「…なんとか、生き残ったか…」

眼を醒ますと布団の中だった。身体には包帯が巻き付けられている

何処か不器用な代物だ、銀之助ではないだろう…あの女達のどちらかの手際だろうか

ひどい苦痛感…痛みと、薬の禁断症状に耐えながら…ルミナは自分の身体を認識し始める

…古武道なんてものをやってるせいか、ルミナは少なからず気という物の概念を理解している

それをもって、自分の身体を精密に理解し

「……」

禁断症状と苦痛に耐える調度いい玩具を手に入れる。座禅を組むルミナは深く息を吸い…吐き

ゆっくりと気を溜め始める

…風が感じられる、室内だというのに…

「なるほど…」

信じがたくはあるが、これが能力と言うことなのだろう

身に宿った超常の力に戸惑いながら、ルミナは辺りの気配を探り

…近付く気配に安堵すると、そのまま枕に倒れ込んだ

「あいつ等は?」

「客間で寝かせて置いたよ。布団は予備のを貸したけど…良いよね?」

銀之助の配慮に感謝する…問題ないだろう、加えて美少女を家からただで返すなどと言う愚行を行わなかったことにも感謝する

その中で、ルミナは考え込み

「ルミナの考えていることはだいたい分かるけど…」

銀之助が声をかけてくる…笑みを向けるルミナに、苦笑を浮かべ

「とりあえずチェルシーさん、生活費とかはどうするつもりなのかな」

…ルミナの口が確かに吊り上がった

「生活費…」

チェルシーの頭がどんどんと垂れ下がる

どうやら地下でも流通はあったようだ。地上同様に円を用いていたようだが…

「…何で財布が…」

現金にして数十万円はあったはずの財布はいつの間にか姿を消していた

それを収めていたポケットには焼け焦げの痕…

「…赤のヤツ…」

財政的にまで自分達を苦しめる昔馴染みに怒りを覚えながら。チェルシーは頭を悩ませ

…ライターをポケットに仕舞いながらルミナは自分の布団へと戻る

「さて…履歴を偽造するようなら密告するだけだし、逃げてきたんなら口座も使えないだろうし…どれくらいで泣きついてくるかな」

少なくとも、ルリとか言う子に労働は無理だろう…となればチェルシーしかないわけだが

「…犯罪に手を染める前には、救いの手をやるけどな」

家賃や食費。慰謝料の話題をうまく振れるよう考えながら…ルミナは笑みを浮かべた

「っ何であのガキは…こんな所ばかりにつてがあるのよ」

ぶつぶつと愚痴を言っても始まらない、日当で確実な額が稼げて過去を問わない職業…結果としてチェルシーが求めたのがそれで、そのおかげで…日本の都心部における家賃と生活費を稼げているのだから…

まぁ……文句を言う筋合いではないのだが…

「お姉ちゃん、こっちこっちぃ」

愛想笑いを浮かべながら、下卑た中年男性の横に座る。尻を撫でてくる手に殴りかかりたくなる衝動を抑えながら

…チェルシーは夜の繁華街の新たな華となり

「大変そうだねぇ…」

ルリはルミナと共にそれを眺めている

お金を稼げ、且つルリを側に置いておける職…ルミナは叔父の経営している店と言うことでタッチ禁止のこの店を紹介し。奥まった一室にルリのいられる空間を用意した

ここならば、店のボディガードも居るし。騒ぎが起こればすぐに駆けつけられるという算段だ。ルリの安全と生活のために、チェルシーは屈辱に耐え

「………」

勧められた酒を仕方なしに口にするチェルシーにルミナが笑う

…この店。当たり前の話だがルミナの経営だ。働いている女達は勿論、男達も…果ては客の大半までルミナの息がかかっている

そこで働かされるチェルシーはルミナの用意した酒を口にし

「………さて、そろそろチェルシーが帰ってくるから。一緒に帰ろうか」

「あ、はい」

チェルシーを伴ってルミナの家へ向かう。酔っぱらいはルリの傍にいるルミナをきつい眼で睨んでくるが。チェルシーが働いてる間ルリを見ていられるのは彼くらいしかなく

「私の見てない間にルリ様に変なことしてないでしょうね」

「さすがに命は欲しいからしてないっての」

…酒気を帯びたチェルシーを伴い。彼等は家へ帰る

…ゆっくりと、ゆっくりと…

「じゃぁ、おやすみ」

「はい、すいませんでしたルミナさん」

背負っていたチェルシーを布団に寝かしつける

帰宅途中でばったりと倒れてしまったのだ。まぁ…割と効果の高い薬も酒に混ぜておいたから仕方ないだろうが

「さてと…」

ルリ達と別れ、自室に戻ったルミナは大きなスクリーンの電源を付ける

そこには。並べた布団で眠りに入るルリとチェルシーが映し出され

「一度目の投薬で何処まで堕ちるかな?」

チェルシーの姿にじっと見入る

寝静まる……ルミナが言うところの清楚な美少女……ルリの寝顔を眺めながら、ルミナは時を待ち

「んっ…」

高感度マイクが艶のある声を拾う、寝静まったはずの寝室で…何かが蠢き

「お…感じたかな」

ルリのすぐ隣で眠るチェルシー…それが、寝苦しいかのように布団をはだけてくねる

その姿は。薄暗く見づらいことが悔やまれるほど官能的で

汗をびっしょりと浮かべ、眠るチェルシー…慣れぬ仕事と、弱った身体、緊張で疲労はピークに達し

布団に潜り込んですぐに眠りについた彼女は…浅い眠りの中で淫らな夢に襲われる

敵ばかりがいた頃。敗れ…犯されそうになったとき。助けられた…けれど、夢の中では助けはなく…多くの男達に身体を汚され。荒々しく犯され

或いは…愛した男に優しく抱かれ…或いは…ルリと淫らに絡み合う…夢

経験など無い、けれど…夢の中で自分は淫らによがり

それが外でも影響する…寝間着の上から股間を押さえるチェルシーは、ぐりぐりと股間を押さえつけながら、荒い息をつき

今頃は汗でない汁で股間はべとべとだろう

苦悩し、悶え、喘ぎながら…チェルシーの長い夜は始まった…

がばぁっと、一気に起きる

まだ早朝、気怠く…疲れもあんまり取れてはいない…頭も痛く…身体には汗がびっしょりと浮かび

慌てて身体を見る…着衣の乱れはない…その代わり、内股はぐっしょりと…それこそ、漏らしたかのように濡れ

傍らのルリの姿に安堵する…

夢を見ていた…荒廃していた地下世界で男達に組み敷かれる…惹かれた男に抱かれる…ルリと絡み合う…店の男達に抱かれる

そんな夢を見て…

「…お酒…飲み過ぎちゃったかな」

淫夢の理由も分からぬまま戸惑うチェルシー…

夕方からの勤務に向けて、下着を着替えると再び眠りに着く

…傍らで、ルリが薄目でそれを…心配そうにしていた
 
 
 

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