「・・・・最後だ」

言葉通り、最後の首が宙に舞う

・・・彼が育った村の、それが最後の生き残り、多くの死体の中で、それだけが首がない

「終わったかい?パーン」

「・・・・ああ」

それをぼんやり眺めていた親友が聞いてくる

・・・彼は、握っていた錆びた鉄剣を放ると、ゴブリンの死体を蹴飛ばし

「まったく・・やりすぎですよ、少しはゴブリンの爪で殺しておかないと」

・・・歳のいった男が溜息を付く

その腕にはねじくれた杖

「我等が神ファラリスの加護よあれ」

そして・・おかっぱ頭の親友、エトが自らが信じる神に祈りを捧げている

・・・けれど、彼が握るのはファリスの聖印・・ファリスの神官でありながらファラリスの司祭の力を持つ彼、相反する神を信じながら・・両方の神の加護を受ける

それは彼が自由神としてのファリスを敬虔に信じてもいるからだ・・・彼は、自らの正義のために生きている・・たとえそれが歪んでいても

「やれやれ・・若いと血が上りすぎる」

最後にドワーフが・・拝借したのか、酒瓶を傾けながら呟き

・・・パーンが産まれ育った村は血に染まった・・その全ての金品は今彼等の懐にあり・・ゴブリンの死骸を辺りに散らかすと、彼等は村に火を点け

「もうここに用はない・・次へ行こう」

首を巡らせる・・・それに、迷いや後ろめたさは微塵も感じられず

・・・彼等は自らが産まれ育った村を血に帰すと、そのまま脚をアランへと向けると、各々の欲望に向け、歩き出した
 
 
 
 

呪われた島、ロードス・・邪神が倒れたその島は、大陸からそう呼ばれ

今もまだ、魔神戦争と呼ばれる魔神の爪痕はまざまざと残されている

けれど、6英雄と呼ばれる勇者達はかつて多くの魔神の首を上げ、百の勇者の伝説はロードスに知らぬ者はない

それ故に・・ここでも多くの冒険者が闊歩し

志を胸に、大きな街へと繰り出すことになる・・この四人も、分類するならばそんな冒険者志願の輩に含まれるのだろうが

「私は賢者の学院の跡地へ行って来ますよ・・バグナードが暴れたのなら、もう何も残ってないでしょうが」

・・・年嵩の言った、ねじくれた杖を持つ男が呟く

・・・彼が出した名は、本来ならば出すことすら憚られるはずの物

ファリスの・・最も厳格で正しき神の聖印をかけた青年は、けれど・・微かに歪み

ドワーフは黒ずんだ刃を辺りにぎらつかせ・・最も前に立つ青年は、あまりに真っ直ぐなその視線を辺りに走らせ・・・・

「・・ベルドが暴れようと言うのなら・・手伝わないわけにはいかないだろう」

嘆息し、空を見上げる・・・

また・・この呪われた島は血に埋もれることになる

それは・・避けられない運命だろう・・ここに、邪神の加護と、灰色の魔女が居る限り

・・・息を付く、騎士志願のような身なりをした青年、パーンから魔術士風の男、スレインが離れていく・・それを見送った後で、3人はアランの街を見て回ると

「・・幸せな国だな」

「本当に」

「危機管理という物がなっとらん」

・・・まだ誰も知らない、もうすぐロードスが戦乱に巻き込まれようと言うことを

だからこそ、彼等の眼にはこの街はあまりに脆く見える・・おそらく、彼等だけですら滅ぼすことが出来るだろう

・・けれど、裏を駆け回るべき彼等はこんな所で余計なことをするわけにもいかず

・・・それなんおに、喧噪を聞くとすぐに首を向けるパーン

「喧嘩?」

「・・あれは女じゃないか?」

喧噪に、耳を向け、それを見る

・・・騒ぎを起こすのは御法度だろうが・・

「・・マーモの剣技は使うなよ」

「わかってる」

走り出すパーンを前に、ドワーフ、ギムはエトと共にパーンの背を追う、パーンの言うとおり、少し先では女がごろつきを相手に立ち回りを演じているが・・

「あれは・・エルフか」

種族的に気が合わないのか、嫌そうな顔をするギムの前で、パーンはいきなり飛び出すと青臭いセリフと共にごろつき達を突き倒し

「へぇ・・可愛い子ですね」

金のストレートを流し、明らかな大きな耳を晒す女は・・美しい容姿に怪訝そうな表情を浮かべ

細身の肢体を革鎧に包んでいる・・かなりの上玉・・いや、滅多にお目にかかれない極上の品だろう

エルフは元々整った容姿を持つ者が多いが、ここまで整ったエルフは珍しい、売ればかなりの値が付くだろうが・・

・・パーンはエルフと一緒にこっちに歩いてくる、持ち前の・・見た目の純朴さで信用させたらしい、ギムに多少嫌そうな顔は見せたが

・・ドワーフとエルフの仲の悪さは有名だ、仕方ないことだろう

彼等はそのまま、エルフ・・ディードと言う名らしいが、彼女を連れると宿屋へと身を翻し・・・

「・・ああ言うのは得意ですね」

「慣れた物だわな」

ディードとパーンは2人で飲んでいる、が・・パーンはもうへべれけに見える、顔を真っ赤にし、ふらふらとろれつの回らない舌でディードをペースに巻き込み・・

「ベルドと飲み比べが出来るくせに何をしとるんだか」

「騒ぎを起こすわけにはいきません・・人気のないところに誘い出そうとしているんでしょう」

・・・彼等がたびたび出す名・・けして、表では出すことの許されないそれらの名

暗黒の島マーモの王・・魔神に心奪われし皇帝ベルド・・その名の悪し様は、あまりに有名で

・・・本来厳格であるはずにもかかわらず、罪なき村人を惨殺するドワーフ

・・・光の至高神の聖印を掲げながら自由なる暗黒神を信ずる神官

・・・聖なる故に魔術を使うことを許されながら、バグナードと志を共にする魔術師

・・・そして、かつて暗黒騎士団においてアシュラムに並ぶと称されながら、復讐のために産まれ故郷ザクソンへと舞い戻った、聖騎士団の鎧を纏う暗黒騎士

・・・彼等は、何を求めて生きるのか・・

結局、ディードと共に旅をすることを約束させたパーンは、二日酔い(偽装)の頭を抱えながら・・5人で、今後の予定を話し合い・・・

「・・・誰か知り合いか?」

「いいえ・・知りませんが」

「マーモの者ではないね」

・・・ディードを余所にぼそぼそ言い合う4人・・その背に、盗賊が近付き・・・・・・
 
 
 
 

彼等は旅出た

けして戻ることのない旅へ

・・・ロードスの覇権を、その手にするために
 
 
 
 

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・・・飽田は反応が少ないとつくづく更新が遅れますので
ちなみに、レスはとことん遅いです
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