私は21歳以上です。



    拉致監禁の檻 
   
  物語の背景
                  作:Gia

 

 世の中はゆっくりと歪み、ゆっくりと侵蝕されていった。

 

そう遠くない未来。

 

 最初の兆しは空からの飛来物にある。

その年は世界各国で妙な飛行物体(ある人はそれをUFOとよび、

ある人は隕石、ある人は霊魂だと言う)の発見・告発が相次いだ。

各国の政府はその存在を認知せず、低俗なマスコミとオカルト集団、

そして市民の噂だけが先行していった。

 異常現象、地球外生物との遭遇、集団神隠しといった怪情報が

ネットで飛び交い、一時的な熱狂が渦巻くなか、

そこは世の常、当初世界のお茶の間を賑わせていたネタも

月日を追うなかで徐々に影を潜め、そして忘れ去られていく。

不可思議な現象は少なくなり、世の中は平穏を取り戻したかのように見えた。

 

 それから数年後。

 

 今度はより現実的なものが世界を震撼させた。

未知のウイルスの大量発生、そして急速な広がりである。

今まで見たことの無いような、その数多なる微小な悪魔は

世界を覆い、人々を恐怖のどん底に陥れた。

 全種類のウイルスにおいて、共通して見られる特徴がある。

それはより年齢の高い者に異常なほどの感染率・発病率があり、

二十代の後半から三十台の前半において、致死率がほぼ100%に

なること。男女の死亡率の差が桁外れであり、男は世界の全男性人口の

約95%が死亡。女性は遥か下の40%前後に留まった。

(もっとも、二十代の後半になれば女性の死亡率も飛躍的に伸びて

ほぼ100%になるので、25歳〜30歳では男女の死亡率が拮抗する)

 人類の存亡をかけて、ワクチンの研究が急がれた・・・かのように見えたが、

技術的な問題ではなく上層部からの圧力によって頓挫。

 人口の急速な減少を受けて、物流の停滞、文化の後退、社会の荒廃が

起きると思われた・・・が、なぜか起こらなかった。

物流は滞りなく行われ、社会は暗い沈黙のともに平穏な状態を保った。

 

 世界はすでに狂っていた。

 

 


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