私は21歳以上です。

第8日目  8月4日(土)  バンコク


朝10時に目覚まし時計の音で目が覚める。しかし、そのまま起きられずに、30分ほどベッドの中でまどろんでいた。サーはフザけて、私の股間を触ってきたりする。チェックアウトの時間も迫ってきたので、シャワーを浴びて、荷物の整理を開始する。そして、チェックアウトの時間まで、指差し会話集を使っての会話。今日はどこに行こうかと相談する。彼女もバンコクに出てきて間もないとのことで、この辺は、あまり詳しくないらしい。また、夜は空港まで一緒に来てくれるとのことだった。
チェックアウトタイムの12時になり、フロントで2泊分の宿泊料1,800Bと、電話代64Bを支払う。そのまま、サーにロビーで待っていてもらい、昨日出しておいたランドリー屋へ洗濯物を取りに行く。チノパンとポロシャツ各1枚で50Bであった。ホテルに戻り、荷物をそのままハニーホテルで預かってもらおうかと迷っていると、彼女が「ママのアパートがスクンビットのソイ11にあるから、そこで預かってもらおう」と言う。私もママが迷惑でないのなら、その方が良いと思い、タクシーでソイ11へと向かった。
タクシーの車内で、サーがドライバーに「どこかバンコクで遊ぶところはない?」と聞いていたようで、ドライバーは「アニマルパークはどうだ」と言っていたが、外は天気が良くて、かなり蒸し暑く、彼女もあまり気が進まないようであった。ドライバーには、「やっぱり止めとくよ」と言い残し、グランドプレジデント斜め向かいのソイを奥へと進むと、彼女のママのアパートがあった。ここの家賃は1ヶ月10,000Bとのこと。
部屋に入るとママはいないらしく、同じバーで働く女性が出できた。彼女は起きたばかりのようでマイサバーイらしい・・・。とりあえず荷物だけ置かせてもらう。

そのまま徒歩で、アンバサダー近くのインターネットサービスへ行く。サーを横に座らせ、メールと掲示板をチェック。彼女には「Hotmailのアドレスがあれば、いつでもメール交換ができるから、アドレスを取得しておいてよ」とお願いしておいた。私がパソコンに向かっている間、さすがに彼女は朝早かったせいか、私の肩にもたれかかって眠っていた・・・。
インターネットサービスを出てから、BTSでエンポリアムへと向かう。中をブラブラしていると、プリクラがあったので、一緒に撮ることにする。プリクラといっても、係の人が、撮った画像をパソコンで加工して、カラープリンターで出力していた。出てきたプリントをはさみで切ってもらい、2人で分ける。プリクラの置いてある向かい側に、東京堂書店があったので、ここでG-DIARYを1冊購入。彼女は日本語の学習書を読んでいた。
そのまま上のクーポン式食堂へ行く。「何か食べたいものある?」と聞いてみると、「いらない」との回答。「じゃあ適当に買ってくるよ」と言って、パッタイとローストダックがご飯にのっかったものを買ってきた。水と合わせて95Bほど。彼女は、その間G-DIARYを読んでいて、私が戻ってくると「何これ?」という顔をするので、「日本の友達に買ってきて欲しいと頼まれたんだ」と言い訳をする・・・。彼女の勤めている「P」の広告も出ていた。
「少し食べない?」と聞いてみるが、やはり「いらない」とのことで水だけ飲んでいる。いつもなら彼女はまだ寝ている時間だろうから仕方ないか・・・。
エンポリアム内のCDショップに行き、「これは好き、これは持っている」などと話をする。彼女は「PALAPHOL」が好きだと言っていた。今度カラオケで覚えなければ!

エンポリアムを出たが、他に行くところも思い付かない。サーも相変わらず「バンコクは、よく分からない」とのこと。とりあえずママのバーへ行こうということになった。「タクシーで行くか?」と私が聞くと、「バスで良い」とのことなので、そのままバス停に向かう。彼女はバス停横の屋台でスイカを買っており、それを食べさせてくれる。やってきた赤バスに乗り込むが、スクンビットは大渋滞で、バスが停車すると蒸し風呂のように暑い・・・。汗だくになりながら、ようやくバスから降りて、歩道橋を渡り、目的のバーへ行ってみる。しかしシャッターが閉まっており、まだOPENしていなかった。他のバービアは、ほとんど開いていたのだが・・・。
とりあえずクリントン横にできた新しいプールバー「BIG BOY」へ入る。飲み物と、彼女はサンドイッチを頼んでいたが、あまり美味しくはない・・・。サーはビリヤードをやるようで、ホワイトボードに自分の名前を書いている。ここのルールは1ゲーム20Bで、勝負に負けた方が支払うらしい。彼女は以外と上手く、ファランの兄ちゃんに2連勝したのを入れて、4勝2敗だった。「ランも一緒にやろう」と言われるが、ルール(通常のナインボールとは違う)がイマイチ分からなかったので、見るだけにしておく。

夕方5時頃になり、もう一度ママのバーに行ってみると、今度はOPENしていた。しかし、ママはまだ来ていないらしい。バーには、今朝荷物を預けに行った時にいた女性がいたので、ドリンクを奢り、少し話をする。ちなみにクリントンのGOGOは4時OPENのようだ。
ここで指差し会話帳と身振り手振りでいろんな話をする。例えば、彼女の家族のこと、バンコクでの生活のこと、彼女がチェンマイに帰ることなどについて・・・。私は、持っているバンコク発券のエアチケットを見せて、「12月30日にタイに戻ってくるから、その時はチェンマイで会おう」と言うと、サーも「その時は、いろんな所に連れて行ってあげるし、あと私のママにも会ってね」などと言われる。
彼女の携帯にタニヤのお店から電話が掛かってきたようで、彼女は「今日は仕事を休んで、エアポートに行く」というようなことを言っていた。私が「仕事を休んだら、お店に幾ら罰金を取られるの?」と聞くと「1,000Bだけど、マイペンライよ」と言ってくれる。夜10時には空港に着いていた方が良いので、9時になったら、アパートに荷物を取りに戻ることにした。結局ここで4時間近く過ごした・・・。

徒歩でアパートに戻ると、部屋の中にはママがいた。挨拶をして部屋の中に入れてもらう。間取りは1DK、シャワーとトイレ、大きなエアコンが付いていたが、これは故障中らしく扇風機が回っていた。部屋の中では、ママとその娘(サーの義理のお姉さん?)、なぜかオカマの3人がおめかしをしている最中だった。今日は、これからバーでパーティーがあるらしい。お姉さんには、「私にも日本人のボーイフレンドを紹介して!」と言われる。彼女もなかなかの美人であった。

荷物を整理し出発準備完了。ママにお礼を言い、アパートを後にする。すぐにタクシーを拾い空港へ向かう。プラトゥーナム辺りまで、一般道で行くが、道路は渋滞していて、なかなか前に進まない。彼女に帰りのタクシー代200B、今日のお店の罰金1,000B、そして「これで日本語の勉強をして欲しい」と、あと1,000B渡すが、彼女は全く受け取ろうとしない。でも「お店の罰金だけは、絶対払うから」と言って、彼女の持っている日本語勉強ノートに1,200Bを強引に挟んで渡した。それでも彼女は、まだ不服のようで「本当の恋人だったらお金なんか渡さないわ!」と言っていた。それを聞いて、自分の気持ちの中で抑えていたものが弾けたような気がした。
指差し会話帳の中の「親切でやさしい」(ミーナムジャイ)を指差し、彼女に見せると、頭が真っ白になり涙が溢れてきた。彼女もボロボロと涙を流した。自分が、女性のために涙を流したことなんて、生まれてこの方あっただろうか?こんなに別れがツライと感じたこともなかった。
私は、彼女に「これを12月に再会する時まで持っていて欲しい」と、これまで私と彼女のコミュニケーションの手段であった、ボロボロになった指差し会話帳を渡した。タクシーは高速に入ると一気にスピードを上げ、10時頃には空港に到着した。その時には彼女が手にしている私のハンカチは、グシュグショに濡れていたのだった・・・。

タクシーには高速代を含めて240B渡した。車から荷物を降ろしていると、サーが「私も一緒に降りて良い?」と聞くので、「一緒においで」と言って、2人で空港ターミナル内に入った。ターミナル1の大韓航空カウンターへ行き、チケットを差し出すと、係の男の人が「ソウル−千歳間の予約がありません」などと言っている。発券しているんだから、そんな訳ないだろうと思っていると、別の女性係員がやってきて、「福岡経由のJALに振り替えますから」ということだった。千歳への到着時間もほとんど変わらず、マイルも全額加算されるとのことで、それで納得する。
男性職員に荷物を持ってもらいJALのカウンターで手続きをする。とりあえずバンコク−福岡間のチケットは無事発券されたが、福岡−札幌間は国内線カウンターで再度手続きが必要とのことだった。

ようやく搭乗手続きを終え、出国税500Bのチケットを買い、イミグレの入口までやってくる。ここで、本当にサーと別れなければならない。互いに手を取り合い、寄り添うだけで、何も言葉が出てこない。本当に別れがツライ・・・。
彼女が「もう行って」と言うので、最後に「サー、一緒にいられて楽しかったよ」というと彼女の目から涙が溢れ出した。それを見ると、こちらも・・・。意を決してイミグレの入口に向かい、振り返ると、彼女が指差し会話帳を胸に抱き、小さく手を振っていた。私も手を振り再度イミグレに向かい、最後にもう一度振り返った時には、そこに彼女の姿は無かった・・・。


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