キサナの冒険 8
15
両腕と両足を失い、身動きがとれなくなり・・・・その身体で、キサナは、オークに抱きかかえられていた。
オークはキサナの身体をまるで人形のように扱い、腰の上でその身体を上下させた。
キサナは、もう、反応しない。
目に正気の色もなく、ただ、口から悲鳴のような嗚咽をこぼすだけだ。
オークたちがそのワレメを犯し尽くすと、キサナは地面に放り出された。
秘部からどくどくと精液が逆流し、地面を汚している。腿筋が失われた分だけ膣が広がり、それだけ大量の精液を受け入れるようになったのかもしれない。
全身を精液で光らせた、一つの人形。
そんな風体で、キサナは地面に横たわっていた。
「壊れちゃいましたか。面白くない」
バディオスは、ただ空をじっとみつめるキサナを見て、そう、つぶやいた。
さすがに、もうキサナに正気は残っていなかった。いや、心が残っていない、という方が正しいか。
すでに、性欲もふくめ、心はすべて打ち砕かれ、ただ呆然と虚空を見つめるのみ。
廃人といっていい状態であろうか。
「仕方がない」
バディオスがまた、呪文を唱え始めた。
片手がキサナの腹部にあてられている。
・・・・人の精神に作用し、心を落ち着かせる魔法だ。
普通の状態なら、狂乱状態にある人やあせっている人に対する、助けになる魔法。
それが、この状態で使われた。
キサナの意識が、急速に取り戻される。
どくん。・・・・どくん。
キサナは、自分の心臓の音を聞いていた。
もう、何もわからない。
何かが自分にふれている。でも、それもわからない。
目は、見えている。でも、見えているものがなにかわからない。
そんな状態だった。
「あ・・・・うう・・・・?」
戻ってきた感覚は、まず、性欲。
なによりもはやく、その回路がつながった。
どくん。どくん。
心臓が高鳴っている。
誰も、自分に触れていない。秘部に、何も入っていない。
そのことが、異常事態であるように思えた。
なぜ、私は、犯されていないんだろう?
欲しいのに。もっと、いれて欲しいのに?
激しい欲求に、キサナの腰が動いた。
腿から先がない脚が、開いたり閉じたりする。そのたびにごぷごぷと秘部が音をたてた。
のたうつように上半身がよじられる。
おっぱいがたぷんたぷんとゆれ、乳首が円を描いた。
「キサナちゃん?」
「ア・・・あ・・・」
バディオスと目があった。
それで・・・・そこでようやく、恥じらいとか、つつしみとか。
そういった感覚が戻ってきた。
今・・・自分は、何をした?
そういう意識が、心をさいなむ。
犯されたいとねだった自分に対して、ショックを受ける。
腕も、脚もない。
その事実が、恐怖をかりたて、キサナの身をすくませる。
失禁した。
脚を広げたまま・・・閉じられないため、放物線を描いて尿が飛んだ。
しょおおおお。
情けない音が、辺りに響いた。
「あ・・・・ふううん・・・・」
(き、気持ちいい・・・・)
キサナは、ぼうっとした頭で、快感にむせびないた。
おしっこをすることが。
おしっこを、見られることが。
楽しい。気持ちいい。
尿道口から飛び出す液体が、微妙な刺激をもたらす。気持ちいい。
まわりの皆が、自分を見ている。おしっこするところを見ている。恥ずかしいところを、見てくれてる。
「ああ・・・・もっと・・・・」
(見て・・・・恥ずかしいところ・・・見て・・・・!)
どうして、そういう心理になったのか、もう、キサナにはわからなかった。
ただ、視線が気持ちよくて・・・・キサナは、快楽に逃げ込んだ。
「見て・・・・」
結局、キサナの精神は直らなかった。
正気に戻ったはずの意識は、すぐに淫欲に飲み込まれ、話すようになるのが精一杯だった。
バディオスはふう、と一息ついた。
これで、自分の仕事も、終わったも同然だ。
「見られたい?」
「うん・・・・見て・・・・」
「なら、もっと人の多くいるところへ行こうか」
「・・・行く・・・・・」
(・・・・よし)
両手両足を失い、淫欲におぼれ、性欲の虜となり、みじめに男を欲しがる。
そういう、肉人形が、目の前に転がっていた。
バディオスはキサナを抱き上げ、再び魔法を唱え始めた。
あとは、彼女を人の噂になるようにするだけだ。
名の聞こえた勇者、女勇者キサナの末路を人々の噂にするのだ。
そうすれば・・・・これだけのメにあうと知れば、どこの女性が勇者として立つというのだろう?
魔軍をおびやかす、女勇者はもはや、出現しえない。
バディオスは、ほくそえんだ。
そして、魔法が発動し・・・・彼と、キサナはその場から姿を消した。
エピローグ
季節はめぐった。
春が終わり、夏がきた。
人々は、まだ平和に暮らしている。
ウィッド=ロム=ノーゼリアは未だノーゼリアの領主であり、人々から慕われる存在であった。
勇者キサナの名は、もはや人々の口に上ることはない。
ジャスフィニアに、ある日、一つの見世物小屋が出来た。
旅芸人の一座が運営しているらしいその小屋の目玉は、腕と足のない少女だったという。
少女は、正気を失った様相だったが、それでもなお気品にあふれ・・・・男たちの欲望を強く刺激したという。
裏で春をひさぐことが通例であった見世物小屋では、その四肢を失った少女にも客をとらせ、ずいぶんな数の男性が相伴に預かった。
その少女の性戯は・・・・腕も脚もないわりに・・・・娼婦顔負けのテクニックだった、という噂も伝わっている。
少女は淫蕩な笑顔を浮かべ男にせまり、その精液をひたすら絞り尽くしたという。
見世物小屋は盛況で、人々の噂に上った。
まだ年若い、あの不具の美女は何者なのか?
噂の中で、その正体はまことしやかに語られた。
亡国の姫だとか。
森にすむ精霊の娘を捕らえたものだとか。
サキュバスの化身であるとか。
その噂の中に、彼女が勇者キサナである・・・・というものも、いずれのころからか、加わった。
真実は誰も知らない。
だが、なぜか・・・・かつての勇者キサナを知るものは、その見世物小屋を訪れず、噂の真偽が確かめられることはなかった。
そして・・・・・半月ほどが経って。
少女の腹部は除々に膨らみ始めた。
乳房が大きくなり、腹はカエルのように膨らんだ。
客の子を身篭ったかとも思われたが、その妊娠風景は異常だった。
あっという間に腹部は膨れ上がり、臨月をむかえた。腹が膨らみ始めてから、わずか
2ヶ月。
人間の子供ではありえなかった。
旅芸人の一座は、彼女の出産をショーにした。
少女は、はっきり愉悦の表情をうかべ、全身を人々の前にさらしながら・・・・彼女は、化け物を産み落とした。
その出産シーンは壮絶で、なおエロティックで・・・・まるで正気をとりもどしたような少女の叫びが、男の欲望をさらにあおったといわれている。
少女の夜を買う客は、そのショーを境に急増した。
毎晩のように男に抱かれ、眠る間もなく客をとり、昼間は人々の前でその身体をさらす。
少女は出産からやつれ、凄惨な色気をかもしだすようになった。
彼女がそなえていた気品は、ついに消え失せた。
さらに時が流れ、見世物小屋はつぶされた。
国家の圧力がかかったといわれている。
少女は、国に買い上げられたという。
ある大臣の家に飼われているとか、王城の庭で公衆便所になっているとか・・・・。
そういう、噂ばかりが流れた。
少女の伝説は、そこで途絶えた。
女勇者キサナのサーガの最終章には、公に語られない一話が挿入された。
だが、英雄を求める人々の声によって、その章は期待されたほど広がらず・・・・だが、女性の冒険者の数はゼロに近くなるまで減った。
・・・・民衆は、事実を知っていたのかもしれない。
人と魔の間で大規模な戦争が起きる、そのわずかに昔の物語である。
キサナの冒険 完