新体操倶楽部 千秋部長編 (その1)
作:テンちゃん
『親友の意味』
「、、、あとは頼んだわよ、マイ、、、、ちゃんと床も
磨いてキレイにしてから帰るのよ!、、ほら!、、ルミ!
、、、、いいから行くよ!、、」」
あの<事件>から半年が過ぎようとしていた、、、、
今では舞に替わり千秋がこの部の<長>として君臨し、一
部、、、、ほんの一握り、以前は尊敬していた舞に同情す
る一年を力ずくで統率していた。
「、、、、でも、チアキ部長!、、、なんだかマイ先輩
かわいそーです、、ルミ、手伝っていってイイですかぁ?
、、、」
「、、アンタは黙ってワタシの言うこと聞いてりゃイイ
の!!、、、、それとも誰かさんみたいになりたい?」
「、、、、ルミ、、、、いいの、、、気にしないで、、
、、アタシやっておくから、、、帰っていいよ、、」
ルミはモップを手にした舞に深くお辞儀をすると出口に
向かい歩を進めた。
学校といえども一つの社会である。事実、余計な正義感
や同情心を盾に刃向かってくるモノには、千秋はあらゆる
手段やその圧倒的な<集団力>で排除してきた。
特に女性の場合、暴力というよりは(時として使うが)そ
の陰湿ともいえるほどの組織力と情報力、計算しつくした
嫌がらせが相手に壊滅的な『精神ダメージ』を蓄積させて
いく。
ある意味、男性のソレよりタチが悪い。
だが、千秋の<表看板>はチマタではすこぶる評判が良い
らしく、今や彼女目当てに入校するモノは後をたたなかっ
た。
「、、あっ、、そうそう舞ッ!、、昔のヨシミで言うケ
ドさぁ、、、」
体育館から出ようとした千秋がキビスを返し向かってく
る。そして他の部員には聞こえないように小声で以前は<
親友>だった舞に言った。
「、、、アンタ、、、いい加減一人ボッチいやでしょ?
、、、ねぇ?、、、、ん?、、、だからってワケじゃない
んだけど、、、、ホラ、、、ずっと前知り合ったあのイケ
メン、、、、なんてったっけ?、、、タクヤ君?、、そう
、、、その子とまだつながってんでしょ、アンタ?、、、
、アノ子、連れてきて、、、したらウチらの傘下に入れて
アゲルよ、、、ってゆーか正直アタシも舞にヒドイことし
たと思ってる、、、ほら、、、こーゆーのって皆の前じゃ
言えないし、、、ね?、、」
その表情は何年も前に見た、、、そう<親友>だった頃の
千秋だった。
しかし舞は許すことのできないアノ忌まわしい記憶を今
でも鮮明に覚えている。
あの晩、千秋が自分に放った信じられない暴言。
「、、、それって、、なんかの形で示せってこと?、、
、千秋、ハッキリ言うけどアタシは間違かったことしてな
かったと思うし、、、それに、、、それにもうアナタとは
友達でもなんでもないと思ってる、、、いくらヒドイこと
されてもアタシは平気よ、、、」
これに対する千秋の答えは予想と違うものだった。
「、、、舞、、、違うの、、、もう一度むかしみたいに
なりたいって、、、、、そう思ったの、、、ケドこのまん
まアナタと仲良くすれば皆にも<示し>がつかないって、、
、、それにやっぱアタシじゃダメみたい、、ここ、、、そ
う思っただけ、、、分かるでしょ?、、、ゴメンね、、、
そうだよね、、、謝って済むことじゃないよね、、、なん
ならブッてもイイんだよ、、、それで舞の気が済むんなら
、、、、、ほら、、、ブッて!、、、ゴメン、、、それだ
け言いたくって、、あんま気にしないで、、じゃ、、、」
千秋の瞳にはうっすらと涙がキラめいていたが、舞は直
視することを避けた。
それから数分、舞は一人モップがけしながら思案に暮れ
た。いくら過去に向こうに非があったにせよ千秋は謝罪の
意を示している。
それに正直このまま<孤独>で学校生活を続けていく勇気
も気力も舞にはなかった。
千秋の力は絶大で、今まで仲の良かった友達も少しづつ
距離を置いていくのが空気でわかる。
誰か他の人が自分の立場だとしたら、、、やはり自分も
<千秋側>につくだろう。誰も責めることはできないのだ。
、、、、むかしみたいにもう一度、、、、
あの小雨のちらつく晩におきた『集団逆レイプ』、、
小島という男子生徒は一命をとりとめたものの、女子校
という建て前上、風紀を乱したということで転校を余儀な
くされた。
結局自分一人の力ではどうにもならなかったことを思い
知らされた苦い夜だった、、、、
帰宅の途中、カバンから携帯を取り出した舞は、一度大
きく深呼吸してから何ヶ月ぶりかに消去できないでいた千
秋の番号をプッシュした、、、、
本当の『親友』の意味も知らないままに、、、、、
つづく
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