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瀬賀太郎攻略戦
暴れ猫 著


 一体ご主人様はどうなさってしまったのか。先ほどから部屋の中を、何かを考えながらうろうろとしている。

  その表情はまさに鬼神で、誰もが近寄りがたいオーラを発している。

  私は目を合わせぬように顔を背ける。こうなっては自然に収まるのを待つしかない。下手に声をかけようものなら、首根っこを掴まれ、おもいっきり床か壁に叩きつけられるのが落ちだ。過去に何度かそういう目に合わされて以来、目を合わせられぬ方向、外を見ていることにしている。雨が降ったり、風が激しい時は確かに嫌ではあるが、ご主人様の怒りに触れるよりはマシだった。

  それで自分の命が助かるのであれば、窓際に置かれていても苦にならない。最近やっとそう思えてきたところであった。

  それでもいつになく怒るご主人様の姿に、一体何があったのかが気になる。

 机の上に叩きつけられた紙。それを見た途端顔色が代わり、しばらくすると、今のような鬼神の顔になった。

  文字というものは残念ながら読めないが、少なくとも、今夜は餌にありつけない事は確かなようだ。

 「なによ!!なんか文句あるってぇの!?」

  ご主人様の怒れる声。途端重力バランスが崩れる。

 何が起きているかを理解する前に、目に写る物が逆さまになり、遠ざかっていく。ぐしゅっと鈍い音が鳴り、鉄格子に叩きつけられた。

 ガシャン!!続けざまに蹴られる。

 バタン!!

  逆さまになった私の住処の横で、扉が開き、ご主人様が出て、激しく閉じられた。

  ご主人様。私が一体何をしたというのでしょうか?

                           byペットのインコ

 

 

 

 「そんな馬鹿な!!」

 部屋に届けられた報告書を見て、虹野カオリンは思わず叫んでいた。

 主要都市7ヵ所を中心とした、累計販売数の数値。何処の数字を見ても、カオリンがリリースしたゲームよりも、セガガガリリースのゲームの販売数が上回っている。

 「なっ、何かの間違いよっ!こんなのぉっ!!」

  全ての萌えは自分に向けられる。そうであると断言する彼女にとって、販売勝負のよる敗北は、耐えがたき屈辱でしかない。

  害ある花が咲く前にその芽を摘み取る為に、ドグマの威信にかけ、勝負を突き付けた。無論、過去の勝負において、一度たりとも敗北した事はない。それでも万全の用意をし、スタッフに激を飛ばし、自信を持ってリリースした物である。

  それが、だ。『萌え』という言葉すら知らぬ少年の指揮によって作られた『ゴミ』としか言いようのない代物に、大敗を喫したのだ。

 居ても立ってもいられない。悔しさのあまり、その報告書を破り裂く。情報を書き留めた紙はただの紙切れに代わり、机の上に散らばる。

 「くっ!!」

  紙切れに隠れそこなった、たった1枚の企画書。あまりにも簡単に鉛筆で書かれたその紙も、カオリンの手によりくしゃくしゃに丸められ、ゴミ箱の中へと消えた。

  何処にもぶつけようのない怒りが、激しく火を吹く。なんとか冷静になろうと部屋中をうろついてみるが、さっぱり効果がない。

  何気に外を見てみる。変わり栄えのない景色がそこにある。が、そんな視界の中に、インコの檻が入る。そのインコの視線は机の上の、ゴミと化した紙に向けられている。

  「あんな企画で売れるとでも思ってんのかよ」とでも言っているかのように感じたカオリンは、インコの居る檻を手に持ち上げた。

 「なによ!!なんか文句あるってぇの!?」

  トル○ード投球でおもいっきり壁に叩きつける。バサバサと騒ぐインコを横目に、「フン!」と鼻で息をし、おもいっきり蹴飛ばす。

 そのままの勢いでカオリンは部屋を去った。

 

 

 

 「これは一体どういう事よっ!!」

 開発室で大きな声が響く。

 「売れなかったのは、私の魅力を出せなかったあんたたちのせいなんだからね!!」

  仕事が終わった今、スタッフは休暇に羽を伸ばしている筈であった。しかし今回の敗北に、カオリンは携わったスタッフ全員を緊急事項と称し、会社に呼び集めたのであった。

  スタッフ全員がそろうと同時に、怒りをスタッフにぶつける。

 「読み込みは遅いし、絵は下手糞。とくにアンタ!!」

 プロデューサーに詰め寄る。

 「アンタ、企画書ちゃんと見た?」

 まだ開発室においてあった企画書を、顔面に突き出す。

 「正式な報告は聞いてないけど、機種型式によっては読み込めない人がいるんだって?」

 プログラマーを睨む。

 「どうしてあんな落書きになるのよっ!!」

 グラフィッカーを睨む。

 「アンタの宣伝も悪いのよ!!」

 広報、宣伝を睨む。

 「あいつ等もあいつ等よっ!!騙されてあんなゴミ買うなんて!!」

 企画カオリンと銘打った物は今まで好調に売れていた。そのユーザーすら、今のカオリンにとって、裏切り者でしかなかった。

 無論、全てヤツ当たりに過ぎない。初めての敗北は容易に認められず、その責任を自分以外に求める。

 自分の企画に間違いはない。悪いのはスタッフと企画の良さを理解できないユーザー、と。

 

 

 

 なんとなく秋葉を歩くカオリン。怒りの中にある寂しげな心情。あの後、スタッフ全員から辞表を叩きつけられた。

 「あんたについていけない・・・・・・・か・・・・・」

 日も暮れてきたが、街の熱は冷めない。

 「上等よ!!こっちからクビにしてあげるわっ!!」

 街灯に明かりが燈り始める。

 「何でも自分の思い通りになるなよっ!!」

 目的もなく街の中を歩き、冷静になれば冷静になるほど、スタッフの去り際の言葉が重く、胸に突き刺さる。

 もう一度上層部に掛け合い、勝負の許可を得ようとしたが、冷たく断られた。

 とどめはインターネットのHPであった。

 いつもよりも掲示板の削除数が多い。書かれたばかりと思われる書き込みを表示すると、そこには製品に対する非難がつらつらと書かれている。

 ゲームショップでは、ワゴンセール、在庫処分と称して、自分のゲームが破格の安さで並べられていた。

 「カオリンちゃん・・・・なんだな・・・」

 気が付くと、人通りのない裏地に入りこんでいた。

 「僕・・・ちゃんと買ったよ・・・・」

 いや、その声で、強引に気づかされた。

 「なによ・・・アンタ・・・」

 太り気味の男がいる。暗い裏地の中、その男の目は無気味に光っているかのように見える。

 「酷いなぁ・・・俺、君のファンなのに」

 背後からも男の声。振り向けば、もう二人、ニタ笑いを浮かべている。

 「僕・・・握手して欲しいんだな・・・・」

 目の前の男がゆっくりと歩いてくる。その中には、ファンとしての雰囲気はなく、欲望に飢えた怪しい目の光。

 「ち・・・近寄らないでよ!!」

 前後を男に阻まれ、左右はコンクリートの壁。

 「ファンサービスファンサービスゥ!!」

 男達との距離が狭まる。

 「せっかく買ったんだし、これくらい役得があってもいいじゃん」

 「今度の新作で、沢山のユーザーがいなくなちゃったんだな・・・・」

 「でも俺達はあんな裏切りはしないぜ・・・・だからさ・・・・」

 ガシ。腕を掴まれた。

 「離しなさいよっ!!」

 男の頬を引っ叩く。眼鏡がずり落ち、レンズにひび割れる。

 「なっ!?」

 「い・・・いけないんだな・・・暴力振るなんて・・・」

 「それがファンに対する礼儀かよ」

 頬を叩かれた男はギッと睨む。太った男が、二人の足元から眼鏡を拾い、その男に渡す。

 「カオリンちゃんよぉ・・・・ユーザーをなめたらあかんぜ・・・」

 男のニタ笑いは消えない。が、醸し出す雰囲気はガラッと変わった。

 「ユーザーが少なくなれば、それだけ俺達のモンになる」

 腕を掴む力が更に強まる。

 「痛っ!!」

 振りほどこうにも、男の力のほうが断然上だ。

 「へ・・・へへへ・・・か、カオリンちゃんの肌・・・・・」

 太った男はいやらしい顔で、太ももを触る。

 「いっ・・嫌ぁ!!」

 その感触に、背筋に寒気が走る。

 「助けぐむ!!」

 叫びが途中で遮られる。男の手が口に当てられた。

 「いい声だけどよぉ・・・・今騒がれると人が来ちまうからなぁ・・・」

 「俺らはいつだってカオリンちゃんの味方よぉ。世間がどう騒いでもな」

 その言葉が、グサッと音を立てて心に突き刺さる。少なくとも歓迎という意味の騒ぎではないだろう。

 「今までカオリンちゃの出すもんは全部買ってきたし、これからも買っていくさ。他のゲーム蹴ってもね・・・・」

 「だったら何よ・・・・言いたい事それだけなら、いいかげんに放して!」

 睨み返す。しかし、我が身に降りかかる恐怖は震えとなって現れる。

 「だからさぁ、これからもずっと買っててやるからさぁ、少しくらい役得があってもいいんじゃない?」

 ググッと目の前に、男の顔が近づく。

 「みんなカオリンちゃんの裸が見たいんだよ。俺も含めてね・・・」

 「ここの三人だけじゃないぜ。通路塞ぎの連中もそうさ。」

 男の腕すら振り解けない現状に、逃げる術はなかった。

 「この先に俺達の車があるんだ。来てもらうぜ」

 血走り始めた男の目。欲望だけを見せるその顔に、身体中の力が抜けていく。強引に腕を引かれ、連れ去られようとしたその時であった。

 

 「そこまでだぜ」

 

 暗闇の中から一人の男が現れた。

 眼鏡をかけた細身の男。しかし、周りを囲む男とは違うオーラを感じる。

 

 「何でも自分の思い通りになると思うから・・・・」

 

 反対側からも、男が現れた。

 緑の服に、大きく『C』と書かれている。

 

 「だから世間から嫌われるんだよ!!」

 

 その声に、カオリンの顔に血の気が蘇る。

 セガガガ主任、瀬賀太郎本人である。初めての、唯一の敗北を味合わされた憎き敵。

 「な、なんだてめぇら!!」

 予想外の障害の出現に驚く男たち。

 「ふっ。足止めしたかったら、もう少し強い奴を置いとくべきだったな」

 眼鏡の男がゆっくりと近づく。Cの男と瀬賀太郎も、取り囲む範囲を縮めていく。

 「この野郎っ!!」

 瀬賀太郎の後ろから男が殴りかかる。完全に不意を付かれた・・・・・かに思えた。

 「部屋に閉じこもってばかりいるから・・・」

 振り向き、あえて拳を横っ面で受けてやる。

 ゲシッ!!

 首の力だけで、その拳を押し返す。

 「そんだけしか力が出ないんだよ!!」

 引っ込めない腕を掴み、腹に一撃食らわせる。腹を押さえ屈み込もうとしたところで、髪を掴み、そのまま叩き付けるかのように頭を投げ、顔面に膝蹴りを繰り出す。声にならない悲鳴を上げ、男はその場にうずくまる。

 「おとなしく寝てればいいものを・・・・」

 哀れみを込め、眼鏡の男は薄笑いを浮かべる。

 「その子を放すか、おれ達に叩かれるか、選択肢をやる。早く選べ」

 Cの男の、威圧のこもった選択肢。カオリンの腕を掴む男の顔からは血の気が失せ、視線は倒れた男と、突然現れた三人の間を揺れ動く。

 「く・・・くそっ!!」

 観念したのか、カオリンを瀬賀太郎の方に突き出した。いきなり突き出され、足をもつらせ倒れるカオリン。駆け寄り抱き起こす。

 「邪魔するおまえ達が悪いんだぁ!!」

 叫びを上げて、男が襲いかかってきた。手にはナイフが握られている。

 「岡さん!!」

 カオリンを眼鏡の男、岡と呼ばれた男の方に突き飛ばし、ナイフを受け流す。後ろに下がり、距離を置き、相手の手を見た。

 「ナイフにも精通してるんだ。逃げるなら今のうちだぞ!!」

 しかし、男の体制は逃げ腰だ。

 「岡さん、Cマン。手は出さないでくれ」

 瀬賀太郎にはハッタリは効かなかった。逃げる意思を見せない三人に、男は叫ぶ。

 「いいのか!怪我するぞ・・・・嘘じゃねぇぞ!!」

 一度開いた距離を、瀬賀太郎自ら前に進み、縮める。威圧するでもなく、笑うわけでもなく、ただ、哀れみがこの男に向けられる。

 ハンマーグリップと呼ばれる握り方は、突き専門の持ち方である。しかしこの男は、刃で切りつけようとしてきた。情報誌でしか知らぬナイフの世界に、全てを知ったかのような振る舞いに、何とも言いようがない虚しさを感じた。

 「そんなへっぴり腰で切れるとでも思っているのか?」

 両手でグリップを持ち、刃先を相手に向ける。威圧には最適だが、それだけでは人を傷付けられない。男の動揺は、刃先を揺らしている。

 「殺れよ・・・・ほら」

 両手を広げ、振りまわせば当たるほどにまで近づいた。

 「う・・・・あ・・・・あ・・・・」

 男の額に汗が浮かび、後ろに下がり始める。

 「あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 雄叫びを上げて、ナイフを振り上げる。

 「つけあがるなぁ!!」

 その瞬間、瀬賀太郎は相手の懐に飛びこんだ。拳を手で押さえ、腕の間から顎を狙い、拳をブチ当てた。ブチ当てた直後力を流し、そのまま胸部に肘打ちを食らわせ、仰け反ったところで拳を放す。距離が開いたところで腹部み蹴りをいれ、男はそのまま後ろに倒れた。

 「さすが主任・・・やってくれるぜ」

 岡は感心したように呟く。

 男はすぐに立ち上がると「次会ったら許しはしねぇぞ!!」と吐き捨て、暗闇の中に消えていった。残された連中も後を追い消えていった。

 

 

 

 「なんでアンタ達がここにいるのよ!!」

 男供が消えて最初の言葉だった。カオリンは瀬賀太郎達とは少し距離を置き、ぎっと睨む。

 「おいおい、せっかく助けてやったのに、それはないだろう?」

 「助けてなんて一言も言ってないわよ!!」

 「まぁまぁ、二人とも」

 岡とカオリンの間にCマンが割って入る。このままでは今度はこちら側と喧嘩になりかねない。

 「カオリン、なんで君はこんなところに?」

 瀬賀太郎が逆に聞き出す。

 「そ・・それは・・・」

 そんな事聞かないでよという顔で瀬賀太郎を見る。

 「まぁ、無事だったからいいか」

 言い難そうだったのを見て、瀬賀太郎は一方的に話を打ち切る。

 「三人で今日は呑もうと思ってね(未成年の飲酒は法律で禁止されてます)。秋葉を歩いてたら君がいたんだ。でもなんだか寂しげで、声かけずらくて」

 「それでこいつ、カオリンも誘っていいか?なんて聞きやがるもんだから後を追ったのさ。裏地に入っていったと思ったら、人相の悪い兄ちゃんが道塞ぎやがってな」

 岡が、瀬賀太郎の横っ腹を肘で突つく。

 「他のルートも塞がれてたからね。少しばかり説教してやったよ」

 Cマンはにこやかに言うが、実の所、殴り飛ばしたが正解である。

 「呑みに行かないか?おごるよ」

 「悪いなぁ、主任」

 「その言葉に甘えておくよ」

 カオリンよりも先に、岡とCマンが反応する。

 「あっ、誰が男の分までおごるかよ!」

 「なんだ、おまえもカオリンちゃんのファンかよ」

 「惚れた?」

 「話が飛び過ぎだってば!!」

 あっけに取られていたカオリンも、しばらく続く漫才ともおふざけとも取れるやりとりに、笑いだした。

 「しょうがないわね。付き合ってあげるわよ」

 「ほ、本当?」

 瀬賀太郎は身を乗り出した。

 「へっへっへ・・・いいねぇ、ライバルとの交流会」

 岡は時計を見る。

 「7時をまわったし、ちょうどいい時間じゃないか?」

 「じゃあ俺、いいとこ知ってんだ」

 「ちょっとまってよ。場所決まってんじゃないの?」

 「ゴメン、決めてないんだ。その場でそれとなく決めようって来たから」

 「いいじゃないか。Cマン、道案内頼むぜ」

 「分かった」

 「それと今日は俺のおごりだ。めいいっぱい飲もうぜ(未成年の飲酒は法律で禁止されています)!!」

 「いいの?岡さん」

 「学生は大人のいう事を聞いてればよい」

 瀬賀は現役高校生という身分でありながら、テラドライブによってセガガガの主任となった。CマンはC研、通称萌え研にいた瀬賀と同年代の少年である。

 「ちょっと、私の何処が学生なのよ!」

 「セーラー服」

 岡は即答する。

 「私服よっ!」

 スゴイ回答である。

 「幼児体型」

 岡はカオリンの全身を、とくに胸を見る。

 「どこ見てんのよ!!」

 両手で胸を隠す。

 「お・・・岡さん・・・・」

 さすがの瀬賀もあっけに取られる。

 「ふん・・・・まぁいい」

 「よくないっ!!」

 「どうであろうと、今日は俺におごらせろ」

 強引な展開の後、4人の姿は秋葉原の夜の中に消えていった。

 

 

 

 時刻は11時を回っている。岡とCマンはその後別の飲み屋に行っていた。

 「今日で最後か」

 「そうですね。岡さん、最後まで俺の企画に付き合ってくれて・・・」

 「ストップ。言うのはそこまでだ」

 「でも・・・」

 「Cマン。お前は萌えを極めた後、何するつもりだ?」

 「なにって・・・・」

 「極めたなら、それを世界に広げなければならない。違うか?」

 「でもそれは押し付けにしかならない」

 「・・・・よく聞きな、Cマン。この秋葉でも萌えてる奴はいくらでもいる。いくらでもな。でもな、真に萌えてる奴はいねぇ。萌えてる振りをしてるだけだ。オタクって奴は一人では何も出来ねぇ。同じ意思を持つ奴等が幾人も集まれば、自分だけ外されると思い、生半可な知識で萌えてるだけだ」

 「なぜそこまで分かるんですか?」

 「フッ、図星だろ?何もそうなのはオタクだけじゃねぇ。ゲーム業界にだってそんな中途半端な奴等はいくらでもいる。舞台が違うだけでやってることは同じなのさ。一人だけ違うといえばそれでお終いさ。周りはそいつを敵と見なし潰しにかかる。誰もが叩かれるのが嫌で何も言わないだけさ。だから萌えてる振りをするのさ」

 カラン。ウィスキーの氷が溶けてコップに当たり、軽い音が鳴る。

 「何が嘘で何が本当か、誰も知りはしないさ。だから行くんだろ?極めに」

 「カオリンとの勝負には勝ちました。でも虚しいんです。カオリンの萌えは萌えじゃない。だけどユーザーはそれを手に取った。悔しいんじゃなくて、自分に足らない何かを感じたんです。カオリンのゲームに」

 「いいんだよ、それで。自分しか見る気がないなら、萌えなんてそれっぽっちのもんさ」

 「カオリンは僕の知らない萌えを知っている。だから・・・・・だからもう一度勝負をしたい」

 「いいねぇ、そのチャレンジ精神。お前、21だったよな?」

 「え?ぼくは・・・・」

 「21だよなぁ!?」

 「は・・・はいっ」

 岡の細い目が更に細くなり、蛇に睨まれた蛙のようにCマンは硬直する。そして冷や汗。

 「よぉ〜し、飲めぇっ!!」

 Cマンのグラスに、ウィスキーが注がれる。

 「お前の旅立ちへの餞別だ」

 「岡さん・・・飲む前に一ついいですか?」

 「なんだ?言ってみろ」

 「カオリンにあって、俺にない萌えって、なんですか?」

 「自分で考えろ」

 「飲みませんよ」

 「あのなぁ、Cマン。この世にゃ、自分の知識が全てとか、絶対だとか抜かす奴がいる。人の意見には耳も持たず、自分に同意してくれる奴らだけをうけいれるふざけた野郎共がな。そいつ等の行く先は自滅だけだ。でもな、腐った奴は腐った奴さ。なんで駄目だったかすら考えず、世間に責任を求める。自分の欠点すら認めれんのさ。でもな、お前は違う。お前は知らないという事を知って、事実を事実として受けとめ、何をするかを見出した。だからこそ俺が言わなくても、いずれ自分で気がつくときが来る。自分にない萌えに気がついたなら、自分で手に入れる方法もいずれわかるさ」

 「全ては自分次第、ですか」

 「人に教えてもらったもんは知識にゃなるが、力にはならねぇ。自分から会得しようとする気がなけりゃな」

 突き放してるわけでも、苛めてるわけでもない。Cマンはその厳しい意見の中になにかを見たような気がした。

 「他に聞きたいことは?」

 「いえ、十分です」

 「それじゃ乾杯といこうか」

 カチャン。コップ同士が触れ合う音。二人の長い夜はまだ終わらない。

 「Cマン。今だから言うが・・・・」

 「なんです?」

 「お前のゲーム、ありゃ、やり過ぎじゃねぇか?」

 「アリサですか?」

 「生写真って、そりゃエロビデオだろうが」

 

 

 

 多摩川沿いの土手。そこにカオリンと瀬賀はいる。夜風に当たりたく、なんとなくここまで来ていた。

 「夏でも、川沿いの風は気持ちいいね・・・・・」

 「・・・・・そうね・・・・・」

 夜風に水色の髪がなびく。二人は川の流れる静かな音を聞きながら、ゆっくりと歩く。

 静寂を静かな声が破った。

 「カオリン、ありがとう」

 思いもよらぬ、瀬賀の感謝の意。

 「・・・・・・どうして?」

 その返事がやっとだった。セガを潰すために仕掛けた勝負。カオリンが負けたとはいえ、感謝される理由は見当たらない。困惑の顔。

 「僕は正直、萌えというものが何なのか、分からなかった。知ったのは、君が勝負を挑んできてから。そしてまだ理解しきれてない部分もある」

 「・・・・・無様なものね。萌えすら知らない子供に敗れるなんて」

 怒りを通り越し、深い悲しみが舞い降りる。

 「そんなんじゃないよ。カオリンと出会ったからこそ、僕は僕の知らない世界があるのを知り、触れることが出来た」

 (じゃあなぜ皆はセガのゲームを手に取ったの?)

 「なんて言ったらいいか分かんないけど、カオリンのゲームはすごかったよ。まだ僕の知らない萌えの世界があの中にはあった」

 (私にあって、瀬賀にないもの?)

 「今回の勝負、僕ひとりでは絶対に勝てなかった。緑色の服着てた人がいただろ?セガガガのゲーム、今回のプロデューサーでCマンっていうんだけど、Cマンがいたからこそ勝負が出来たんだ」

 「だったらなに?敗者は敗者よ」

 「今回は引き分けでいきたいと思う」

 「同情ならいらないわ」

 「同情なんかじゃないよ。セールス的には確かに僕達の勝ちだ。でも、ゲームを作る者としてはカオリンに負けた。それがセガガガ、対カオリン用商品開発部署においての全一致での判断だ」

 「何を言っているの?」

 「僕はまだ萌えってのを知ったばかりだから、心情的に負けってのがある。どうあがいても、君には勝てないよ。Cマンもまだまだ自分は甘いとか言って、今日付で退社したよ」

 「退社?」

 「ああ。萌えを極める為に旅に出るんだってさ。Cマンが、帰ってきたらもう一度勝負をしたいって言ってた」

 カオリンは分からなかった。なぜそこまで勝負にこだわるのか。負けは負けであり、それ以上もそれ以下もない。しかしぼんやりとだが、その中に自分にない物が見えてきたような、そんな感じがしてきた。

 

 

 

 それから数週間が過ぎる。セガガガは、まだ企画が始まり、本格的にゲームを作り始めるにはいたらない頃、たまたま自分のアパートに帰ると、そこに彼女がいた。

 水色の髪、赤いセーラー服。

 「カオリン?どうしたの?」

 どうやって調べたのか、自分の家のドアの前で、いつからいたのか、ちょこんと座っていた。

 「あ・・・・・瀬賀」

 「いつからいたのさ?」

 まだ本格的に始まっていないとはいえ、企画書やら、雑用やらでここ三日ほど帰ってきてない。

 「ん・・・昨日から・・・かな?新作でも作り始めた?」

 「あ、ああ。原画さんとのやりとりで結構時間食ってね。何とか引き受けてもらったところで今日は帰ってきたところ」

 カオリンは立ちあがり、ドアの前から退く。瀬賀は内ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に突っ込んで回した。

 「昨日からいたって事はなんか相談事でもあるのかな?とにかく上がってよ。綺麗とは言わないけどさ」

 部屋の電気をつけると、案の定散らかった部屋が目の前に広がる。やはり小人さんが人の部屋を掃除してくれるという事はなさそうだ。

 「今日帰ってきてくれて助かったわ。もし帰ってこなかったら1ヶ月待たなきゃいけなかったから」

 「1ヶ月?」

 いったいなんの相談だというのだろうか?1ヶ月も先延ばしにしてもいいような事を相談しに来たのか?ハテナマークが二つ付く。

 「そうよ。男はどうでもいいかもしんないけど、女はそうも言ってられないから」

 瀬賀の頭にハテナマークが二つ追加された。カオリンの顔を見ると、少し火照って見える。

 ドキッ!!

 瀬賀の心臓が強く鼓動する。

 (な・・・なんだ?今の胸の高鳴りは?)

 ドキドキし始めた心臓を抑制するかのように、テーブルの上のものをどかし、床の物を部屋の隅に追いやる。

 「まあ座ってよ。コーヒーしかないけどいいよね?」

 座布団を敷き、飲み物を取りにいこうとすると、カオリンは部屋をぐるりと見渡す。

 「ねぇ、瀬賀、シャワー浴びていい?昨日からずっと外にいたから・・・・」

 風呂場とおぼし場所を見つけ、シャワーを浴びたいと言う。昨日からいたというのであれば、快く瀬賀は了承した。

 「覗いたら殺すわよ」

 鋭い目つきで殺気もプラスし、風呂場に入っていった。

 結局その後軽く食事をして、時刻が十時をまわる。未だに相談事を話すでもなく、こちらから聞けば言い難いのに急かすみたいで、聞くに聞けなかった。

 十一時をまわる。そのままなんとなく一時間が過ぎた頃、ようやくカオリンが口を開いた。

 「ねぇ、瀬賀。私あれから考えたの。なんで負けたのか」

 「・・・・・・・」

 「結局なんにも分からなかった。分かりそうで、なんだか見えそうで、でも見えない」

 その後、しばらく沈黙が続く。テレビの音だけが部屋に響き、時間が流れる。テレビを消し、瀬賀が沈黙を破った。

 「何が言いたいか、それだけじゃわかんないけど、言い難いなら今は言わなくてもいいよ」

 「でも、それじゃ」

 「今過ぐ言わなくても、そのうち言える時が来るよ」

 「負けた理由はわからない。でも、私に足りない物がなんなのか、それは分かったつもり」

 カオリンの目の奥には、強い決意が垣間見えた。

 「人を理解する事、それが出来てなかった・・・・と思うの」

 (?)

 そう言った直後、なぜかカオリンの顔が赤くなる。

 「だから、だから最初に、瀬賀の事を・・・その・・・理解してみようと・・・・・」

 言っているうちに顔が更に赤くなり、言葉の方が小さくなっていく。

 「はぁ?」

 「だから・・その・・・えっとぉ・・・・」

 モジモジとしていたが、いきなり立ちあがると瀬賀の隣に来る。セガの顔を自分に向けると、自分から顔を近づけ、接吻を交わした。

 いきなりの行動に、瀬賀の顔も見る見るうちに赤くなる。カオリンの唇が離れても、口は動けど言葉は出ない。

 「ねぇ、瀬賀。私とエッチしよ」

 「な・・・な・・・なな・・・・・」

 「相手を理解するには肌の触れ合いが一番だって、どっかで聞いた事があるから」

 全くのでたらめ・・・でもないが、少なくとも今の状態を示す言葉ではない。

 なんの反応も出来ないままに、カオリンだけは、着々とエッチの準備をする。セーラー服の上だけ脱ぎ、白いブラが眩しく見える。

 「ちょ、ちょっとまって!!」

 思考回路が復活し、自分のほうが逃げ出す。が、すぐ後ろのベッドに逃げ場を失う。

 「私だって覚悟決めてきたんだから、あんたも覚悟決めなさいよ」

 ブラの後ろに手を回し、繋ぎ目を外す。支えを失ったブラは滑り落ち、小さなお碗型の乳房が外気に触れた。

 瀬賀の目は、そのの頂点の薄い桃色の突起を見つめる。はじめて見る乳房、乳首に、勝手に体が反応する。

 「あ、勃ったね」

 カオリンは、嬉しそうに瀬賀のソレを握った。

 「瀬賀・・・・・もし嫌だったら、私の手を弾いて・・・・・」

 瀬賀の取る行動次第で、止めても構わなかった。拒否されたとしても、勝負の為にセガのハードを壊した手前、嫌われていても当然なのだから。

 瀬賀のソレを握ったまま、瀬賀の行動を待つ。

 瀬賀の手が、カオリンの手に近づいて来る。弾かれるものと理解し、悲しさがこみ上げてきた。しかし嫌われていて当然であり、恨む事は出来ない。

 「え?」

 手に触れた、瀬賀の手の感触。それは弾くものではなく、自分の手の甲に寄り添わせ、強く握らせるものであった。

 「理解し合えるなら、僕も君の事が理解したい・・・・・」

 思わず瀬賀の顔を見てしまう。瀬賀はそっとカオリンの頭に手を添わせ、自分に引き寄せる。再び唇同士が触れ合う。唇だけが触れ合う、軽いキス。

 カオリンの手ごと、自分のペニスをしごき始める。ゆっくりと。瀬賀の意図を知り、カオリンも手を動かす。

 「気持ち良いの?」

 瀬賀の顔を見ると、耳たぶまで真っ赤の顔である。その目は、カオリンの胸板から吊り下がった胸の膨らみを見ていた。

 片手は押さえられている為、もう片方の手で胸を隠す。

 「そんなに見ないでよぉ」

 「そんな事言ったって・・・・」

 布越しに分かる、ペニスの硬さ。ソレを触り、時分の胸を見られているという実感が、履いている下着を濡らし始めている。

 「そんなに見たかったら、いいよ、見せても。瀬賀のここを見せてくれる条件で」

 ペニスの根元を強く握り、ぐりぐりと動かす。瀬賀は少し考え、カオリンの、胸を隠す腕を退かした。

 条件に同意したとして、カオリンは瀬賀のズボンに手をかける。が、瀬賀自身が座った格好であり、それ以上脱がす事は出来なかった。

 すると瀬賀は、ズボンのチャックを下げる。カオリンはその穴に手を入れ、パンツを引き下げた。戒めを解かれたペニスが勢いよく揺れる。

 「これが・・・・・大きい・・・・・」

 熱いソレを握りなおし、上下に手を動かしてみる。何の変哲もない動きだが、初めて女に握ってもらった感動が、より大きくペニスを変貌させる。

 瀬賀は、果実に触れるように、そっとカオリンの胸の膨らみに触る。ふにふにと柔らかく、少し力を入れただけで膨らみの中に指が埋まっていくかのようだった。膨らみ全体をなでるように肌を滑らせると、硬い何かが抵抗となり引っかかる。

 「もしかして・・・・」

 思わずカオリンお顔を見てしまう。何かをガマンしているかのような、カオリンの顔。

 「硬くなってるよ・・・・」

 耳元でそっと呟き、指の腹で優しくその蕾を摘む。

 「あんっ!」

 小さいが確実に聞えた、カオリンの声。その可愛らしい声にいち早くペニスの方が反応し、透明な液が滲み出した。

 摘んだり、引っ張ってみたり、指で押してみたりする度に、カオリンの甘い声が聞こえ、透明な液が溢れ出す。その粘液はカオリンの手を汚し、ヌルヌルになっていく。

 胸を弄られる内に、自分をコントロールできなくなっていくカオリン。ペニスを強く握り、しごく速度も速くなっていく。溢れ出す粘液を拭うことなく摩り続け、気が付けば、胸を触る瀬賀の動きが止まっていた。カオリンはしごく速度を落とす。

 「イっちゃいそう?」

 瀬賀は射精の衝動をガマンしていた。手の動きが緩くなり、勿体無いような、助かったような複雑な気分になる。

 「準備はいいね・・・・・」

 一瞬「えっ?」っとなる。カオリンは立ちあがるとそのまま瀬賀を跨いだ。そのまま膝立ちになると、スカートの中に手を入れて、大事なトコロを隠す部分をひょいっと避け、そのままペニスを飲みこんだ。

 「ちょ、ちょっとっ!!」

 さすがに慌ててしまう。瀬賀の考えてた挿入までのプロセスが、全く違う順序で行なわれてしまったからだ。省かれた行程が多すぎる。しかし、その思考もすぐに消えてしまった。

 「びくんびくんいってるよぉ・・・」

 カオリンはそのまま瀬賀にしがみつく。自ら腰を動かし、瀬賀を内側から擦り上げる。カオリンの熱い膣はペニスを溶かしかねないほどの熱を持ち、亀頭には激しい快感が生じる。

 「あ・・・あ・・・あ・・・」

 瀬賀は何も言えなかった。下半身から来る快感が思考回路を止め、本能の赴くままに腰を使い始める。敏感な部分が強く擦られ、粘液は更に激しく噴出す。

 愛液の分泌量を増やし、より深く飲みこもうとするカオリンの性器。ざらざらの膣壁も手伝って、射精を促す。

 「な・・・なんか当たってる・・・・・」

 亀頭の先に感じる別の感触。閉じられた膣壁を抉じ開けるのとは違う感触に、最深部に亀頭が挿し込まれているのを知る。

 「奥に・・・子宮に当たってるよぉ・・・・」

 瀬賀の突き上げに合わせ、カオリンも腰を動かす。タイミングが一致した今、一突き一突きが子宮を押し上げる。赤いスカートの下の、隠された場所での攻防は、クチュ、クチュ、という危険な効果音を鳴らしている。

 気持ちいいのは瀬賀ばかりではなかった。声か快感か、片方か両方なのか、何かをガマンする真っ赤になったカオリンの顔を見ているだけで、射精感が高まっていく。

 「かっ、カオリン・・俺・・・・・」

 射精がすぐそこまで迫っている。体位を変えなければ、このままではカオリンの中に放ってしまう。

 「いいよ、好きな時に出しても・・・・」

 カオリンは逆に、強くしがみつき、射精の時を待つ。

 「でも、ゴムしてないよ」

 抜き去る時間を稼ぐ為に、なんとか腰の動きを止める。しかしカオリンは、ペニスの締め付けを強くし、動きを止めなかった。

 「やっ、ほ、ホントにまずいっ!!」

 ゾクゾクと、背筋に射精を注げる信号が駆け抜けていく。股間に力を込め、射精を引き伸ばす。

 「で・・・でるっ!!」

 強引に引き剥がそうとした。

 「いいからナカに!!」

 ぐっと腰を落とし、子宮壁を亀頭に被せた。カオリンを持ち上げ、抜き去ろうと腰に手を当てたが、そこでガマンの堤防が決壊した。

 「くふぅ!!」

 

 

 

 瀬賀の欲望は全てカオリンの膣の中に放たれた。二人は抱きしめ合いながら肩で息をする。

 「カオリン・・・・・」

 結合したままで、そこから愛液と精液の混ざった液体が流れ出してきた時、瀬賀はカオリンの背中に、腰に手を回し、ゆっくりと立ちあがった。そのまま振り向くとベッドの上に、ペニスが抜けぬように注意を払ってカオリンを寝かせた。

 パサァ−っとスカートが捲れ、下着を避けて挿入されるペニス、受け入れている性器、溢れ出した二人の体液が露になる。

 「こんなに出たんだ・・・・・」

 結合部に視線があるのに気づき、慌ててカオリンは両手でその部分を隠す。

 「ちょとぉ、見ないでよ」

 見えないように隠すが、指でペニスを挟む格好となる。

 「か、硬い?・・・・出したのに?」

 依然硬さを保ったままのペニス。出せば萎えると思っていたカオリンが今度は驚く。想定していない事に遭遇し、驚いていた瀬賀のように。

 「今度は僕が動くよ」

 カオリンのお腹の脇に手を置き、腰を動かし始めた。膣内に残る精液が、ぺニスの動きをスムーズにし、亀頭の先は、その先に残る精液を子宮内に押し流そうと、奥まで突く。

 その突き上げの度にカオリンは可愛い声を漏らし、小さな乳房がフルフルと揺れる。

 「可愛いよ、カオリン」

 瀬賀は倒れこんで、乳首を口に含んだ。下の膨らみに手をかけ、摘むように優しく膨らみを盛り上げる。硬くなった乳首が更に浮き彫りになり、より吸いやすくなる。

 「ホントに、いいの?」

 やや不安げなカオリン。

 「胸、小さいのに・・・・」

 なぜそんなに人は胸の大きさに執着するのか?少なくとも瀬賀は、カオリンの胸の大きさに不満を抱かない。

 「僕にとって、胸の大きさってのは重要な事じゃないんだよ。俺は、その人の心を見ているつもり」

 そう言って両乳房を横から押し寄せ、舌を出したまま両乳首間を往復させる。

 顔の角度を変えるだけで吸える位置に頭を置き、交互に吸い上げる。乳輪の輪郭を舐め、そのまま乳首を弄る。

 「瀬賀ぁ、恥ずかしいよぉ・・・」

 執拗に乳首を狙われ、恥ずかしさのあまり頭を押さえて抗議する。

 「いやぁ・・・・出るかな?って思って」

 「ばっ、バカァ!!」

 こつんと瀬賀の頭を叩く。

 「出るわけひゃぅ!!」

 最後まで言い終わらぬ内に、瀬賀が止まっていた腰を動かし始める。突然発生した突き上げ時の快感に、言葉が止まってしまった。

 「なんでか分かんないけど、カオリンの格好、すごくドキドキするよ」

 脱いでいるのは上半身だけ。こうしてベッドで赤くなって寝ているだけで可愛く感じ、視覚効果だけで射精感覚が高まる感じがした。

 胸に手を置き、ふくらみを包むように下から覆い、円を描くように動かす。カオリンは瀬賀の腕を掴み、成すがままになる。

 「ん・・・ふぅ・・・・・んんっ・・・・・・あふぅ・・・・・・」

 目を閉じ、身体中を駆け巡る快感に身を投げ出し、出きる事ならこのままずっと繋がっていたい。そう思う。

 「か、カオリン、そんなに締めないで」

 更に強い刺激が欲しかったのか、ペニスを締め上げ、擦られる力を大きくしようとしたらしい。瀬賀は動きを止め、いきり立つペニスを鎮める。

 「なんで止まっちゃうのぉ?」

 寂しげな目で、早く動いて欲しいと訴える。

 「あのまま動いてたら出ちゃうよ」

 現に今も、早く出したくて脈打つペニスが透明な粘液を多量に出している。

 「でもぉ・・・・・・」

 動いてなくても、膣壁はペニス全体をぴっちりと隙間なく締め上げ、白い液体を待ちわびる。

 「出そうになったらそのままイっちゃうけど、いいね?」

 カオリンは頷くと、自分も腰を使い出す。クチュクチュと恥骨同士が当たる度に卑猥な音が鳴り、刺激が増す。

 瀬賀の肩にカオリンは脚を乗せ、ペニスを根元まで招き入れる。カリの部分が膣内の粘液を掻き出し、シーツには大きなシミを作っていた。

 もはや二人の間に会話はなく、ただお互いの身体を貪る。膣を締め上げ亀頭を擦れば、お返しにとカリが膣壁をえぐる。

 性器同士の攻防は、二人を急速に絶頂への高みに持ち上げていく。目の下で揺れる乳房に手を伸ばし、乳頭を摘み、引っ張る。釣鐘状になったところで、指で乳首をほぐす。カオリンはシーツをぎゅと掴み、暴れてしまいそうな自分の身体を押さえている。

 「だ、駄目ぇっ!!そんなに弄らないで!!」

 必死になって訴える。しかしそれは痛いからではなく、弾け飛んでしまいそうな快感が起こったからだった。

 「くおっ!!」

 瀬賀の動きを止めようと膣壁が活発に動き、出してしまいそうになる。慌てて乳房を解放するが、高まった射精感は下がらない。

 「ゴメン・・今のは効いた・・・・・」

 射精の衝動に駆られ、放射に向けて激しく動き始めた。

 「イクよ・・・・」

 宣言と同時に、結合部付近に隠れる小さな豆を探り当て、指で転がす。

 「ひぅっ!!」

 膣がきゅっと締まり、子宮と連動し亀頭を激しく攻めたてる。透明な粘液は更に増大され、グチュグチュと大きな愛のメロディーを奏でる。

 「そこも駄目ぇっ!!おかしくなっちゃうっ!!」

 堪らず瀬賀の手を押さえるが、お構い無しに小さな豆を指で弄る。

 「い・・いやぁ・・イっちゃう・・・・・・イっちゃうよぉ〜・・・」

 自分が自分でなくなってしまうような、初めての感覚が徐々に大きくなってくる。瀬賀の手を押さえてはいるが力が入らず、手を沿わせているだけの格好である。

 「ぼ・・・・・僕もそろそろ・・・・・」

 そこでやっと豆から手を放し、両手をカオリンの両肩脇に付いて、フィニッシュに体勢に入る。

 「どこに出せばいい?」

 激しく突き上げながら、終わりの場所を聞く。カオリンは瀬賀の腰に脚を巻きつけ、引き抜けないようにする。

 「そのままで・・・お願い・・・・・」

 なんとかそこまで言うと、両手を瀬賀の首にかける。

 「中で・・・ホントに中でイっちゃってもいいんだね?」

 コクコクとカオリンは頷く。瀬賀は頭を落とし、カオリンにキスをする。その中でカオリンは口を開き、舌を伸ばす。瀬賀も舌を出し、カオリンの舌と絡ませた。亀頭先が射精の信号を燈す。

 「出すよ・・・・・」

 耳元でそっと囁き、持てる力全てを使い、腰を早める。ペニスは膣内で激しく脈動し、白い液体を吐き出そうとする。

 「出して・・・妊娠しちゃうくらいイッパイ出して・・・・・」

 子宮もより多くの精で内側を満たそうと、入り口を大きく開ける。ペニスはそこめがけて、亀頭を叩きこむ。

 膣壁のざらざらに亀頭は特攻し、溢れ出す粘液に含まれる精子の量の増量に、子宮が疼く。

 亀頭がグワッと大きくなり、そして亀頭がビクンと大きく、雄叫びを上げた。

 「クッ!!」

 咄嗟に瀬賀は、カオリンの豆を摘み上げた。

 「!!!!」

 突然の強大な刺激。

 二人は落雷に打たれたかのように、その脳裏は白く塗りつぶされた。

 

 ビュルッ!!ビュルルッ!!

 噴出す熱い生命の生き物達。

 ビュクッ!!ビュククッ!!

 子宮を押し上げ放たれた精の行く場所は、ただ一つ。

 ドクッ!ドクッ!ドクッ!

 求めるものは、この壁の向こう側。

 ドク・・・・ドク・・・・ド・・・ク・・・・。

 組み込まれた遺伝子が、その場所へと泳がせ始めた。

 

 

 

 身体中の痙攣がようやく止まり、そのままカオリンに覆い被さった。二人とも肩で息をして、絶頂の余韻に浸る。再び軽いキスを交わし、抱きしめ合う。

 「イッパイ泳いでるよ」

 嬉しそうに微笑むカオリン。瀬賀が起きあがり、引き抜こうとすると慌ててそれを止める。

 「ダメ、もう少しこのまま・・・・」

 「でも、このまま挿れとくと、また出したくなっちゃう」

 「だって、勿体無いんだもん」

 「そのままの格好でいるわけにもいかないよ」

 確かにそうであった。瀬賀はチャックを下ろし、そこからペニスを出していただけだが、カオリンは上半身裸である。

 「それに・・・その、見てみたいし・・・・・」

 「なにを?」

 「その、出てくるところが・・・・・」

 意味はすぐに通じた。しかしカオリンは少し考える。

 「いいよ・・・・・」

 瀬賀はゆっくりとペニスを引きぬく。足を開いてもらうと、とぷとぷと白い液体が流れ出してきた。それを見て、再び硬くなり始めるペニス。

 「こんなに出しちゃったんだ・・・・・・」

 ヒクヒクと性器が蠢くたびにトプトプと溢れ、シーツの上に、染み込めない濃い液体の溜まりを形成する。

 「そんな目で見ないでよぉ」

 瀬賀の目の豹変振りに、性器を両手で隠す。

 「ご、ごめん」

 ティッシュを取りだし、カオリンに持たせる。何回か拭いた後、かけ布団で前を隠し、窓際により、カーテンを閉める。そこでかけ布団を落とし、壁に手をつき、瀬賀のほうを振り向く。

 「出しちゃった分は補充しないとね」

 指で性器を開き、挿入を求める。開いたところから、白いスジが太ももを伝って落ちていく。刺激的な光景に硬さを取り戻したペニスも、補充を望んでいるかのように、ピクピクと動く。瀬賀は黙って近づき、ペニスを手に添え、性器に擦り付けた。

 「沢山出してあげるよ」

 腰を押し進めると、ヌメル膣内にペニスが消えていった。

 

 

 

 パタパタと人が歩き回る気配に目が覚めた。目覚まし時計を見ると、7時を指している。

 「あ・・・・そうか」

 結局その後カオリンを留める事にした。本人の希望であったし、夜中に一人で帰れとも言えなかったからだ。

 瀬賀も起き、洗面所でさっぱりさせると、パタパタと忙しそうに歩きまわる音がする方に向かった。

 「なっ!?」

 そこには、裸エプロン姿で朝食を作るカオリンの姿があった。

 「な、なにやってんだよ」

 「あ、おはよ、瀬賀」

 「おはよ、じゃなくてぇ!!」

 「興奮する?」

 もっこりと膨らんだズボンがそれを証明している。

 「こっ、これは」

 股間を押さえ、腰をちょっと引く。

 ふふんと軽く笑って、朝食作りに戻るカオリン。そのお尻を見ているだけでムラムラとしてくる。

 後ろからそっと近づくと、作業中の手を止めさせた。

 「カオリン・・・・・いい?」

 「ちょっと瀬賀、朝食出来ないよ」

 それでも本気で嫌がっている様ではない。太ももの間に手を滑りこませようとすると、カオリンは強く閉じる。

 「ダメだって」

 「朝食、遅くなってもいいよ」

 「ダメだよ。赤ちゃんがびっくりしちゃうでしょ」

 「・・・・・・・・え?」

 唐突な予測できない言葉。

 「赤ちゃんって?」

 聞き返す瀬賀に、カオリンは下腹部を摩る。

 「まじ・・・・ですかぁ?」

 血の気が引いていく。股間も萎えて、大人しくなった。

 「ええ、そうよ。昨日が予測排卵日。多少のずれがあっても精子は明日辺りまで元気に泳いでるから、確実に命中よ」

 「なんで・・・・なんで・・・・」

 妊娠させてしまった事実が重く圧し掛かる。

 「おそらく私は変わらない。いえ、変えないわ。それが私だから。でもそのままじゃ分からない事はいつまでたっても分からない。だから、よ」

 コンロの火を消して、出来あがった味噌汁をお碗に注ぐ。

 「私の遺伝子と貴方の遺伝子を融合させて両方の知識を持つ人物を作ろう、そう考えたの。大丈夫よ、瀬賀には迷惑かけないわ」

 鼻歌を歌いながら、あっけらかんとした態度でテーブルの上を飾っていく。

 「だからね、瀬賀・・・・・・・」

 瀬賀には聞えているのか聞えていないのか、フラフラッと席についた。

 

 

 

 「お腹の子が産まれた暁には、セガなんてひとひねりにしてあげるわ」

 

 終

 


解説

 やっとこさ書き終わりました。

 書いてて「なんかカオリンのイメージ変えちゃったな・・・・」とも思いましたが、強行突破しました。

 本当なら最初の方に原案から話し合うシーンを構想していたのですが、あんまり下手に書きすぎると、コギト様からなんかツッコミが入ると思いまして。やっぱり本職の人が見ると、違いというのがハッキリと分かっちゃいますからねぇ(^^;

 

 DCではネットに繋がないので、今回のセガガガの一般販売は助かったです。

 ドットCOMちゃんのテーマ、お○ゃん子の「セー○ー服を○がさないで」ですよねぇ?だったらバレ○タイン○ッスとか会員○号の歌とかも入れてくれればいいのに(ぉぃ

 個人的には冬の○ペラグラスが一番好きなんですが(爆)

 

 長くなりすぎてスイマセン。そして最後まで読んでくれてありがとう!!

 


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