はじめから読む

エロマン□純子 (5月5日(月)17時26分43秒)
■アニト様
あっけなく連休は終わりを告げようとしています。
昨年末から今年にかけて色々なことがあり、
また、金銭的にも余裕がなく、今年の連休は静かにしていました。
最近運動不足を自覚するようになり、半月前から走っています。
一周1,5qのランニングコースなのですが、最初はやっとでした。
長距離は得意だったのですが、走ってないとだめですね。
でも、ここのところ歩かないで通して走れるようになりました。
2周、3qを余裕で走れるようになるまではまだ一ヶ月かかるかな?
とにかく、仕事以外で何かをやっていないとだらけそうで恐いです。
■権太様
あっ! 柏木君が途中から栢木君になってる(笑)。
でも、とても軽快なリズムで流れるような「彷徨える獣達」、
すごく読みやすいです。
途中で飽きさせないで、一気に読ませてしまうリズム感はさすがです。
権太君と柏木君の屋上での風景が、とてもほのぼのした感じを受けました。
さて、柏木君の言葉が気になります。
■美希子様
>「まっ、その姿を見れば聞かなくてもわかる。俺もよしきが好きだよ。
>だけどそれは男として、後輩のお前が、だ。とにかく今日は帰れ。
>話はまたいつかしよう。・・・」
あの状況で、こういう言葉をかけられると複雑ですよね?
本当は判っているけど、あえてそのことには触れず・・・。
純先輩の側に立っても、すごく複雑だと感じました。
【上を向いて歩こう】 第5話
日曜の朝、純太郎が目覚めると、既に11時になっていた。
(うう、頭がいたい、二日酔いか・・・?)
ベッドから立ち上がると、自分自身の姿に一瞬驚いた。
女物のパンティにスリップ、そして枕元にはブラジャーがあった。
昨夜、純太郎は女物のパンティーにスリップを身に付けて寝たのを思い出した。
昨日のことを思い出した。
オリビアハウスで女装したことを。
男の自分が生まれて初めて女の姿になったのだ。
机の引き出しから写真を取りだした。
そこには、女の自分の姿があった。
写真で見る限りどう見ても女だ。
あんなに興奮したことは生まれて初めてだった。
貸し出しできない下着だけは、買ったのだ。
オリビアで女装したことを思い出すと、部屋に戻ってからも興奮して眠れなかった。
ビールをしこたま飲んだ。
買ってきたパンティーにスリップ、そしてブラジャーやパンストを身に付けてみた。
その肌触りに興奮した。
気がついてみると、純太郎は自慰行為をしていたのだ。
全身に心地いい疲れが広がった。
純太郎は下着を身に付けたまま眠りに入ってしまったのだ。
ふと、純太郎は本格的に女装をしてみたいと思った。
オリビアハウスには大勢の女装者がいた。
お世辞にも綺麗とはいえない女装者もいた。
また、ナチュラルで女にしか見えない人もいた。
そんな中で、純太郎は美しい部類に入っていたと思う。
「純子ちゃんは、見た目は綺麗だけど、仕草を勉強しないとね・・・」
あのマキという女装者のアドバイスを思い出した。
(下着だけじゃなく、スカートやブラウス等のアウターも揃えないとだめだな。
それにカツラや化粧品。メイクも憶えないと・・・)
純太郎は、もう、女装の魅力から逃れられないと思った。
昼過ぎに、純太郎は軽い食事を採るために近所の喫茶店に入った。
「ホットコーヒーと、ミックスサンドをください」
店内のスポーツ新聞を見ながら、純太郎はのんびりしていた。
あのことを思い出した。
「突然ですいませんが、彼女になってくれませんか?」
オリビアハウスからの帰り道、新宿駅近くのラーメン屋でのこと。
いきなり若い男が純太郎の目の席に座りそう言った。
彼の話しによれば、彼自身もオリビアハウスにいたらしいのだ。
純太郎同様、女装初体験だったらしい。
「自分は純子さんほど綺麗じゃないし、隅の方で静かにしてました」
男の姿を見る限り、あまり女装が似合いそうな感じはしなかった。
純太郎に較べ、体はガッチリしているし、顔もごつい。
「純子さんは男とは思えなかったですよ。本当の女みたい・・・」
若い男は、そう言いながら純太郎を見つめていた。
男に褒められ、純太郎は顔を赤らめた。
考えてみればおかしな話しである。
その時の純太郎は普通の男の姿であり、年下の若い男に口説かれていたのだから。
若い男が年上の男に向かって、
「彼女になってください!」なんて、どう考えても異常だ。
そんな会話を第三者に聞かれれば、どう思われるだろうか?
しかも、純太郎は年下の男に口説かれて乙女のように顔を赤らめていたのだから・・・。
(彼女になってくれって? ぼ、ぼくが彼女に?・・・)
不思議な気分だった。
嬉しくて恥ずかしくて情けなかった。
自分を女として認めてくれたのは嬉しかった。
しかし、恐さもあった。
所詮は見ず知らずの他人なのだ。
彼がどういう人柄なのかも判らない。
しかし、彼は純太郎を、いや、純子を執拗に口説いてきた。
「携帯の番号か、メルアドを教えてください・・・」
「で、でも・・・、突然だから・・・」
慎重深い純太郎は、彼の告白に応えてやることが出来なかった。
「じゃあ、まず、男同士の友達からならどうですか?」
「ええ、それなら・・・」
純太郎は曖昧に答えた。
彼は懐からメモ用紙を取りだし、自分の携帯番号を書いて純太郎に渡してくれた。
その仕草がとても誠実に感じた。
「おれと付き合ってもいいって思ったら、電話をください」
そのときの笑顔がとても印象的だった。
「おれ、豊田守っていいます。23才です。期待してます!」
そしてラーメンを食べ終わると、店の前で別れたのだ。
豊田守(とよだまもる)、23才。
純太郎より四つ年下である。
生まれてから一度も女性と付き合った経験のない純太郎。
片思いの女の子は過去に沢山いた。
でも、声をかけることなんてできるはずもなかった。
当然、27才の現在まで童貞である。
いや、一度だけソープランドに行ったことはある。
しかし、その時も相手の女の子に任せきり、
マグロのように身を任せるだけで、気がつけば射精していた。
そんな経験しかないのだ。
そんな純太郎に、付き合ってほしいという相手が現れた。
彼女ではなく、彼氏なのだ。
純太郎が彼女になるかもしれない。

休日は瞬く間に過ぎていった。
その晩、純太郎はコンビニで弁当とビールを買いテレビを見ていた。
バラエティー番組で、女性タレントに目をやると、
幾分、女装した自分に似ているタレントが出ていた。
自分の女装写真と見比べてみた。
(似ている・・・)
気のせいだとは思ったが、純太郎はムラムラときて、
女物のパンティーとブラジャー、そしてスリップをとりだして身に付けた。
パンティーにブラジャー、スタイルのいい純太郎はよく似合う。
そして、スリップにパンティーストッキング。
背筋に電気が走るような興奮を憶えた。
その格好のままで、純太郎はビールをもう一本空けた。
ふと、目を棚の上に向けてみた。
そこには、亡くなった父と母の笑顔が額縁の中にあった。
その隣には、神隠し?に遭った幼い浩太郎の姿があった。
(こんな姿を見られたら、本当に嘆くだろうな?・・・)
男のくせにこんな恰好をして、感傷に耽っているなんてなんて不気味なんだ・・・。
でも、どうしようもないんだ。
現実の中では、純太郎は社会不適応者じゃないかと自分を疑っている。
人と接するのが恐い。家族もなく学歴もない。
自分に自信が持てず、いつもオドオドしている。
結婚したくても、女性の前では何も話すことが出来ず、
「小林さんって暗いのね。何を考えてるか分からなくて気味が悪い」
なんて、女性に言われたのは一度や二度ではないのだ。
でも、ぼくは昨日初めて自分に自信を持った。
男としてではなく、女として認めてもらったんだ?
ぼくを彼女にしたいっていう男性もいるんだ。
本格的に女になるため、純太郎は女装用品を揃える決意をした。
しかし、先日、会社に辞表を出してしまった。
今更ながら、純太郎は後悔した。

《続く》




アニト (5月6日(火)23時43分27秒)
エロマン□純子へ
過ぎてしまえば何事もあっけなく終わってしまうねー。
わたしは地元のお祭りに出かけたり、映画を観たり、
温泉に浸かってゆったりしたり、デートで激しく身体を動かしたり(どはは)、
平凡な連休を過ごしたよ。
今、純子の目の前に純太郎のような人が現れて
付き合ってほしいと言われたら、
純子はどんな対応をどのような立場でするだろうか?。




エロマン□純子 (5月10日(土)23時17分54秒)
■アニト様
>今、純子の目の前に純太郎のような人が現れて
>付き合ってほしいと言われたら
>純子はどんな対応をどのような立場でするだろうか?。
この物語の中での純太郎は、とてもシャイな性格なので
人に告白は出来ないと思いますけど、今後はどうなっていくのかなあ?
純子自身は、女装時に正面きって告白されたことはありません。
でも、女装スナックで男性客に口説かれたことはあります。
けっこう、快感だったりします。
お互いに真剣ではなくて、心理ゲームだったりするんですが、
わかっていても口説かれるのは悪い気がしないんですね。
そのときの自分は、本当は男だという事実を忘れてます。
■美希子様
男の身で女性用の下着や服を買うのは勇気がいると思います。
純子自身はまったく経験がありません。
よく、女装して女性服売場に買い物をする武勇伝?を聞きますが、
あれって犯罪になるんでしょうか?
コンビニに入ったことはありますよ。
周囲は気が付いていないのか、最初は無関心だったのですが、
そのうちジロジロ見られたりして、完全にバレバレでした。
思い出しただけで恥ずかしい・・・。
チャイナドレスもいいですね。着てみたいな。。。
■舞様
女装すると、どうしても意識は下半身にいきがちですが、
胸もけっこう感じるんですよね。
背後から胸を揉まれた経験がありますが、もう大変でした。
胸を愛撫されるのって本当に女の気分に浸れます。
ただ、テクニックが必要だと思うので下手な相手だと興ざめですが。
女装者の胸を巧みに愛撫できる男性は本当にいいと思います。
■観月様
単行本化するための人気投票の件ですが。
実は純子も以前、アニト様に年に一度くらい賞を発表すれば?
みたいな提案をしたことがあります。
例えば、レコード大賞のように・・・。
でも、色々と企画等を遠慮せずに提案するのはいいことだと思います。
ひとによって、発想が違いますから。
■純子様
SM的な物語、是非、純子さんに書いてもらいたいですね。
女装娘には、本当にM傾向の方は多いですよね?
恥ずかしながら、私もその傾向がかなりあります。
女装が好きで、Mっけがあって、世間的には普通じゃないのかな?
その傾向がある人って、多いんじゃないか?って、思います。
【上を向いて歩こう】 第6話
その日の朝、純太郎はいつものように工場の自分の持ち場にいた。
「小林くん! ちょっといいかな?」
佐々木課長がやってきた。
そして、課長の傍らにはゴボウのようにひょろっとした男がいる。
「あ、はい。なんですか?」
「小林くんは、今月で辞めるんだよな?」
課長は純太郎の様子を窺うような視線を送った。
「え、ええ・・・」
純太郎は辞表を出したことを後悔していたのだ。
オリビアハウスでの、夢のような体験。
女になった自分に興奮し、本格的に女装をしようと思っていたからだ。
そのためには、女装するための服や下着、そして化粧品を揃えねばならない。
靴やウィッグも必要だろうし、お金がかかるのだ。
(辞表を撤回したいな・・・)
そうは思ったのだが、純太郎は言い出せなかった。
佐々木課長は考えたような顔になり、ため息を吐いた。
(考え直せって言ってほしいんだけど・・・)
「そこで、小林くん。今日から新入りを教えてやってほしい」
課長の隣にいた男が、いくぶん頭を下げた。
細長い躰はゴボウを連想させた。
表情が乏しい、暗い目をした男だ。
「彼は先週に入社して、見習い中なんだ。
小林くんの後がまとしてやってもらうつもりだ。
退職するまで一通り教えてやってくれ!」
純太郎は気が重かった。
人と話すのが苦手なのに、教えるなんて自分にできるのか?と、疑問だった。
それに、どうもその男は嫌な感じがした。
純太郎自身、自分が他人からは暗い印象に見られているのは自覚しているのだが、
その男も暗い印象だ。
純太郎とは別種の暗さ・・・。
髪が長い。とくに前髪が長く、左目が髪で完全に隠れている。
男は課長に促されて、一歩前に出た。
「今、見習い中の村山くんだ!」
課長に紹介された男は、ゆっくりと頭を下げた。
「村山和之です。よろしくお願いします・・・」
消え入りそうな小さな声、表情のない目で男は言った。
「あ、こちらこそよろしく。こ、小林です・・・」
純太郎も負けず劣らずの小さな声で答えた。
「じゃあ、小林くん、あとはよろしく頼むな」
佐々木課長は、そう言い残し純太郎に男を預け自分の持ち場に帰った。
無口で暗い男ふたりがその場に残された。
「じゃ、じゃあ、仕事を始めましょうか?・・・」
「・・・」
男は頷いただけだった。
一瞬、髪に隠れていない方の男の目と合った。
その目が、ぞっとするほど不気味だった。
(この人と、うまくやっていけるだろうか?・・・)
何事もなく一日が終わった。
純太郎は男にぎごちないながらも、懇切丁寧に仕事を指導した。
(意外に覚えがいいな・・・)
純太郎も村山も、お互いに無口なのだろう。
仕事以外の私語は全く交わさなかった。
男は純太郎の言うとおりに、難なく仕事をこなした。
複雑な気分だった。
辞表は出したのだが、撤回したい気分だった。
会社を辞めてしまえば、しばらく経済的に苦しいだろう。
女装用品を買うことが出来なくなる。
とくに趣味という物がない純太郎である。あまりお金を遣わない。
だから、一通りの女装用品を揃えるぐらいの貯金はあるのだ。
しかし、辞めてしまえば生活費として残しておかなければならない。
でも、こうして純太郎の後がまがやってきたのだ。
(もう、後戻りは、辞表撤回は出来ないのか?・・・)
「じゃあ、今日はお疲れ様でした。また、明日・・・」
「はい・・・」
(ぼくも無口だけど、この村山っていう男も無口だな・・・)
純太郎は、村山の暗い目に嫌なものを感じながらも、
自分と同じ無口という部分には好感を抱いた。
そして、ふたりは帰宅の準備に着替えるためロッカーに向かった。
「小林さん・・・」
「え?!」
着替えていると、いきなり村山が純太郎のもとにやってきた。
「小林さんは、今日、用があるんですか?」
「は? い、いえ、とくにないけど・・・」
村山の「はい」「いいえ」以外の言葉を初めて聞いた。
「じゃあ、一緒に食事でもどうですか?」
「・・・、あ、あ、食事ですか?」
村山が食事に誘ってくるなんて意外だった。
「迷惑ですか?」
いくぶん、声のトーンが高く、女性的な声だと思った。
「いえ、迷惑なんて・・・、行きましょうか」
本当は他人と一緒に食事するのは気が重かった。
いつもの定食屋で、ビールを飲みながらひとりでゆっくりしたいのだ。
そのまま、タイムカードを押し、純太郎と村山和之は工場を出た。
「村山さんは、お酒飲めるんですか?」
「す、少しだけなら・・・」
「じゃあ、居酒屋で一杯やりながらでどうですか?」
「そうですね。じゃ、そうしましょう!」
表情のない村山が、そのとき初めて笑った。
純太郎もそのとき、ほっとした。
生まれて初めてかもしれない・・・。
子供の頃から、友達というものがなかった純太郎。
友達と遊んだという記憶がないのだ。
社会人となってからも、同僚と会社帰りに一杯やった経験もない。
酒好きだった父・・・。
鋳物工場の重労働を終えると、いつも焼酎でレモンを割って飲んでいた。
酒飲みの血は、純太郎にも受け継がれている。
しかし、いつも暗いひとり酒・・・。孤独で寂しかった。
まだ、家族が幸福だった頃、父は酒を飲むとよくプロレスごっこをしてくれた。
純太郎に顔を押し付け、酒臭い息をよく吹きかけた。
懐かしい匂い・・・。
他人と連れだって酒を飲みに行く。
日頃のストレスを酒で吐きだしてみたかった。
しかし、一緒に酒を飲む相手がなく、孤独を感じていた。
家族もなく、友達もなく、底なしの孤独を感じていた。
初対面であるが、村山和之に食事を誘われ、純太郎はなぜか凄く嬉しかった。

《続く》




アニト (5月12日(月)23時53分58秒)
エロマン□純子へ
>わかっていても口説かれるのは悪い気がしないんですね。
《お互い》に《心理ゲーム》であるという「割り切り」があれば
楽しめばいいと思う。
ところがそういう楽しい出会いはそうそうあるものではないから難しい。
かといって諦めてしまっては何も始まらない。
ということで《口説く》わたしなのであーる。
もちろんそのとき相手の女装娘さんは
《本当は男だという事実を忘れてます》でいてほしいぞぉ。
ときどきこういうセリフも言ってみることにしよう。
「それから、きみは村山和之っていう人を知ってる?」




エロマン□純子 (5月18日(日)16時32分56秒)
■アニト様
>「それから、きみは村山和之っていう人を知ってる?」
検索してみました。著名な方なんですね? 知らなかった・・・。
この物語の中の「村山和之」、憶えていませんか?
きっと、今回の書き込みで思い出されると思います。
アニト様は、きっと、口説くのもうまいんでしょうね?
女装娘って、うまく口説かれるとすごくいい気分になると思います。
そして、行為中に褒められるのも気分がいいと思います。
黙々と控えめにされると不安になったりして・・・。
■美希子様
「先輩 ファイト」の完結おめでとうございます。
この空想デートの中では異質の物語だったですね。
それにしても、美希子さんは場面切り替えが実にうまいと思います。
>だんだん「この子は使える」なんて思い始めたからなのでした。
物語を書いているとそういうこともありますよね?
そうですね。それは私にもよくあります。
だから、登場人物が多くなってしまうんです。
使えると共に、感情移入もあると思います。
■舞様
綾さんの堕ちていく過程が見事に描かれていますね。
どこまで堕ちていくのかしら?・・・。
>丸裸の上に小さなエプロンだけを着けて
>流し台に向かって食器を濯いでいた時のことです。
このスタイルって、たまんないですよね。
背後から立ったままでのファック、想像してしまいました。
私の夢のファックは、駅弁ファックです。
は、恥ずかしいことを言ってしまった・・・・・
■アカリ様
あの、山崎アカリさんですか? 懐かしい・・・。
家にいるときは殆ど女装しているということですが、純子もそうだったかな?
でも、買い物をする勇気はありませんでした。
だって、外出するときはお酒の力を借りたりしてましたから。
真夏の深夜、Tシャツにジャージの下に下着を身に付けて・・・。
誰もいない公園で、下着姿になって数分歩いたり。
今考えるとすごいですね? 誰かに見られたら大変だった。
アカリさんの新しい物語を期待しています。
【上を向いて歩こう】 第7話
「すいません、生ビール中ふたつ、そして刺し盛りに鳥から揚げ・・」
小林純太郎と村山和之は居酒屋にいた。
純太郎は何を話していいのか? 自分から話すのは苦手なのだ。
村山和之も同じように無口を絵に描いたようなタイプ。
しかし、純太郎には、この村山という男が同じ無口ではあっても、
自分とはタイプが違うようだと感じている。
(この暗さはどこから来ているのだろうか?)
ビールがやってくると、ふたりは乾杯をした。
しかし、沈黙の時間が続いた。
気まずい雰囲気・・・。
純太郎は重苦しさに耐えきれず口を切った。
「村山さんは、いくつなんですか?」
「ええ、自分は25才です。小林さんは?」
「あ、ぼくは27才です。よろしく!」
そして、また会話が続かなくなった。
(恋人同士でもないのに、どうして気まずいんだ・・・)
そのとき、純太郎は村山が自分の方をじっと見つめているのに気付いた。
純太郎の目というより、純太郎の肩口、背後を見つめている。
(なに、ひとのことをジロジロ見ているんだ?・・・)
いきなり村山が口を開いた。
「小林さんは、家族と一緒に住んでいるんですか?」
「・・・、い、いや、まだ独身ですし、両親は亡くなりました」
「・・・」
村山は、意味ありげな顔で純太郎の肩口を見つめている。
「小林さん、お父さんとお母さんらしき・・・」
「え? お父さん? お母さん?」
唐突に何を言うのだろうと、純太郎は思った。
「小林さんのことを心配して、ユラユラとご両親がいますよ」
「は、はい?・・・」
純太郎は意味が分からなかった。
「自分には分かるんです。霊が見えるんです・・・」
「れれれ、霊!」
純太郎はびっくりした。
いきなり幽霊が見えるなんて。
「髪を短くした、威勢のいいお父さんでしたね?」
「あ、はい・・・」
「おとなしくて、豊満なお母さんでしたね?」
「あ、ええ、はい・・・」
村山和之は、次々と父と母の特長を当てた。
あまりにもそれがピッタリだったので、純太郎はぞっとした。
しかし、次の村山和之の言葉には、驚愕した。心底ぞっとした。
「小林さんには、弟さんがいませんでしたか?」
「ええ! な、なぜそれを!」
「自分には霊が見えるんです。そして、訴えていることを・・・」
純太郎は、世の中の霊能者ほど胡散臭いものはないと思っていた。
しかし、初対面の人間にこう当てられると驚きを隠せない。
そして、村山和之はその話をやめた。
「小林さん、とにかく飲みましょう。お近づきの印に・・・」
「あ、ああ、そうですね・・・」
純太郎は、ひとにそんな気になる話をしておいて、
やめてしまうのはないだろう、と、思った。
気になって仕方ないのだ。
二杯目の生ビール、仕事の話しを中心に色々な話しをした。
しかし、ふたりとも無口である。会話は続かない。
「ところで、村山さんに家族は?」
村山和之は寂しそうな表情になった。
(まずいことを訊いてしまったかな?)
「自分にも家族はいません。両親も姉も・・・」
「え! でも、お姉さんは結婚を?」
そこで、村山はまた悲しそうな表情になった。
「姉は亡くなりました。自殺です!」
「ええ! じ、自殺ぅ?」
純太郎は、村山和之の暗さには理由があると思っていた。
その理由は、彼の家族に起因していることなのだろうと思った。
「姉は高校教師を好きになり、騙されました」
「・・・」
「そのショックで、姉は首を吊ったのです」
「・・・」
純太郎は何と答えていいか分からず、深刻な顔をした。
そのとき、村山和之は静かに笑った。
その笑い方は「くくくっ」とも「けけけっ」とも聞こえた。
村山の目は正気ではなかった。
純太郎は思わず、全身がゾオ〜ッと、身震いした。
「去年、自分は姉の元恋人、高校教師にストーカーしたんだ・・・」
「・・・」
「そして、尾行が見付かって彼に背後から殴られた」
「・・・」
「しばらく、入院してたんだ」
「・・・」
憎悪? 哀しみ? 
村山は話すうちに興奮したような表情になっていった。
しかし、それ以上は話そうとはしなかった。
いやあな過去、純太郎にとっても、そして村山和之にとっても。
(やっぱり、ふたりは似ているのかもしれない)
「そろそろ、帰りましょうか?」
気まずい雰囲気に耐えきれず、純太郎はそれとなくお開きを促した。
「そうですね・・・」
それに、村山も呼応した。
「小林さん、自分の姉はいつもぼくの周囲にいるんです」
「・・・」
「姉は、ぼくを襲った高校教師の宇田川に取り憑いて・・・」
「・・・」
「なんか、小林さん、こういう話しは嫌みたいですね?」
純太郎は(そんなの当たり前だ)と、思った。
「でも、小林さんのご両親も、小林さんの周囲に常にいるんです」
「や、やめてくださいよ!」
純太郎は、心底恐くなりそう叫んだ。
「小林さんの弟さんは、まだ生きています!」
「え! な、なに?・・・」
「小林さんのご両親は、そのことを訴えたくて・・・」
「・・・」
「捜してやってください。弟さんを・・・」
「ま、まさか・・・」
「ぼくは、そのことを言いたくて、小林さんを誘ったんです」
「そ、そうですか・・・」
「小林さんとぼくは似ている。本当に・・・」
そう言い終えると、村山は初めて明るい笑顔を浮かべた。
(弟が生きている???)
純太郎は部屋に帰った。
村山和之の言うことが真実なら、
この部屋に父と母の霊が純太郎を見守っていることになる。
(そんな、馬鹿なことないな、村山は頭がおかしいんだ・・・)
そうは思っても、純太郎は気味が悪かった。
両親と弟の写真を眺めた。
涙が溢れそうになった。
女装した自分を、父と母は見ていたということなのか?
純太郎は複雑な気分だった。

《続く》




アニト (5月19日(月)23時42分21秒)
エロマン□純子
>この物語の中の「村山和之」、憶えていませんか?
こらこらこらっ、《「それから、きみは・・・」》のセリフは
「そして、ぼくは彼女になった・・・」第110話 学園編(30)
からの引用だよ。
つまり物語の登場人物の方のこの名前、またはセリフを知っている人は
『空想デート』の熱心な読者さんであろうから
会話の糸口になって口説きやすかろうと思ったわけだ。むははは。
《口説くのもうまい》かどうか、《すごくいい気分》になったかどうかを、
デートをしたことのある女装娘さんたちに訊いてみたいものだ。
話好きであることは自ら認めてもよい。

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