性犯罪根絶法第31条
その4
自分でまいた種とはいえ、男はつくづく女の恐ろしさを味わっていた。マリア、アグネス、リサ。三人の女達は自分たちに対する男の背信行為に対する償いを、その肉体による奉仕に求めたのだ。
マリアが達すると、顔面騎乗を強要していたアグネスがすぐさま下半身に移動してきて、男のものを自分の中にくわえ込む。その次は再びリサが乗りかかる。女達は男に全く休む暇を与えることなく、次々に交代でたったひとりの男を責め立てた。
仰向けのままで手足を縛り付けられて、騎乗位で攻められるという状態は、男にとっては誠にツライものがある。主導権が完全に女達に握られてしっているだけに、自分では射精のコントロールが全くきかないのだ。好きなように一方的に攻められ、何度も何度もあっというまに強制的に射精を強要されてしまうのだ。
いったいもう、何巡目になるのだろうか。男が女達に縛り付けられてから、既に5時間以上の時間が経っていた。しかし女達は決して疲れを見せることなく、飽きることなく男の身体を貪り続けていた。部屋の中は女達から発散する、淫靡な臭気に満たされていて、息が詰まりそうだった。
男の目は落ちくぼみ、もはや抵抗する気力も体力も消耗し尽くし、女達の傍若無人な陵辱劇を、ただ一方的に受け入れていた。本来ならばペニスの先端からほとばしるべきものも既に枯渇してしまっており、つい一時間ほど前からは、ただピクピクと体を震わせるのみで、空撃ちの状態を続けていた。
「あうっ・・・ま、また出るっっ・・・」。
ペニスの先端がぴくぴくっとふるえて、男の腰が心もち持ち上がったように見えたが、それは錯覚だったのかも知れない。男はもはや自らを襲う射精感に同調して、腰を突き上げるという体力すらも残ってはいなかったのだから。
「ううっ・・・もうだめ・・・たすけて・・」。
男の口から、かすれたような悲鳴がもれたが、その声はあまりにか細くてほとんど聞き取ることができない。男の目にはうっすらと涙がにじみ、ただひたすら女たちに解放される瞬間を待ち望んでいた。しかし彼女たちには、まだまだ彼を解放するような気はさらさらないようだ。
「ふふっ。こいつまたイッちゃったみたいよ」。
「そのようね。でも、アソコはまだ立ったままみたいよ」。
「心配しなくていいわ。この状態に持ち込めたら、もうアソコはしぼまないのよ」。
「えっ、そうなの?」。
「そう。空撃ちのペニスは、刺激し続ける限り大きくなったままよ」。
「へえーっ、知らなかったぁ・・・」。
「ということは・・・・」。
「そう。そういうことよ」。
「ふふふっ、そういうことね」。
オンナ達はもう、彼のことをただの「道具」としか考えていなかった。かつては三人の女がそれぞれに愛していた男。一時はその男を巡って醜い争奪戦まで繰り広げていた女達だったが、その愛が裏切られたという現実に、急速にその愛がさめると共に、愛は憎しみへと変化した。そして今や、男の存在はただ自分たちの性欲を満たすための便利なオモチャにしか過ぎなかった。
「あふーん、いくっいっちゃうーっ」。
「つぎ、わたし交代してっ」。
「あんっ、もう・・」。
「ああーんっ、私もまたしたくなっちゃったぁ・・」。
次々に騎乗位で襲いかかる女達の責めに、男は女達のもつ性欲の凄まじさに辟易していた。プレイボーイとしての誇りもプライドも消し飛んで、セックスというもの恐ろしさを、全身で味わっていた。セックスってこんなにつらいものだったのか・・・・。
「ううう・・・・し、死んじゃう・・・」。
とうとう男は白目をむいて悶絶した。
それから1時間後、ついに空撃ちを続けていた男のものも、全くその能力を喪失した。気を失ってしまった男は、もう女達がどんなにテクニックを弄したところで、彼女たちの期待には応えてはくれなかった。
「あーあ、もう使い物にならないよ」。
「こらっ、起きろっ」。
アグネスがまだ物足りないのか、男の表両頬にビンタをくらわすが、白目をむいた男が目を覚ますという気配はない。意識を失った男の口元からはだらしのないヨダレがしたたりおちただけだった。
「だめだめ、つぶれちゃったよ」。
「えーっ、私まだ使いたかったのに・・・」。
「何言ってるの、あんた何回やったのよ?」。
「たった8回・・・」。
「あーあ・・もう少し頑張って欲しかったな・・・」。
「そうよね」。
底なしの性欲をまき散らしながらも、かれこれ5時間にも及んだ陵辱劇は終幕を迎えた。部屋中には女達の発する淫らな体臭と、男の体液の臭いが充満していた。女達はそれぞれに思い思いにリラックスした姿で、だらしなく気絶したままの男を見下ろしながら、好き勝手な会話に興じる。
「で、このあとどうする」。
「そうねえ・・・・」。
アグネスがふふっと、笑みを浮かべた。
「ねっ、こいつをこのまま許したりしたら、またワタシ達みたいな犠牲者を生み出すことになるんじゃなくって?」。
「そうね。まだ反省してるかどうか判らないしね」。
「うん。だいたい勝手に気絶するなんて許せないわ。自分のやったこと考えたら、もっともっと私達に奉仕するべきなのに・・・」。
「でしょ。私もそう思うのよ。そこでね・・・・」。
リサとマリアがけげんな表情でアグネスを見つめる。
「こないだ新聞にのってたセクハラ警察って知ってるかな」。
「セクハラ警察って・・・」。
「・・・・」。
ごくり。
ふたりは思わず息を呑んだ。
セクハラ警察。社会的な弱者である女性の人権を守り、男の横暴を抑止するための国家機関。現在の政府がすすめる、ジェンダーフリー政策を実現するために、男の性犯罪を徹底的に取り締まる、女性にとってはまさに十字軍のような存在だ。
しかし、そこに委ねると言うことは、その訴えられた男には、過酷な審判とそして制裁が加えられ、有罪が確定した場合には、その存在は社会的に抹殺される。男性一般にとっては血も涙もない悪魔的な集団でしかない。
精をまき散らしたあげくに、だらしなく気を失ったままの男に対して、三人の女達が下した審判は有罪。すでに愛は冷めきり何の未練もない。自分たちを裏切った代償は支払ってもらうしかないのだ。
リサがホテルの電話機からダイヤルをして、ちょうど三十分後、セクハラ警察と称する性犯罪取締警察の女性警官が3人現れた。
目を覚まし、そこにいるのが無く子も黙るセクハラ警察の係官であることを悟って、男はぶるぶると身を震わせ、アグネス、リサ、マリアに哀願した。
「助けてくれ。イヤだ。オレは悪くないんだ。みんな、なっ、判ってくれ、なっ、だから、オレを引き渡したりしないでくれ・・・たのむ。証言してくれ・・・」。
見苦しい言い訳に終始する男に、女三人は終始無言だった。マリアなどはうつむいたまま、まったく視線を合わそうともしなかった。筋骨粒々の女プロレスラーと見まがうばかりの女警官は、衣服の着用すら拒み、まるでただっ子のように泣きわめき続ける男を一瞥すると、そのまま左右から両腕を抱えて引っ立てた。
あわれな男は、パンツしかはいていない、みっともない格好のままで、人々の興味津々の視線を浴びながら、護送車に押し込まれた。
「いやだーーーーっ、助けてくれーーーーーっ」。
男の絶叫が、夕闇迫るファッションホテル街に響き渡り、そして消えていった。
つづく
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