなホックを・・
背中で留めることなんてで〜〜き〜〜るぅ〜〜のかないほんとに・・
ででできたぁその次は・・やっぱりパンストは穿こう
たしかこんなふうに丸めてから脚を通すのを映画で見たことがある
わっとっとっと倒れるぅよよ〜よぉしなんとか穿けたけど
我ながらみっともない姿は見ちゃいけない見ないようにしよう
とにかくスカートを穿いちゃえばこっちのものだ
うくくくっウエストがちょっと苦しいけどなんとかコノオ・・ウリャよぉし
うわっなんだなんだこの短さ薄っぺらさ頼りなさはぁ
女の子というのはこんな無防備なものを腰に一枚つけただけで
外へ繰り出し闊歩しているというのかなんという拠り所のなさ
おかあさん親不孝なぼくをお許しくださいでも絶対こんな姿みせられない
ええいとっとと着ちゃおう上着も・・被ればいいのだな
そしてこのスカーフをこうしてこうきてこうなって・・・
鏡はないか鏡はないかなんでないのよこの部屋には。
「美登里さーん、このスカーフどうすればいいんですかー?」

▽ ▽ つづく ▽ ▽




アニト (11月27日(木)23時44分16秒)
美希子さん、こん○○は。
他所様の掲示板を読むと、日本各地に女装娘さんがいて
いろいろな出会いがあるようです。
ただ、大都会のように女装人口が多くないわたしの住む地方では
偶然という確率で女装娘さんと出会うことはまずありません。
『空想デート』は過激な内容のHPですからねー。
近くにいながら《その気》になっても
メールを出すにはたいへんな勇気がいるのでしょう。
それほど《おモテになっている》わけではないのですよ・・??。どはは。
美希子さんのような素直な彼女が欲しいものです。
外出写真、楽しみにしています。




美希子 (12月4日(木)18時18分48秒)
■アニトさま■
お風邪はもう治りましたでしょうか?
街中ではまだ女の子たちがミニスカートでがんばっています。
寒くないのかなーって思うんですけれど
きっとミニスカートを穿く理由があるんでしょうね。
可愛く見せたいとか脚が長く見えるようにとか・・・うーん
なんかファッションのためだけっていう気がして
そのためだけに寒さに耐えているんだとしたら
とてもではありませんけどまねができません。
>美希子さんのような素直な彼女が欲しいものです。
わーい、寒い冬にはアニトさまと一緒にコタツに入って
みかんでも食べれたら幸せですぅ。
あっ、ゴンタちゃんっていう可愛い子犬を飼っているんですけれど
邪魔しないように言っておきますから。
■男!権太さま■
ワタシが「空想デート」を素敵だなって思うひとつは
みなさまの間に共作や連作の物語があることなんです。
残念ながらワタシはその代表的な「空想オフ会」に参加できませんでしたから、
綾乃さまや由衣美さまや唯奈さまや数値フェチっ娘さまや
カオルさまや佳菜っちさまにはご挨拶をしたことがないのですけれど
すっごーーーい素敵な方たちがすっごーーい楽しそうなことしてたんだ、
って読んで思いました。
ご挨拶文だけのお付き合いじゃなくって
物語の中に作者さま同士が登場しあうなんて
なんて暖かいサイトなんだろうって。
満3周年おめでとうございます。
美希子も後を追っかけていきますからまだまだ続けてくださいね。
■彷徨えるゴンタちゃん■
>ピンポーン
>ほら誰かがドアの外に・・・。
あ、誰か来ちゃった。
女の子でいるときにいらっしゃるってことはアニトさま?、それとも権太さま?
いい、ゴンタちゃん、吠えちゃダメよ舐めてもダメだからね。
妬かないでおとなしくしててね。
ピー、スー、クイン、クン、スヤスヤ
って寝ててくれればもっといいんだけどなー。
新しい下着に着替えなくっちゃ。あっコラ、よだれ垂らして見ないのっ。
−−−彼氏が彼女に着替えたわ 第3話−−−
リビングは畳にカーペット敷き、キッチンはフローリングだった。
「座った感じはどう?」
椅子に腰掛けていてさえ逃げ出したくなるような気分なのだから
カーペットになんてどう座ったらいいのか見当がつかない。
ミニスカートで胡坐じゃパンツ見えちゃうし、
いきなり女の子座りをするのも照れくさいを通り越して奇妙すぎる。
ぼくは小さなキッチンテーブルと椅子の間にむりやり身体をはさみこんでいた。
そうすれば自分の下半身を見ないで済む。
こうなるとキッチンに鏡のないことが救いだった。
「じゃまず下地から作っていくわね」
そう言って美登里さんはぼくの横に立ち、
テーブル上に所狭しと並べられた化粧品の中から透明の瓶を取り上げ、
チャプチャプとよく振ってから液体を手に取り、
背後に回ってぼくの顔に塗りたくり始めた。
「こうして全体にいきわたるように・・・いい?」
化粧液はひんやりしていて、美登里さんの手のひらは温かく心地よかった。
「さぁ今度はこれ。自分でやってごらんなさい」
次は赤い小瓶のクリームのようだ。
そうしてぼくでさえ知っているファンデーションの番もまわって来る。
塗る順番ってあるのかな?と思う。
たぶんあるんだろうけど、いろんな化粧品を何度も塗り重ねっているうちに
それらって顔の表面で入り混じってしまわないのかな?
だとしたら順番って意味があるんだろうか?
「ファンデは首の色に合わせるのがいいんだよ。
ノリミチくんってけっこう白いね、わたしのでちょうどいいわ」
男としてはそれを褒め言葉と受け取っていいのかどうか疑問だ。
笑ってごまかそうとしたら顔が引きつっているのを感じた。
まるで薄い膜に覆われているような気がする。
そんな頬をブラシでなぞられると背中がゾクゾクした。
目のそばに尖った鉛筆の先が近づきお尻がモゾモゾした。
リップブラシで口紅を塗られたときには
糊でもつけられているような違和感に思わず舐め取りたくなった。
こんなことを出掛けに毎回しているんじゃ約束の時間に遅れるわけだ。
忙しそうに動いていた美登里さんの両手がぼくの顔から離れたとき。
「だいたい完成かな。いいじゃない、可愛いよ、ノリミチくん」
その顔は笑っていた。
ぜったいそんなことはないそんなことあるはずがない。
そう思いながらぼくは自分の姿がどうなっているのか気になった。
自画像を描いてもらってその絵を見るときの心境がこんなものかもしれない。
「ちょっと立ってみて」
立つぅーーーっ?!。このミニスカートで!!
「早くぅ」
急かされていつものように立ちあがったつもりで
ぼくはそのとき自分の動作がいつもと違うように感じた。
身体の動きに力強さを感じないというか勢いがないというか、
いつもの自分の立ち上がり方は両足を開いたまま反動をつけて、
あえて音で表現するとしたらムクッていう感じのはずなのに、
両膝を揃えて伸び上がるようにスクッだったのだ。
「背筋を伸ばして、ちょっとだけあごを引いて、そう。
足はつま先を揃えて内股のところに緊張感を持たせるの」
そうはいっても全身がくまなく緊張している。
これ以上要求されたら痙攣してしまいそうだ。
「じゃ歩いてみて」
ええい、もうどうにでもなれ、だ。
頭の中に破れかぶれの行進曲が鳴り響き始めた。
「内股をすり合わせるようにしながら腰を押し出すようにね。
手と足は左右別々に出した方が歩きやすいわよ、アハハ。でも手は大きく振らない」
右手と右足が同時に出ていたらしい。
小さなテーブルの周りを一周しただけなのに
世界中を彷徨ったような疲労感があった。
「そのまま外へ散歩に行こうか」
「かんべんしてください。目的が違うじゃないですかぁ」
「ああ、そうだったわね。いいわ、座って。
でももったいないなー、みんなが振り向くと思うんだけどなー。
そこらへんにいるヘンなファッションの娘よりよっぽど可愛いよ」
ぼくは自分がどんな顔をしているのかますます知りたくなった。
でもそんなことを言い出しては今の格好に興味があると思われてしまう。
ない、断じてない。
「あの番組で女装の男の子たちは椅子に座っていたでしょ。
あれはもちろん背の高さを見せないためよね。
とすると座ったときのポーズが大切ってこと。
はい、ノリミチくん・・・じゃ雰囲気出ないわね。ノリミちゃん、ポーズ」
反射的に首を傾げてしまった。
なにやってんだ、ぼくは。
「だめだめ、そんな当たり前のポーズじゃ。スキー旅行費がかかっているのよ。
脚は揃えて斜め前方に差し出すように・・・じゃなくて
セーラー服だから内股座りにしてみて。
ひざを揃えて、つま先を左右に離して後方に、そう、そんな感じ。
で、手はあごの下あたりで『夢見る少女』って感じで合わせて」
ぼくは今催眠術にかかっているか意識を失っているか何かが乗り移っているか
今まで男でいたぼくが本当のぼくでなかったかのどれかだろうと思う。
そうでなかったらこんな少女趣味なポーズはできない。
「作りすぎなんじゃないですか?」
「そのくらいでちょうどいいのよ。
男って単純だからたとえそれが作られた幻想であっても
目の前にあれば喜んじゃうんだから」
うーむ、言えてる。
「なんか手持ち無沙汰ね。そうだ携帯を小道具にしよう。
彼からの電話を待ちながらベンチに座っているセーラー服少女。
そういう物語にしよう」
「なにも物語にしなくたって。だってテレビじゃ座ってるだけですよ」
「物語性があるから見る人が惹かれるんじゃない。
たとえ座っているだけでもその姿を通してこの子はなにを考えているんだろう、
これから何をするんだろうっていう想像力を刺激するから絵になるのよ」
美登里さんの言うことにはいちいち説得力がある気がする。
実年齢は美登里さんの方がひとつ上でしかないけど、
セーラー服少女ノリミはたった今誕生したばかりの世間知らずだからなのかもしれない。
赤ちゃんが頼れるのは母親だけだ。
赤ちゃんをおもちゃにできるのも。
こうしてぼくは身体を捻ったり足を組んだり、
あっちを向いたりそっちを向いたり、
電話を手にしたりぬいぐるみを抱いたり、
ブレスレットやペンダントをとっかえひっかえ、
バッグを肩にかけたりカーディガンを羽織ったり、
約1時間にわたって美登里さんのおもちゃになり続けたのだった。

▽ ▽ つづく ▽ ▽




アニト (12月4日(木)23時49分57秒)
美希子さん、こん○○は。
>お風邪はもう治りましたでしょうか?
あはは、メールでの内容をバラしちゃだめですよ。
もうデートができるほど元気になりました。
ミニスカートの件はまったくこの寒空にと感心するばかりです。
しかし愛する人がいて「ミニスカート姿が可愛いよ」と言われたら、
美希子さんも寒さに耐えうる何かを心に秘めるでしょう。
自発的な想いは続くものです、ミニスカートも女装も物語も。
ゴンタちゃんには眠り薬を溶かし込んだミルクをあげといてください。

彼氏が彼女に着替えたわ 第4話へ

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