桃原美希子 (6月2日(金)21時21分49秒)
■アニトさま■
「女装娘の愛し方」拝読いたしました。
いろんな面でアニトさまらしいなーって感じました。
空想デートに書き込みをするようになって早いもので3年半がたちます。
いつもお言葉をかけていただけて、
1度デートしてくださり、メールは100通をゆうに超えています。
みなさまが知らないアニトさまのことを
ほんの少しですけれど教えていただいてもいます。
そうしたお付き合いから思うのですけれど
趣味として女装世界と関わっているとおっしゃりながら
書き込みには必ず優しく暖かいレスをいただけますし
定期的な更新や広告を入れないこと荒らしがないことなど
とっても真面目で正直でおもしろくて頼りがいのある方って感じてます。
ですから「女装娘の愛し方」は多くの面で
うんうんうんアニトさまらしいってうなづきながら読んだのでございました。
これからも女装世界にいて素敵なアニトさまでいてくださいませ。
個人的な質問はメールでさせていただきます。
「女装娘の時間」はまたまた難産になりそうで
代わりに一話完結の物語でございますぅ。
■素敵な素敵な中林純子さま■
わーい、すっごぉく感激しちゃいましたぁーーー!!!!!
「女装物語の書き方」を書いていただけるなんて!!!!!
ありがとうございますっ!!!!!!!!!!!!!!!!
自分が書いた物語を使っていただくのってホントうれしいです。
>(私はパンティと呼びたい!)
ぜったいパンティですよね。
ショーツっていうとなんか飾り気がないような気がして。
カラフルでレースとかフリルとかリボンとかたくさん使って華やかで
生地はあくまで薄く素肌にフィットし肌触りが良くて
もーなにがなんでもパンティと呼び続けちゃいます、ワタシは。
■聖制服少女・処女雅子さま■
丁寧なお答えをいただきありがとうございます。
お通じはいいのでお浣腸はあんまり行わないのですけれど
気が向くとバスルームのシャワーで(ノズルを外して)することがあります。
一応バイブとかも何本か持っていてそれぞれに使ってすごく気持ち良くなり、
全身がゾクゾクガグガグしたり自然と声が出ちゃったりするんですけれど
頭の中が真っ白くなるようなイク〜ッーーって感じがつかめません。
人それぞれにイキ方が違うっていうのはわかっているつもりでも
最高のイキ方をしてみたいという願望があるんです。
雅子さまは絶頂時にはどんなイキ方をされますか?
■看護婦田神真緒さま■
>男性のときに、一度女を、こういう風に扱いたい気分が、
>女装のときに、その男の自分の願望を叶える生贄みたいなものです。
>ある意味女装の私は、普段の私の奴隷なのでしょう。
わかりますわかりますそれって。
ワタシの女装は、こんな女の子がいたらいいなーっていうところからきています。
少女のように無垢で明るく可愛くて、娼婦のように淫らで激しく妖艶で、
状況に応じてそのどちらにでもなれる女の子。
…なんて現実にはいそうもありませんから(いたら逆に怖い?)
自分で演じているのかもしれません。
■男!鬼塚権太さま■
>美希子さんは純粋な何かをお持ちでしょうか?
ふくよかなオッパイならいいんですけれどワタシぺチャパイですし…。
なんて、する方じゃなくてされる方を想像しちゃうところが女装娘。
純粋純粋…じゅんすい……ちっとも思い当たりません。
純粋な女装っていうのがあるとしたらどういうことを指すのでしょう?
>27歳以下のお母さんは縦一列に並ぶのだキャン。
>順番に、おっぱいグリグリをするのだキャン!!」
27歳以下っていうのがなんとも微妙で純粋とは思えませんですよぉ。
■武藤リエさま■
はじめまして。桃原美希子と申します。
「くうそうエンジェルs」にある物語を拝読し、
すぐさまリエさまのHPへ行かせていただきました。
リエさまの綺麗さとファッションセンスの良さに見とれてしまい
まだ全部の物語は読んでいないのですけれど「姉弟」がとても印象的でした。
これからも素敵なお写真と物語を発表してくださいませ。
−−− 悩ましの寝言 −−−

何かの物音で深い眠りから引き戻された。
遠くの国道をトラックが走る音がブィーンブィーンと聞こえてくる。
朝早い鳥たちでさえまだ眠っている時刻だろう。
夕べは会社の新入社員歓迎会があり、
20人ほどでの宴会の後も呑み続け組やカラオケ組などに分かれ、
気の合う同僚とたしか三次会まで行った。
終電時刻が過ぎ、帰宅がめんどくさくなった僕は
昨年入社の1つ下の後輩佐藤敏雄のアパートに押しかけたのだった。
布団が一組しかなく、佐藤は掛け布団無しで、
僕は掛け布団を敷いて眠りについた。
一通りの反復を終えたところで僕は再び眠りに戻ろうと
全身の力を解き、意識を深く布団に沈み込ませた。
とそのとき。
「…おり…うれひ…」
どこからか声がした。
やややなんだなんだと朦朧としかけた感覚があたりの気配をとらえようとする。
夢か幻聴か?なんだったんだ今のは?
気になりだすと眠れない。
まさか外で事件か何かあったのだろうか?
それにしては音源は近かった。
もしかしたら…考えられるのは佐藤の寝言?
確かめようと寝返りをうつふりをして身体を横向ける。
薄目を開けて見てみれば月明かりにぼんやりと
こちら向きに横に寝てあごの下で両手を合わせている姿がある。
パジャマの襟に首をうずめて背を丸め平和そうな寝顔をしている。
もう一度聞こえないかと待ってみるが
あいかわらず遠くの国道をトラックが走る音以外に何も聞こえない。
いったい今何時ごろだろう?
しこたま飲んだお酒がまだ抜けきっていないというのに
何のために夜中に神経を張り詰めなければならないというのだ。
熟睡を妨げられた原因を確かめてそれがいったいなんになるというのだ。
寝よ寝よ寝よっと。
そう思ったとき今度は確実に声がした。
「…めてくらさい…んぱい」
間違いなく佐藤の声だぞ佐藤が言ったぞ寝言だぞ。
くくっ滑稽な、月曜に会社で言いふらしてやろう。
「泊めてもらったら佐藤が寝言で……??」
なんと言ったのだ?
めてくらさい?????ください、か??とすると最初の部分は…
あめて いめて うめて 埋めてください、何を?
えめて おめて かめて きめて 決めてください? 
おお決めてやるとも、先輩として。
ああ、せんぱいかぁ、だから何を?
あっ、かんぱいかもしれない、飲み屋でさんざん言ったからな。
乾杯! ってだから何に?
醒めて 閉めて すめて?薄めてかな 攻めて 染めて
溜めて ちめて? 詰めて てめて? 泊めて
泊めてもらったのは僕の方だ、ありがとう。
舐めて …どこをか知らないが舐めないなめない。
先輩の乾杯が心配 集めてくださいバンパイヤ。
ガオーッ、月夜の晩に1人で何をやっているのだろう僕は。
「やん、せんぱい、…っち」
あーーーーっ、先輩で正しかったのかぁーーーーー!
って今度は…っちってなんだぁーー!!
あっち いっち うっち えっち エッチってどういう夢をみてるんだ?
女子先輩社員とムフフをしている夢をみているとか?
やるうぅ佐藤 いったい相手は誰なのだ? 吉田か?中出か?田神か?
今起こして訊いてもむだだろうなぁ。
それにしてもこいつホントに寝ているんだろうか?
僕はもう眠るどころではなく完全に目が醒めてしまった。
なのに佐藤の鼻の下に人差し指を近づけると規則的な寝息がそよいでいる。
なぁんてやつだ、バジャマ脱がして
チンコの先っぽにたぬきの顔でも書いといてやろうか。
「ああん、ダメったらぁ」
完全に熟睡しているはずなのに的確な返事がかえってきた。
もっとも僕は声に出して言ったのではないから佐藤に届くわけはない。
たまたま夢の進行と合致し、そこに登場する人物との会話なのだろう。
よもや佐藤がテレパシストというのではあるまい。
っうかなに悩ましげな声だしてんだよ。
「だってぇ しおりうれしいだもん」
こらこらこらっ何をする!腕を絡めてくるな、僕は枕じゃないっていうの!
本気か?じゃなくて寝相も悪いのかこいつは。
ン? しおりって誰だ?
そんな名前知らないぞ、会社にもいないような気もするし。
しおりしおりしおり??????しおしお塩り…
佐藤を呼ぶとき僕は軽口で苗字ではなく「しお」と言うことがある。
佐藤敏雄…さとうとしお…砂糖と塩
「しお…り?」
思わず小さいながら声に出してしまった。
と、ますます佐藤敏雄は僕に擦り寄り胸に顔をうずめてくる。
やめれ〜、髪の毛が鼻にゴニョゴニョしてくすぐったいではないかー。
とはいえなんか可愛いぞおまえ。
女の子になった夢でもみているのか?
む〜、たしかに佐藤はなぜだかわからないが女子社員たちに人気がある。
弟みたいに可愛がられているうちに妹気分になってしまったのだろうか?
そういえばなぜだかわからないが僕を慕ってよくくっついてきて
佐藤が女の子だったらもっとよかったのにと思わないでもない。
いやや佐藤が女の子になればいいというのではなく…
などと考えている隙に絡め取られた右腕の先端がさらに引き付けられ
佐藤の股間まで達したそのとき手の甲になにやら硬いものが触れた。
ボボボボボッキしてるのかぁ〜!
やっぱり男だぁ〜 ゲイかぁ、おまえーー!!
「ううん」
寝言で否定するなー!!!
ともあれこの状況で目覚められたら気まずいので
気づかれぬように右腕を引き抜こうとするが佐藤は力を緩めてくれない。
それどころか腰がすこしずつ前後に動き出していた。
手の甲に当たった硬い棒が行ったり来たりする。
あふっあふっあふっと僕の胸に顔を埋める佐藤の息が荒くなっていく。
偶然親指が"社会の窓"に引っかかり、バジャマのズボンがずり下がった。
月明かりに照らされてお尻にフィットした白い下着…
それはまさしく女性モノのパンティ…が目に入った。
ひえ〜ぇ、そういう趣味があったのかぁーー!!
この後僕はどうなってしまうのだぁーーーー!!
遠くの国道をトラックが走る音がブィーンブィーンと聞こえる。
朝早い鳥たちも佐藤さえも眠ったままだ。
夜はまだ長い。
 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
誰かの声で深い眠りから引き戻された。
遠くの国道をトラックが走る音がブィーンブィーンと聞こえてくる。
朝早い鳥たちでさえまだ眠っている時刻だろう。
肩をポンポンと叩かれている感じがある。
「先輩、先輩、起きてください起きてください」
そういえば昨夜は会社の新入社員歓迎会があり、
2つ下の後輩佐藤敏雄のアパートに泊めてもらったんだった。
「ミルクミルクって何度も言ってました。それにボクのことをしおりって」
にゃに?にゃに??僕はそんなこと言った覚えは…???
寝言!!!
目を開けると間近にしおり…いや佐藤敏雄の顔があった。
その腕を僕ががっちりと抱きかかえている。
あわてて腕を放し、もしかしたらと寝るときに佐藤が貸してくれた
ジャージに手をやると、そこはパンティの手触りだった。
寝言を言っていたのは佐藤ではなく、腕を絡めたのは僕のほうで…
なにもかも僕が見ていた夢だったのかぁーー!!
いきなり全覚醒してドバッと汗が吹き出た。
「先輩って女装の趣味があったんですね。だから着替えるときこそこそと…」
「ちがちが違うんだよこれには深い事情があって…」
言い訳を思いつく間もなく佐藤が迫ってきた。
「あのーボク…先輩のこと…けっしてゲイってわけじゃないんです、
でもでもなんでか先輩と一緒にいるとドキドキして…
先輩がどんな格好をする人だとしても…す、好きですから…。
なんならボクも女装します。ミルクさんって呼んでもいいですか?」
佐藤が会社でも社外でもよく僕にくっついてくるのがわかった気がした。

 △ △ おわり △ △
寝言って自分で何を言ってるかわからないだけに怖いですぅ。
みなさま、どなたかと一夜を過ごすことがあった時にはお気をつけください。
この物語は「わたしの下着はかないでったら!」にリンクしております。




アニト (6月5日(月)00時16分21秒)
桃原美希子さん、こん○○は。
あらためて「趣味」を広辞苑で調べてみると
【1:感興をさそう状態。(感興=興味を感じること。面白がること)
2:ものごとのあじわいを感じるとる力。美的な感覚のもち方。
3:専門家としてではなく、楽しみとしてする事柄】とあります。
まさに女装もぴたりと当てはまります。
わたしの場合はそういう女装娘さんたちと男として接することが趣味なのです。
『空想デート』のオーナーとしては
1:全員へのレスを書き、物語も書く。
2:物語を書くがレスは書かない。
3:物語は書かないがレスは必ず書く。
4:なにもしない。
などいくつかの在り方があります。
4は論外として、1や2では1年も続かなかっただろうと思うのです。
わたしとみなさんの趣味が一致して今日まで『空想デート』があるのですよ。
ただし専門家でないとはいえ、遊び半分ではなく
するときには真剣に全力でするのがわたしのモットーです。
昨年あたりから感じていたことなのですが
美希子さんの物語は一読さらりと書いているようにみえながら
女装の楽しみ方とか危うさなどが含まれていてたいへん感興をさそいます。




桃原美希子 (10月19日(木)20時08分47秒)
■アニトさま■
性は生きていくうえでの最も大きな喜びのひとつである。
とある本に書いてありました。
セックスが喜びでなければ他に喜びを見いだしそちらに熱中し
人類は絶えてしまいます。
でもあまりにオープンすぎると他を見向きもしなくなりますから
性器や性欲は隠すことにしたのでしょうね。
そういうことが人類の誕生とともにインプットされていたんだとすると
自然の摂理なのか神様仏様のおかげなのかはわかりませんけれど
すごいことなんだなぁと思っちゃいます。
それからずーっと時代が過ぎてワタシが誕生しまして
性を主題にしていい「空想デート」でなんとか週一ペースで書いているしだいです。
このこともワタシには世界七不思議のひとつに思えるくらいです。
物語なんですけれど、またまた蔵出しで
書きかけというより思いつきのメモみたいなのをまとめてみました。
こういうのもありでございましょうか?

−−− あっ! −−1
取引先との商談を終え、社に戻る時間にはすこし早いこともあり
公園の駐車場に車を停めて一休みすることにした。
助手席には2歳下の後輩、山本くん。
秋だというのに日差しは強く、
缶コーヒーを買いに車を降りて自動販売機の近くにあるベンチに腰を下ろす。
取引先担当者との付き合い方や女子社員の噂話なんかをしているうちに
ベンチの後ろを覗き込んだ山本くんが「あっ!」と小さくつぶやいた。
振り返ってみるとベンチの背後には高さ1メートルほどの植え込みがあり、
まだ緑豊かな葉生い茂る真ん中あたりに一冊の本が挟みこまれていた。
読んだ誰かが処分のつもりで突っ込んだのかもしれない。
そういえばあたりにはゴミ箱は見当たらない。
自分のゴミは自分で持ち帰りましょうということなのだ。
山本くんが本に手を伸ばす。
徐々に現れるその紙束は雨露に晒されておらず
目立たぬ場所に捨てられて日がたっていないように思えた。
半分ほど裏面が見え始めたところで山本くんの手が止まった。
「どうしたの?」
薄いけれども角背平綴じの雑誌のようで僕の位置からはタイトルは見えない。
「見ます?」
出てきた本の表紙にストレートヘアーの女性が微笑んでいた。
その上に横書きで大きくタイトル。
『女装読本』
……ん?
いくつかの縦書き文字が『素敵な女装ライフを目指して』
『こうして買おう/下着』『大きめサイズのブーツ特集』
『嬉し恥ずかしあの一夜』『今月の「空想デート」』と躍っている。
そういえばここは夜になるとときどき怪しげな人が出没すると聞いている。
僕たちは目を合わせて「ひゃあ〜」という顔をした。
「戻します?」
「そそその方がいいかもね」
僕たちは見てはいけないものを見てしまった気持ちを抱えたまま早々に車に戻った。
けど、社に帰っても頭から『女装読本』のことが離れない。
ちょっとだけでも見ておけばよかった。
といっても山本くんがいる前でそれはできなかったけど。
7時を過ぎて仕事を終え、愛車に乗り込む。
20分で到着するとしてその時間帯ではまだまだ人が多いに違いない。
それに公園は自宅とは反対方向。
気になって気になって気になりはしたけど帰宅した。
9時すぎ。
僕は決心してスポーツウェアに着替えて家を出た。
公園の駐車場に車を停め、ドキドキしながら散歩を装う。
その間ウォーキングをする人や帰宅者など何人かの人とすれ違った。
いよいよ問題のベンチの前に来て、僕は地面にしゃがみこんだ。
靴紐を結びなおすふりをして人の姿がないことを前後左右確認する。
中腰になってベンチ越しに腕を伸ばしたとき……
植え込みの向こう側からぴょこんと人の顔が浮上した。
「あっ! 山本くん」

−−− あっ! −−2
何も予定がない休日、僕は図書館で過ごすことが多い。
ここ1年ほどは休みのたびにきているような気がする。
借りる本はさまざまだ。
小説・実用書・伝記・図鑑・・・・。
何冊かを選び、人の少ない2階へ上がる。
個人文庫や専門書のある一角はソファが空いている確率が多い。
ゆったりとした時間の中でパラパラと粗読みする。
こうしていると2時間くらいはあっという間だ。
今日借りていく本が決まると席を立ち、
見慣れた書棚の見慣れた背タイトルを眺めながらドアに向かった。
とそのとき見慣れない背表紙に目が留まった。
分厚い理工書が並ぶその中に薄い角背。
『女装読本』だって! 
なんだってそんな本がここに?
さらにおかしなことに背の下部にあるはずの分類シールが貼ってない。
ということは図書館の蔵書じゃないってこと?
誰かがいたずら目的か何かでここに入れたのだろうか?
処分に困ったかどうかは知らないけどこに無断寄付したのかもしれない。
思わず手を伸ばしかけて踏みとどまった。
いたずらだとしたらその主がどこかで見ている可能性もある。
手にした者を見てこっそり笑おうとしているか、
もしかして声でもかけられたらどうしよう。
ともあれ今はこの場を通り過ぎた方がよさそうだ。
反対側の通路に回り、本を探すふりをしながらあたりの様子を窺ってみた。
怪しい人はいないようだしこちらに注目している人もいない。
だったら取りに行こうか?
分類シールが貼られていないということは図書館のものではなく持ち主はなく、
僕の物にしてもいいということにならないか。
でもどうやってここから持ち出す?
バッグは持っておらずジーンズにTシャツという軽装では隠しようがない。
いったん今日借りる分を貸し出しカウンターで受け付け処理をしてもらい
それらの本の間に挟んで持ち出すというのはどうだ?
ならば出入口にある未処理本チェックゲートも無事に通れる。
っていうかそもそも蔵書じゃないのだからセンサーに反応するはずもないか。
でももしも図書館を出たあたりで誰かに声をかけられたら……。
ともあれ1階に降り、書棚の間をぐるぐると巡りながらあれこれ画策し
ようやく決心がついた。
慎重にあたりの様子を確かめ、すばやく行動し、
脱兎のごとく図書館から離れればいい、そうしよう。
貸し出しカウンターで手続きをし、2階へ戻った。
そしてあたりを窺いながら目的の本に向かって慎重に歩を進め、
立ち止まることなく手を伸ばしかけたそのとき……。
「あっ、無い!」
誰かが持ち去ったのか『女装読本』の幅だけがぽっかり空いていた。

−−− あっ! −−3
女装歴10年の英子さんとはある掲示板で知り合った。
半年ほどメール交換をするうちに
英子さんは完全女装をし、ときどき映画館へ行くらしいことや
近隣に住んでいるらしいことを知った。
ボクはといえば女装を始めてまだ半年。
数組の下着とネットオークションで手に入れたセーラー服を一着持っているだけ。
家族と同居しているから隠す場所や女装の機会も作りにくい。
そんなボクを見かねてか一度会ってみないと誘ってくれた。
場所は英子さん行きつけの映画館。
1ヶ月間悩みに悩んで決心を固めた。
夕食を終え午後8時。
英子さんは女装娘の社交場であるその映画館のトイレで着替えるというけれど
ボクにそんな勇気はなくあらかじめ下着を身につけて行くことにする。
ブラにパンティ、パンティストッキング、
ユニセックス物のジーンズにTシャツと男物のジャケットを羽織る。
いつもと同じ足音になるように気をつけながら階段を降り、
玄関にたどり着いてから声をかける。
「ちょっと出かけてくるね」
リビングから母の返事。
「気をつけてね。あまり遅くならないように」
父は週に2・3回残業で遅くなる日があり今日もいない。
車を走らせ映画館近くの公営駐車場に停めた。
待ち合わせは9時。
最前列の席で右隣の椅子に『女装読本』という本を置いておく、
それが英子さんの目印という約束だった。
券売機でチケットを購入し、
刺激的なポスターが貼られたロビーを一目散に通り抜け、
見た目より軽いドアを開ける。
いきなり女性の喘ぎ耳に飛び込んできて面食らったけど
それは上映中の映画によるもので、場内は通常の映画館よりほのかに明るく、
着席している何人かの頭部と背後の壁に寄り立つ10数人の姿がはっきりわかった。
誰とも目が合わないようにスクリーンの方に向かうと
最前列にアベックらしき2人の後頭部が見えた。
寄り添っている女性の身体が小刻みに震えているような気がする。
英子さんはまだなのかなと思って端の席に座ろうとしたとき
女性の右隣の椅子に雑誌を見つけた。
ここまできた以上勢いをつけるしかなく、ボクは『女装読本』の隣りに座る。
ちらりと横目で見るとミニスカートからはみ出た網タイツを男性の手が這っていた。
不安と恥ずかしさでそれ以上は顔を上げることはできない。
ボクに気づいた英子さんが男性に耳打ちする。
と中年男性は英子さんにキスをして去っていった。
「ごめんなさいね、少し早めに来たものだから。はじめまして、英子です」
その言葉に勇気を出して顔を上げると……。
「あっ!……父さん」

−−− あっ! −−4
出張先で見かけた本屋で『女装読本』という本を買い、
ホテルに戻って夢中になって読みふけっていたときだった。
「あっ!」
目隠しこそされていたものの
まぎれもなく弟だとわかる顔写真が掲載されていた。
『近くにお住まいの女装娘さん、恋人になってください』

−−− あっ! −−5
女装スナックというところへ初めて行った。
下着だけの女装だったけれどみなさんによくしてもらい、
ある人にはたまたま予備として持ってきていたスカートと
使いかけだけれど口紅やファンデーションをいただいた。
帰り際にはママさんが「勉強になるから」と『女装読本』という本を貸してくれた。
本を返しにもう1回は行かなければならないと思いながら
1回だけじゃ終わりたくないとワクワクする。
帰りの電車は満員だった。
押し合いへし合い流されるまま乗り込んで身動き取れない状態で立ち尽くす。
駅に停まるたびにおしくらまんじゅうでもしているかのような感じ。
降りる駅まではあと2つ。
人の壁をかき分けて少しずつドアに近づいていく。
「お降りの方はお足元にお気をつけください〜」
一個の意思と化したかのような降り客たちがいっせいにドアに突進し、
そこに左手が巻き込まれ、肩を突かれ背中を押され、足がよろめいた。
右手に持ったバックだけが引っ張っても元いた場所を動かない。
「降りません、僕降りませーん」
スカートと化粧品と『女装読本』と定期とアドレス帳その他もろもろ、
個人情報や秘密が入ったバックが手から離れて床に落ち、
僕だけがホームに吐き出されてしまった。
「あっあっあああっ〜」

−−− あっ! −−6
『女装読本』という言葉をキーワードにいくつかの物語を書いた。
ふと気になって検索で調べてみた。
「あっ!」
『女装読本』ってホントにありました。

△ △ △ おわり △ △ △




アニト (10月21日(土)00時49分32秒)
桃原美希子さん、こん○○は。
「あっ!」発表ありがとうございます。
またまたおもしろいことを考えましたねー。
《思いつきのメモ》もこのようにまとめると
読み応えのある物語になるというお手本といってもいいでしょう。
わたしも1日のうちに何度「あっ!」と思うことがあることやら。
もっともこの物語に登場する彼らの衝撃度に比べれば
たいしたことではありませんけどね。
>性を主題にしていい「空想デート」
女装世界をわたしがおもしろいと思うのは、
いきなり心の内に隠された部分が前面に出ることなのです。
「私は女装娘です」と宣言するだけでも「ほぉ〜」と驚きなのに
「おちんちんをしゃぶりたい」「苛めてほしい」と希望する人もいます。
もしかしたら普段は真面目な顔をしたあの人もその人も・・・。
そういう想いさえ実は
《人類の誕生とともにインプットされて》いたのかもしれないと
人の心の奥深さをみる思いなのですよ。
これもまた《七不思議のひとつ》かもしれませんね。


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