はじめから読む

ユウキ(8月16日(水)11時50分57秒)
皆さんお久しぶりです。
一週間以上も無断欠席してしまいました。
明日・明後日と家族旅行なのでカキコできませんが
明々後日19日には続きを書きたいと思います。
僕は自分に甘いダメ人間ですけど、約束だけは守るので…
公約ってコトで。
★ アニトさんへ
自分と向かい合った結果、知恵熱で寝込みました…。
情けない限りです。昔はそうでもなかったのに。
二十歳越えると老化現象の始まりですかね。
頭に体がついてきません。
こんなコト言ってたら皆に怒られますかね…。
★綾乃さんへ
>何だかずっと緊張しながら、お話を読みました。
>二重の倒錯なんでしょうか?
二重だか三重だか…(^^;)
書いている本人が混乱して寝込んでしまいました。
たぶん4重くらいじゃないかな?
なるべく筋道たてて書きたいと思うのですが、
うまくまとまるかどうか…。
★瑞樹さんへ
>なんかハードボイルドっぽい作風が
>かっこいいですねぇ。
恐縮です。こんな書き方しかできません。
大学のレポートもこんな風に書くので
怒られっぱなしです(ToT)
★数値フェチっ娘さんへ
>「表の姿裏の姿」いよいよ佳境に入ってきて、ドキドキしながら
>続きを待つ事、6日間。ユウキさ〜ん、続きはまだですか〜?
すみません…。19日の夜には書き込むことをお約束します!
>「あかり」さんからのお電話で、熱を出されてしまったのでしょうか?
す、スルドイ…(爆)実はその通りなんです。
精神疲労に連夜の晩酌(親が盆休みなので盛り上がって…)が重なって
頭痛と吐き気が止まらなくなってしまいました。
よくあることなんですけどね。
ご心配おかけしてすみませんでした。
夏休みで「あかり」と「桐生」が地元に帰ってきました。
この小説が現実になる日が来るかもしれません。
精神的に参っていた僕でしたが、久しぶりにここに帰ってきて、
あぁ、やっぱりここには居場所があるなぁ、と嬉しくなりました。
皆さん、これからもよろしくお願いしますね。
ではまた、19日に。




アニト(8月16日(水)23時25分30秒)
ユウキくん、こんばんは。
約束を守ること、
これは社会生活を営むうえでもっとも重要なことの1つです。
相手にいだかせた期待を裏切ってはいけませんよ。
わははははは、知恵熱で寝込みましたか。
が、年を重ねれば重ねるほど考えが深くなります。
本当に「頭」を使って考えるのはこれからです。
当たって砕けないようにするには・・
その前に当たらないようにするには・・
老化している暇などありませんよ。




ユウキ(8月19日(土)14時12分18秒)
★アニトさんへ
お約束通り戻って参りました(^^)v
物語の続きの前に、一つ報告させてください。
旅行の道中、すごいものを見たんです。
奈良県と京都府の境を車で走っていたとき、
窓の外に、ガレージのような広場が見えました。
そこに、冷凍食品を積んで走るような、
赤い大型トラックが横付けに止まっていました。
そのトラックの側面にはなんと。
大きく「ア■トグループ」と書かれていて。
■の部分はどこかで事故したのか、
擦り傷で色が落ちていて読めませんでした。
でも、思わず「嘘っ?!マジで?!」叫んでしまいました。
写真に撮ろうと鞄からカメラを出したのですが、手遅れでした。
帰りに取ろうと思ったら、その赤いトラックはもうありませんでした・・・。
あれは一体なんだったのでしょう。
何を積んでいたのか・・・気になります。
アニト兄さんご存じないですか?
★綾乃さんへ
三都物語ですか。僕京都に居るんですよ(笑)
ご案内しましょうか?
綾乃さんの物語の隅っこにでも登場できたら嬉しいなぁ☆
ダメですか?
因みに。表の姿裏の姿、完結しました。
あとはUPするだけです。
でも、今まで掲載した分で半ばまでしか
行ってないことが判明しました。
これからは1話を少し長目にします。
よろしくおつきあいください。
/////////////////
表の姿裏の姿 7
シャワーを浴び始めてしばらくして、俺は何気なく振り返り、
浴室のドアのガラスが透明なのに気づいた。
これでは寝室のドアを開ければ、丸見えだ。
シャワーを浴びている間は背後は見えないし、
水音で桐生の動きが聞き取れない。
そう思ったとき、俺はふと考えた。
(俺は何を気にしてるんだ?)
桐生とは初めてじゃないし。
それ以外だって何度も男に抱かれたことがある。
抱かれるのは、嫌いじゃない。でも何かが俺の神経に触っている。
「何考えてんだろうなぁ、俺。」
苦笑して呟いた。
その瞬間。明かりが消えた。
「‥‥‥。」
急な暗転に目が慣れず、辺りは完全な闇。
(ヤバイ。)
直感。以前にもあった。
心拍数が跳ね上がり、口の中がカラカラになっていくのが分かる。
カチャリ  キィ────‥‥‥
身構えようにもやっぱり体が動かない。
カチャン。
アルミサッシの閉まる音。
闇の中に、すらりとしたシルエットが浮かび上がる。
「…桐生‥‥。」
かすれた声が漏れた。
糞ったれ。何で俺は何度も同じミスをするんだろう。
以前桐生に抱かれたときと同じシチュエーション。
風呂のカギかけ忘れて、自分の体見られて。
悔しくて、哀しくて、怖かった。
(?!)
また一瞬、なにかひっかかった。自分と向き合いたい気持ちと、
そんなことをしている余裕がない、この現状。
思考が八つ裂きにされそうだ。
闇の中後ずさりして、タイル張りの壁に背を付ける。
冷たいタイル。熱い体。その間を湯が流れ落ちる。
「ユウキ。」
声と同時に桐生の手が頬に触れた。熱い。
桐生の表情は見えない。
「そんなに固まらないで。」
その声に、ますます凍り付く。
足に根が生えたように、本当にぴくりとも体が動かない。
無理に一歩でも動けば、崩れ折れてしまいそうだった。
(畜生、ちくしょう…)
何をそんなに悔しがっているのか。自分でも分からない。
分かりそうなのに…頬に触れる手が、俺の思考能力を奪っていく。
「ユウキ。」
桐生が一歩近づく。
後ろがない。体温が伝わるほど身を寄せてくる。
「‥‥バカヤロウ‥‥」
俺はやっとのことで、そう言った。
言葉になったかどうかは、わからない。
泣くまいと、必死だった。
こんなところで泣いたら、それこそ負けだ。
沈黙が流れた。
桐生が、俺の肩に置いた手を離した。
一歩下がった。
「出ますか?」
桐生が問うた。
「出て──帰りますか?」
その言葉に、俺はまたひとつ思い出した。
以前俺は泣いたんだ、ここで…。
出れば、帰らざるを得ないだろう。何故、平穏に休んでいられないのか。
昔、桐生が言っていた──抱かないと女性は側にいてくれない、と。
そう、「女性」は。
「‥‥‥‥。」
何かが、わかりそうでわからない。
嫌な吐き気がしてきた。考えたくない。
でも俺の桐生に対する、この長い間のひっかかりを解決するには
放っておけないような気がする。
俺がそんな事を考えているうちに。
桐生は側にあったボディーソープのボトルを手に取ると、
ドアから漏れる、非常灯の僅かな明かりでラベルを確かめ、中身を手に取った。
「───っつ!! 」
突然体に触れた桐生の熱い手と、石鹸のぬめりに、俺は我に返った。
そして、考え込んでいた自分がいかに無防備になっていたか、
理解したときにはもう手遅れだった。
桐生は俺の体に指を這わせ───もとい、洗い始めたのだから。
「…あ‥‥っ‥‥。」
石鹸でぬめった指が吸い付き、離れ、淫猥な音を立てる。
桐生の、細くて長い指。
(日本製の手袋は指が短くて手に合わないと文句ばかり言う。)
しなやかな肌。(単に皮膚が薄いだけ。)
さっきまでの頭痛や吐き気はすっかり吹き飛んでいた。
思考があちこちへ飛んで、まとまらない。
──落ちる感覚──急降下。これこそ、Falling Downだ。
(だめだ…堕ちる…。)
ダメなんて、死んだって口には出さない。でも。
耐えきれず、俺の膝はがくりと折れた。
「危ないから…座って。」
桐生は、崩れ折れた俺支えて浴槽の縁に腰掛けさせた。
「‥‥くっ‥‥‥。」
声なんか出したくない。男同士で風呂に入っててなんでこうなるんだ。
あれ…?…なんだかさっきの・…
「ひっかかり」の答えが掴めそうで。もう一息と言うところで消えていく。
思考が、快感の波にさらわれていく。悔しい。
肩、腕、胸、腹…。桐生は手を動かすのをやめない。
そして、俺の首はぐらぐらと赤ん坊のように定まらなくなってきて、
桐生にしがみつかざるを得ないハメになる。
頭の中は霧がかかったようで。
俺はすっかり「墜ちて」いた――。

つづく




ユウキ(8月19日(土)21時50分05秒)
ここからはちょっとややこしい話になりますが・・・。
解りにくかったら読み飛ばしてしまってください。
表の姿裏の姿 8
「──ひっ!! 」
俺は声を上げた。突然だった。本当に、突然だった。
俺の背中に回った桐生の手が。奴の指がアナルに入ってきた。
たぶん、ほんの一瞬、それもほんの少しだけだっただろう。
でも俺には十分だった。
石鹸のぬめりに助けられて、
墜ちた俺の体は奴の指をすんなり受け入れたらしい。
目の前が真っ白になり、跳ねた体はものの見事に浴槽の縁から滑り落ち、
洗い場にしりもちをつく羽目になった。
「は‥‥っ‥‥。」
見える景色が正常に戻っても、
体はヒクヒクと痙攣し、歯はカチカチと音を立てている。
「ユウキ…?」
桐生が俺の顔を覗き込んだ。
俺は、逃げるように顔を背けた。
何故逃げる?
そう考えた瞬間。
突然ものすごい吐き気が襲ってきて、俺は思わず口元を押さえた。
そのまま手に歯をたてる。
涙が溢れて、俺は悟られないようにシャワーに頭を突っ込んだ。
「ちょっと…強引すぎましたかね。」
しばらくして、桐生がぽつりと言った。
(強引?いや、そうじゃない・…)
俺はよろよろと立ち上がった。
「先に…出てるな。」
すっかり膝が笑ってしまって、
立つことも難しい状態の体にむち打って、シャツを着る。
「情けねぇな。」
ひとりで呟く。
(解っているのか‥‥? 自分は何を考えてるのか‥‥。)
自問自答する。
そう…俺は桐生に抱かれたいのだ。
女の子を抱くのが好きな俺が。Sのはずのこの俺が。
抱かれたい?・・・そう、抱かれたい。
ただし、男として。
女の反応をする自分が嫌い。
桐生に女の体を見られたくない。
女の体に触られたくない。
でも桐生に触れられたい。…どうやって?
桐生は俺と同じくバイだ。
「ネコの男」と「アナルセックスが好きな女」の違いは?
俺はFTMで。俺はどっちだ?
気持ち次第なのだろう。
でも、素っ裸になって自分の体を見ていると常に自信がもてない。
女子大に入って「女役」をしている時間が長くなるにつれて
女役に慣れてしまって。混乱している。
女役で男に抱かれて、どこか満たされないのを相手のせいにして。
たくさんの男を渡り歩いて。相手を満足させることで気休めにして。
女役はもうたくさんだ…。
FTMのゲイのネコ。確かに、医学書にも載っている。
体の性XXに対して精神的な性がXY、性嗜好がXY、
つまり精神的には同性愛というパターン。
簡単に記号化されて。人の苦しみなんか書かれちゃいない。
たぶん俺は俺のことを男として見てくれる男なら誰でも良いんだ。
今のところ俺のことを「ユウキ」と呼ぶ男は桐生とアニト兄さんくらいで。
男として男に抱かれてみたい。
それを。俺はたぶん俺のことを「ユウキ」と呼ぶ桐生に、賭けていたのだ。
俺はずっと桐生の男友達だったし、彼女を取り合ったライバルだった。
少なくとも、俺はそのつもりだった。
桐生に会うたびに異様な興奮に包まれたのはその「賭け」のせいで。
「女役」なんかしたくない。
・・・・・…素直に、男のままでいたい・・・・・・…
でも、どうやって?
男装もしてない素っ裸の体を。
どうやって男と思えって?
俺でさえ無茶な話だと思う。
本人にさえできないことが、桐生にできるはずがないだろう?
それに桐生は相手を「男」「女」でなく、「人」としてしか見ない。
俺はたまたま男勝りで「ユウキ」とあだ名がついていたから
桐生もそう呼ぶようになっただけで、
俺を男と思っているから「ユウキ」と呼ぶワケじゃない。
桐生がもしゲイだったら。
抱かれた俺は男として満足できるだろう。
でも、抱かないと女性は側にいてくれない、という
桐生に抱かれた俺は女なんだと、どこかで自分に言い聞かせていた。
人間同士の触れあいに満足すればいいのに、
どうしても「男」として見られたいことに固執してしまう。
でも、自分の性に疑問を持ってる人ならみんな固執してあたりまえじゃないのか?
桐生に聞いてみたい。
「俺をどう見てるんだ?」と。
でもきっと
「ユウキはユウキじゃないの?」
という答えが返ってくるだけだ。
いや、もしも――もしも「女」なんていう返事が返ってきたら。
今まで男として、ライバルとして、まがりなりにも張り合ってきた、
俺のすべてが否定されてしまう。
ショックに弱い俺の精神は――きっと耐えられない。
だから 聞けない。
桐生にだけは同性だと認めてもらいたい。
でも奴は男か女かなんて、気にしない。
気にしてるのは俺だけ。
「ははは…。」
空しく笑う。
メビウスの輪のような「どうやって?」の中にいるのに
疲れ果てていた。
どうしようもない空虚感に襲われていた。

つづく




性処理愛奴 綾乃(8月20日(日)00時33分57秒)
とんでもない事になってしまいました。
いつもの様に、メッセンジャーを開いたら、アニト様が
酔っ払ってお帰りになられて、この様なお戯れを・・・
maedaanito: 酔った頭で思いついたんだけど、
      綾乃、わたしの代わりにレス書かない?。
ayano_girl: えっ・・そ・そんなあ・・
(中略)
maedaanito: ではおやすみ
ayano_girl: おやすみって、ア・アニトさまあ・・・・
ご主人様の命令は、例えご主人様がどんな状態であっても聞かなければ
ならない・・・そうでしょうか?
アニト様、きっと明日になったら、覚えておられない様な・・
で、綾乃、ご主人様気取りでレスを書くとは何事だ。
以後、1ケ月間、オナニーを禁ずる。
とか、言われてしまうんです。きっと・・・
そしたら、綾乃生きていけない・・・でも・・ご主人様の命令ですので・・
皆様、怒らないでくださいね。

ユウキ様・・ユウキくん(きゃっ、ユウキさんごめんなさい)、こんばんは。
おおっ、きちんと約束を果たしましたね。
さすがは、わたしの弟分だけの事はあります。
「ア■トグループ」、見つかってしまいましたか?
ここだけの話、みんなには内緒ですが、わたしのグループのものなんです。
実はここで綾乃や唯奈(ごめんなさい)が書いている話は事実なんです。
フォーチュン誌にも載せられそうになって、あわてて差し止めた事もあります。
おそらく金塊を運んでいるトラックでしょう。内緒にしといてくださいね。
わはははは。物語は更におもしろくなってきましたね。この調子でお願いします。

う〜ん、アニト様らしくならない・・・
(あ、別にアニト様らしく書かなくってもいいのかな?)
ア・アニト様・・フォローお願いしますね。




アニト(8月20日(日)09時39分20秒)
みなさんへ
そういえば昨夜酔っぱらって帰り、
メッセンジャーを開いたような気が・・・ああ記憶が・・・、
というのは半分冗談ですが、
『空想デート』を開いたもののレスを書く力が残ってはいなかったため、
綾乃にレスを託しました。
たまにはわたし以外の者がレスを書くのも一興と
受け取っていただければ幸いです。
綾乃に罪はありませんのでその点くれぐれもご理解ください。




ユウキ(8月20日(日)20時37分57秒)
10話完結予定・・・やっとここまできました。
これもひとえに皆さんの励ましのおかげですm(__)m
★アニトさんへ
二日酔い等大丈夫ですか?
いつもきちんとレスがあるのに、その力もないとは。
弟分としてかなり心配してます。
★綾乃さんへ
似てる似てる♪読んでいて大笑いしました。
さすがアニトさんの性処理愛奴。
でもアニトさんよりずいぶん優しいというか甘いというか・・・。
たまにはいいかも。(兄さんごめんなさい)
★絵梨花さんへ
待ってました!「甘く危険な香り」、何故かハマってるんですよね。
いよいよですねぇ。続きが気になります。
////////////////
表の姿裏の姿 9
「ユウキ。」
声がして振り返ると、ドアの所に桐生が立っていた。
腰にタオルを巻き付けただけの姿がやけに悔しい。
女装させたら似合いそうな顔なのに。やっぱり男だ。
で、俺はやっぱり…?
俺はベッドに腰掛けて、引きつった笑みを浮かべた。
「どうしたの。」
「べつに。」
こいつはさっき自分が何をしたかなんて、わかっちゃいない。
俺にどれだけのダメージを与えたかも。
桐生が隣に腰掛けた。
俺のほうはもうどうにでもなれ、という気分だ。
女役で抱かれたくない、という強い思いと
桐生が望んでるなら別にいいんじゃないか?という思い。
…心臓が痛い…
桐生の手が俺を抱き寄せる。
どうしても少し抵抗してしまう。
どうでもいい男に抱かれているときのように、簡単に桐生の胸に飛び込めない。
桐生にしてみれば嫌がられてるとしか思えないだろうな。
俺だって女の子抱き寄せて抵抗されたら、抱く気なくすもんなぁ。
桐生には悪いコトをしてるかもしれない。
桐生の手が髪をなでてくれている。頬と、背中も。
(そのままでいてくれないかなぁ…。)
髪・顔・背中・腹・手足。男でも女でもどっちでもかまわないところなら…
あんな複雑なことを考えなくても良いのに。苦しまなくてすむのに。
愛撫は、嫌いじゃない…。
(そのままでいてほしいなぁ…。)
空しい願い。
桐生は純男なんだから…無理に我慢させるのもかわいそうだろ?
桐生の手が腰から下の方に下がってくる。
俺の。あるはずの物が無くて…不安な空間に。
嫌だ。怖い。触られたくない。
体がこわばる。
(桐生…ごめんな…おまえが嫌いなわけじゃないんだ…。)
心の中で謝る。体の震えを止めようと必死になる。
体中に脂汗がにじむ。
唇を噛んだら少し切れて口の中に血の味が広がった。
我慢…我慢しなけりゃ。
どうあがいたって、俺の体はこれひとつなんだから。
「…あっ!」
桐生の手が奥に進んだ。
触られたくない。抱かれたい。
苦痛と快感がごっちゃになって、気が狂いそうだ。
(俺ってもしかしてさぁ…マゾ?)
恐怖を散らそうと頭の隅で余計なことを考える。
無駄な足掻き。
このまま進んで俺、大丈夫なんだろうか?
桐生の肩に顔を埋めて、涙を見られないようにした。
ダメだった。
桐生の手が下着の中に入ろうとしたとき、俺は我慢の限界を超え、
咄嗟に桐生の手をしっかりつかんで止めてしまった。
(やっぱりダメか…。)
我ながら自分の行動にあきれてしまう。
でもどうしても桐生の前では女になれない。
桐生、怒ったかな…。
「なぁ、桐生…」
肩に顔を埋めたまま、俺は言った。
「俺のさぁ…」
言葉が出ない。「俺のことどう見てる?」が、どうしても言えない。
「何?」
桐生が手を止める。俺は本当に泣きたくなった。
「どうしたの。」
俺の頬を両手で挟んで、顔をのぞき込む。優しい声。
どう見たって、か弱い未経験の女の子をあやすようじゃないか?
そのやたら優しい声に、突然、無性に腹が立った。
「なぁ、桐生…おまえさぁ。愛してる?」
「えっ?」
俺は少し自分を取り戻していた。確かに少しは成長したのかもしれない。
「抱かないと傍にいてくれないってのはさぁ…。相手のこと信用してないだろ。」
「・・・・・…」
桐生の眼つきが微妙に変わる。当然だろうが、冷めたらしい。
「一人の時寂しいなんてさ、これだけ女の子抱いてりゃ言わねぇよな。」
「・・・…」
「あかりまで取っといてひどいんじゃねぇの?」
俺の唯一だったあかりと。そして今、俺まで取られそうになってるさ。
俺は自暴自棄になっていた。そしてまた、驚くほど冷静だった。
中途半端に桐生に抱かれるのはもうごめんだ。
それに俺はさっきから考えすぎていて。
聞きたいことも思うように言葉に出来なくて。
すっかり疲れ果てていた。
もう、すべてを終わりにしたかった。
俺は重ねて言った。
「おまえ、何がしたいんだ?何が不満なんだよ?」
俺と桐生の似てるところ。何かに飢えている。
その何かは別にしても、足しても足しても満たされない渇望を持っている。
諸刃の剣。
俺は構わないさ。桐生に男だと認めてもらえないなら、抱かれたくない。
いや、友達としたって会いたくない。
いや、この世に生きていたくもない・・・…。
「・・・・…そう…だね。」
桐生が優しく言った。冷たい声で。
俺の頬に触れていた桐生の手が、すっ、と下に下がって。
次の瞬間、俺の首を締め上げた。
「・・・…ぐ…。」
一瞬俺の気持ちの準備が遅くて、音がのどから漏れた。
飲み込み損ねた唾液が口の端から溢れて流れ落ちた。
ちょっと情けない格好。
首から下がしびれたようになり、頸動脈が大きく脈打っているのが分かる。
もちろん、息はできない。が、大して苦しくもない。
桐生は何故だかこういうことが上手だ。される側にとってはありがたい。
桐生は俺のことを殺しはしない。
失神した人間を放ってどこかへ行ってしまうような奴ではない。
(暴力的な喧嘩で、無理矢理失神させた場合を除く)
もちろん、失神した相手を抱くような奴でもない。
(なぁんだ、俺、けっこうこいつのこと信用してる…)
そう、保証なんてどこにもないのに。
殺されたって良いと思ってるのかな。多分そうだろう。
(あ、俺って案外良い奴?)
俺はいつもの楽観的思考をとりもどす。
こうしている間は、男だ女だと悩まずにすむ。
(マジでマゾになるかもな、俺…)
気持ちいいかもしれない。快感、というよりも安らいでいる。
何も、考えなくて良い…すべてを桐生に任せて。
思考がとぎれとぎれになってくる。
な…抱かれなくても、傍にいるじゃないか…
…桐生に触れてもらえて…
…俺は…何も考えなくてすんで…
……楽だなぁ…
……いいなぁ…
俺は、意識を手放した。

つづく




ユウキ(8月20日(日)23時01分40秒)
★綾乃さんへ
>随分違うとは思うんですけど、綾乃も女装せずに男の人に抱かれる事
>には、抵抗が・・
ってそんなに違わないと思いますよ。
大いに励まされました。ありがとう。感謝です。
さて、ラストです。あっけないですけど・・・。
次はもうちょっとハッピーエンド考えますね。
///////////////////////
表の姿裏の姿  10
しばらくして目覚めると、となりに桐生が寝ていた。
「あ・起きたね。」
俺のちょっとした動きに桐生が目を開けた。
「今何時?」
「あぁ、もうじき終電…。」
俺はほっとした。今日は桐生に抱かれずにすんだ。
納得しないまま、中途半端に抱かれて後で後悔するよりマシだ。
いろいろあったけれど、終わりよければすべてよし、だ。
「帰る?」
半身を起こして、シャツのボタンをとめ始めた俺に桐生が声をかける。
「あぁ、帰るよ。門限あるの知ってるだろ。」
ふと見ると、テーブルの上に飲みさしのワインが置いてあった。
「飲んでたのか?」
「うん、まぁ・・ね。すぐ寝たけど。要る?」
「あぁ、気付けに一杯もらってこうかな。」
渡されたグラスを口に運ぶと、甘いフルーツ系の香りがした。
今の俺には哀しくなるような香りだった。
「さて、帰るとするか!」
俺は景気良く立ち上がった。
「帰れる?駅まで送ろうか。」
「要らねぇよ。一人で帰れるって。」
黒いシャツに黒いズボン。ボストンバッグを手に持って。
「急に元気になったね…」
ちょっとあきれ口調の桐生。
元気なくさせた張本人が何言ってる。単なるカラ元気だ。
それと、少しばかり壊れてしまった自分への照れと。
桐生の顔が直視できなくて、
俺は赤いジャケットを肩に引っかけてさっさとドアに向かう。

「会計頼むぜ?誘ったのおまえだし、俺金ないからなー。」
「じゃぁ、また、今度はどっか外で呑もうぜ。」
「はいはい。」
今度、があるのだろうか。聞きはしない。
あればあるし、なければない。
女々しく追いかけて行くような性分じゃぁない。
桐生に抱かれたいけれど、
それ以前に桐生の男友達でありたい。
気が向いたときに気軽に飲みにいけるような。
間違っても、女友達として数えられたくない。それだけだ。
俺は桐生に手を振って別れ、裏道で駅まで歩くことにした。
表通りと違って、路地裏はほとんど真っ暗だ。
黒いシャツ黒いズボンで闇に溶ける。
何も、考えない。自分が何者か考えない。
優しい闇に包まれて。本当の自分に還る。
本当の、自分は?
ユウコでもユウキでも多少無理して作っている所があって。
「そっかぁ…俺ってホモだったんだ。」
呟いたら、急に可笑しくなった。
確かに、考えれば考えるほど的を射ている。
そう言えば俺は昔からゲイ雑誌が好きだった。
同人誌にハマった女友達がロリ・ショタなんかを読んでいても、自分は違った。
ネコ役が女顔の雑誌も嫌いだった。
男顔の男同士が好きだった。
やっぱり昔から素質はあったのかもしれないな。
女の子しか好きにならないはずの「ユウキ」に別の一面を発見した。
それを認識するのが遅くて、桐生にどう接して良いか混乱していた。
つまりはそれだけ。
まぁ、パートナーは恐ろしく見つかりにくいだろうが仕方ない。
女「役」で得られる快感なんて、
桐生に触れられたときと比べればたかが知れてる。
女の子のフリをして男遊びなんでいう無茶はもう止めだ。
多少無理したって「ユウキ」でいたい。
空想デートには可愛い女の子がいっぱいいるし。
考えようによってはすごくツイてる。俺って幸せ者だ。
そう、俺は、俺。
駅の明かりが見えてきた。
残念ながら、家につく頃には「ユウコ」に戻っていなければならない。
終電の時間が近い。
俺は軽く息を吐くと――駅に向かって走り出した。

<完>




アニト(8月20日(日)23時20分21秒)
ユウキくん、こんばんは。
呑むときには大いに呑んで騒ぐ、
が、それを翌日の予定に影響させない、
これがわたしの呑み方です。
わたしもユウキくんくらいの歳にはずいぶんムチャをしましたが、
今はお酒を言い訳にできる年齢ではないですからね。
お酒や雰囲気に呑まれてはダメですよ。
ともあれ「表の姿裏の姿」完結おめでとう。

メニューへ戻る

動画 アダルト動画 ライブチャット