「・・・山火事か・・大したことはなかったようだな」
「いや、規模は大きかったみたいだよ・・湿地帯だから鎮火したんだ」
炭化した木の枝を握りながら呟くデュアン、その目敏さは大した物だ・・この歳で凄腕の暗殺者、技術のみならず強力な魔法も使える
・・・掘り出し物かも知れないが
「なぁ・・お前」
茂みが左右に分かれた、白い影がデュアン目がけて跳びかかり
「ヒュッ」
襲いかかってきた獣をデュアンがナイフで受ける、その牙と真っ向からぶつかり合う刃・・白光が煌めき
「ガフッ」
懐から取り出した小袋をデュアンが獣の口に突っ込んだ、溢れ出した粉を吸い込んだ獣は喉を押さえて喘ぎ周り
「こ・・怖いよぉオルバぁ」
とたんナイフをしまって泣き出すデュアン、オルバはひとまずそれを蹴飛ばし
「・・・もう少し本性を見せるんなら連れてってやるよ」
「それなら問題ないと思うけどね」
顔を蹙めるオルバ、それにデュアンは藪を指さし
「あんた達、クノックに何するの?」
少女が姿を現せる、憔悴しきった様子だが・・ルビー色の赤毛にくりりとした瞳、唇は薄く高貴な雰囲気を持つ・・美少女で
「・・・タッグを組むに当たって問題が少しあるね、いや・・君がそう言ったことに寛容なら構わないけど」
「・・・女癖の悪さだったな・・」
ギルドの長に睨まれたのもそのイロに手を出したからとも言われる。女の標的は犯し抜いてから殺す主義で
「・・・好みは10代の処女だったか?」
「そう、それを無理矢理」
にこにこと無邪気で囁くデュアン、少女は怪訝そうにしているが・・オルバはしばし黙考し
「・・俺も混ぜるんならな」
舌なめずりし、一歩前へ踏みだした
それに、デュランはあからさまに喜びを見せ
「ぐっ」
次の瞬間には少女の口を塞いでいた、顎を鷲掴みにし、脚を払えば・・・少女は地面に叩きつけられ
ナイフが消えた、デュアンの手にあったはずのナイフは次の瞬間には消え去り
「覗きは邪魔だからね」
何処かで何かが落ちる音が聞こえる
地面に叩きつけられた少女に気にする余裕はないだろうが、少女の後を追っていたらしい男が・・・・喉をナイフに貫かれながら死に絶え
「むっ・・んぐぅぅっっ」
デュアンの手の下で小さな唇が動く
赤毛をかき乱しながら、四肢を振り回す少女に・・デュアンの顔に引っ掻き傷が出来
「あの雪豹、もう長くないよ」
少しだけ首を捻り、地面に這い蹲って痙攣する雪豹を見せてやる
・・デュアンが放った粉を吸い込んだ雪豹は藻掻き苦しみ
「んぃう・・・んぐぅぅっっ」
あのペットが大切なのだろう。藻掻く腕に力がこもる・・けれど、一見華奢に見えるデュアンの腕はそれを容易くねじ伏せ
「毒さ・・解毒剤は僕しか知らないし、その材料しか持ってない」
そこまで言うと、手を離す・・杖を握ると少女は雪豹へ駆け寄り
「クノック・・・クノック!」
泡を吹く雪豹にすがりつく・・反応せず、ただ藻掻き苦しむそれにデュアンは苦笑を漏らし
「痺れ薬を飲んだんだ・・野生の動物なら半日くらいはもつよ、半日経ったら・・・」
両手を左右に拡げてぱっと手を開く・・真っ青になった少女はギッとデュアン達を睨み付け
「・・解毒剤をよこしなさいよ」
・・どうやらそれなりの家のご令嬢のようだ、立ち居振る舞いと気位からそれぐらいのことは分かる
そう言ったのを壊すのはデュアンの嗜好の1つだ、喜び勇みながらデュアンはごそごそと懐を漁り
「悪かったよ・・まさか君の友達だとは知らなかったから」
怪訝そうにするオルバを横に、懐から木鉢を取り出す・・それに懐から取り出す木の葉を入れ、混ぜ合わせると
「ええと・・後はどうするんだったかな」
本を取りだし読み始めるデュアン・・オルバには何が書いてあるかさっぱりだ、少なくとも共通語ではなく
「ねぇ、君魔術師だよね・・・これ、何て書いてあるか分かる?」
本のページを開いたままで少女に渡す、泡を吹く雪豹にすがりついていた少女はそのページに眼を通すと・・・どうやら読めるらしい、文字に沿って眼を動かし
「・・・ミガルの毒の解毒法・・・ホアの実、ケヌマの葉、ラダンホアの葉、カーバの葉、ベケスの葉・・・・」
口ごもる少女・・それに
「うん、そこまでは読めるんだ・・普段使ってるから、けどその次の調合材料が分からなくて、あんまり使わないものだと思うんだけど・・・持ってれば、その・・液体だと思うけど、それを実と葉を混ぜているところに垂らせば完成」
・・魔法語で書かれた書物に少女が顔を真っ赤にしている、どうやらよほど良くないモノが書かれているようだが
「・・これを入れないと・・完成しないのね?」
「うん、そう・・そう言えば君、名前は?」
・・何となく分かってきた・・どうせこの本を書いたのはこのあどけない少年だろう、そして。その液体というのは十中八九・・・
「・・アニエスよ・・・・この解毒剤を作るには・・葉をすりつぶしながら・・・」
口ごもる、そこから先を言いたくないと言うように顔を背け・・・雪豹の姿に息を整える
意を決したように
「・・・女の・・その・・・・あのね・・・」
アニエスがどもる様を眺めながら微笑むデュアン、もじもじと恥ずかしそうにしてはいたが、それでも
「・・・女の子の・・おしっこと同じ所から出る・・水を、入れろって・・」
羞恥に顔を赤くしながら呟く、オルバが苦笑する・・言い淀んではいるが、どうせ愛液でも入れろと書いてあったのだろう
たぶん・・薬をすりつぶす手を止めるか、あるいは出た物をすぐに入れなければ効果が無くなるなどとも書かれて
デュアンの性格の悪さに苦笑しながら
「・・・薪か何かでも集めてこよう・・魔物に来られても困るから、それほど遠くには行かないが」
暗に早く済ませろとも告げておく
慌てるアニエスがその意味を正確に理解したかは分からないが
「・・葉は全部揃ってるけど・・」
・・雪豹に縋り付きながらデュアンを見る・・羞恥に震えながら、自分達をこの苦境に陥れた張本人を眺め
「その・・眼は隠しておくから」
眼に眼帯を巻くと、木鉢の中で葉をすりつぶし始める・・手を休めることなく、木鉢をアニエスの方へ向け
「・・・ここに、入れてくれる」
・・・羞恥に震えるその姿を、眼帯の穴から覗きながら・・デュアンはアニエスに自慰を促した