私は21歳以上です。



      A ・ K 

                        作:テンちゃん  
第1部  序章『ピッキー』
     
 ハヤサカは重厚なオーク調作りの社長室で一冊の本を手
に取り、考えあぐんでいた。
 、、、、いや、考えてる暇などない。事は一刻を争うの
だ。しかし、、、、、、また自然と本に目を移す。

      

       『A.K』の成り立ち

 『エンジェルキッス』通称『A.K』
 
 彼女達はDOPで教育を重ねた国家要員で有り、いかな
る事象においてもその身を拘束、または束縛されず万事国
家間の紛争、暴動あるいはテロ行為による粗致、監禁、な
どITOGで認められ、なおかつ国連法第176条に該当す
べき範囲内の、、、、、、、、、、

 そこまで読みハヤサカは、ブランドスーツの内ポケット
にあるパスワード式の衛生電話をためらいがちにプッシュ
した、、、、、、、、、

 
 「、、え〜、たった今現場からさほど遠くない、、、、
、、アッ!、、見えますでしょうか!?、、、背任行為、
及び麻薬の密輸に荷担したとして渦中の人であるイワブチ
議員を乗せた車が議員会館から出ようとしています。、、
、、、え〜!、、たった今わたしの目の前を、、、、、、
、イワブチさ〜ん!!、、、一言だけお願いします!、、
、、イワブチさんっ!!、、、逃げないで下さいっ!、、
、、今、続々と報道陣を乗せたバイクが後を追っていきま
す!、、、尚、このもようは明日開かれる、、、、、」

 ピッ!

 「、、、ヒサマツさん?、、、、ヒサマツさんっ!?、
、、え〜、、音声の影響で、、、」

 「、、、、マツで !、、現場のヒサマツですっ!!、
、、え〜、、、小雨のちらつく中、黒幕と噂されているイ
ワブチ議員を乗せた車はたった今我々報道陣のスキを縫う
ように、、、、」

 やはり時は一刻を争うようだ。
 リモコンを放りだすと、クロイは今さっきハヤサカとい
う人物から受けた依頼をパソコンを器用に操り支部に通達
した、、、、、、、、、、
 当然『ハヤサカ』の身もとは洗ってある。信頼のおける
ドンの知り合いといえども手ぬかりはない。
 あとはこの『任務』をいかに『完全』に遂行するかだ、
、、、、
 クロイは国歌斉唱の様に胸に手をやると、目を薄く閉じ
小さくつぶやいた、、、、
 
 「、、、、、A.Kの名の為に、、、、、、」

   
 殺し屋。そう、短くくくればそうゆうことになるかのう
、、、 だが、国家の秘密警察すら手を出せない彼女達は
、国籍、年齢、当然住所などおよそ住民権を所有して生活
しているオマエさん達にとっては、まさに『幽霊』のよう
な存在でしかないんじゃ、、、、、
 時には学生、時には医者、OL、美容師、ホステス、、
、、、、およそ女性になれる職であれば全てじゃ。何に化
けてるかは誰も知らない。彼女達を雇っている国家ですら
知らない。知っているのはDOPのトップのみじゃ。
 逆に彼等は全てを知っている。好きな食べ物、好きな、
、、まぁここで話してもしょうがあるまい。

 つまり、彼女達は『世界が認めた殺し屋』なんじゃ。
 だが不思議と敵はいる。これもまた裏の組織なのだが、
ここでは多くを触れないでおこうではないか。
 それにもう一つ。彼女達は『証拠』を残す。
 何かのマンガで読んだ『キャッツなんとか』アレと同じ
かのう、、、、要は『自分達がやりました』と世間に公表
するんじゃのう。
 その証拠とは彼女達の場合『射精』じゃ。
 おや?、、と思う人もいるかと思うが『エンジェルキッ
ス』のオキテでじゃ。
 『命』の根源である精液を象徴する。素晴らしいではな
いか。次の様に唱える人もいるぞい。
 人間が死という恐怖に差し迫り果たしてボッキできよう
か?彼女達は無論やってのけた。今まで全てにおいて、、
、、、、ウォホン、、、まあ相手が女性の場合は別だが、
、、、しかしほとんどといっていいほど凶悪犯罪の場合『
男性』に限られる。
 相手もマフィアのボスから議員まで多岐に渡る。
 
 ここまではわかったかのぅ?

 、、、、、ワシも眠たくなってきた、、、まあ色々ある
のだが追々説明するとしよう。
 、、、、、あ、それと書き忘れたがワシの、、、

 パタン!

 ハヤサカはまたも最後まで読む気をなくし本を閉じ、そ
の幼稚地味た表紙を軽くこずいた。ご丁寧に『絵』まで挿
入されている。
 さきほど読んでいた事典の様な本はあまりに難しかった
ので、クロイという男に頼んでエアー便で私書箱まで送っ
てもらったのだが、今度は絵本ときやがった!
 メルヘンチックな色使いで人を小馬鹿にした感があるソ
レは絵本の様に1ページ1ページ厚い。
 安物の動物皮の表紙には『天使』達がラッパや思い思い
の楽器を持って、ちょうど説明している『老人』なのだろ
う。魔女の様に腰を曲げ、三角の異様な帽子をかぶった人
物のまわりを羽ばたいている。
 表紙にはこうあった。


     『誰でもわかるA.Kのすべて』と。    
 
 ハヤサカはため息混じりにその『絵本』と一緒に同封さ
れた<ディスク>を備え付けのパソコンに挿入した。
 
 ブゥ〜ンという低い機械音に続き、画面にネズミともイ
タチとも言えぬ何かのキャラクターだろうか?
 完全に三等身の『動物キャラ』が奥の方からチョコマカ
と駆けてくる。
 大袈裟に画面前面で砂ぼこりをあげ急ブレーキをかけて
止まったかと思うと、子供好きのする大きい目でニッコリ
微笑むキャラ。
 ガバカバしたドデカイ靴を履いた足さきを器用に伸ばし
テクテクとリズムに合わせステップをふんでいる。
 続いて少し偉ぶった様に腰に手をやり、胸を張ると同時
にキーの高い男の子の声がスピーカーから聞こえた。

 「、、やぁ!!、、み〜んな元気にしてるかい?、、、
、ボクはアナグマのピッキー!、、今日は『A.K』につい
て説明するよ!、、、でもね!ひとつだけ注意してほしい
んだ!、、、、この記録は一度再生すると自動で消去して
しまうんだ!、、、つまり〜、一回見たら最後ってこと!
、、、」

 陽気なBGMが流れるなか、手振り身振りで喋るこのキャ
ラに多少イラついたが、ハヤサカは背もたれに寄りかかり
タバコのフィルムをはがした。
 『ピッキー』と名乗るそのキャラは、大きく黒い鼻先を
ヒクヒクさせながら短いウデを背中にやる。
 ボゥ〜ン!という音と共にピッキーを包む様に煙幕があ
がると、瞬時にして大きいメガネをかけ白衣を着た『学者
』風になるキャラ。手には白い指図棒など持っている。 
   
 「、、、えっ〜とぉ!、、、このディスクと一緒に本が
入ってたよね〜!、、、、、表紙に天使さん達が飛んでる
やつぅ〜!、、、、そう!、それそれっ!」

 ちょうど本を目の前に置いていたハヤサカは、一瞬向こ
う側から見えてるのかと思いギクリとした。      
 
           
 「、、、じゃあ〜、まずカンタンに『A.K』ってゆう組
織を説明するよ〜!、、残念なことだけどぉ〜、世の中に
はワッル〜イことをしてもノホホ〜ンと暮らしてる人がい
るんだ〜!、、、ボクがソッチの世界に行けたらコラしめ
てやるのに〜!!、、、、」

 オーバージェスチァーに口惜しそうな顔つきでジダンダ
をふむと、違うキャラが画面のスミから出てきた。
 『海賊』を思わせるいでたちで赤いバンダナに白黒の横
シマシャツ。いまどきこんな囚人はいまい。ハヤサカは心
でそうホクソ笑むとタバコに火をつけた。
 その眼帯をした悪者キャラは、ゴムの様に伸びる『骨つ
き肉』をうまそうに食べている。
 
 「、、、、こーんなワルモノがぬくぬくしてると思うと
アッタマにくるよね〜!、、、、そ、、こ、、、でぇ!!
、、、」

 突然、パンパカパ〜ン!!というファンファーレが鳴り
ピッキーの頭上から色とりどりの紙吹雪が散った。
 直後、赤色のマントを羽織り『正義の味方』に粉したピ
ッキーはグルグルと空中を何周したかと思うと『悪人』の
真横に着地した。
 胸には『A.K』と書かれている。
 悪人もソレに気づき肉を食べる手を休めジロリとピッキ
ーをにらむ。
 くだらない説明に耳を傾けながら、ゆっくりとタバコの
煙をはきだすハヤサカ。
 
 「、、、、え〜い!、、、かくごしろ〜!!、、、、、
、、エイ!エイ!エ〜イ!!、、、ど〜だマイッタか!」

 画面上ではモクモクとした塊のなか、両者が格闘してい
たのだが、その煙が晴れたかと思うとハヤサカの目に『想
像』とは違うオチが待っていた。
 
 その『悪人』は無惨にも首と頭が皮一枚つながった状態
で顔面はほぼ原型をとどめていない。頭からは脳梁が飛び
出し、ヒザから下の足は明後日のほうを向いている。

 それと、、、、、もうひとつ気になることがあった。彼
の股間からはクジラの潮の様にピュッ、ピュと白い液体が
定期的に出てきている。
 おそらく絵本の老人が説明していた『射精』を意味して
いるのだろう。
 に、してもだ。最後の描写だけ、このアニメチックなタ
ッチの絵からは想像できぬほど非常にリアルなのが気にな
り、ハヤサカはうすら寒い感覚に捕らわれ身震いした。
 ドクロのマークがフワフワと悪人の上を昇っていくと、
それに合わせバカげたメロディが流れる。
 
 ピッキーは振り向きざま、一瞬ニヤリと薄気味悪い笑み
をこぼし画面前方にトコトコと歩いてくるのだが、顔には
返り血を浴び、表情は明らかに以前と様子が違って見えた

 あれだけ愛らしかった目はつり上がり、狂気に満ちた口
もとはひしゃげている。
 タバコの味がネバっこく舌にまとわりつき、大理石の灰
皿に揉み消した。

 「、、、、、わかっただろう?、、、これがアンタの知
りたがってた『A.K』さ、、へッ!、、所詮この世に正義
なんてね〜んだよ、、、、なあ?、ここで一つ質問だ、、
、『織田信長』って知ってるよなあ?、、、、アイツが子
供何人殺したか知ってるか?、、、あ?、、、美濃だけで
300はくだらねーぜ!、、、それが今じゃ<英雄>扱いとき
たもんだぁ!、、、ハッ!、、笑わせるねぇ!、、結局時
代を作ってくりゃあ黒いモンも正義なんだよっ!!、、わ
かったんならクリック押してみな、、、、もっとくわし、
、、、、!!」

 ホウケにとられ画像に見入っていると、いきなり『社長
室』のドアがノックされハヤサカは慌てて電源をOFFにし
た。

 灰皿の中ではこれから起こるだろう問題を定義するかの
様に消え残った煙がくすぶっていた、、、、


                   つづく
                     
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