「カタリナ・・」
情報収集のために街中を駆け回る女騎士にトーマスが話しかける
それに、悲壮な眼を向けながら
「・・・やはり・・手がかりは見つからないか」
無言で首を振るカタリナ・・マスカレードを探す彼女は情報を求めて街中をかけずり回るが、求める情報は得られず
それに、手を差し伸べてやる
裏の世界なら彼の方が得意だ・・・マスカレードに関する情報の幾つかをトーマスは仕入れ
「・・・聖王遺物の収拾に非常に興味を持っている人物が居るという情報を聞いたのだが」
トーマスのその言葉に喜びを露わにするカタリナ・・・マスカレードは聖王遺物だ、その人物が何らかの関わりを持っているかも知れず
「ただ・・その人物が誰かまでは教えてくれなかった、知っていることは確実だが」
「それは誰?」
問いかける・・様々な事業を手がけ、商人の中でも一目置かれる男だ
その情報源も尋常ではないと思っているのだろう・・・当然、彼は既にその人物が誰かも特定しているが
「・・うちの接待相手だ・・世間話のように話してくれたが、それが誰かまでは教えてくれなかった、本来なら会うのも難しい人だから、聞くのもかなり難しいと思う」
・・・トーマスですら会うのが難しいというのだ、国を出たカタリナが会って話すことなど・・
「・・一応、今晩も接待の予定だから聞いてはみるが・・・」
難しいのだろう・・そして、それを逃せばマスカレードの情報も消え
「・・・その店は?」
自分で情報収集を決める、トーマスに迷惑さえかけないためには自分が行くのが一番で
「・・・・カタリナなら・・雇われることも出来るかも知れないが・・・・・・とんでもない店だぞ?」
「それでも・・手がかりがそれしかないのなら」
しばし沈黙し、メモに地図を書き記すとカタリナに渡す
「店には話を通しておく・・一日でも、そこで働けるかどうかは覚悟次第だ」
マスカレードの情報は未だ手に入らない。カタリナには僅かな可能性でも逃すわけにはいかず
・・・渡されたのは裏路地の小さな店の地図だ、接待で使うにはあまりに閑散としているだろう場所
カタリナは、地図を片手にその路地へ向かい
・・・トーマスは笑みを浮かべてその背を見送った
娼婦のたむろっている、治安の著しく悪い路地を歩む。ここではカタリナの小綺麗な恰好の方が珍しい
カタリナにすら、買わないかと声をかけてくる娼婦に眼を逸らし
「・・・」
怪しい風体の2人が座り込む扉にを前にする。手を差し出してくる男等に・・迷った後で地図を手渡す、書かれているのは地図だけではなくトーマスの名もある
それに、頷くと奥に通され
「・・・」
冷や汗が流れる・・こんな場所の店だ。まともな店だとは思えず
闇の中で、下へ下る階段だけが目に入る・・・どうやら地下があるらしい。足下に注意しながらカタリナはゆっくりと、闇へ落ちていき
「・・・」
絶句する。酒の臭いが充満するそこ・・・酒と、汗と・・性臭が蟠るそこで
「あぁっ・・んぁぁあっ」
女が喘ぎ
「ほら・・腰を振るんだ」
男が女を押し倒し
「んぁっ・・ひっ」
ステージで女が獣に犯されている
足が竦む・・・女の痴態を売り物にした酒場。非合法な行為が公然とまかり通るここは・・確かに身なりのいい。ごてごてと宝石で飾り立てた男達が多く
「カタリナ・・様でしょうか?」
その中で、タキシードを纏った老紳士が近付く
一瞬気配を感じなかったことに愕然としながら・・・その方へ向き
「トーマス様より一日でも働けないかと伺っております・・が、ここの仕事は全てこのような物。帰られるなら今ですが・・・如何なさりますか?」
その言葉に、カタリナはしばらく迷いながら・・・老紳士と共に奥へ消えた
「処女・・でしたね?」
「・・・・ええ・・・」
確認されたのはそれだけ、後は武器を奪われただけで・・何の面接もなく、話は終わり
それでも処女だと答えるのにしばしの躊躇は必要としたが、何とか乗り消え
「トーマス様達が何時いらっしゃるかは分かりませんが、その時にはそちらへ向かえるようにしてさしあげましょう、それまでは・・・ステージで踊っていただきます」
身を震わせるが、嫌だと言えばこの店から出されるのだ、カタリナは何も言えず
・・・獣に犯されていた女を思い出す・・・
そのカタリナの表情に老紳士は笑うと
「ですが、純潔だけはお守りしますよ・・・・ステージ以外では何時抱かれてもおかしくはないですから」
言いながら、カタリナを奈落へ導く老紳士・・そのまま、ステージに向かって床がせり上がっていく
何の説明もないまま、いきなりステージに上げられるようで
「抵抗も、身を委ねることも自由です・・では、また後ほど」
カタリナは・・舞台へとその姿を現した
鉄格子で囲まれた舞台、逃げ場はない
・・そして、辺りを見渡す・・・自分を鑑賞する男達の眼、多くの視線がカタリナの肢体に絡みつき
その多くが、女を侍らせ・・・舐めさせるか犯すかをしている
彼等にとっては、女は道具のような物で・・・
「さて、本日のメインイベントです・・生娘の女騎士の饗宴をお楽しみください」
・・どんな痴態を演じることになるか分からない。けれど・・耐えれば、マスカレードへ一歩近付くはずで
「・・・え・・・」
入ってくる・・先程、舞台では獣に犯される女と・・その横では、2人の女が全裸で絡み合っていた
そして老紳士は純潔は守ると言い
だから・・・それに耐えるために覚悟はしてきた。女同士で絡み合うという痴態も・・薄暗い世界と、男に抱かれるわけではないと言う逃避で乗り越えた
けれど・・・入ってきたのは男の形をし
「な・・何なの?こいつ・・」
「魔力によって産まれた特殊な魔物、巨大な原生生物ジェル・・・その中へ数時間男を溶け込ませ。取り出したモノです」
溶解人間・・ジェルによって溶かされ。身体をジェルと同じ・・溶け。形を変える肉塊へ変えたモンスター・・・
「それから溶解機能を取り払い。特殊な毒を用いました・・処女を破ることは出来ませんが・・・その愛撫は、娼婦ですら悲鳴をあげるもの」
くすくすと笑い
・・・余興。処女を奪うことなく最も恐怖と悦楽を与える・・・・特殊な相手
「では・・試していただきましょう」
・・・素手での魔物との戦闘が始まった