それを確かに視界の端に捉えたグローは…ルイセの存在に困りながらとりあえず話しかけでもしようと足を踏み出し
…そのカレンが突然盗賊に襲われる様に、慌ててそれらを撃退する
以前にも見た顔だ。グローがカレンを犯している間カレンを捜していた男達で
「毒だ」
叩きのめした男達には目もくれず止血をするグロー。カレンを抱き上げるとそのまま街に向かって走り出す
(フラグが立った!)
…さすがに叫びはしないが、何らかの形でカレンと接触はしようと思っていたためこの状況はむしろ喜ばしいようだ
毒に伏したカレンを抱きかかえたまま周囲の街の人々にカレンの顔を見せ
「街の入り口の家の子だよ、ゼノスさんの妹さんだ」
それさえ聞けば後は走り出す。ルイセさえ居なければ聞かぬまま走っても良かったのだが。初対面としては一応こういった儀式を欠かすわけにはいかず
毒に冒され意識のないカレンをゼノスの元へ運び込む、そのまま…手持ちの薬で何とか毒を中和し、容態を緩和させると
「また、薬は持ってこよう…この子の身の回りの世話は頑張ってくれ」
ゼノスにカレンの世話を任せると背を向ける…薬はかなり高価な物で。多少常習性もある、カレンを自分色に染めるにはその薬にしっかりと落ちてからの方が良く
…街を後にするとグロー達は一路遺跡へと足を運んだ
そこで出会った男、アリオストと共に魔法学院へ戻ったグロー達は飛行装置を持って西の岬へ向かった
フェザリアンの島へ最も近い場所で用いた飛行装置は、途中でかなり危なくもなったが無事彼等をフェザリアンの里へと送り届け
…
「優れている点ね…」
魔法学院の机に座り込みながら悩む3人。アリオストとルイセを傍らに考え込む
フェザリアン達がルイセに協力することと引き替えに出した条件が人が優れている点を出せと言うもの
要はフェザリアンより人が優れている点を見つければいいのだが
…彼等を超える点を探し求めながら書籍を調べる3人……やがて、フェザリアンに関する書籍を著した学者を発見し…
その学者が暮らすというコムスプリングスへと向かうことにした
「で…」
色々と厄介な手間をかけなければいけないようだ
現在、普通の状態ではコムスプリングスへ行けないようだ。幸い、グランシルでの闘技大会の優勝商品はコムスプリングスへの旅行券
グランシルの闘技大会へ参加したグローは危なげなく勝ち進み
…決勝で相対したゼノスにも申し訳ないが勝たせて貰った…ゼノスは、調子が悪かったようで特に苦労はなく
…懐かしい顔と再会した
「…お前か」
どうやら覚えていたようだ。剣を届けたときに顔を会わせただけなのだが…
もっとも、グローの方はその後しっかりと見る機会に恵まれた。処女を奪えなかったことが残念な女騎士
それが男装のままで、グロー達の前に立ちはだかる
戦いは簡単な物だった。雑魚ばかりだったし…唯一の強敵のゼノスは勝手に調子を崩してくれた
グロー達の快進撃を阻む者は何も無く
…コムスプリングスへの道を確実にした後で現れたジュリアンは最大の壁としてグロー達の前へ立ちふさがる
勝つことは不可能ではない、けれど。それはグローの実力の全てをさらけ出してしまうことになる…
悩むグローは、仕方なく敗北を選択し
…コムスプリングスへの道程は何の問題もなく過ぎ去っていった、敢えて言うならばアリオストという邪魔者とミーシャという余分な物はあったが…四人での道程に余計な騒動を起こすわけにも行かず
ルイセとの間にも何も起こることなく、過ぎ去っていく…
そして、コムスプリングスで彼等はフェザリアンに関する情報を得
…再びフェザリアンの里へ戻った彼等に好機は訪れた
「浚われた?」
…あの女王が姿を見せぬ…話を聞けば、誘拐されたという
そして、フェザリアン達の決定は…女王を見捨てること
種族全体の安全のため、女王を見捨てることを決め
「…俺が1人で行く」
グローはそう、仲間達へ告げる
人間の優位性を立証するために、情に流されることを利とするために
「フェザリアンの女王を助けてみせる…だから、信じて待っていてくれ」
…女に、男の優れている点を教えるために
「信じてくれ」
…グローは微かな笑みを浮かべた
障害自体は些細なモノだった、と言うより拍子抜けしたほどだ
行く手を阻んだ魔物を尽く討ち滅ぼし。女王の前に立つグロー。羽根を生やした美しい女王は薄暗い中でも綺麗に輝き
「…助けに来たのかや?」
「ええ、あなたに人の優れたところを教えるために」
「…他人のために犠牲を惜しまぬ心…確かに我々にはない心やも知れぬ」
そう言えば、ルイセ達はそんなことを言っていた。まぁ…どうでも良いことだが
「いえ、まだあるのですよ…人の優れたところは、これからじっくりと教えてあげます」
言い、グローは女王の腕を掴むとその両腕を縛り上げた