私は21歳以上です。



  新体操倶楽部 part 1

                        作:テンちゃん
                                 
     第一種目 リボン

ここは某女子高校。と言っても不景気のあおりか、一昨
年から男子も入校できるようになった為、1年に2人、2年
に3人だけ男子がいる。
 やはり大部分が女子な為、ソノ存在はいないに等しかっ
た。
 そんな中、新体操部の部長、舞は総勢8人からなる部員
に体育館全体に響く声で言った。

 「は〜い!今日の練習はこれまで!1年は床拭きっ、2年
は器具を片付けて〜!」

 3ヵ月後の大会に向け、日曜の夕方から10時まで体育館
を貸し切り、事実上、猛特訓をしていた。
 夜の学校というのは決して気分のイイものではない。
 タオルで汗をぬぐいながら舞は古びた窓に目をやった。
 シトシトと初春を思わせる小雨が降っている。と、今年
推薦で入ってきた1年の留実が、内股で小走りしながら舞
と千秋に言った。

 「せんぱ〜い! 体育用具室に何か動くモノがいるそう
でーす!」
 
 留実は震える声と、好奇心を含む声を半分ずつにして駆
け寄ってきた。
 3年は部長の舞と千秋の二人しかいない。実のところ、
毎年減り続ける入部者を背景に、6〜7年前までは輝かしい
栄光をおさめた「新体操部」も、廃部をよぎなくされてい
た。その為、舞と千秋は入部希望者に奔走し(まぁ、多少
強引な時もあったが)顧問の先生に言いよったこともある

 それが学校側にも通じたのか、最近では留実のような推
薦生徒も入部するようになった。

 「何?動くモノって?まさかユーレイかなんか?、、、
ま〜っさかねっ!」

 舞がしゃべるよりも早く隣にいた千秋がそう言った。

 「本当なんですってば〜!いいから早く来て下さい!私
達だけじゃ、こわくって!」

 そう言うと留実は、千秋の腕をつかんでひっぱる様に駆
け出した。おおかた1年がネズミか何かでも見たのだろう

 「ふぅ〜、、」

 舞はヤレヤレと言う様に大きくため息をつくと、その場
に体育座りし、スポーツドリンクのストローに口をあてた
。しかし、千秋のスタイルはいつ見てもイイ。以前、千秋
に「どーして、そんなスタイルいいの?」と、じかに聞い
たことがある。千秋はキョトンとした顔で「え〜?舞のほ
うが今風なカンジだよ」と、おどけてみせた。確かに身長
もあり、スッとしたプロポーションは今風なのだろうが、
千秋の、なんというか、小柄なアジア的な均整のとれたス
タイルは「新体操」にはうってつけだった。
 千秋が留実に引っ張られていくサマを見て、そう思って
た舞は自分の隣にチョコンと座った弥生に問う。

 「いったい、なんなの?動くモノって?」
 「さぁ?なんなんでしょ〜ね?」

 興味はありません、といったカンジで自分のバッグのケ
ータイを見る弥生。舞も弥生と同様おろした腰をあげるの
が面倒だった。2年の弥生は舞以上にガンバリ屋で未経験
で入部して以来、着実に成長し、顧問の先生をビックリさ
せたものだ。それは、舞をはじめ誰もが認めることだった

 が、彼女はなんというのか、協調性がまるでなかった。
『みんなと力を合わせる』ということが出来ないのだ。今
、こうしてケータイを確認しているのを見ても分かる。
 去年の強化合宿の時、学校をグルリとまわるマラソンレ
ースがメニューにあった。コースの途中、同期の子が転ん
でケガをした時も、みんなかばっているのを見て「いいか
らほっときましょうよ」と言ったことがある。その場に舞
はいなかったが、後で聞いてムカついたのを覚えている。
結局、そのケガをした子は退部してしまった、、、舞は、
その頃部長ではなかったので、たいした発言権もなくどう
することもできなかった、、、、
 ケータイをチェックする弥生の横顔を見て、思いにフケ
ってた舞に遠いところから千秋が、かなきり声をあげた。

 「スッゴ〜イ!!舞、本当になんかいるよ!とび箱の中
なんだってばっ!、、、、、いいからっ、早く来てっ!」

 そう言うと千秋は再び体育用具室に、サーカスでも見に
行く子供の様に軽い足取りで行った。
 それを聞いた舞は胸騒ぎを感じながら、守衛の人に連絡
しなくちゃと思った。あっ、そーいえば今日は日曜だった
!今、この学校には自分達しかいないのである。責任感の
ある彼女は「いいから、みんな帰る支度してっ」と、言い
たいところだったが、10代の好奇心には勝てなかった、、
、、、。

 現場に着いた彼女が目にしたモノはガタッ、ガタッと時
折動くとび箱と、それを取り巻く弥生以外の部員だった。

 「ぶちょ〜、これなんですけど、やっぱなんかいますよ
ね〜?、、、、、たぶん生き物ですよね〜?」

 多分ではなく間違いなく生き物だろう。しかも、人間!
そう思った舞は考えを巡らせた。
 留実は、ふざせている様に指さしをしたまま淡々と説明
をしている。舞はそれをさえぎり
 
 「みんなっ、何か武器になる様なもの持って!、、、、
いい?せ〜のって言ったら開けるからねっ!」

 部長の威厳を発揮し、そうは言ったものの、かすかに足
が震えている。舞は一番上のフタの部分に手をやり思いき
り開けた。

 「うわあ〜〜〜〜っ!」

 悲鳴をあげたのは彼だった。

 「ごっ、ごめんなさいっ!、、、あ、あの〜こ、こ、れ
れには事情があるんですぅ!」

 武器を下ろし、興奮気味の舞は猛然と食ってかかる。

 「、、何してんのっ、こんなとこでっ!!?、、ひょっ
としてノゾキとかっ?、、、アンタ何年?名前は?」

 「、、、、、、、、、、」

 それっきり彼は押し黙ってしまった。

 「、、、小島だよねっ?、、2年の小島じゃん!」

 誰かがそう言ったと同時にピンとした空気は薄れ、何か
しらけた様なムードが漂った。

 「、、、と、とりあえず顧問の先生呼んで来るから、お
となしくしてなさい!」
 
 やっと状況を把握した舞が言った。
 留実と千秋が後に続く。
 
 「でも、ぶちょ〜?、、このままじゃ逃げちゃうかもし
んないですよ?、、、、あっ、そうだ、これがあったんだ
!」

 「、、、あっ、、それイイね!それであの腹筋マシーン
にしばっちゃえば?、、ぜっ〜たい逃げられないよっ!ね
っ、、舞!」

 「、、、うん」

 留実は新体操で使うピンクのリボン数本を手に取った。
 舞はそこまでする必要はないと思ったのだが、まわりの
不陰気はソレを要求していた。舞は「後は任せたはよっ」
と千秋に小声で言うと、近所に住んでいる顧問の先生を目
指して走った。
 
 小雨のちらつく中、根は優しい舞は、あの小島という男
子を許してあげてもイイと思っていた。ただ、部員の前だ
ったし自分から言った手前、最悪でも先生を呼んでくるフ
リだけでもしなければ、、、、と思い、足はこれまた近い
自宅に向いているのだった。ま、2〜30分時間潰しして、
もう一回戻り、「先生、外出中だった」と言えばイイので
ある。そうでもしなければ小島はきっと学校にもいられな
くなるんじゃないかという不安もあった。舞はすでに頭の
中でこれからのことを整理し、ある種の正義感にふるえて
いた、、、、、

 「これでこうしてっと、、ちあきせんぱ〜い、もっとキ
ツクしばんないとダメですよ〜!、、、ん〜しょっと!、
、、よ〜し、これで動けないんだもんね〜!」

 小島は今、パンツ1丁といういでたちで、腹筋や背筋な
どをする時に使う、黒の皮で出来た、だいたい傾斜が30度
ほどだろうか?これに後ろ手にリボン、胸部、腰、ひざ、
足と、文字通りリボンでグルグル巻きにされている。床に
たれ下がった柄の部分は10をくだらない。
 が、小島は実際、女の子から見て迫力があった。その性
格とは対称的に小、中、と空手をやってきたため、筋肉は
隆々とし浅黒く、肩幅も広い。
 しかし、そんな筋肉を持ってしてもリボンの耐久性は強
く、無理に力を加えれば肌が切れそうなカンジがした。

 「うぅ〜ん、、、う〜ん」

 苦しそうにうなる小島。その声に触発されたのか、女子
校という環境がそうさせたのか?その場にいる、ほぼ全員
の女子はなんともいえぬ欲情を覚えた。
 まず先陣をきり、千秋が近づく。


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