はじめから読む

沙希 (6月7日(金)21時46分46秒)
アニト様こんばんは。皆様こんばんは。
また投稿させていただきます。
アニト様。
ワールドカップ、私もTV観戦しています。
学生達にはちょっと可哀想です。今はちょうど中間試験シーズンですから。
日本の決勝トーナメント進出が見てみたいですね。
MRF−6:女装者− 第6話「ジェノバの教典」 −5th.
ボクは、また同じ夢を見ている。
広く、青く、雄大で穏やかな海。
何頭ものイルカが、ボクを海の底へと招いている。
ボクは、イルカの後を追いかけるように、深い海の底へ潜るんだ。
深く潜るに連れて、だんだんと太陽の光は届かなくなり、
海の蒼は漆黒の闇に変わる。光も音もない世界。
ボクの身体は水圧でぺしゃんこに押しつぶされ、魂だけになる。
それでも、さらに深く潜り続けるんだ。
痛い……苦しい……怖い……でも、もう少しで届きそう。
海の底に沈む、小さな宝石箱。
ようやく手が届いても、鍵がかかっていて開かない。
3桁の数字を合わせる簡単な鍵。でも、鍵の番号を知らないボク。
小さい数字から順番に、111、112、113……と合わせていくんだ。
あぁ、もう我慢も限界。息が出来ない……苦しい……
苦しくて、ガチャガチャとデタラメに鍵を動かす。すると偶然……
鍵が開いた!……番号はいくつ?よく見えない!
ううん、それより宝石箱のフタを開けるのが先だよ!
綺麗な宝石箱の中身は…………

宝石箱の中身は……優子の顔だった……?
夢から覚めたボクの目の前、数センチ先に、優子の顔が。
サラサラな前髪、二重のまぶたに長いまつげ。
ちょっと丸い鼻、ちっちゃな口。
優子、カワイイ。ボクの愛おしい優子だ。
ボクを見つめながら、まばたきを2回、そして大きなため息を1回。
「目が覚めたようね。どう?寝起きの私のドアップは。」
「んー……ちょっとドキッとした感じ……イタタタタッ!!」
寝起きなのに、いきなり優子にほっぺたをつねられる。痛いよ、優子。
でもボク、どうして優子の隣に寝ていたんだろう?
「穂香。昨日の夜の事を、よーく思い出してみなさい。」
なんだか優子は怒っている。どうして?
ボク、つい数十秒前までは、海の底で宝石箱と格闘していたんだ。
いきなり昨日の夜の事を思いだせって言われても……
窓からはもったいないくらいの日差しが差し込んでいて、
まだしっかりと目を開けられない感じ。
それでも、ここは自分の部屋ではなく優子の部屋であることは理解できた。
「昨日の夜は、主任の部屋でお酒を飲んだんだよ。ちゃんと覚えてるよ。」
「それで?」
「その後、ボクは酔いすぎちゃって、優子の部屋で眠ることにしたんだ。」
「……それで!?」
「その後は……寝ちゃったから、覚えてない感じ。」
「眠る前に、何があったか思い出しなさいーっ!!」
「イタタタタ!!」
またほっぺをつねる……優子、どうして怒ってるの?
体を起こし、ベッドに腰を掛けて、昨夜のことを考えてみる。
昨日の夜、優子の部屋で……眠る前に……
そうだ。ボク、優子とキスをしたんだ。
フレンチなキスなら、いままで何度もしたことがあったけれど、
昨日のキスは、なんていうか……もっと大人っぽいキスだった。
ボクと優子の唇が、とろけてくっついちゃうような感じのキス。
その後は……あ、そうだ。優子ってば、ボクの恥ずかしい部分を……
ボクのあそこ、まだ子供みたいな感じだから恥ずかしいのに、
優子に見られちゃって。もう、優子のスケベ。
そしてその後は……確か優子は、シャワーを浴びに行ったんだ。
シャワーを浴びに行った優子……何のために……
……ふと、後ろを振り返って優子を見ると……なんとっ!!
タオルケットがめくれて、優子の一糸まとわぬ身体が露わになっている!
ど、どうして優子、裸なの!?
真っ白で柔らかそうな、まあるい胸。先端にぽっちり付いたピンクの二プル。
細いウェストにちっちゃなおへそ。その下は……
タオルケットで隠されていて……見えない感じ。
「あ……そういえば……優子がシャワーを浴びて……」
「思い出した?私がシャワーを浴びている間に寝ちゃったのよ、アンタは!」
「そうだ!本当はそのあと、優子と……」
優子と、初めてのエッチをする筈だったんだ!!
なのにボクは……優子のことが待ちきれなくて、一人で眠っちゃったんだ!!
「ああ優子。ボクって最低だぁ……お酒によって、眠っちゃうなんて……」
「ホントよ。アンタはいつまでたっても子供のまんまなんだから。
色気よりも食い気……とはよく言うけれど、穂香の場合は、色気よりも眠気ね。」
「ごめんなさい……これからは、お酒を控える感じで反省します……」
「まぁ、すでに『腹いせ』は済ませてあるから良いケドね。」
「腹いせ?」
「ううん、こっちの話……それより……」
タオルケットを身体に巻き付けて起きあがり、ボクの隣に座り、
ちょっとまじめに、ボクの顔を覗き込む優子。
「穂香。あなた一体、どんな夢を見ていたの?」
「えっ?夢?」
突然、夢の話なんてされるとは思っても見なかった。
夢ならはっきり覚えてるよ。ついさっきまで、ボクは夢の中だったんだから。
「ボク。最近ね、同じ夢ばかり見るんだ。イルカと宝石箱の夢。」
「……イルカ……宝石箱……うーん、謎だわ。」
「謎?なにが?」
「もうちょっと詳しく聞かせてよ。どんな夢だったの?」
「イルカと一緒に、深い海の底へ潜っていくんだ。
やがて肉体を捨てて、魂だけになって。
でね、海の底には必ず綺麗な宝石箱が沈んでいるの。」
「宝石箱……本当に宝石箱なの?もしかして、パソコンの間違いじゃない?」
「パソコン?パソコンなんか夢に出てこないよ。間違いなく宝石箱だよ。
でも、その宝石箱のフタを開けようと思うんだけど、
鍵がかかっていてなかなか開かないんだ。
……あ、でも……今日の夢では、初めて開いた。」
「開いた……中身は?中身がパソコンだったんじゃない?」
「どうしてパソコンにこだわってるの?違うよ。中身は……見られなかった。
フタを開けた瞬間に目が覚めちゃったんだ。」
「うーん……パソコンの夢じゃないとすると……一体、何なのかしら?」
「どうしてそんな事聞くの?優子がパソコンの夢を見たの?」
「違うわよ穂香。あなた、寝言が凄いのよ。」
「寝言……??」
「死にそうな顔で唸ってたのよ。『再び起動しろ』とか『放棄しろ』とか。」
「……そんなこと、言ってた?」
「それだけじゃないわ。全く意味不明な言葉も。
たしか『クイオト』とか、『偽りのセイラー』とか。まるで呪文みたいに。」
「そ、そんなこと言われても……ボクが見る夢とは全然関係ない感じだよ。」
「……ねぇ穂香。やっぱりあなた、何か大切な記憶を失ってるんじゃない?」
真面目な優子の表情は、本気でボクのことを心配してくれている感じだった。

つづく




アニト (6月10日(月)23時34分12秒)
沙希さん、こん○○は。
日本代表選手たち、やってくれましたねー。
この調子だとベスト8も夢ではないかもしれません。
愛知県での試合がないものですから実感が湧きませんが、
開催県の意気込み・盛り上がりはすごいことでしょう。
先週の「○たしンち」を録画して見てみました。
あはははは、楽しいご家庭ですねー。
♭♭こんにちは ありがとう さようなら またあいましょう♭♭




沙希 (6月11日(火)23時34分16秒)
アニト様、皆様、こんばんは。沙希です。
アニト様。
撮影オフ会、今度のモデルさんはどんな方なのでしょう。
HPの写真を拝見すると、みなさん完璧に「女」になってますよねー。
うらやましいかぎりです。
私などの場合、まだまだ「写真クオリティ」ではありません。
(例えるなら「真っ暗闇の映画館内クオリティ」な感じ)
もっと修行を積んでからモデルに立候補したいです。
それと……ついに我が芹沢家の事情が知られてしまったのですね。
もう、お恥ずかしい。
ともみ様
初めまして。沙希です。お話を読んで頂いてありがとうございます。
ともみ様はアニト様の専属奴隷秘書なのですね。
採用されたばかりの新人さん?
アニト様の元で、これから先
「あんなこと」や「こんなこと」をしなければならないでしょうし、
先輩の秘書さんから、愛情たっぷりのイジメにあってしまうかも、です。
がんばってください。
権太様
こんにちは。沙希です。
権太さんのお話の世界観、私も好きです。
半現実、半SFな感じ……SFというより、おとぎ話にも近いでしょうか。
SFではなくおとぎ話に近いように感じるのは
文章に優しさがあるからだと思うのです。
なんとなく「不思議の国のアリス」を思いだします。
ところで「ゆずひこ」は権太さんだったのですね。糸目がステキです。
美希子様
「女装の計らい」完結おめでとうございます。
なんて事でしょう!そういう結末だったのですね。
しかも、母親が日記を隠し読みをしていることに気づいていたなんて。
なかなかの策略家です。あなどれません。
母と子の攻防、な感じですね。
私も男の子モードの服を買うときにも、
シャツではなく、ブラウスを買ったりします。
ボタンが反対だし、ウェストのラインが絞られていたりするので
洗濯をする母親も気づいているのですが。
「どうして女物の服ばかり買ってくるの?」と聞かれたりもしますが
「欲しいと思った服が、大抵女物なんだもん」などと答えます。
さすがにパンティは無理ですが、
最近はオーバーニーソックスなどを洗濯籠へ入れておき、
「あの、やたら長い靴下はなんだ??」などと言われます。
「…………冷え性だから…………」
私もパジャマ、女物がいいー!!。
MRF−6:女装者− 第6話「ジェノバの教典」 −6th.
「……ねぇ穂香。やっぱりあなた、何か大切な記憶を失ってるんじゃない?」
真面目な優子の表情は、本気でボクのことを心配してくれている感じだった。
「ボク、夢の内容ならはっきり覚えてるよ。
でも、そんな寝言を言うような内容の夢じゃなかったような気がするけど。」
「そう……気のせいかしら。私も寝ぼけてたのかな。」
優子はタオルケットを巻いたまま立ち上がり、
クローゼットから着替えを選び始めた。
「穂香。あんたも部屋に戻って着替えなさい。下着も替えてないでしょ。」
「うん、そうする。シャワーも浴びないと。」
昨夜は、酔ってそのまま寝ちゃったから、
洗顔もしてないし歯磨きもしていない感じ。
優子の部屋を後にし、自分の部屋に戻ってシャワーを浴びる準備をする。
下着と部屋着、ベランダに干してあったバスタオルをひっつかみ、脱衣所へ。
……もう9時過ぎだ。朝の食堂は10時までだから、朝食には間に合うかな。
『何か、大切な記憶を失ってるんじゃない?』
きっと、優子が察しているとおりだと……ボクも思う。
きっとボクは、何か重要なことを忘れているんだ。
何か、強烈に思い悩む事が過去にあって、それを思い出したくないために、
ボクは自分から記憶を捨てたんだ。きっとそうだ。
捨てなければならないほど、辛く苦しい記憶。
でも、寝言にまで現れるような、大切な記憶。
それが一体、どんな記憶なのかは……
きっと、夢に出てくるあの宝石箱の中身を見れば、解るかもしれない。
熱いシャワーを浴びながら、宝石箱の中身が何だったのか、
そして、宝石箱に付いていたダイヤル式の鍵の番号を、
なんとか思い出そうとした……。
……そんな考え事をしていたので、
シャワーを済ませ下着を身につける段階になってから、
ようやく優子の『腹いせは済ませてあるから』という言葉の意味が分かった。
すぐに優子の部屋へ怒鳴り込む。
「優子っ!!優子ってば!!……ボクの…………剃っちゃったでしょっ!!」
「ウハハハハ!!剃ってやったわよ!思い知ったか!ハッハッハ!!」
「非道いよ優子!昨夜ボクが寝ている間に剃っちゃったの?信じられない!」
「あら。非道いのはどっちよ。ヒトを期待させておいて眠っちゃうなんて。」
「せっかく生え揃ったヘアーなのに……全部剃っちゃうなんて……うぅ……」
「穂香は前から剃毛趣味があったでしょ。丁度良いんじゃなぁい?」
「ずっと前に、優子にバカにされてから、ちゃんと伸ばしてたのに……」
そう。第3話を参照してほしい感じ。
ボクは、ヘアーの手入れが面倒くさくて、全部剃っちゃってた時があるんだ。
それを優子に見られて、小学生みたいだってバカにされて……
それ以来、ちゃんと伸ばしていたのに……
カタチ良く生え揃うまでに、3ヶ月もかかったのに……
もう、全てが水の泡な感じっ!!
「優子っ!ボク、許さないからねっ!!」
「あーら、どうするつもり?」
「優子のも、剃っちゃうっ!!」
「やれるもんなら、やってみなさい!!」
優子は走って逃げるけど、この居住区の部屋の間取りはそんなに広くない。
すぐにリビングに追いつめて、優子の両腕を掴む。
「このーっ!優子!つかまえたっ!!」
優子の両腕を捕まえたまま、寝室のベッドに押し倒す。
スプリングの効いたベッドに優子の身体が埋もれ、ギシギシと音を立てる。
「いたたた……もう降参よ、許して、穂香。」
「だめだよ。優子のも剃っちゃうまで……許さないからね……」
だんだん、声のトーンが落ちてくる。
最初はニコニコしていた優子も、ちょっと虚ろな表情に変わってくる。
「……どうするの?……剃っちゃうの?」
「うん……………剃っちゃうよ。」
優子の腕から力が抜ける。そして目も閉じる。
昨夜は、優子がしてくれた。こんどは、ボクがしてあげる番だよね。
優子の唇に、ボクの唇を重ねる。
ふっくらとした優子の胸に手を重ね、丸く動かしてみる。
人間の手って、すごい。
ワンピースの上からでも、ブラのレースの模様が判るくらい。
唇と手のひらで、優子の暖かさと柔らかさを感じ取る。
「んん……ふ……ぅ……」
優子が鼻で息をする。
昨日のキスも、今までで一番長いキスだった。
でも、その記録をまた今日、更新する。
毎日毎日、キスの長時間記録を、少しずつ更新していくんだ。
「ん……ふぅ……く……苦しいわ、穂香。」
「あ……ごめん、優子。」
ほっぺが紅くなってる。ちょっと長すぎたかな。
優子を仰向けにさせたまま、ワンピースのスカートをめくり上げる。
ピンクのパンティが露わになる。優子はピンクが好きなんだ。
ぷっくりとした部分に、そっと指を埋める。暖かい。
「……女の子って、柔らかいよね。」
「うふふ。私も、本物の女の子じゃないんだけどね。」
「ねぇ優子。ボクね、女の子の……ここ。まだ一度も見たことがないんだ。」
「……そう……」
「……見て、いい?」
「…………………………」
返事がない。
返事が無いというのは……見ても良いのかな、それともダメなのかな。
恐る恐る、ピンクのパンティに手を掛ける。
ボクの目の前で、優子の白く柔らかな下腹部が、だんだんと露わになる。
優子は抵抗せず、黙ったままだ。
いいのかな?本当に、これ以上パンティを降ろしていいのかな?
なんだかボク、すごくイケナイ事をしている気がする。
優子のいちばん大切で神聖な場所を、ボクは見てしまおうとしてるんだ。
少しずつパンティを降ろしていくと、少しだけ、ヘアーが見えた。
パンティに押さえつけられていたヘアーが、ふわっと持ち上がる。
もう少し下には……優子の大切な部分が……
− ポーン!! 「メールが届いています」 −
「ウッ……び、びっくりしたぁ……!!」
突然、パソコンのメーラーが大音量とともに起動した。
「……仕事みたいね……」
ずり下がったパンティを直し、ゆっくりと起きあがる優子。
「……ごめんね、穂香。今度、ゆっくり時間をとりましょう。
私はもう穂香のものだから、穂香が望む事、何でもしていいのよ。」
そういって軽くキスをし、パソコンデスクに座る優子。
今の優子の言葉……なんだか、とんでもなく大胆な言葉のような気がする。
優子の白い肌、ピンクの下着、少しだけ見たヘアー。
そして今の言葉……もう、頭がくらくらだ……
「……添付ファイル付きだわ……ちょっと……なによ、これ。」
メールの内容を確認する優子が、低くそう言った。
何だろうと思い、ボクもメールを見せてもらうと……
−Delete the book of Jenova. Code 666. Request from Mituo Kusakabe.−
「ジェノバの本を消去しろ?」
「そうね。でも『本』じゃなくて、きっと教典か……カノンの事かしら。」
「ジェノバは……あのイタリアの?」
「いいえ、スペルが違うわ。ジェノバ…イェノファ…聞いたことがあるわ。」
「コード666だって。たしか新約聖書で、人間と悪魔を表す数字だよね。」
「それより……見なさいよ、依頼人の名前を。」
「依頼人……ミツオ・クサカベ……日下部!?」
「日下部美津雄……行方不明になっていた、私の父親からよ。」

つづく




アニト (6月12日(水)23時11分53秒)
沙希さん、こん○○は。
写真とは本来、あるがままに写す、
またはより美しく写すものだと思っているのですが、
「撮影オフ会」では意図的にぼやかしたり隠したりしています。
地方での活動ゆえにモデルさんたちの美しさ可愛らしさといった
その魅力をお伝えできないことが残念でたまりません。
ですが、物語で、その物語を書く作者として、
沙希さんだって《完璧に「女」になって》いらっしゃいます。
それをうらやましがる人も多いはずですよ。




沙希 (7月17日(水)00時46分29秒)
アニト様こんばんは。皆様こんばんは。
また1ヶ月もご無沙汰してしまいました。
この空想デート掲示板も、5年目に突入したのですね。
色々な方と知り合って物語を読む機会を、
そして自分も創作して参加できる機会を与えていただけたこの掲示板に
深く感謝しております。ありがとうございます。
私のお話も、もうだいぶ長く続いているのですが
やっとお話の核心部分に辿り着きそうです。
GIMELという組織の目的や、
なぜ女装娘ばかりをエージェントとして集めているのか。
穂香の過去や、穂香の中にいる第2の人格「SAKI」が何者なのか。
そして、優子の父親の行方は。
そのへんの部分も、もうすぐ書きこめると思います。
MRF−6:女装者− 第6話「ジェノバの教典」 −7th.
結局ボクと優子は朝食の時間に間に合わず、
コンビニでサンドイッチやおにぎりを買い込み、
GIMEL敷地内の運動公園で遅い朝食を食べることにした。
この運動公園には、芝生や人工池の間を縫うように遊歩道があり、
その他にもアスレチックやテニスコートなども用意されている。
普段は近所の高校や大学の学生達が、クラブ活動や運動不足の解消、
そして憩いの場として、思い思いに利用している。
時にはボクたちMRFも、トレーニングのためによく利用してる感じ。
放課後の時間帯になると、いろんな部活動の人達でいっぱいになるけれど、
今はまだ午前中なので、人影もまばらで、まるで貸し切りみたい。
……それにしても……いい天気!!
秋晴れ?冬晴れ?空がすごく高く見える。
芝生の上に直接腰を下ろすのも久しぶりで、とても気持ちがいい感じ。
「思い出したわ。『ジェノバ』って、アーカイブサーバの名前よ。」
サンドイッチをくわえたまま、優子がノートパソコンを広げる。
「アーカイブサーバって、何?」
「ネットワーク上に様々な電子書籍がアップロードされていて、
こうしてパソコンを使えば、いつでも誰でもどこででも、
図書館と同じように本を閲覧できるシステムよ。
その膨大な書籍データを管理しているのがアーカイブサーバ『ジェノバ』よ。
ま、平たく言えば『ネット図書館』ね。」
「じゃぁ、そのジェノバに登録されている書籍データを消去しろって事?」
「おそらくね。でも、ジェノバ全てのデータを消去しろって訳じゃないわ。」
優子はノートパソコンを操作して、
ネットワークアーカイブの『ジェノバ』にログインする。
優子はこういうの、得意中の得意なんだ。
「あのメールに付属していた添付ファイルを調べてみたんだけど、
どうやらハッキングソフトらしいの。
たぶんこのハッキングソフトが、自動的に目的のファイルを見つけだして
削除する仕組みだとおもうんだけど……」
ノートパソコンにメモリーカードを差し、ハッキングソフトを立ち上げる。
「でも、そんなハッキングソフトがあるなら、ボク達に依頼する必要は……」
− ピーーーーッ!! −
警告音と共に、エラーメッセージが表示された。
「やっぱり。……アクセス権が与えられないわね……
一筋縄じゃいかないから、私たちに依頼してきたのよ。」
「なーるほど……『重要機密文書につきアクセス制限あり』だって。」
「限られた人間しか閲覧できない……こんなパソコンからじゃムリって事ね。
このハッキングソフトをもう少し調べれてやれば、何か方法が見つかるわ。」
「なんか回りくどい感じ。……いったい、何のために……」
「依頼人は私の父親って事になっているけど……まぁ、そんなの嘘ね。
仕事を受ける代わりに、私の父親の名前を語る奴を、あぶり出してやるわ。」
「……もし、本当に優子のお父さんからだったら?」
「その時は……その時、考えるわ。」
パソコンのフタを閉じ、残りのサンドイッチを食べ始める優子。
「ああ、本当に奇麗な空ね……」
仰向けに寝転がり、サンドイッチをモグモグしながらつぶやく。
……ようやく最近、優子から聞かせてもらった話なんだけど……
優子は行方不明のお父さんを捜している最中に、
ここ、GIMELへ辿り着いたんだそうだ。
けれど、GIMELという組織はあまりに大きく、複雑なので
お父さんがこの組織の中に在籍しているのか、それすら未だに分からない。
もしあのメールが、本当に優子のお父さんからだとしたら、
これ以上ないくらい、大きな手がかりになるよね。
優子は自分とお母さんを捨てたお父さんの事を、
絶対許さないって言ってるけれど……
できれば優子のお父さんには、ちゃんと優子の前に顔を出してきて欲しい。
きっと優子のお父さんにも、なにか事情があったに違いない。
きちんと説明して、謝れば……優子も許してあげられるのではないか。
あの一通のメールだけで終わらないことを、心から願ってるよ。
「あら、お二人さん。こんな所でデートかしら。」
突然、背中から声がかかった。
振り返ると、トレーニングウェア姿の水城さんだった。
「トレーニング?張り切ってるわね、水城。」
「この3年の運動不足がたたってるわ。体力も落ちてるし、体も固いし。」
水城さんは3年ぶりにGIMELへ戻ってきたんだけど、
ボクらよりも階級が上、いきなりMRF−3に配属になったんだ。
優子が言うには、階級が上なほど任務の内容も過酷になるらしい。
「ボクたちと同じMRF−6に配属になれば良かったのにね。
そうすれば優子と水城さんと、3人で仕事ができたのに。」
「遠慮しとくわ。アンタ達の仲に割ってはいるほど、野暮じゃないわよ。」
寝転がったままの優子の隣に座り、呼吸を整える水城さん。
相当走り込んでるみたい。水城さん、エライなぁ。
首に掛けていたタオルで、何気なく汗を拭っているけど……
そのタオルの下に見え隠れする物に、一瞬ボクは目を奪われた。
「……ああ、これ?持ってみる?」
そう言う水城さんが、肩掛けのホルスターから取り出した、金属の塊。
黒のフレームにシルバースライドが目に眩しく、手にするとずっしりと重い。
「すごい……ベレッタM92FSガントレット……本物だ!」
一瞬だけ、ボクは男の子の目に戻る感じ。
セーフティを解除し、スライドを引くとロックがかかる。弾は入っていない。
そのまま構えて狙いを付けたり、クイクイと引き金を引いたりして遊ぶ。
「穂香ちゃん。オートマチックの銃は、
スライドを引いたままだとハンマーは動かないのよ。
射撃訓練の時に教わらなかった?」
「そ、そう。その通りな感じ。」
スライドロックを解除して引き金を絞ると、バチッ!とハンマーが落ちる。
「水城ったら、普段からそんな物騒な物、持ち歩いてるの?」
「トレーニングの時だけね。
肩から下げておくだけでもけっこう重さが効いてくるのよ。」
水城さんは、その重さに馴れるために銃をつり下げて走り込んでいたんだ。
すると……やっぱり銃を使うような仕事も……命じられるのだろうか。
そりゃ、ボクだって射撃訓練の時には銃を使うけれど、
銃を使うような仕事なんて、今まで一度だってないし、やりたくもない感じ。
「配属されてまだ何日も経っていないのに、もう仕事を押しつけられたわ。
それも、かなり厄介そうな仕事……。」
「そう……。くれぐれも、無理しないようにね。」
相変わらず、高く澄んだ秋の空を眺めながら優子は言う。
……なぜか素っ気ない感じ。
「あなた達二人は?今は待機中なのかしら?」
「…………………………」
「基本的には、待機中なんですけど、ちょっと他にもやることがあって……」
寝転がったまま何も答えない優子を見て、ボクがそう答える。
「なによそれ。意味深長な答えね。まぁいいわ。」
ボクから銃を取りあげて、立ち上がる水城さん。
「あなた達も無理しないようにね。私はそろそろトレーニングに戻るわ。」
優子に向かってそう言って、水城さんは再び走り出し、行ってしまった。
水城さんが走り去ってしまった後になって、優子は突然体を起こし、
もう小さくなった水城さんの後ろ姿を、黙って見つめている。
そして大きなため息を一つ。
「どうしたの?優子。具合でも悪いの?」
「……ほんっっっと、バカね、私って。」
頭を抱え、髪をクシャッとして、苦虫を噛みつぶしたような表情をしてる。
……水城さんと、喧嘩でもしたのだろうか……?
「さ、穂香。私たちも戻るわよ。色々と調べなきゃならないことがあるわ。」
スカートに付いた芝を払い落とし、ノートパソコンを抱えて歩き出す優子。
「穂香にも、色々協力してもらうわよ。ヨロシクね。」
「う、うん。ボク、何でもする。」
散らかしたゴミを慌てて片づけて、優子の後に付いていく。
いつもの優子に戻った感じ。

つづく




アニト (7月17日(水)23時57分23秒)
沙希さん、こん○○は。
女装娘さんの数はこれからも増えていくに違いない
とわたしは思っているんです。
それぞれがいろいろな活動の仕方を模索していく中で
自分の物語を書きたいと願う人のための
「有って良かった『空想デート』」で在り続けたいと思っています。
マイペースで、しかもワガママ放題続けていたら
あらもう4年、というのが実感なのですよ。

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