私は21歳以上です。



      ミクロとマクロ 

                        作:テンちゃん  
     (2)

        『ノリカとユウカ』


 フゥ〜ン、、、、、フゥゥ〜ン、、、、フゥ〜ン、、

 直径は2メートルほどか。完全な球体でメタル色の金属
からは、とことろどころ淡いオレンジランプが明滅し、そ
れに呼応するようにイルカの鳴き声のような澄んだ音色が
共鳴していた。

 「そ、空から降ってきた、、、、、の、、か、、、、」

 普通、これぐらいの物体が地上に衝突すると、半径30
メートルほどのクレーターができ、隣にいる裕二もあわや
『爆死』となるのだが、途中、意図的に速度を緩めたらし
く腰を抜かしたに過ぎなかった。
 
 半分ほど砂に埋もれた球体から、突然<長方形>のトビラ
が浮き立つように出現し、ゆっくり下に倒れてくる。
 開いたトビラの隙間からは、まばゆいばかりの青白い光
が溢れだし裕二の顔を照らした。

 「アワ、、、アワワワ、、、ワワ!、、、アワワ」

 言葉にできない悲鳴を出し、腰を抜かした両手で懸命に
砂を握りこむ裕二の体はビクとも動かなかった。
 やがて完全にトビラが開くと、そこに黒いシルエットと
して浮かび上がる人影。

 「フ、、アァ〜、、、ねむ〜っ!、、、なに?もう着い
たの?、、、地球に?、、、ニホンに!?、、はやっ!」

 う、、うそ、、、だろ?、、、ふ、ふつうに日本語を喋
っている、、、しかも標準語、な、、、??、、、なん?
 い、いや、、違う、、よく見ると『クチ』が動いていな
い、、直接、、脳に、、、

 「ほらぁ!、、ノリカぁ!もう起きなよ〜!、、、ん?
、うっわぁ、、地球人ジャ〜ン!、、、ラッキー!しかも
オ・・ト・・コォ!!!?」

 球体の乗り物から姿を現した彼女?はどう見ても宇宙人
ではなかった。だが、その顔は東洋人のようでもあり西洋
人のようでもある。
 後ろから付いてきた『ノリカ』と呼ばれた<生物>は、そ
のまま映画女優もできそうなほど美しい。彼女は珍しいも
のでも見るような目で裕二に話しかける。

 「ビックリした?、、ごめんなさいね、、見てのとおり
私たちは『ブス』なの、、、だから、、あの星では子孫を
残せないのよ、、、そこで前からこの星に『潜入』してい
た仲間から聞いたの、、、この星では『ブス』なほどモテ
るって、、」

 あ、、あの星?、、ブ、、ブス?、、ナニを言ってるん
だ!?、、、裕二は震えながらも困惑した。誰が見ても絶
世の美女二人である。
 スレンダーなボディは銀色の<つなぎ>で覆われていたが
モンモンと発散するメシベの香りは裕二を赤面させた。

 何かがズレていた。そう、価値観である。彼女達の住む
星は地球と同じ進化を辿ってきたらしい。なにもかも全て
において、、、、
 ただ一つ違うのは、なんらかの影響によって『男子』の
出生率が極端に低くなり、女子50万人に1人の割合でし
か男子がいないことだった。
 これは、横浜の人口からすると7人、日本全体でもおよ
そ260人しかいないことになる。
 そのため、遺伝子工学がそれほど進んでいないその星の
男子は、毎日『生殖活動』を余儀なくされることになった
らしい。
 しかし生まれてくる子は、えてして『女性』の率が高く
終わらないイタチごっこが続いていた。
 そんななか、何かが狂ったのだろう。醜いほど美しいと
いう意識が芽生え、美しい者は疎外され続けたらしい。
 
 先ほどまで宇宙がなんやら、奇跡の星がどうしたとかい
う裕二の考えが瞬時に一蹴された。
 その後、うわの空で話を聞いていた裕二。遺伝子が『瓜
ふたつ』の<人間>であれば生まれてくる子孫にも影響がな
いらしい。その他、いろいろ言っていたが、にわかには信
じられずポカンとクチを開いていた。

 「、、ってことで〜!、、エッチしちゃうよ!ダメぇ!
『モンドウムヨウ』!!、、、キャハハ、、ホントはネ〜
『エドジダイ』のころ一度来てんだぁ!、、まださぁ、、
『カタナ』とか持ってたよ〜!、、アタマも変だったしぃ
、あのころよりは進化したみたいだネぇ!」

 <時間>の歪み。『時』とは所詮人間が作り出したものに
過ぎない。ネズミの寿命は約7年だが、ネズミはネズミな
りに<人>の寿命ほど生きている。一年が十年分。
 江戸時代、つまり彼女達の年齢は少なくとも<人類>でい
う400歳以上ということか。
 どう見ても20代前半、、、、、、気がフレそうになる
のをかろうじてコラえる裕二。
 彼女達のクチは閉じたままだったが、脳に響くそのリア
ルな『音声』は、二人の違いはおろか、感情さえハッキリ
と伝わってきた。

 助けを呼ぼうとしたがここは無人島。はじめに降りてき
たノリカより多少若い感じのする女は、ひとさし指を彼に
向ける。
 ビビビ〜ン!!、、、金縛りのように体が動かない!!
魔法のようなすさまじい力で体全体がツッタようになる。

 「フフ、、ユウカ、、あなたの<ファラコ>はいつ見ても
強烈ね、、、さ、はやく終わらせて帰りましょう、、思っ
てた以上に空気がわるいワ、、」

 地球で言うサイコキネシスか。ユウカと呼ばれた女は動
けないでいる裕二の背後にまわると、メロンのようなムネ
を押し付けてきた、、、

                   
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