| 桃原美希子 (3月28日（金）21時41分29秒) ■アニトさま■ 申し訳ありません、 この時期お仕事が忙しく物語を書くことができませんでした。 女装外出もちょっとご無沙汰になっています。 それはワタシ個人の問題なのですけれど なんか最近日本がおかしいって思っちゃってます。 中央のトップにいる人はなんにも決められないし、 お役所には人様のお金を勝手に使い込んで 素知らぬ顔をしてる人がいるだけでなく それを黙認していたりさらには庇う雰囲気があったり、 かと思えば、誰でもよかったなんて無茶苦茶な理由で 人を傷つける若者がいたり…… もーーーーーっ！！ なにやってんのさぁ です。 それに比べたら毎日一生懸命働いて、限られたお給料をやりくりして、 女装のための洋服やその他をためらいながら恥ずかしながら買い、 堂々と人に言うこともできず、ひっそりと人目を避けて行動し、 雨や風の日はおとなしく家で過ごし、世間の風評に耐え 東にハッテンバがあれば行ってみたいなと空想し、 ネットの女装サイトを見ては自分を慰め…… 人様からはへんたいと見られるかもしれませんけれど 女装に楽しみを見い出している自分の方が まだマシと思えちゃうのでございます。 ■小西真弓さま■ はじめまして、桃原美希子ともうします。 真弓さまの「経験告白」読ませていただいて安心しました。 ワタシもこんなことしてていいのかなって思うときがあるんです。 でも大多数の人がおかしいと言ったって 現に女の子になりたいという気持ちを持つ方や エッチな体験している方が少なからずいらっしゃいます。 世界中で自分だけがしているんじゃ気が引けちゃいますけれど 誰にも迷惑をかけない範囲であれば正直になった方が ストレスが溜まらなくていいんじゃないでしょうか。 女装するかどうかは別にしてエッチなことなら誰でもしていますから。 アニトさまとのデート、気になります。 −−− 新学期はさくらのつぼみ −−− ３年生が卒業して４月からいよいよ僕たちが兄都学園最上級生になる。 所属する我がミュージカル部は春合宿の最中だ。 夏休みに行われる全国高校ミュージカル大会出場と 卒業記念公演が発表の舞台となる。 この２つはもちろん全部員参加なんだけれど 他にも敬老ホームや幼稚園で短い歌劇や音楽会などを 「組」ごとに２〜３公演行う。 組とは宝塚にまねた「桃組」「海組」「月組」「雪組」「空組」の５組に 僕たち新３年生１５人が各組に３人ずつ、 ２０人いる２年生は４人ずつ振り分けられた７人編成の小集団のこと。 合宿所での部屋割りも組ごとになっている。 こうすることで下級生への指導がしやすく、 組の結束が部の団結になるというミュージカル部の伝統なのだ。 ただし今の時点で各組のリーダーは不在。 人望があり、かつ一番演技力のある者がリーダーであると同時に 栄えある女性役を務めることになる。 なぜなら兄都学園は男子校で先生を除けば周りは全部男男男……男の園！ 登場文物が全員男っていうお芝居がないわけではないし、 自分たちで創作すればどういう配役にすることもできる。 でもそれじゃミュージカルとしての華がない。 たとえば有名な「ウエストサイドストーリー」は女性が１人いればいい。 セリフのないその他大勢的女の子役はそれなりの恰好をすれば誰でもいいものの ストーリーの核となるヒロイン抜きじゃドラマ自体が成り立たない。 共学高の多くは女子の方が部員が多いため 女の子がシャーク団やジェット団の男の子役を演じているというのに。 この圧倒的なハンデをどう克服してきたかが部の歴史ともいえるのだ。 ということで先輩たちは組制度を生み、 リーダーが女性役を演じるというシステムを作り出してきたのだ。 演技・人格共に優れた人物、それが名誉あるリーダー。 でも実際の話、名誉だけではない。 もてちゃうのだ。 むむぅ、もてちゃうという言い方は変かな？ 男子校ゆえに女形はちやほやされるのだ。 現に僕がいた桃組の前リーダーはクラスの人気者だっただけでなく、 他校の女子からラブレターやバレンタインのチョコを大量にもらっていた。 中には役作りのためとドレス姿で授業を受けた先輩もいたという。 だからみんな口には出さないけど、自分がリーダーになれるかどうか、 よその組の誰がリーダーになるか気になるところなのだ。 「海組」は近藤くんで間違いないだろう。 体型はいかついけどなんたって積極性と人望がある。 きっと部長兼任になるんじゃないかなぁ。 「月組」は土方くんが絶対いいと思う。 だってイケ面だし、立ち振る舞いがきれいだもの。 「雪組」は斉藤くんと永倉くんの一騎打ちって感じ。 「桜組」はたぶん温厚な山南くんが適任だと思うんだけど 原田くんと藤堂くんがどう動くか見もの。 とその前に新入生を勧誘して、その子たちも組み入れして 今年の演目を決めなくてはならない。 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 新学期が始まって学校中の部活が新入生の勧誘活動を始めた。 僕たちも昨年使った先輩譲りの衣装を身にまとって 一年生の教室巡りをしたり廊下や体育館で寸劇をしながらチラシを配った。 このときばかりは誰でも女性用の衣装を着てもいいことになっている。 もっとも希望すればであり、 希望者が多すぎれば抽選になってしまうのだけれど。 僕はネズミの着ぐるみとお爺さんに扮装した。 土方くんはお姫様の衣装を着て、それがとてもよく似合っていた。 もしかしたら「月組」のリーダーはもう土方くんで決定なのかもしれない。 僕たち「桃組」のリーダーには誰がなるんだろう？ 授業中もそのことが気になってばかりいた。 そのせいか春だからなのかこのところちょっと心臓がドキドキし 身体中が火照っている感じがする。 そういえば一年生のとき生物の先生が言ったことを思い出した。 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 「魚のクマノミの仲間ははじめはすべての個体が雄として生まれます。 ひとつのイソギンチャクにはだいたい複数のクマノミが生息して この中ではいちばん大きい個体がメス、 ２番目に大きい個体がオスで、残りの個体は繁殖しない。 もしメスがいなくなると、オスがメスへ、 ３番目に大きい個体がオスになります。 このように最初にオス、次にメスへ性転換することを 『雄性先熟』といいます」 「魚類は実は逆の『雌性先熟』の方が多いんです。 ベラ科、ブダイ科、ハタ科、モンガラカワハギ科、ハゼ科など サンゴ礁に暮らす種類の魚は雄で生まれて雌に性転換します。 というのも体の小さい雄は縄張り争いに勝てず繁殖の機会を得にくいわけで だから小さいうちは雌として繁殖を行い、 縄張りを持てる大きさになったら雄に性転換するんです」 「ウミガメは脊椎動物の中でもワニと同様に、 性が卵のある時期の温度によって決定します。 卵は砂の熱により暖められるわけですが、 そのときの砂の温度でオス・メスが決まるらしいのです。 温度が２９℃より高いとメス、低いとオスが生まれることが多く、 ほんの２〜３℃の違いで、全てがオスかメスの一方になることもあります」 「一般的に動物の雄が雌よりも綺麗なのは 雌の気を引いて自分の遺伝子をつなげようとする以外にも 目立つことで捕食されやすくなり 雌や子が生き延びる可能性を高くするともいわれています」 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 張るような違和感があって胸を触ってみた。 と……プニュプニュする感じがある。 もしかしたら……。 休み時間に隣のクラスの土方くんに確かめに行った。 「土方くん、なんか変化あった？」 「大あり。驚いちゃったよ、胸が膨らんでくるんだもん」 「ってやっぱり土方くんがリーダーになるんだね」 「沖田は？」 「よくわかんないけど……つぼみが膨らんできたみたい」 部長兼任だった桃組前リーダーの芹沢さんはいつもブラジャーをしていた。 そういうふうに僕もなるのだろうか？ 芹沢さんは演技指導だけでなく女性との接し方を教えてくれた。 初体験は芹沢さんとだ。 僕も後輩に抱かれるのだろうか？ △ △ おわり △ △ 魚類に『雄性先熟』『雌性先熟』という生殖の神秘があって、 でもその機能が失われず、絶滅もしないということは 環境に適した良いシステムなんじゃないかと思います。 だったら人間の世界にも『雄性先熟』があったらおもしろいのに と思って書いてみました。 アニト (3月31日（月）23時42分05秒) 桃原美希子さん、こん○○は。 おおっ、久しぶりに時節物できましたか。 明日からは新年度、この時期に合わせてくれるかのように わたしの住む地方では桜がほぼ満開となりました。 学校や職場で多くの新人さんがドキドキしていることでしょう。 そこに《『雄性先熟』があったら》たしかに《おもしろい》ですね。 設定の巧みさと登場人物の優しさが美希子さんの物語のおもしろさです。 一方で箍が外れてしまった人の事件が世間を驚かせています。 《へんたい》は人格の一部である性の価値観や行動をさして言い、 人に迷惑をかけるものでなければ個性でもあります。 しかし枠組みからはみ出しすぎると「変人」になってしまいます。 美希子さんの全人格の中の性に関する部分のそのまた一部がへんたい、 他の部分はとてもまじめでまっとうであることをわたしは知っています。 ですから美希子さんを信じられるのですよ。 メニューへ戻る |