私は21歳以上です。



    カリスマ・海外編
    その1 『チェルコのバーゲン』

                        作:テンちゃん
                                 
 
 「、、、あっ!、、ズルイよ〜リナねえ!、、、ソレゆ
〜なのだよ!、、、、」

 「、、もうっ〜!、、、ウッサイわねアンタは!、、ん
なモンどっちでも同なじでしょ!、、、、、、ったく、、
、、、ハイハイ、わかったから腕はなしなさいよっ!」

 ニューヨークにも支部を置く『カリスマ』こと三姉妹は
、観光を兼ね支部の運営状況を視察に訪れていた。

 ウォール街からマンハッタンに抜ける57番街はいつもの
ように多種多様な民族でごった返し、ここが世界の金庫、
経済の中心であることを雄弁と物語っていた。
 
 ウィンドゥショッピングに余念がないリナを先頭に「ク
レープの中身が姉のと違う」と、グズリだしたユウナを背
後から温かいまなざしで見つめるナミ。
 
 「、、、、フフッ、、、ほらほら二人とも、、、せっか
くの休暇なのよ、、、、ケンカしないの、、、」

 「、、、だって〜、だって〜、、リナねえがさぁ、、」

 当然のことながらこの街も大部分が女性で『構成』され
ており、上等なスーツで身をかためたワーキングウーマン
の群れは、信号が青に変わると腕時計に目をやりながら足
早に流れていく。
 遠くからはサイレンの音が聞こえ、目を覆いたくなるよ
うなキラびやかなネオンがビルのスキを縫って林立し、そ
の横では怪しげな東南アジア系の移民が訳のわからぬ言葉
で物売りをしている。
 さらにその奥では『占い』と書いた看板の前で貧相な格
好をした娘が物乞いをしている。

 貧富の差は<男社会>だったころよりもなくなったかのよ
うに見えたが、宝石のように光る表通りから少しはずれる
と、彼女達のような生活をしてる者も少なくなかった。

 「、、、、これ、、、少ないけど、、、、、」

 ナミはそう言うと、自分と年など変わらないだろう灰色
の汚れたフードを被った女に紙幣を渡した。
 女は神様にお祈りするように両手を合わせ、ナミに感謝
の意を伝える。

 と、通り過ぎようとしたナミに女が<紙きれ>を無言で渡
した。そこには走り書きでこう書いている。

 <、、気をつけて下さい、、、ナミ様、、、、何者か、
、、、、ねらってるようです、、、>


 うつむいたままの女の顔はフードに隠れて見えない。

 「、、、、そう、、、、、、ありがとう、、、、」

 だが、しかしナミは決して『誰?』とは聞かない。ごく
自然に柔らかい笑みを娘に向け歩をすすめる。
 どこで誰が諜報活動してるとも限らない。ナミを気遣い
『情報』を提供してくれた娘も暗黙の了解とばかりに本業
に戻る。
 もし、この時ナミが『誰?』と聞いていたとしたら、娘
は一週間後、ロサンゼルス港に浮いていただろう。
 それほど裏社会(男性が大半)では『カリスマ』に恨みを
持った者が小数ではあるが存在していた。 
 今、この時をもってしても見えない目が自分達を『監視
』してるのがわかる。
 まぁ、彼女達にしてみればいつものことなのだが。 
 
 「、、、、オ〜イ!、、ナミねえ!、、、おそいよ〜!
、、、なにしてんの?、、、、置いていっちゃうよぉ!」

 遠くからユウナの元気な声がとどく。

 2ブロック先の路地裏から、不意に『ソレ』は姿をあら
わした。

 屈強な男が二人。タンクトップを着た男は黒人で首から
太い金のネックレスをしている。
 もう一人は背の高い白人で、ガムをクチャクチャと噛み
ながらサングラスを下にズラすと意味ありげな笑みを浮か
べる。

 「、、、、オ〜!!、、、マッテタヨ!、、、、ハン?
、、ジミー!、、コイツラガ『ボス』ノイッテタオンナカ
?、、、、、ジーザス!!、、オーマイゴッド!、、、、
コロシテシマウノモッタイナイネ!!、、、ジミー?、」

 「、、マチガイナイ、、、、、ユダンスルナヨ、ベン!
、、、、コウミエテモ『強い』ラシイゾ、、、、」

 「、、、えっ?、、、なになに、、、チョ〜こわい!、
、、、え?、、、コロシ屋さん?、、、、」

 キョトンとした顔でユウナが首をかしげる。
 路地裏のここは、ポンコツの車が影になり表通りからは
かすかにしか見えない。
 中華レストランの裏側なのか、時折、大きな換気扇から
はモウモウと蒸気が吹き出している。

 「、、、、オ〜イエッ!!、、、『ユーナ』、、、ベリ
ープリティネ、、、ジャパニーズ、、、ン〜、、、ア、、
、ニ、、ミ、、、、、、ソゥ、、アニメネッ!!、、、、
、ダメネ、、、ジミー、コイツハ、サンニントモタッカク
ウレマ〜ス!、、、、コロサナイデソォシマショ〜?」

 どうやら実際<戦闘>するのはベンと呼ばれた黒人らしく
、ジミーという白人は諜報員らしかった。
 そこまで整理するとナミは黒人の体を上から下までゆっ
くり吟味すると薄い唇をうごかす。

 「、、、、無理ね、、、、アナタ達じゃ無理だわ、、、
、、、見なかったことにします、、、、出直してきなさい
、、、、」

 「、、、ン?、、、ン、、ンッワハハハッ!、、、オ〜
!!、、、ユー、クレイジー?、、、キレイナカオシテユ
ーネー!、ゾクッテキタネ!、、ジミー?、、、『ガン』
ハ、ツカワナイネェ、、、タップリカワイガッテアゲマス
ル、、、ンッハハッ!」

 「、、、、ちょっと!、、、どーでもいーけど早くして
くんないかな?、、、、<チェルコ>のバーゲンおわっちゃ
うからさ!、、、、ねー?そこのカッコイイ白人さん聞い
てんの?、、、、」

 イライラとした様子で路地裏から表通りを見やるリナ。

 「、、、ン〜!、、、、ナイス、、ナイスネ!、、、、
イッツァ、クール!!、コッチノチャイナドレスガールモ
イイネー!!、、、、、OKネ〜!、、、サッサットネ、
、、、、サッサットオワラシマショウネ〜!、、、、」

 よく喋るベンという黒人は、そう言うとズボンの後ろポ
ケットにあるピストルをそばにあった生臭い<ダストボッ
クス>に投げ入れた。
 大きく、よく太ったネズミが一匹ビックリしたように逃
げだす。

 しかし、この行動がベンの犯した最初のミスだった、、
、、

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