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葉月とせつら その1

とろんと

その日、葉月はTV局に来ていた。モデルとは言え、TV番組にも色々出ている葉月にとっては勝手知ったるTV局だ。クネクネと曲がる迷路の様な通路を、迷う事無く目的地に向け歩いている。しかし目立つ!俳優だの女優だの(笑)一杯通る中でも葉月の容姿は目立った。すらっとした手足、涼しげな目元・・・しかし人をはねつけない人なつっこい瞳。人気アイドルの「木の下芽衣」にゴールデンレトリバーに似てると言われみんなに大笑いされた事がある。確かに犬系!しかもでかい犬!!それは自分でも分かる。

が!しかしあんなに笑わなくても・・・。葉月には「ちょっと苦い思ひで」である。そんな事を思い出している場合じゃない!今日は海里に大事な話があって来たのだ。「早く行かなきゃ・・。」と近道を選ぶと・・・・・。どっかの番組のセットだろうか?大道具通路一杯に色々な物が置いてある。「こんな状態じゃ動かすのも一苦労だろーに・・・どうすんだぁこれ。」と周りを見回し苦笑いを浮かべると、見知った顔の大道具さんが頭を掻き掻き出てきた。「おっ!葉月君仕事かい?悪いねぇ・・ちょっと予定が狂っちゃってね。」成る程。中に入るはずのセットなどが、予定が変わって未だ中に入れられないので、仕方なく通路で出番待ちって訳か・・・。「わりぃね!何とかして通ってよ。じゃぁね!」などと、かなり無責任な事を言って、大道具さんは行ってしまった。「まぁ・・一応、人が一人通れるだけの道はあるけど・・・。」ブツブツ言いながら、行こうとしている先を見る。(一応一人は通れる)って・・つまり、二人は通れないって言う事な訳で・・・・・。今更戻るのも面倒なので、葉月はそのまま通路を進む事にしたが、暫く行くと異様な光景に出くわした。向こうから熊が来たのだ。TV局なので、「着ぐるみの熊」位は普通に歩いているが、今目の前に居るのは「大きな縫いぐるみ」らしき熊。ひょこひょこと歩くその姿はとても愛らしかったが、そんな事言ってる場合ではナイ。この通路では「すれ違う」という事が出来ないのだ。そうこうしている内にもう「くまちゃん」はすぐ目の前に迫っていた。ドーン!!「きゃあ!」(きゃあ?)葉月は体が大きい。モデルだけあって背も高い。「くまちゃん」VS「葉月」は葉月に軍配が上がった。ま・つまりはぶつかって転んだのは「くまちゃん」の方だったのだ。

「 きゃあって・・大丈夫?くまちゃん。」葉月はもがく「くまちゃん」の手を掴んで起こして・・・って・・・。いやに軽いその感触に葉月は自分の思いこみに気が付いた。実は「くまちゃん」がもがいていたのではなく、下敷きになっていた人間が起きようとしていただけだったらしい(笑)「ま・まぁ確かに・・この大きさの熊の縫いぐるみが自分で歩いてくるってのは・・・ちょっといくらTV局でも無いか・・・。」と頭を掻きつつ熊をどかしてやる。大きな熊の縫いぐるみを、脇の背の高いパーテーションの上に乗せ「大丈夫?」と下を見て、葉月は目を見張った。色の白い透けるように綺麗な肌、ピンクのセーラー服。チェックのスカートが少し捲れて、形のいいフトモモが・・・って!!見ちゃいけない!!!(笑)その子もそれに気が付いて、慌ててスカートを直す。恥ずかしかったのか、びっくりしたのか・・座ったままのその子に手を貸して立たせると、俯いて顔に掛かっていた髪の毛がサラッと後ろに流れた。

「せ・せつらちゃん?」露わになった仄かに赤い顔を、呆然と見つめる。そう、葉月がぶつかった相手は、(君に降りてきた天使)をキャッチフレーズに大人気の天下のアイドル秋せつらだった。(何てこったい・・折角会えたのに、最初の印象が悪すぎるぅぅぅ)そう!何を隠そう葉月は今日、友人の海里にせつらちゃんを紹介してもらえる様に頼みに行こうとしていたのだった。この世の不幸を一身に背負っているかの様に絶望的な顔で立っていると、上着の裾を引っ張られている事に気が付く。反射的に下ろした視線の先には、心配そうに葉月の顔を見上げるせつらの顔があった。「ごめんなさい。」宝石の様な焦げ茶色の瞳をうるうるさせて、しきりと謝るせつらに、葉月は我に返って微笑んだ。「大丈夫だヨ。せつらちゃんが悪い訳じゃないんだから、謝らなくていいんだよ?」「ホント?怒ってない?」伸び上がる様に顔を近づけられて、葉月は心臓が高鳴るのを感じた。(ああ・・ツヤツヤのほっぺ・・長い睫毛・・・)(爆)「怒ってないよ。」と、にっこり笑ってはみたものの・・・。(きっと、顔赤いんだろーな・・・かっこわるぅ)やっぱり正視出来ないらしく、「お・大きなくまさんだねぇ?」とパーテーションの上の熊に目をやる。「うん。スポンサーさんがくれたの☆可愛いでしょ?」思わずハートマークを付けたくなる様な笑顔。(せつらちゃんの方が、断然可愛い!!!)そんな葉月の心の中の叫びも露知らず(笑)「でも、大きいから抱っこすると前が全然見えなくて・・・息できないし、重いし、倒れないように必死で・・葉月さんが来たのに気が付かなかったの・・本当にごめんなさい。」ペコリと頭を下げる。長い髪がさらり・と揺れた。「ホントにこっちも(く・くま?)とか思ってる内にぶつかっちゃって・・しかも転ばせちゃってごめんね!怪我はない?」!!!(って・・!!今・・せつらちゃん。俺の名前!!)「あ・あれ?な・何で俺の名前・・・。」「え?氷城葉月(ひょうじょう はづき)さんでしょ?モデルの。」「は・はい!」

せつらはのぞき込む様に葉月に顔を近づけながら「だってぇ・・葉月さんだって、僕の名前知ってたでしょ?それはどうして?」とにっこり微笑んだ。「えっ・・だって、人気アイドルだし・・みんな知ってるよ。」「それだったら同じだね☆葉月さんだって人気モデルだし。」くすくす笑うせつらに見とれながら、葉月は緊張が解けていくのを感じた。「御陰様で。」と言って笑い掛けると、今度はせつらの方が赤くなった。目の前にせつらちゃんが居て、自分を見てくれている!もうそれだけで嬉しくて顔がほころんでくる。(ああ!幸せ!!)「あ・そうだ!これ何処まで運ぶの?重いし危ないから俺が喜んで運ばせて頂きます。」「えっでも・・。」「どうせ、ここはすれ違えないしね。」と言ってウインク1つ。(よし大分余裕が出来たぞ)「ん?どうしたの??顔赤いよ???」「いえっっっ!何でもありません!お・お願いしますっ。」「いこうか。」とパーテーションの上の熊を抱き、葉月は来た道を戻り始めた。「足元に気を付けて、ゆっくりおいで。」振り向いた葉月に、せつらはコクコクと頷いた。「あっっ。」

・・・・・。言った側からすぐ転ぶせつら(笑)その声に振り向くと、そこにせつらの姿は無く・・・・・って倒れてるし。「せ・せつらちゃん?」「ご・ごめんなさい・・転んじゃったぁ。」(か・可愛い(はーと))何と言ってもここは大道具通路。しかもちょっと非常事態宣言付き(笑)色々置いてあって足元が危険極まりない。よっっ!と縫いぐるみを右腕に抱え直すと「はい。」と左手をせつらに差し出した。せつらはその手と葉月の顔を見比べて「いいの?」と顔を輝かせて嬉しそうにその手を握った。「くま」「葉月」「せつら」の奇妙な御一行は、仲良く手を繋いで無事通路を通り抜けた。「お!せつらちゃん。ドラマ撮りかい?保護者付きで。」脇のスタジオから出てきた年配のディレクターが、からかう様に御一行に横やりをいれた。「ち・違うもん・・・せつら子供じゃないもん・・・。」涙ウルウルな瞳で抗議して、せつらは名残惜しそうに繋いでいた手を離した。寂しそうなその顔を見て、葉月はディレクターを睨み付けた。(っこの!クソオヤジ・・・)

「さっ、狭い通路も無事通り抜けた事だし、行こうか?!せつら。」さり気なく肩を抱き寄せ、驚いた顔で見上げるせつらに微笑み掛ける。・・・・・と、せつらは葉月がドキッとする位、幸せそうな笑顔を見せた。「うん★」素直にその肩を抱かれて、せつらは葉月にもたれ掛かる様について行った。ディレクターは葉月の睨みに暫く固まった後、「こ・怖い・・怖過ぎる・・。」と呟くのだった。「せつらちゃん、ドラマに出るの?」「うん・・でもドラマって言うか・・子供番組なんだけどね。」「子供番組?」「そう。芽衣ちゃんが主役のぉ・・メイド戦隊コメットさんて言うのに出るの。」「へぇ・・じゃあせつらちゃんもヒラヒラのメイド服を着て戦うんだ。」と葉月が聞くと「ううん。最初はそう思ったんだけどぉ・・違ったの。芽衣ちゃん達メイドが守るご主人の役なの。なんかね・・コメットさん達の星の王女様なんだって、それがこっちではお屋敷の主人で・・・・だから2役なんだよ!自分が誰か気が付いてないご主人と王女の。」と面白そうにせつらが答えた。(なんだろ・・すっげー面白そうじゃん・・ホントに子供番組なんだろーか)「あれ?宏治も出るって言ってたけど・・・。まさかメイドじゃないよね。」「えーっ!まっさかぁ!!でも良いかも。」とせつらが笑いこける。「きっと今頃、クシャミしてるぞ?宏治の奴。」と葉月も涙を浮かべながら笑った。

「花岡さんはぁ・・芽衣ちゃんのピンチに出てくる騎士の役だよ。格好良いの☆芽衣ちゃんとラブラブなんだって!良いよねぇ・・・。」笑いすぎで苦しい息の下から説明するせつら。「へぇ・・良い役だね!他は?」涙を拭き拭き葉月が聞く。「何かあんまり決まってないみたいなんだぁ・・プロデューサーが聞くんだよ?敵役誰かいい人居ないかって・・んでね、せつら面白がってぇ・・敵の将軍に海里さんその恋人でコメットさんのライバル黒メイドちゃんに由奈ちゃんを推薦しちゃったぁ☆」「・・・・・・・・いいかも。」「でしょ?だって敵の将軍ってなんかビジュアル系だし。由奈ちゃんもメイド服着たいって言ってたし。二人ともイメチェンとしては良いかなと思って。」ナイス!せつらちゃん!!と言って、プロデューサーが走って行った事は言うまでもない。「でもぉ・・・せつらもラブシーンがあるらしいんだ・・・。」とちょっと困った風にせつらが呟いた。(なにぃ!!!!!!!!!!)「王女様には許婚が居て、その人の力を借りてコメットさん達に新たな力を与えたりとかするの・・・その人は現実的に出て来る訳じゃなくて、幻の様に天から降りてくるの・・ 天使みたいに。でね・・力を与えるって言うか力を合わせる時にぃ・・王子様はKISSするの・・王女様に。」と言って、恥ずかしそうに俯く。

「ダメだよ!そんなの!!」葉月は突然のせつらちゃんの唇のピンチに、我を忘れて抱き締めてしまった・・・。(もちろん熊は足元に落ちている)細い肩・・・あの嬉しそうな顔・・・ちょっとだけ期待しても良いかな・・なんて思っていたのにぃ!!!!渡したくないぃぃぃ!!!!!「葉月さん?!」「いやだ。」(キッパリ)−−−せつらちゃんの匂い−−−「・・・・・。」「俺がその役をやる!他の奴にはやらせない!」(Wキッパリ)−−−細い体−−−「でも、僕みたいな子供とキスなんてしたいと思わないでしょ・・・。」そう言ってせつらは葉月の腕の中でイヤイヤをするように身を捩った。「そんな事ナイ!せつらちゃんは・・せつらは充分魅力的だよ!子供だなんてとんでもない!!俺は恋愛対象としてせつらちゃんを見ているよ」(DXキッパリ)−−−柔らかな髪−−−「ありがとう・・葉月さん・・・。いつもいつも子供扱いされてるから・・・。さっきも肩を抱いてくれて庇ってくれて、とっても嬉しかった・・・。」(そうか・・・それであんな嬉しそうな顔を・・)まだ幼さの残るせつらの顔には、涙が光っていた。「せつらちゃん・・・好きだ。」(EXDXキッパリ)−−−ああもうダメ(爆)−−−

「へ???」突然の告白にせつらは後で可笑しくなる位、間抜けな声を上げた。「いや・・(へ?)じゃなくて、俺ね・・実はせつらちゃんのファンでね。今日も海里がせつらちゃんと仲が良いって言うから・・紹介して貰えないかなぁ・・なんて思って来たんだよね・・・・・。その前に逢えるとは思わなかったけど。」そう言って恥ずかしそうに頭を掻く葉月に、せつらが急に抱きついた。(!!!)「ホント?せつらの事好き??」「えっ・・は・はい!」(何だ?何だ?この展開は!!!)「せつらとキスしたい?」「ああ・・したいよ・・。」と優しく言って、せつらの涙を指先で拭ってやる。「でも・・。」「何?」(やっぱりダメとか?)「その前に・・・くまちゃん拾って。」「あ。」(・_・;)くまを拾おうと屈んだ葉月の頬に、せつらは背伸びをして軽く口づけをした。葉月はあまりの事に、くまを抱いて座り込んだ。「ち・力が抜けた・・・。」「くまさん欲しい?」くすくす笑いながら聞くせつら。「せつらが欲しい。」ヘタッ・・・。恥ずかしかったのかせつらも葉月の前にヘタり込んでしまった。

            つづく

 

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