「おにーちゃんっゥ」
教室前の廊下で友達と雑談していると、後ろから誰かがしがみついてきた。背中から僕のお腹の辺りに両腕をまわし、体重をかけてくる。そろそろ暑くなってきた、春の昼下がり。振り返ると、早くも夏服に身を包んだ妹が僕を見上げて笑っていた。
「鈴乃、離れろよ。」
鈴乃の真っ直ぐな視線に多少戸惑いながらも、僕は背中にくっつきたがるイタズラ好きな妖精をはがした。栗色がかったポニーテールの鈴乃。髪をほどけば相当に長く、様々なヘアスタイルが楽しめるのだが、鈴乃はずっと昔からこの髪型だ。前髪を除いたほぼ全ての髪を後ろで結んでいるので、短い髪がからみついた小さな耳がみえる。鈴乃は頭のしっぽを揺らしながら、ポケットから何かをとりだして僕に見せた。
「あのねー、おにいちゃん。さっき友達のよーこちゃんが映画の券くれたのー。一緒に観に行こうよぉー。」
そう言って2枚の券の両端を掴み、ひっぱったり戻したりしてみせる鈴乃。その映画は特に話題になってる訳でもない、ごく普通のラブストーリーのようだ。
「わかったよ。ほら、チャイムが鳴るから早く教室に戻れよ。」
僕の言葉が終わるや否や、校舎中にチャイムが鳴り響く。
「やったーゥ おにいちゃん、また後でね!」
券の両端をぴんっと引っ張って喜ぶ鈴乃。そしてチャイムが鳴り終わらないうちにぐるりと後ろを向いてぱたぱたと走っていった。脚の動きに合わせてしっぽもフワフワと揺れる。
「相変わらず仲がいいな、おまえら。」
隣で一部始終みていた友達が茶化す。とはいっても最早いつものことだったので、僕もさほど気にすることなく
「まあね。」
と答えてみせた。間もなく教師が到着し、昼食後の眠たい授業が始まった。
・
放課後、僕は急ぎ足で生徒会室へと向かう。学級委員――これが今の僕の肩書きだ。そしてその肩書きは鈴乃のものでもある。僕と鈴乃は、ふたりしてそれぞれのクラスの学級委員を務めているのだ。学校で必然的に鈴乃に会う、唯一の機会だ。それ以外の時でもしょっちゅう鈴乃と僕は会っているが、何もそれは会う必要がある訳でもない。現に昼間の映画の話でも、家に帰ってからしてもいい筈だ。ところが鈴乃は何かと理由をつけては僕のクラスにやってくる。今や僕のクラスに、鈴乃の顔を知らない者はいない程になってしまった。
「失礼しまーす。」
いつもの委員会の時と同じく、僕は扉を開けてそう言った。しかし、いつも委員会で顔を会わせる面子がいない。その代わり、他のクラスのあまり評判のよくない輩がたむろしていた。
「孝乃ぉ、今日の委員会は中止だぜ?」
一年生の時同じクラスだった男が僕にそう言った。
「なんだ、そうなのかい。じゃあ・・・」
と答えて僕はその場を去ろうとした。だが別の、今度は女が僕を呼びとめた。他の男と同じく髪を染め、化粧を厚く塗った女だった。
「委員会が中止って知らないの、アンタと妹さんだけなのよね〜。」
僕はいまいち、彼女の言うことが理解できなかった。委員会が中止になったのを知らないのは、僕と鈴乃だけ? 僕がなんのことかと首をかしげていると、同じく生徒会室にいた他の男達が僕の後ろに回り込み、僕を抑えつけた。
「うわっ? な、なにをするんだ!」
複数の男相手にはさすがに抵抗できず、僕はそのまま生徒会室の奥へと連れていかれた。僕の前におそらくこのグループのリーダーであろう、山城という男が寄って来た。
「鈴乃たん、だっけかなあ? お前の妹。ムカつくんだよね、1年のクセして2年の教室に来やがって。」
そう言いながら、山城は僕を睨んだ。そして、恐ろしいことを口走る。
「イケナイ後輩には、お仕置きが必要だろ?」
僕は山城のこの一言で、彼らの意図を理解した。
「す、鈴乃をどうするつもりだ!」
怖かった。相手は校内でも有名な問題児だ。更にその仲間がまわりにいるというこの状況で、僕は声を荒げることに一瞬躊躇した。だが、鈴乃に今、危険が迫っている。僕はどうなってもいい、鈴乃だけは!と思い、僕は力いっぱい叫んだ。
「どうするつもりなんだ!」
ドガッ!
僕のみぞおちに山城の右拳が入る。胃に溜まったものが一気にこみあげてくるような気分になり、身体が「く」の字に曲がろうとする。だが山城の仲間たちが僕を抑えつけているので、それもままならない。僕は苦悶の声を漏らしながら山城の言葉を聞いた。
「お前、自分の立場がわかってねえんじゃねえの?」
「す、すずの、すず、のには手を、出さないでくれ・・・!」
ドガッ!
再び僕の腹部に激痛が走る。僕は必死に願った。鈴乃、頼むから来ないでくれ! 鈴乃が来たら鈴乃はこいつらに非道い目に遭わされる! そして実際、来ない可能性も十分にあった。鈴乃が生徒会室に来るまでに、誰かが今日の委員会は中止だと教えてくれればいい。だが、僕の期待は、希望は簡単に崩された。
タッタッタッタ・・・
遠くから足音が近づいてくる。この足のリズムには聞き覚えがある。・・・鈴乃だ。
「こんにちはー!」
鈴乃は、来てしまった。
・
「え? お、おにいちゃん!?」
鈴乃が生徒会室にいる面子を、そして複数の男に身体を抑えられている僕の姿をみて驚きの声を上げる。
「鈴乃、逃げろ!」
みぞおちの痛みも多少引いた僕は、全力でそう叫んだ。が、鈴乃は驚きのあまり、一歩も動かない。
「黙ってろ!」
僕の身体を後ろから抑えこんでいた奴が体重をかけ、僕の身体を床と挟み込む。僕はますます動けなくなってしまった。
「! やめて、おにいちゃんに非道いことしないで!」
鈴乃が生徒会室に入ってきた。逃げてくれなかった。僕は絶望のあまり、唇を強く噛んだ。
「鈴乃、だったなあ。」
山城が鈴乃に近づく。それに合わせて他の男達も動き出し、鈴乃をとりかこんだ。唯一人山城の仲間の中にいる女はニヤニヤと笑みを浮かべながら、教卓の上でタバコを咥えてみている。
「お、おにいちゃんを放して!」
鈴乃は山城に恐れを感じて身体を震わせながらも、勇敢にそう言った。
「ずいぶん威勢がいいな。そういうところがムカつくんだよ。」
バシッ!
鈴乃の右の頬に、山城の平手打ちが決まる。鈍い音を立て、鈴乃の身体がよろめく。
「兄貴返して欲しかったら、ゆーこと聞くんだよ。」
山城が吐き棄てるように言った。鈴乃は床に這いつくばっている僕にチラッと視線を向け、
「わ、わかりました・・・。」
と下を向いて呟いた。山城は返事を聞き、腕組みをして語り出した。
「お前は1年でありながら、先輩様のいる2年の教室に毎日のようにやってきている。」
山城の言葉に、鈴乃はなんの反応も示さない。すると山城が拳を上げて
「返事は!」
と短く言い捨てた。その言葉に鈴乃は身体をびくつかせ、
「はい・・・。」
と小さな声でいった。瞳にはうっすらと涙を溜めている。だが、僕には上からかかる男たちの体重に耐えながら苦し紛れに
「す、鈴乃・・・。」
と繰り返すことしかできなかった。
「ではこれからお前に罰を与える。」
山城は裁判官のようなはっきりとした口調でそう言い切ると、ズボンを脱いでペニスを取り出した。
「ひっ!」
鈴乃の顔が一気に青ざめる。鈴乃にとってそれは言うまでもなく、みたことのない、醜く汚いものであるに違いない。鈴乃の身体があとずさる。
「こいつをしゃぶれ、なら許してやろう。」
山城が自分のペニスを指差し、鈴乃に命令する。
「い、いやあ・・・」
鈴乃が頭を振って拒否する。だが、他の男たちが鈴乃の後ろに回り込み、強引にその可愛い顔を醜いペニスへと近づける。
「いやあああ!」
鈴乃が力いっぱいに叫ぶ。すると、山城が更に大きな音量で
「やれ! 兄貴殺すぞ!」
と鈴乃の頭上から声を浴びせた。鈴乃は遂に涙をこぼし始め、恐る恐る口を山城のペニスへと近づけた。
「す、鈴乃! やめろ! 僕のことに構うな!」
鈴乃が危ない。危ないんだ。僕は上からのしかかる重圧を跳ね返すほどの声を上げて叫んだ。
「うるせえ! 黙ってみてろ!」
ガン、と鈍い音が僕の頭に響く。僕は強烈な拳を頭にくらい、瞬間意識が朦朧とした。そのわずかな間に、鈴乃はその小さな舌を山城のペニスへと接触させた。
「おい、兄貴がきっちり見えるようにたたせてやれ。」
山城の命令に従って、男たちが僕の身体を起こす。目の前には、ちろちろと舌を動かして山城のペニスの先端を舐める鈴乃がいた。見ているのも耐えられない。だが、僕の顔は背後にいる男に固定され、僕の顔は完全に鈴乃の方を向いていた。
「ちゃんと奥までくわえろ!」
山城が股間の鈴乃の頭に向かって怒鳴る。それでも鈴乃は身体をびくつかせるだけで、ペニスを咥えこもうとはしなかった。
「・・・やれ。」
すると、山城が僕の方を向いてそう言い放った。その言葉が発せられるやいなや、僕の両腕を掴んでいた男達がその両腕を強く締め上げる!
「ぐあっああ!」
突然の痛みに大きな声が漏れる。僕の苦悶を感じ取ってか、鈴乃は一気に山城のペニスを深く咥えこんだ。
「きゃはははは!」
教卓の上に座っている女が高い声を上げて笑う。
・
「ちっ、やっときたぜ。」
鈴乃のぎこちない舌使いは、山城をなかなか絶頂へと導くことができなかった。当然、といえば当然の結果だ。フェラチオをしたことのない鈴乃がそう容易く相手をイかせることなんてまずできない。それでも山城にこのように咥えろ、このようにしゃぶれに何度も命令され、ようやく山城を絶頂に近寄らせることができた。勿論そのたびに僕の腕はしめつけられ、僕は最早鈴乃の名を呼ぶ力も残っていなかった。
「ほぅら・・・イクぜ!」
山城が鈴乃の頭を掴み、鈴乃の喉元にまでペニスを届かせ射精する。
「うぶっ!」
鈴乃の顔が苦悶に歪む。眼からは更に涙が流れ出す。ひととおり射精を終えて山城がペニスを鈴乃の口から抜いた直後、鈴乃はその場にぺたんと座り込み、とうとう泣き出してしまった。
「えぐっ、ひぐっ、うわあぁん・・・」
呑み込めなかったのだろう、山城の精液が口からこぼれる。それで顔や服が汚れることも気にせず、ただひたすらに鈴乃は泣いた。僕の頬にも涙が通ってゆく。
「さて!」
山城が鈴乃の泣き声以上の声で言い切った。鈴乃が恐怖で身体をこわばらせ、泣き止む。
「これでお前はオレに許してもらったことになる。」
山城がこれで終わり、といったことを口にする。やっと、終わってくれたか。僕は安堵の溜息をつき、鈴乃の涙も止まった。
「だが、お前はこの先輩からも罰を受けねばならない!」
そう言いながら、山城は僕を指差した。
「大好きなおにいちゃんに、お仕置きしてもらえ!」
その言葉を合図に、男達が皆行動を開始した。僕も鈴乃も靴を除いて全裸にされる。
「ぎゃはは、おい山城! こいつビンビンだぜ!」
男の一人が僕の股間をみて言う。悔しくも、僕は山城のペニスをしゃぶる鈴乃に反応していたのだ。
「準備万端じゃねえか!」
山城が威勢よくそういい、鈴乃の背をこちらに向ける。パンティまでも脱がされ、あらわになった鈴乃の秘部が丸見えだ。僕は悔しくも、始めてみる女性の部分にゴクン、と息を呑んだ。
「さしこめ! さしこめ!」
男達が一斉に「さしこめ」コールを繰り返す。鈴乃は無理矢理四つん這いにされ、こっちにお尻をむけている。
「やめろ! やめろ! やめろぉー!」
「やめて! やめて! やめてぇー!」
僕も鈴乃も必死にそう叫んだ。だがその叫びも、容易く「さしこめ」コールでかきけされる。そして、ペニスの先端が鈴乃の秘部に触れた。
「うわあああ!」
「いああああ!」
僕と鈴乃の叫びもむなしく、挿入は始まってしまった。ズブッ、ズブッと鈴乃の中へと入ってゆく。まるで道のないところに無理矢理道をつくっていくような、そんな抵抗を鈴乃がみせる。
「そろそろだぜ?」
山城がそう言った。まもなく、鈴乃が悲鳴を上げる。
「痛い! 痛いよぉ!」
処女膜だ。僕の先端は膣内の肉を押し返しながら、遂に鈴乃のヴァージンを奪うところまできた。
「痛いっ! い、いやあああ!」
ブツンッ
何かがちぎれた感触がペニスの先端で感じ取れた。破ってしまった。僕の眼から涙がこぼれ落ちる。
「はあっ、はっ、ひ、ひぐぅ・・・!」
鈴乃が息を荒げながらも泣き出した。だが、僕のペニスは男たちに押されてどんどん鈴乃の奥へと侵入してゆく。
「はいった―――!」
深く、奥まで入り込んでしまった。鈴乃のお尻のふたつのふくらみが僕の腰少し下あたりに触れる。
気持ちいい。
僕の身体は、僕の意思に反して強烈に感じ始めた。鈴乃の身体を。腰を動かすと、鈴乃のお尻が僕の身体についたり離れたりする。その感触がたまらなくよかった。触りたい。目の前にある鈴乃の可愛いお尻を触りたい。だが両腕は男たちに封じられている。僕はただ、全ての意識をペニス全体に集中させた。
「ようし、おもいっきり動かせ!」
山城の命令に、僕と鈴乃の身体が激しく揺らされる。鈴乃の頭についてるしっぽも激しく宙を舞う。
「はあっ、はあっ、はあっ!」
鈴乃が今までとは違った吐息を漏らし始めた。僕も鈴乃に合わせてひたすらに
「はあっ、はあっ、はあっ!」
と大きく呼吸を繰り返した。すぐにも二人の呼吸は同じリズムをきざむようになり、
「はあっ、はあっ、はあっ!」
というひとつの吐息に統一された。
「! ああっ、で、でちゃう! でちゃうぅ!」
一気に射精感がこみ上げてくる。僕は必死に我慢した。鈴乃の、女性の身体の中に射精することにたまらない不安を感じた。妊娠してしまうとか、そういった不安じゃない。ただ女性の身体の中で射精することに大きな戸惑いを覚えたのだ。
「あああっ!」
僕は鈴乃の中でめいっぱい射精した。ペニスは今まで感じたことのない感触で包まれているので、精液が飛び出ているという感じはしなかった。ただ、今鈴乃の中で射精しているということは事実だった。
「ふうっ、ふうっ、ふうっ・・・」
僕の吐息が変わる。山城は僕がイッたことを感知すると
「最後の仕上げだ!」
と言って最後の仕上げ、というやつに取り掛かった。教卓に座る女が声高らかに笑った。
・
「ねえ、おにいちゃん。」
「・・・どうした?」
時刻は既に午後8時。辺りはすっかり暗くなり、僕と鈴乃ふたりっきりの生徒会室の電灯も消えている。僕たちは山城が置いて行った古い形をしたランプの明かりだけを頼りに、お互いの顔を確認し合った。
「夏で、よかったね。」
「そうだな、冬だと寒かっただろうな。」
僕たち二人は綺麗に並べられた机の上で未だに身体を重ねたままでいる。互いの秘部は繋がったまま、僕と鈴乃の身体は縛られた。僕と鈴乃は正面に向かい合い、僕の右脚は鈴乃の左脚と、僕の左脚は鈴乃の右脚とベルトで縛られていた。二人とも両腕は背中にまわされて縛られており、両腕両脚は完全に動きを封じられていた。
「鈴乃、ごめんな。」
僕は鈴乃に対して、それしか言葉が思いつかなかった。顔が余りに接近しているので、僕の息は直接鈴乃の顔に当たる。
「また謝る〜。おにいちゃんのせいじゃないよ〜。」
僕は山城たちが去ってから、僕は何度も何度も鈴乃に謝った。その度に、鈴乃が僕のせいじゃないから謝らないで、と言ってくれた。僕の上に鈴乃が乗っかった状態で、既に4時間。今日はもう誰も来そうにないな、と思ったときだった。
「最悪でも明日になったら誰か来てくれるよ。」
鈴乃も同じことを考えていたようだ。そして鈴乃は扉の方に顔を向ける。その時鈴乃の頭のしっぽが僕の身体をくすぐった。
「く、くすぐったいよ、鈴乃。」
それでようやく僕は顔に笑みを取り戻し、鈴乃に言ってやった。
「あ、ごめんね。」
鈴乃はさっきからずっと笑顔だ。それからしばらく僕たちは黙り込んだ。
・
「ねえ、おにいちゃん。」
鈴乃が僕に話しかけてきた。さすがにずっと顔を見合わせているのも疲れるので、鈴乃は僕の左肩に頭を添えていた。その鈴乃が、顔を起こして僕に言った。
「あ、あのね、その、あたしのココ、気持ち・・・よかった?」
鈴乃が「ココ」がどこであるのかを腰の動きで伝える。突然のペニスへの刺激に、僕は思わず
「はあっ!」
と声を出してしまった。その反応をみて、鈴乃が真っ赤になる。僕はばつが悪そうに顔を横に向けようとした。
「気持ち、いいんだね、やっぱり。」
横を向こうとする僕を鈴乃が呼びとめる。鈴乃は更に言葉を続けた。
「実は、よくおなにーしてたから、あんまり痛くなかったんだ、えへへ。」
鈴乃がチロッと舌を出してそう言った。可愛い。このままエッチな話になると自分を抑えておく自身がない。僕は別の話をきりだした。
「鈴乃、ごめん。腕がしびれてきちゃったんだ。」
僕の両腕には僕と鈴乃の体重がかかり、限界は近かった。そろそろ体勢を変えたかったのだ。
「あ、じゃあ横になろうよ。」
「わかった。」
そういって僕と鈴乃は必死に体勢を変えようとする。そうすることで、二人の秘部に刺激が走った。
「はあっ!」
僕と鈴乃が同時に同種の吐息を漏らす。僕はすぐに動きを止めた。だが鈴乃は腰の動きを2、3度繰り返し、
「おにいちゃん・・・」
と呟き、僕をまっすぐに見た。鈴乃のしっぽがまた僕を撫でる。
「おにいちゃんも、動いて。大丈夫、バレたりしないよ。」
「い、いいのか?」
僕としては、迫り来る快楽に身を委ねてしまいたかった。だけど、相手は鈴乃だ。僕は本当にいいのか、と鈴乃に聞いた。対するその返事は
「・・・はい、おにいちゃん。」
だった。いつもならYESと答えるとき「うん」とか「はあい」といっていた鈴乃が短く「はい」と言いきったのだ。僕の中で、鈴乃が女性として大きくなった瞬間だった。僕の下半身が暴れ出す。
「はあっ、はあっ、はあっ!」
「お、おにいちゃん! おにいちゃん!」
鈴乃の荒い吐息が全部、僕の顔にかかる。鈴乃のしっぽが広がって視界をさえぎり、僕の眼には鈴乃の顔しか映らなかった。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ!」
快感の導くまま、身体を動かす。跳ねさせる。
「あんっ、おにいちゃん! すずのって、あんっ、呼んで!」
「す、鈴乃! 鈴乃! はあっ、鈴乃!」
鈴乃は「おにいちゃん」と、僕は「鈴乃」とひたすらくりかえした。両腕が動かないのがもどかしい。抱きしめたい。僕を必死に受けとめてくれる女のコの身体を、鈴乃の身体を抱きしめたい。背中に両腕をまわして、ぎゅっと抱きしめてやりたい。でも、腕は動かない。なら!
「鈴乃! んっ・・・!」
僕は目を開いたまま、鈴乃と唇を重ねた。いや、重ねただけにはとどまらず、僕の舌は鈴乃の舌を求めて鈴乃のうっすらと開いた口へと侵入した。
「はうっ、んむぅ、んうっ・・・!」
鈴乃も眼を細めて僕の舌を求め、僕の口へと入ってくる。僕と鈴乃は必死に互いの舌を探し求め、口から唾液がこぼれるほどの激しいディープキスをした。
「うむっ! んっ!」
お互い腕が動かせない分、舌を必死に動かした。互いの身体に腕をまわすことができない分キスは長く、激しく続いた。みつめあいながら、舌をからませながら、ひたすらに下半身を暴れさせる。
「んはあっ!」
鈴乃が口を離し、一層激しい吐息を漏らす。
「おにいちゃん、あたし、あたし、どすいよう、イッちゃうの!」
僕の前で、男性の前で絶頂を迎えることに鈴乃が不安を感じる。きっと、僕が鈴乃の中に射精する時に感じた不安と同じものだろう。
「大丈夫だ! おにいちゃんが見ててやるから!」
僕は鈴乃を安心させようと声をかける。同時に鈴乃が気持ちよくイけるようにと、腰の動きを更に強める。
「お、おにいちゃん、怖い! 怖いの!」
鈴乃が後ろにまわった腕を必死に動かそうとする。僕にしがみついてしまいたいのだ。僕は未だ不安から解放されない鈴乃に、もう一度キスをしてやった。
「うむ、んむうう!」
深くキスをする。舌をからませる。そうしながらも僕は身体を揺らし、鈴乃が絶頂を迎えた。
「!・・・ん! んむっ!」
鈴のが眼をきつく閉じる。と同時に、鈴乃の膣が激しく伸縮する。
「・・・・・!」
僕も鈴乃と舌をからませたまま目を閉じ、ペニスを襲う快感に身を委ねる。僕はキスで鈴乃を求めながら、鈴乃の中に射精した。さっきよりは、精液が出ている感じがした。
「ぷはぁっ!」
僕と鈴乃は口を離し、鈴乃が頭を僕の左肩へと乗せる。鈴乃のしっぽはまた僕の顔をくすぐる。
「はあっ、はあっ・・・おにい、ちゃん・・・」
鈴乃はそう呟いて、今度はゆるやかに、優しく僕と唇を重ねた。
・
あれから朝まで、僕と鈴乃は幾度となくセックスをした。時間が経てば不思議と互いの身体が恋しくなり、動き出す。時には僕が上になり、鈴乃が下になり、僕たちは身体を重ね合わせた。僕が鈴乃の中で射精したくなったとき、鈴乃が僕とおもいっきりキスをしたくなる度に、僕たちは激しく秘部を擦り合わせた。朝になってようやく僕たちは発見され、無事救助された。その時のことはあまりに恥ずかしかったので伏せておこう。
・
・
・
「おにいちゃーん、待ったぁ?」
「ん、ちょっとね。」
次の日曜日。僕と鈴乃は約束していた通り、今日映画を観に行くのだ。同じ家に住んでいるのだから一緒に出ればいい筈なのに、何故か鈴乃の提案で別々に家を出て、駅前で待ち合わせすることになった。だから、僕は少しばかり待つことになったのだ。
「あれ? 鈴乃、その髪型・・・」
今日の鈴乃は僕が家を出たときとは違い、いつものポニーテールのほどいている。やはりほどけば長い栗色の髪が鈴乃の身体を包み込んでいるようで、すごく幻想的だった。服装も今日は随分と気合が入っている。
「えへへ、似合う、かなぁ?」
鈴乃が側に寄って上目遣いで僕を見上げ、聞いてきた。
「うん、可愛い。」
僕は軽く鈴乃の頭を撫でてやる。鈴乃はエヘヘと笑い、僕の左腕をひっぱって言った。
「おにいちゃん、腕、組も!」