私は21歳以上です。



     裏・山岳救女隊 

                        作:テンちゃん  

その3

           
 なにもない。なにもなかった、、、目覚めたあの時、、
ハッキリと覚えている、、、、テントはおろか三上の遺体
さえ、、、、、、、、、、

 冷房の効いた図書館。遠くで管理人が腕を組みうたた寝
をしている。日は長く、外の子供の遊び声が本田を現実に
引き戻した。
 
 あの朝、、、吹雪はすっかりおさまり冬の青い空が広が
っていた、、、ちょうど今みたいに。それにしても彼女の
言った最後の言葉。
 
 「それと、、、これは『お願い』なんだけど、、、、、
、、下に降りたら私達のこと、、」

 それから先は覚えていない。無我夢中で下山した自分。
 あれから半年後、、、、井上、佐々木、三上。3人の遺
体はまだ発見されていない。登山経験の最も浅い自分だけ
が助かる数奇な運命。
 あの日以来、本田は『登山』そのものをやめた。人にも
やめるようすすめている。彼女と『約束』したからではな
い。もう誰にもあんな体験はさせたくなかった。

 忘れたくても忘れられない過去。調べものをするため、
、、そう、、キッカケは全く違う方向からきた、、、今日
ここで<十年>以上前の新聞を見ていた、、、、読んでいる
うち<半年前>の記憶が、、、、、、

 次の瞬間!!、、、、ブルブルと持っていた新聞が震え
、、体の芯が凍りついた!!
 あの透き通るような白い肌、、、、出来すぎた偶然、、
日付け、、、、そして新聞の写真、、、、年齢、、、、、
、まさか、、、、
 最後に彼女が言った言葉。『下に降りたら、、、私達の
こと、、、、』、、、あのあとは、、、、、今。

 思い出した、、、、、、、、、、、、、、『さがして』


 見出しにはこうあった。

 平成2年1月22日
 『鶴ヶ岳で女性救助隊7名遭難  捜索活動もむなしく
遺体は発見されず  警察の発表によると雪崩に巻き込ま
れた可能性もあり、、、、、』
     
                   おわり


                     
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