「はぁ・・」

欠伸を噛み殺す・・・部隊は逃げていったようだ、食事当番を押しつけられ、食材の調達に出ていたデュアンは嘆息する

線の細い、金髪の美少年と言っていい感じだが・・・何処にでも居るような下働きの格好をし

・・・森を見渡す

兵士募集の公告を見て参加したのだが、実質ただの下働き・・・ファイターとしての実力など求められてはいなかった、見た目の細いデュアンはコックに駆り出され

金も無かったためしばらく従事していたのだが

「やれやれ・・給与未払いなのにな」

どうやら何か恐ろしい物にでも会ったようだが、ほとんどの装備を残しながらの撤退は燦々たる様で

「チェック、現物支給で貰っておこう・・金品を集めてきてくれ」

相棒に声をかけると・・残された装備品などを見渡し

・・・数時間後には溜息と共に諦めることになる
 
 
 
 

「・・っとに、我慢して二週間も働いたって言うのに未払いのまま解雇・・・見つけたら文句言わなきゃ」

仕方ないので森を脱出しようと歩き出すデュアン、ショートソードで草木を切り払い

木の年輪や木洩れ日の方向から位置を逆算して歩いているのだが

「・・・おかしいな」

地形に変貌が見られない、地図で確認したがそこまで大きい森ではないはずだ

念のために首から提げた冒険者カードでひさしを造りながら空を見上げる、重なり合った葉で見づらいが太陽の方向は分かる・・・ちなみに冒険者カードのレベルは2、コックに割り当てられた理由でもあるが、彼はまだ冒険者として駆け出しでしかない

「・・アサバナが咲いてるって事は時間帯は6〜8時、太陽の方向は東になるはずだ・・なのにまだ森を抜けられない?」

草花の開花の時間や木に生えた苔の角度などから方角を推測し、東に歩いてきた

どう考えても距離的には既に脱出できているはずだが・・・

「・・・そう言えば、軍隊は何から逃げたんだ?」

・・・森に何か居る・・・・森がでかくなるはずがない、自分の感覚も確かだ

とすれば・・・

「迷いの森・・魔法使いか」

嘆息しながらショートソードをしまう、相棒・・グリーニアのチェックに辺りの探索を命じる

「やれやれ・・また、面倒なことになりそうだ」

・・ふと、気配を感じる

遠く・・・何かが争うような・・・

「チェック、こっちだ」

口に指を当て、気配の方へ走る

・・・衣擦れの音すら立てず、木の枝から覗き込めば

「ヒギャアアアァァァ」

・・・長大な剣に貫かれて息絶える、トロールの姿・・・わりと有名なモンスターだが、実力はあるはずで

・・・その眼前で巨漢の戦士が血を払っている、そして・・・モンスターは人形へと姿を変えた

(・・・なるほど、やっぱり魔女の森ってわけだ)

とすれば、あの巨漢の戦士はクエストの真っ最中なのだろう・・・

「・・・」

ガサッ

「誰だ?」

草音に、男が剣をデュアンに向ける・・慌てて、一歩を踏みだし

「す、すみません・・邪魔する気はなかったんです」

がくがく震えながら頭を下げる・・隙のない、いい構えの剣士だ

「あの・・第12分隊所属のデュアンって言います、仲間を知りませんか?」

舌打ちし、剣士は去ろうと

「ま、待ってください、出口だけでも教えてくださいよぉ」

「ここは魔女の森だ、出口なんか無いんだよ」

泣き出しそうなデュアンに億劫そうに答える男、その脚にしがみつき

「だったら一緒に連れてってください、森から出たいんですよ」

わんわんと泣きながらしがみつくデュアンに、溜息を付きながら男・・オルバは荷物持ちとしてデュアンを連れて行くと言い

・・・デュアンは恰好の盾を手に入れた
 
 
 
 
 
 

「魔女の森ですか・・」

クエストの紙を眺めながら呟くデュアン

・・・オルバはデュアンのレベルが2しかないことを知って頭を抱えているが、仕方ないことである・・・その方が便利でもあるし

それでも、2というのはとてつもなく少ない・・・少しは上げるべきなのかも知れないが

「料理は美味いみたいだから連れて行ってはやるけどな、お前・・ファイターは諦めた方がいいぞ、いっそ料理人にでもなれ」

「と言われても、料理を覚えたのだって2週間前だし」

驚いてはいるが、本当の話だ

下働きとして雇われてから仕込まれたため、たった二週間しか教えられてはおらず

「物事を覚えるのは得意なんです」

もう一度、オルバはデュアンの冒険者カードを覗き込み

「・・・体力は30も無いのに知力が高いな、魔力もある・・魔法使いなみだ」

肩を竦めてやる・・・何故魔法使いにならなかったのか聞いてきているが、何となくと答え・・・

デュアンは大きく跳び上がった

「お・・くっ」

オルバも慌てて跳ぶ、寸前まで2人が居た場所を巨大な拳が叩き

「お、オルバ・・怖いよぉ」

泣きつくデュアンをオルバが蹴飛ばした

2人の眼前には巨大な1つ目巨人・・それを前に、オルバはデュアンを睨み

「てめぇ・・俺より早くこいつの気配に気づきやがったな」

・・・正確にはもっと早く気付いていた、まさかいきなり自分が攻撃されるとは思わなかったので大人しくしていたが

「一応言っておくが・・俺は二匹が精一杯だぞ」

舌打ちする・・レベル13というから期待したのだが、やはり並大抵の戦士のようだ

それでも、この若さなら大した物だが

「モンスターとの戦闘は初めてなんですけどね」

ショートソードは捨てる、懐から抜き放つのは・・・鈍く黒い輝きを放つナイフ

同時に左掌に雷が瞬き始める・・・サンダー、それもかなりレベルの高いやつだ

デュアンの前には3匹のサイクロプス、それを前に・・ナイフを構え

・・・オルバと背中を合わせる、一瞬、職業柄斬り殺しそうになったが、かろうじて我慢出来た

「・・・お前・・冒険者になる前は何をやってた?」

「暗殺者を少々・・・名は双頭の毒蛇」

「凄腕じゃねぇか・・死んだと聞いたがな」

「ギルドの長に疎まれましてね・・」

右腕が残像を残して消える、サイクロプスの一匹が眼を押さえて呻き・・消え去り

・・・1つ目に突き刺さったナイフだけが落ちる

2体目は雷撃、左手から放たれた電撃は蛇のようにサイクロプスに巻き付き焼き尽くし

「・・実力の高さと女癖の悪さが噂だな」

その間にもオルバはサイクロプスを一匹両断している、この分ならサイクロプス5匹程度なら平気なようだが

「・・嘘つき」

両手から放たれた電撃が残ったサイクロプスを駆け上がる、双頭の毒蛇は顎を開きサイクロプスの頭を焼き尽くし

「どっちがだよ・・」

サイクロプス五匹が倒れるのを見ながら、オルバは嘆息し・・・

デュアンの冒険者カードをむしり取る

「・・・偽造か・・」

経験値が増えていない、なるほど・・レベルは低ければ低い方が相手が油断する、暗殺者として生きるためにはその方が都合はいいだろうが

「・・・協力・・・しませんか?」

気弱そうにデュアンが言う・・その引きつった表情の裏に凄腕の暗殺者の顔が有ることは今ので分かり

「・・ココを出るまでか?」

「・・その後、ほとぼりが冷めるまで、冒険者として生きていきたいんですが」

・・・オルバがその答を言うより早く、視界に煙が入ってきた
 
 
 

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