バシュッ
「あ・・」
絶望に満ちた呟きが漏れる
好機を待って撃ち込んだペイント弾は全てかざされた巨木に阻まれ
・・・・突きつけられた銃口からペイント弾が浴びせられた、一瞬で彼女の駆る機体はペイントに染まり
「私の勝ちよ・・テッサ」
メリッサ・マオとの模擬戦は、テッサの惨敗という形で幕を閉じたのだった
「・・・」
無念そうに、マオを見上げるテッサ・・些細な諍いから始まったこの戦いはテッサが負ければ裸で基地を一週という非情な罰を用意していた
無論、口約束に過ぎないのだから無視することは簡単だが
「負けは・・負けです」
ぐっと、唇を噛みしめながら身に纏う薄手のジャージに手を伸ばし
「だあぁあ、落ち着けテッサ」
「そうです大差殿、そんな真似はやめてください」
「離してください、ウェーバーさん、相良さん・・私は負けたんです」
困ったような顔をしているマオの前で、部下と取っ組み合いをしている
無論、実経験が違うのだからすぐにテッサは取り押さえられたが・・彼女の頑固さはマオも承知している、おそらくは本気で裸で基地を一蹴する気なのだろう
戦う前まではそれも面白いなどと考えていたが、戦闘の昂揚も覚め・・いざその事態になると
・・・妹のように可愛がってるテッサのそんな姿はやはり見たくはない
かといって、今更やめようなどと言っても聞きはしないだろう、この頑固娘は・・マオはしばし黙考し
「大佐がそのようなことをすれば隊の士気に関わります」
・・・宗介の尻馬に乗ることにした
「確かにね、こんな無様な小娘に従おうなんて気はなくなるでしょうね」
・・・クルツに目配せする・・・実際、そんなテッサを見れば逆に志気は上がるだろう、士気が下がるなどと考えるのは宗介くらいだ・・・ただ、クルツはいい勘をしている
「確かに・・それはなぁ」
しごく残念そうにだがマオに同調する、まぁ・・雌豹の眼光で睨み、腋の下から銃を押しつけるマオに逆らう気はないのだろう
「じゃぁ・・どうしろって言うんです?」
憤慨するテッサにマオは笑う・・意地の悪い笑みで
「もっと恥ずかしいこと・・」
・・・宗介を睨んだ
「う・・動きます・・」
「ひゃいっ」
宗介の声に上擦った声が返り・・震える眼で前を見る
ASの視界から見る世界は。特訓で慣れたとは言え、やはり普段とは違い・・・
くわえて、彼女が最も苦手と言えるバイラテラル角・・・ASのセミ・マスター・スレイヴ機能はSRT要員が実戦で用いるレベル、最初の特訓でテッサが見事に砂浜で跳ね回ったときと同じレベルにしてある
あれから、どれほど進歩したとは言えテッサがそれに合わせて動くのは不可能だろう
当然、動かすのはテッサではなく・・・ガーンズバックはやや、遅々とした足取りではあるが一歩前へ踏み出す
当然、テッサの脚も前へ踏み出す・・・それは、歩くと言うより脚をちょこっと前に出す感覚で
ASでの歩行を一瞬で考え直すだけの経験にはなる
・・・けれど、今の彼女はそれを満足に学べてはいないだろう、砂浜を疾駆するASを操縦しているのは大前提としてエキスパートである宗介であり、テッサはそれを同じ視点から見ているだけなのだから
「んっ・・・ぅっ」
思わず声が漏れる
振動が彼女の身体を小刻みに震わせ、それにあわせるようにASが震える
・・・宗介の舌打ちが聞こえたようで、慌てて身を小さくし
「その・・見えておりませんから、ご安心を」
「は・・・はい」
とは言え、計器類の中心で半裸でいるという行為はテッサには耐えられないものだ
同時に、伝わってくる鼓動と体温も彼女から理性を奪い去り・・・テッサは歩を進める
絡みつく肌がロープに反応して引きつり、背後の影が必要以上に足を出すことを抑制する
・・・・テッサは白い太腿を露わにしたままで、これに臨み
すっ裸ではないが、ショーツとブラだけという恰好で汗だくになりながら罰ゲームに準じている
自分は仕方ないのだ、負けのだから・・申し訳ないのはこの罰ゲームに付き合わされている宗介で・・
「・・・・」
考えるだけで顔が赤くなる、けれどマオが用意したゴールはかなり遠い、この罰ゲームはかなりの間続きそうで・・・
宗介の吐く息がうなじに当たり、膝が砕けそうになる・・汗ばむ身体を引きつらせながら、テッサは一歩一歩踏みだし
「・・・」
当然、宗介もかなり切迫した状況にある
眼前にはアッシュブロンドの髪、少し視線を下に向ければ・・白いうなじと小さなそうきゅ・・
「くっ・・・」
慌てて視線を前に向ける、テッサは半裸だ・・視線を下に向けるわけにはいかず
狭いASの操縦席、そこをマオは改造し2人乗れるようにした・・・それはいい、元々小柄な2人だ、大柄な操縦士1人とそれほど変わらない
そして、テッサに動きを教えるためと・・・半裸のテッサと半裸の宗介を縛り付けたのだ、腕と腕、脚と脚、太腿と太腿腰と腰、とにかく全身をベルトで縛り付け密着させ・・・ここへ放り込んだ
筋肉の動きを直に感じるためという名目で・・・
(落ち着け・・・落ち着け」
柔らかい身体が前面に密着しているのだ、宗介にとっては気が気でない
特に危険なのは・・・体格上、テッサは宗介の足の甲の上に立っているのだが・・・小さなお尻が宗介の股間に当たっているのだ。しかもマオはしっかりベルトで固定してくれた
「くぅっ・・・」
さっきから、そこが反応しないように必死でASの操縦法や古典の授業を暗唱している
・・・何処まで保つかは不明だが
とにかく、身体に感じる柔らかな肢体と・・・何よりさっきからこぼれる汗の香りがいかな宗介をも反応させている
密着した肌と肌
テッサが下着姿であるのと同様に、宗介もトランクス一枚きりだ。水着姿だと割り切ってしまえれば楽なのだろうが
「・・・・む・・」
揺れた拍子に視線が下がり、テッサの胸の丘陵が目に止まる・・・その突起の影も、鋭敏な視覚は確かに見取り
・・・そう言った事への興味が薄いとは言え、宗介も男だ・・勝手に反応しようとする股間の自制は困難を極め
(まずい・・この状態は非常にまずい)
・・・地獄のロードは始まったばかりだ